とりあえず格闘家で戦いたいと思います。   作:アズライルン

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今年最後の投稿です
よいお年を!


第三十四話

 双子のSTR極振りプレイヤー、『マイ』と『ユイ』が楓の木に所属して数日経ったある日。

 メイプルはマイとユイのレベリング。サリー、クロム、アジタート、カスミは『スイカ』と言う季節限定のアイテムを集めている。そのアイテムは【AGI】、【STR】、【INT】が最大10アップする効果があり、内容としては微々たるものだが積み重ねていくと馬鹿にできないのだ。

 一方のムサシ丸は一人でイズに頼まれたアイテムを集めていた。

 

「ふぅ、イズさんに頼まれた素材はこれで全部か。中々落ちない物だな」

 

 第三層にいる山岳地帯にいるゴーレムからドロップする岩石が必要になるとの事でムサシ丸が対応する事となった。

 いざ集めようとしたがレアアイテムだったらしくいくら倒してもそう簡単には集まらなかった。

 

「(『ギルドの湯・意気軒昂』は生産職のイメージで内装が変わるらしいが一体どんな物になるのか気になるな)」

 

 ムサシ丸がギルドの湯のスキルロールをイズに渡したらいたく興奮していたのを思い出して苦笑してしまう。

 

「にしてもかなり奥の方まで進んだな。まぁ、メルヴィルに乗せて貰えば良いか。メルヴィルも攻撃のバリエーションが増えてイベントの時は活躍できそうだ」

 

 実はムサシ丸、素材集めのついでにメルヴィルのレベリングをしていた。ゴーレムを合気道で体勢を崩し、その隙にメルヴィルが攻撃すると言う流れで倒していった。

 イズの頼まれたアイテムの回収し終えたムサシ丸は早速帰路に就こうとしたがある崖に違和感を感じた。

 

「(この崖……明らかに可笑しい。何かを隠しているような…)とりあえず殴ってみるか」

 

 ムサシ丸は拳を握りしめ、ヒビの中心点に放った。すると、ヒビが崖全体に広がって崩れていった。

 現れたのは鋼で出来た大きな扉。その横には掠れた文字で【禁則地。入るべからず】と書かれていた。

 

「これはダンジョンの入り口か?でも、鍵かかかっている……ん?禁則地?」

 

 ダンジョンを見つけたのは良いが鍵がかかっていて進めなかったが禁則地と言う言葉にピンと来たムサシ丸はアイテムウィンドウを開いて『禁則地の鍵』を取り出し、鍵穴と思わしき窪みにはめた。

 すると、大きな音を立てて扉が開いた。

 

「この鍵は此処を開けるための物だったのか」

 

 カナデとクエストを攻略した帰りに拾ったアイテムはこのダンジョンを開ける鍵だったのだ。

 中へ入ると大きな扉と四方に存在している地下へと続く階段だけだ。まずムサシ丸は大きな扉を前に立ってみたが何の反応もしなかった。次に地下へと続く階段を降りてみると無機質な部屋に赤・青・黄・緑のパネルが設置された操作盤が置かれていた。ムサシ丸が近づくと操作盤が順序立てて光出した。

 何かしらのギミックかと思ったムサシ丸は操作盤の前に立って光った順番にパネルを押すと地響きが起こり、操作盤が地面に沈んでいった。

 再びボスの部屋の前に立ったが扉は開かなかったが扉の装飾であるボルトが緩んでいる。

 どうやらボスの部屋に入るにはこのギミックを解除しないといけないらしい。

 

「モンスターはいない……が色のボタンを発光した順番に押さないとボスの部屋の鍵が開かないわけか。カナデなら速攻で解いていただろうな」

 

 ボス部屋を開けるためのギミックを解いている中でこのダンジョンのボスの背景が綴られた壁画があった。

 この町には機械神が存在しそれを守るための守護する機械で出来た獣がいた。だが、二代目が登場して一代目の機械神を退けようと画策した。そのためには守護獣を倒す必要があり、二代目は対抗戦力として守護獣と同じ存在を作った。守護獣と戦わせて同士討ちを狙っていた二代目であったが予想外の展開が起きた。

 守護獣と同じ存在を作ったがためにそれは守護獣と結託し二代目に襲い掛かったのだ。

 流石の二代目もこれには耐えきれず、この二体を纏めて封印してこの場を禁則地として誰にも近づけさせないようにした。

 

「つまり……此処のボスは機械神の守護獣とそいつと同じ存在か」

 

 内容からしても苦戦は必定。最悪の場合、デスペナルティを受ける羽目になるかもしれないと肚を括ってボスの部屋の扉を開けた。

 ボスの部屋の中には機械で出来た白い狼が佇んでいた。ムサシ丸を見た瞬間、鋭い爪と牙で襲い掛かって来た。

 

「おっと、動きは速いが直接的だな」

 

 初動が少し遅れてしまったが直接的な動きだったため避けて顔面に拳を叩き付ける。

 

「(爪と牙には貫通攻撃か。)この程度なら躱せるから問題はないが」

 

 狼の動きに合わせて拳や蹴りを入れてダメージを負わせていく。瓜と牙には貫通攻撃なのでそこだけを気を付けながら戦って機械狼のHPのバーが半分に差し掛かった時に機械狼の動きに変化が起きた。

 何処からともなく中縹(なかはなだ)色の機械の狼が現れ、光弾をばら撒きながら白の機械の狼に近づく。そして二体が並び立ち、遠吠えを上げると白と青の光を纏うと合体して双頭狼(オルトロス)となった。

 

「まさかの合体かよ!?」

 

 ムサシ丸は守護獣ともう一体との一対二ではないかと思っていたがまさかの合体するとは思ってもみなかった。

 双頭狼はムサシ丸に向かって光弾を乱射した。

 

「チッ、面倒な事になった…」

 

 あまりの連射速度にムサシ丸は舌打ちをして光弾の嵐を回避する。

 

 

 

 

 その頃、メイプルはマイとユイのレベリングを途中であるマイが疑問に思った事があった。

 

「そう言えば、ムサシ丸さんはどんな戦い方をするのですか?」

 

「私もムサシ丸さんの事、全然知らないから…」

 

 新参者のマイとユイはムサシ丸が格闘家である事は分かったが肝心の戦闘スタイルを見た事がないためのだ。

 暴虐状態のメイプルは蟀谷に当たる部分をかいて次のように述べた。

 

「ん~、私自身ムサシ丸君と一緒に戦うことが少ないから分からないけど、サリーやイズさんの話だと第二の盾役だって。大楯がいないと盾役になって、いる時は攻撃に参加するみたいな感じ」

 

「つまり、大楯使いがいない時は防御を担当して大楯使いがいた時は攻撃に参加するって事ですか?」

 

「そうみたい。それにムサシ丸君は格闘技をベースにしているから相手の攻撃が当たる前に攻撃を当てる事が出来るんだって」

 

「何か凄そう…」

 

 メイプルとマイとユイはパンチやキックで倒す場面を想像していたが実際には投げ技や関節技も仕掛ける事もあるのだ。

 そのため彼と対峙したプレイヤーは打撃と思って身構えたら関節技や投げ技を掛けられてそのまま倒された話がちらほらあるのだ。

 

 

 

 

 メイプル達の話に挙がっているムサシ丸は機械の双頭狼を相手に攻めあぐねている。

 

「合体して攻撃の種類が増えたか!(近接戦闘なら問題ないがこの弾丸の嵐のせいで近づけない事かネックだな)」

 

 接近戦ならムサシ丸に分があるが、遠距離攻撃の猛攻を受けると近づけずにいる。

 現に刃を展開した状態で突撃してくる際にカウンターを放っているが決定打になっていない。双頭狼もムサシ丸が避けているので攻撃が当たらず時間だけが過ぎていく。

 

「(最短距離で突破できるルートは見つけたが多少のダメージは覚悟しないとな。俺、サリー程避けるのは上手ないし)……やるしかないな」

 

 覚悟を決めたムサシ丸は双頭狼に接近する。光弾の嵐を掠りながらもなんとか接近して後数歩で自分の得意とする間合いに到達する瞬間だった。双頭狼は胸部から接近するムサシ丸にそれまでの攻撃とは大きさも威力も速度も違う光線を放ったのだ。必中とも言ってもいい距離にいるムサシ丸は避ける事が出来ずにそのまま飲み込まれて倒される……筈だった。

 しかし、ムサシ丸はまだ生きていた。

 

「(『不屈の守護者』があってマジで助かった)やられたら、やり返す。倍返しだ!『復讐の一撃(ヴェンジェンス・ストライク)』!」

 

 そう、二つ目のメダルスキルである『不屈の守護者』によってHP1で耐えたのだ。

 一気に懐に入るムサシ丸。そしてどこかで聞き覚えのあるセリフと共に黒い閃光が双頭狼の腹部を貫き、双頭狼は倒された。

 

復讐の一撃(ヴェンジェンス・ストライク)。強力だが、使う場面を考えないとな…」

 

 ボス戦等の一対一では便利なのだが囲まれた時は使えないのでどのタイミングで使うかを考えないといけないとポーションで回復する。

 一息入れていると宝箱を発見した。

 

「これは……暴獣を倒した時と同じだな」

 

 宝箱を開けると青と白を基調とし先程倒した手甲とブーツが入っていた。

 

 

『オルトロス・ガントレット』

 VIT+10

 STR+30

【破壊不能】

『オルトロス・アーツ(バレット)/(スラッシュ)

 弾:自身のSTR値の1/4の貫通攻撃の光弾を連続で発射する

 斬:攻撃に斬撃を付与する。

 

 

『オルトロス・ブーツ』

 AGI+20

【破壊不能】

『フラッグ・オブ・ミラージュ』

 30秒間実体のある幻影を作り出す

 

 

「へぇ、今度は足と腕の装備が分かれているのか。ガントレットの方はVITが暴獣の具足より低いから避けながら戦う戦法がメインだな」

 

 しかも、ムサシ丸にとって嬉しいのは遠距離攻撃のスキルが付与されている事だ。

 

「これで遠距離攻撃してくる相手に近づく事が楽になったな」

 

 今すぐにスキルの性能を確かめたいがイベントが控えているので後日人目に付かない場所で使おうと思い、ギルドホームへと帰還した。

 

 

 

 

運営ルーム――――――

 

「おいおい、マジかよ……ムサシ丸が機械双頭狼(メカ・オルトロス)を倒したよ」

 

「あのモンスター。高火力貫通攻撃の塊のような奴を単独で倒したのか…もう驚きを通り越して感動するわ。…で、どうやって倒したんだ?」

 

 ムサシ丸が機械双頭狼を倒す映像を観る。

 

「掠りながらも接近して『不屈の守護者』でHP1で耐えてからの『復讐の一撃(ヴェンジェンス・ストライク)』か」

 

「なんつー力業…」

 

 あまりにもゴリ押しな戦い方に若干引き気味になっている運営人たちであった。

 

 

 

 

 後日。ムサシ丸はイズに頼まれたアイテムを渡すと何処かで訓練出来る場所がないかと訊いてみるとギルドの設備に『訓練場』があると言われ、すぐさま向かうとそこには既に先客がいた。

 

「サリーにマイとユイか」

 

「あっ、ムサシ丸さん」

 

「今日はこっちで特訓か?」

 

「はい。サリーさんから回避と攻撃を当てる練習をしようと訓練場に来たんです」

 

 確かにメイプルやクロムがいれば回避の必要はなくなるがいつもいるわけではないので出来るに越したことはない。

 

「ムサシ丸は今日はどういった用件で此処に来たの?」

 

「俺はイズさんの頼まれ事の際にダンジョンを見つけてクリアした装備の性能を確かめに来た」

 

 そう言って『オルトロス・ガントレット』と『オルトロス・ブーツ』を三人に見せる。

 

「そろそろイベントが近いしなるべく他のプレイヤーには見せたくないしな」

 

「それもそうか」

 

 何時、何処で情報が洩れるかも分からないので訓練場を使おうとするムサシ丸の判断は間違っていない。

 そんな会話をしているとカスミが訓練場へやって来た。

 

「む?今日はかなり大所帯だな」

 

「あれ?今日はスイカ集めをすると言っていませんでしたか?」

 

「実はスイカ集めの際にクエストが発生してな。それをクリアして報酬の装備をこれから試すところだったのだ」

 

 カスミは赤い鞘に納められた日本刀をサリー達に見せる。サリーはムサシ丸と同じ理由であると納得した。

 

「名を『武龍(ぶりゅう)の宝刀・(あか)』と言って【破壊不能】と『烈火ノ魂』が付与されている。」

 

「(あれ……なんかすげぇ既視感を感じる)」

 

 装備名を聞いて既視感を感じるムサシ丸であったがその正体が分からなかった。

 

「(『烈火ノ魂』……STRとAGI上昇の他に自身に竜属性が付与される)行くぞ、『烈火ノ魂』!」

 

 スキルを唱えるとカスミの周囲を一瞬だけ紅蓮の炎が包み込む。

 

「(くっ、縹と同じ服装が変化するタイプの装備か!?…)」

 

 炎が消え、また恥ずかしい恰好になっているのかと確認してみると赤い袴に白い着物。手足には竜を彷彿とさせる甲冑が装備されて和風の戦乙女のような出で立ちで露出度が抑えた恰好だった。

 こちらの予想とは違った事に良かったと思っているカスミであったが顔が引きつっているサリーに目を丸くしているマイとユイ、そして半眼になっているムサシ丸が視界に映っている。

 

「か、カスミ……う、背中…後、額も…」

 

「「カスミさん、凄いです…」」

 

「これはまた……」

 

 周囲のリアクションを見たカスミは背中を見ると肩鎧に似た翼に先端が十字槍になっている尻尾が生えている。急いでアイテムウィンドウから手鏡を取り出して自分の顔を見ると兜の前立に似た角が生えている。

 

「な、なんだこれはぁぁぁぁぁぁ!?」

 

 訓練場にカスミの悲鳴が轟いた。




カスミが手に入れた装備

武龍(ぶりゅう)の宝刀・(あか)
STR+40
【破壊不能】
『烈火ノ魂』

ムサシ丸のテイムモンスターは

  • メカっぽいオルトロス
  • 悪魔チックなTレックス
  • 空飛ぶ鯨
  • その他
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