とりあえず格闘家で戦いたいと思います。   作:アズライルン

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第三階層
第三十三話


 メイプル達、楓の木が第二階層のボスを倒し、第三階層へと足を踏み入れたその翌日。今日はどうしようかと考えていたメイプルはクロムに呼び止められた。

 

「今朝届いた運営からのメッセージだが期間は空くが第四回イベントの日時が決まった」

 

「ギルド同士のバトルのイベントですか?」

 

「そうだ。うちのメンバーは8人だけだろ?欠員が出ればその分イベント攻略が厳しくなる。そこで準備期間にギルドメンバーを増やすのもアリなんじゃないか?」

 

「そうですね…」

 

 イベント当日になって急用が入ったプレイヤーは参加できないためその分小規模ギルドは不利になる。ただでさえ、楓の木メンバーは他の小規模ギルドより人数が少ないのだからこの弱点は致命的言えよう。

 

「おーっす、何の話をしているんだ?」

 

 そんな会話をしているとムサシ丸がギルドホームにやってきた。メイプルとクロムが彼に第四回イベントの準備期間中にギルドメンバーを増やす事を提案している事を伝えた。ムサシ丸は少しの間考えて口を開く。

 

「ウチのメンバーは第一回イベントで上位にいるメンバーで構成されているしサリー達みたいに他プレイヤーにはない強みがあってもその日にログインできなきゃ意味がない。俺も戦力増強はアリだと思う」

 

「なら、スカウトだね。ムサシ丸も一緒に行く?」

 

「俺は今日カナデから協力して欲しいクエストがあると言われていてな。スカウトはメイプルとサリーに任せる」

 

「分かった。ムサシ丸君も気を付けてね」

 

 そう言ってメイプルとサリー、ムサシ丸は各々の目的のためにギルドホームを後にした。

 

 

 

 

 第三階層の広場にやって来るとカナデが屋台で買ったのであろうホットサンドを食べていた。

 

「待たせたな」

 

「良いよ。僕もその間に色々と調べて対策を考えていたから」

 

 そう言って今回のクエストの詳細を話し出す。

 

「まずこれからやるクエストだけどパズルと戦闘を同時にしないといけないんだ」

 

「つまり、パズルを解くプレイヤーと戦闘を行うプレイヤーが必要なわけか。でも、俺以外にもメイプルとかいるだろ」

 

「まぁね。でもパズルを解いても襲ってくるモンスターを倒さないといけないしそのモンスターは状態異常攻撃が効かない上に物理攻撃しか倒せない。更にはパズルを解いているプレイヤーを率先して狙って来るから挑発しても効果は薄い。他にも色々なギミックや罠があるかもしれないからムサシ丸にお願いしたんだ」

 

「成程な」

 

 防御力と火力と機動力があるムサシ丸がいればクエストをクリアできるとカナデはそう判断したのだろう。

 ある程度の打ち合わせをした二人は早速目的の場所へと超巨大化させたメルヴィルに飛び乗って空を飛んだ。

 

「『空中遊泳』か。空を飛べるのは便利だよね」

 

「そう言えばカナデはメイプルの念力(サイコキネシス)で浮いたシロップに乗ったことがあるんだっけ?」

 

「うん。メルヴィルより遅いけどね。それにしてもかなり大きいよね。ギルドメンバー全員乗せてもまだ余裕があるよ」

 

「モチーフが鯨だしな。と言っても俺がメルヴィルを使う場面って限られているからな」

 

 ムサシ丸がメルヴィルを覚醒させるのは条件がある。一つはパーティーやギルドメンバーを移動させる時、もう一つは戦闘の時だ。

 ある程度の人数ならムサシ丸一人で対処できるため遠距離攻撃が欲しい時にしかメルヴィルを覚醒させることがない。

 

「にしも流石にこれは目立つな」

 

「そこは仕方ないよ」

 

 巨大化したメルヴィルの背中に乗る二人は他のプレイヤー達の注目の的になっていた。実際に掲示板では宙に浮いたシロップの話題で大騒ぎしていた。

 

「(見世物じゃないんだが……まぁ、テイムモンスターいねぇし空を飛べる奴がいないからしゃーないか)そろそろ到着か」

 

 雑談しながら移動しているとクエストのある洞窟に辿り着いた。ランタンを持ちながら奥へと進むと石版がありカナデがそれに触れると地面を覆うように黒い液体が溢れ出てきた。そしてその黒い液体からピンク色を基調としたTレックスが出現してきた。

 

「パズルの方は頼んだぞ」

 

「分かった。ムサシ丸も気を付けてね」

 

 カナデが石版のパズルへ向かい、ムサシ丸はモンスターと対峙する。Tレックスがカナデを標的にして襲い掛かるのを見て超加速を発動しようとしたが不発に終わった。

 

「(超加速が使えない……)だったらこうするしかないな」

 

 地面を強く蹴って一気に懐へと入り、腹部にアッパーカットを入れる。Tレックスモンスターは意識をムサシ丸に変更して噛みついてきたが彼はそれを避けて顔面に蹴りを入れる。追撃に暴獣拳を発動したが出来なかった。

 

「(超加速と暴獣拳が使えない事を踏まえると攻撃やAGI上昇のスキルが使えない仕様になっているな。要はスキルを使わずにモンスターと殴り合えって事か……)こいつはメイプルやサリーだと苦戦どころか下手すりゃクエスト失敗になるな」

 

 最初からスキルの使用不能は挑戦するプレイヤーにとってかなり不利な状況だ。ムサシ丸が脳裏に浮かんでいる二人だと下手をすればクエストを失敗してしまうのだ。

 そしてその考えに至ったのはムサシ丸の戦っている姿を横目で見ていたカナデも同じである。

 

「(ムサシ丸に頼んでおいて正解だったかも。メイプルはカバームーブを、サリーなら超加速を封じられるうえに毒竜(ヒドラ)に暴虐、短剣の連続攻撃も使えない状態でこのモンスターと戦うのは荷が重すぎる)」

 

 攻撃を滲み出る混沌や毒竜(ヒドラ)に依存しているメイプルでは攻撃できず、短剣で普通に攻撃出来るサリーもSTR値が足らずに攻撃による足止めは不可能と言っていい。だからこそムサシ丸にクエスト手伝いのお願いをして良かったと思っている。

 さて、石板の方を見ると図書館で行ったミルクパズルではなく同じ色の球をそろえるという内容の物で色の数も八種類もあり球も十個もある。

 

「(内容としては割とシンプルだけど色も数も多いからすぐには出来ない。ムサシ丸がどれだけ持つかが鍵になる)」

 

 カナデがパズルに挑んでいる一方でムサシ丸はモンスターと戦っている。どうやら一定の攻撃値を受けるとそのプレイヤーを狙って来るようだ。ある程度のダメージを与えるとTレックスのモンスターが黒い液体に沈むと今度はカマキリの姿で出て来た。

 

「Tレックスの次はカマキリかよ。しかも攻撃速度が速っ!」

 

 そう言いつつもきっちり攻撃を捌きながらその合間に攻撃を入れる。

 と言うのも彼の祖父の知り合いに中国拳法の使い手がいてその人と手合わせした経験があるのだ。

 ダメージを負わせるとまた黒い液体に潜ってゴリラの姿となって殴りかかって来た。

 

「ゴリラならこいつで!」

 

 強烈な拳を合気道の動きでいなし、そのまま一本背負いで地面に叩き付けた。

 一本背負いの一撃が大きかったのかまたまた黒い液体に潜ってライオンの姿になった。

 

「Tレックスの次はカマキリになってその次にゴリラになって今度はライオンかよ」

 

 次々に姿を変えて攻撃してくるモンスターに悪戦苦闘しながらもなんとかダメージを与えていく。

 

「(バトルヒーリングがあって助かった。掠っただけでもHPが少し削られるからな……)」

 

 メダルで獲得したスキルに感謝しながらモンスターの攻撃の合間に拳や蹴りを入れる。

 暫くその攻防が続くとTレックスの姿に戻り、今度は黒い液体がTレックスのモンスターに纏わり突き、黒がベースの刺々しい姿となった。

 

「ここからが第二ラウンドって訳か」

 

「お待たせ!そろそろ決着を付けるよ」

 

 ムサシ丸が冷汗をかきながら拳を構えるとカナデの声を上げた。どうやらパズルを解いたようだ。

 Tレックスのモンスターが炎を吐こうとするが、いち早くカナデが動いた。

 

「『デビルペインティング・無効(インヴァリッド)』!」

 

 炎を黒いインクのような液体が包み込むように覆うとかき消された。どうやらこのスキルはスキル攻撃を無効にできるようだ。

 

「『デビルペインティング・属性(エレメント)』!」

 

 今度はその液体が雷や炎の模様を空中に描く。ムサシ丸の拳が雷の模様を通過すると拳に雷が纏い、Tレックスのモンスターに突き刺さった。

 

「攻撃の無効に属性を付与か。こいつはありがたい」

 

「ドンドン行くよ」

 

 カナデが属性を付与し、時には攻撃を無効しながらムサシ丸をサポートし、ムサシ丸はそのサポートを受けて攻撃に専念していた。

 そして・・・

 

「これで終わりだ!」

 

 炎を纏った上段回し蹴りがTレックスのモンスターのHPを全て刈り取り、モンスターは光の粒子となって消えていった。

 

「ふぅ、きっついな」

 

「お疲れ様。いやぁ、今回はムサシ丸がいないとヤバかったよ」

 

「スキル封印がかなり効いたな。超加速を封じられたのは痛かった」

 

「パズルもそれなりに難しかったよ。でも、相応の報酬だったから良かったよ。『デビルペインティング』、色々と応用が効きそうだ」

 

「なら、俺も頑張った甲斐があったって事だな……ん?」

 

 ムサシ丸がカナデと会話を弾ませていると地面に光っている物が落ちていた。

 

「これは『禁則地の鍵』。何かのアイテムみたいだな」

 

 拾い上げたそれは名前からして何かのクエストの必要なアイテムではないかと踏み、ムサシ丸はアイテムウィンドウに入れて帰路に就いた。

 

 

 

 

運営サイド―――――――――

 

「大変だ!ムサシ丸とカナデが俺達の悪意シリーズその24『悪魔の遊戯』を攻略した!」

 

「悪意って言うなよ。真面目に高難易度のクエストを考えて作っただけだから」

 

 そう言ってTレックスの姿をしたモンスターと戦うムサシ丸とパズルに挑戦するカナデの姿が映し出された。

 

「カナデがパズルを担当し、その時間をムサシ丸が稼ぐ。まぁ、この展開は予想出来るな」

 

「しかも、ムサシ丸もムサシ丸でバトルヒーリングに助けられている所もあるから」

 

 図書館系列のクエストをクリアしたカナデに持ち前の格闘技で戦うムサシ丸。展開としては予想できる範疇にあるので驚かない。

 

「このクエストの内容上、ある程度攻撃に振っていないと失敗するからな。……メイプルは知らんけどムサシ丸は攻撃力あるし何よりもスキルを使わずにボスモンスターを倒した実績がある。そう考えると納得のいく結果で終わったな」

 

 このクエストはTレックスのモンスターの出現と同時に溢れ出る黒い液体に触れると移動・AGI上昇、更には攻撃スキルが全部使用不能になるのでムサシ丸が行った元のステータスとプレイヤースキルで戦うかバフを味方に掛けて貰って戦うの二択で対処しないといけないのだ。

 映像は暫く流れたがメイプルのようなこちらの頭を悩ませる描写がなく炎を纏ったムサシ丸の蹴りによって悪魔は倒された。

 

「改めて見るとムサシ丸って魔法使いとの相性が良いよな」

 

「確かにミィみたいな火力特化と組めばマジックリフレクターで攻撃のアシストをするしカナデのようなサポーターと組めば高いプレイヤースキルで敵を倒す。何と言うか雑に扱っても強いって感じだな」

 

 そのおかげでこちらの胃が痛まないので運営としてはありがたい気持ちでいっぱいになったのであった。

 

 

 

 

 クエストを無事に終え、楓の木のギルドホームに帰って来たムサシ丸とカナデを待っていたのはメイプルとサリー、そして初心者装備の二人のプレイヤーがいた。

 

「ま、マイと言います」

 

「妹のユイです」

 

「二人ともSTR極振りなんだよ」

 

 二人は黒髪に緑のメッシュの入ったのがマイで白髪にピンクのメッシュの入ったのがユイだ。聞けばリアルでは体力も力もないなのでSTRに極振りしたとの事だ。

 

「(リアルだと出来ない事をゲームなら出来るって話はよく聞くし、その理由で極振りするプレイヤーもいるか。現に痛いのが嫌だからVITに極振りしているメイプルがいるし。)ムサシ丸だ。よろしくな」

 

 攻撃力特化ならメイプルとの相性が良いなと考えているとマイがオドオドした様子でムサシ丸に話しかけてきた。

 

「あ、あの……ムサシ丸さんはアクロバティックな挙動で回避したり、分身したり…」

 

「化物を召喚したり、その化物になったりしませんよね?」

 

「どんなヤバいもんを見せたんだあの二人は…」

 

「(まぁ、ムサシ丸は別の意味で普通じゃないからね)」

 

 震えている双子にムサシ丸は頭を抱えるのであった。

ムサシ丸のテイムモンスターは

  • メカっぽいオルトロス
  • 悪魔チックなTレックス
  • 空飛ぶ鯨
  • その他
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