とりあえず格闘家で戦いたいと思います。   作:アズライルン

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漸く第二階層終了


第三十二話

 第三回イベントが終了した楓の木のメンバーはギルドホームで各々を労っていた。特に個人ランキングを狙っていたサリーとカスミは疲労困憊で机に突っ伏している。

 

「お疲れ様」

 

「あ、ありがとう…」

 

「さ、流石に疲れた…」

 

「二人は個人ランキングも兼ねてかなりの勢いで集めてくれたしな」

 

 ムサシ丸がレアモンスターを倒してくれたがそれでもサリーとカスミの頑張りは大きい。

 

「今回のイベントギルド一位は『集う聖剣』。第一回イベントで上位者が集まる巨大ギルド。ギルドマスターがレベル60越えのトッププレイヤーなだけの事はある」

 

「二位は『炎帝ノ国』。町で演説していたギルドマスターのカリスマ性で巨大ギルドになったって噂があったよ」

 

 カナデの言葉にムサシ丸は炎帝の国が行った方法を思い出していた。確かに上位に組み込めるだけの方法が出来る人数がいるのはその噂は本当なのだと。

 

「やっぱりウチのギルドは人数不足の問題が大きいな。しかし、メイプルは今回残念だったな」

 

「あまり気分が乗らなくて…」

 

「今回はAGIの高いプレイヤーと相性が良いからね。でも僕達はギルド報酬なら最高の所までいったね」

 

 AGIが低いメイプルとクロムにとっては今回のイベントは厳しいイベントだ。しかし、他のメンバーの尽力のより最高報酬まで届いた。

 

「ギルドホームに届いているわよ」

 

 イズが報酬のアイテムを取りに行くとそれは牛の頭部の剥製だった。

 

「壁飾り?」

 

「楓の木に所属するメンバーのSTRを3%上昇させるの」

 

「積み重ねが効いてくる訳だ」

 

「STRか…私には関係……あっ、あったんだ」

 

 その瞬間、周囲がざわついた。

 VIT極振りでSTRが0のメイプルが何故と。

 

「お前……一体どんなスキル取得したんだ?」

 

「と言うかメイプル……このイベントの間に何処か行った?」

 

「二層にいたよ?多分」

 

「(メッセージの効果は無しか…)運営からの通知で第三階層が実装されるからその時に見せてくれ」

 

 曖昧な返答をする辺りどうやら二層はいたのだがどういった場所なのか分からなかったようだ。メイプルが入手したスキルは第二層ボスの時までお預けと言う事となった。

 

「(にしてもメイプルの新たなスキルか……)今度は攻撃系のスキルか?」

 

「ムサシ丸、どうしたの?」

 

 メイプルがどんなスキルを取得したのか想像するムサシ丸の独り言にカナデが反応した。

 

「いや、メイプルがどんなスキルを取得したのか考えていたんだ。前回は『発毛』と用途が若干不明な物で前々回は『身捧ぐ慈愛』と言う防御系だから今回は攻撃系と見た」

 

「なるほどね。なら、どんな攻撃系のスキルを取得したかを考えるのも面白いかもね」

 

「確かに面白いかもな。そうだな……何かを召喚して攻撃するとか」

 

「なら、僕はメイプルが変化して攻撃すると予想するよ。身捧ぐ慈愛を鑑みて今度は見た目が丸々と変わっているかもね」

 

「それもあり得そうだな」

 

 体を動かす事が趣味なムサシ丸とインドア派なカナデと正反対な二人だが意外と話が合う。

 と言うのもムサシ丸もカナデも同性で歳が近く、しかもお互いゲーム外のスキルが強みとしているからだ。

 

「何でムサシ丸は面白そうにしているの…」

 

「あいつって見ていて飽きないからな。ビックリ箱みたいで面白いじゃん」

 

 ムサシ丸はメイプルをビックリ箱みたいと称しているがサリーとしてはそんな心臓に悪いビックリ箱があってたまるかと思っている。

 その思いはクロムとカスミも同じである。

 

 

 

 

 後日、第三層へ行くためにその道中はムサシ丸とサリーとアジタートがこちらに向かって来るモンスターを倒して行く。

 

「メイプル、本当に良いの?」

 

「勿論!」

 

「なら……お願いします」

 

「まずは『挑発』!」

 

 そう言って挑発を使ってメイプルにヘイトが行く様に仕向けた。

 

「『捕食者』、『毒竜(ヒドラ)』、『滲み出る混沌』!」

 

 毒竜を唱えるメイプルの姿はいつもの光景だが残りの二つのスキルが異質だった。なんと彼女の影から二匹の手足の無い化物が出現した。巨大トレントも負けじと襲ってくるその化物に攻撃するが、メイプルが【身捧ぐ慈愛】で防がれてしまった。

 

「そうか~…そんな感じか」

 

「見る度に付属品が増えているのは何でだろうか…」

 

「毒無効の相手に有効打を与えられるという点では良いんじゃない?」

 

「けど、どう取り繕ってもモンスター寄りだよな」

 

「味方なら良いわ…味方なら」

 

「予想は当たりか?」

 

「そうみたいだね。平常運転で安心したよ」

 

 各々がメイプルが手に入れたスキルに感想を述べていたがそれだけでは終わらないのがメイプルだ。

 

「最後に……『暴虐(・・)』!」

 

 スキルを唱えた瞬間、黒い光が身を包むと先程の二匹の化物と似た姿に変貌した。違う点を挙げるなら体長が大型ボスモンスターと同じとなり、複数の手足が生えている。メイプルが化物になったと同時に二匹の化物は消滅し、それを合図と化物となったメイプルがボスモンスターに突進し掴みかかっては噛みついたり殴ったり、挙句の果てに炎を吐いて攻撃している。ボスモンスターが木である事から炎が弱点だったらしくHPが大幅に削られ、とうとう0となって倒された。

 

「いやぁ~、これ操作が難しいよ」

 

 ノイズ交じりで話す化物にサリー達は警戒する。

 

「め、メイプル…だよね?」

 

「そうだよ。……ちょっと待ってね」

 

 化物になったメイプルがそう言うとメリメリと音を立てながら裂けた腹部からメイプルが飛び出して来た。

 残された化物は光の粒子となって消えた。

 

「出来る範囲で説明して」

 

「『暴虐』と言って一日一回限定で装備の効果が無くなる代わりにSTRとAGIが50になってHP1000になるの。HPが無くなっても元の状態に戻るだけ。他にもMP消費なしで召喚する『捕食者』にMPを使用して巨大な化物を撃ち出す『滲み出る混沌』があるよ」

 

 以前メイプルがSTRが関係していると言っていたのはこの暴虐の事だったのだ。一日一回限定で装備の効果は無くなるデメリットはあるがSTRとAGIが50増えるにはメイプルにとってありがたいスキルなのだ。

 

「あぁ、……ついに人間を辞めたのか」

 

「あぁ、辞めたな。間違いない」

 

「カナデの予想も当たっていたみたいだな」

 

「だね」

 

 比喩でもなく本当に人間を辞める事になってしまったメイプルにクロムは遠い目をし、カスミは頭を抱える。

 ムサシ丸とカナデはお互いの予想が当たったが喜んでいいのか分からない様子だ。

 

「シロップで空を飛ぶよりも速いかも?山奥で練習すればいいかな?」

 

「徘徊するボスモンスター扱いになるから止めとけ」

 

「それは同感」

 

 暴虐状態でフィールドを走り回ろう物なら他のプレイヤーは徘徊する大型ボスモンスターとして大騒ぎになるのは火を見るよりも明らかである。

 兎にも角にもこれで第三層へと行く事ができた楓の木メンバー。

 

「皆空を飛んでいる!?」

 

「あれじゃない?」

 

 空を飛んでいるプレイヤーの背や足には見慣れない機械を装備している。

 

「多分だが俺やメイプルを参考にしたんじゃないか?」

 

「どういう事だ?」

 

「俺はメルヴィルの『空中遊泳』と『超巨大化』のスキルで、メイプルは巨大化したシロップと『念力(サイコキネシス)』で空を飛べるからな」

 

 ムサシ丸の推測に楓の木メンバーは納得した。AGIが0のメイプルはシロップを念力で浮遊させて移動する際の足として使っているしムサシ丸はムサシ丸でパーティー単位での移動やイズが大量のドロップアイテムを工房へ持ち運ぶためにメルヴィルを巨大化させて空中を移動している。

 第三階層の実装する際にメイプルやムサシ丸以外のプレイヤーが空を飛べるように運営が用意したのだろう。

 

「あそこで買えるみたいだし後で買う?」

 

「俺はパス」

 

「どうして?」

 

「蹴る時に壊しかねないからな」

 

「私も遠距離が主軸とはいえ、蹴らないと言う選択肢があるわけじゃないし私も機械の購入にはちょっと考えないとね」

 

 格闘家であるムサシ丸は蹴った拍子にその機械が壊れる恐れがあるため買う選択肢を諦めた。アジタートもムサシ丸程ではないが接近された時に蹴るので空を飛ぶ機械を購入する際には色々と考慮しなければいけないのであった。

ムサシ丸のテイムモンスターは

  • メカっぽいオルトロス
  • 悪魔チックなTレックス
  • 空飛ぶ鯨
  • その他
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