とりあえず格闘家で戦いたいと思います。 作:アズライルン
訓練場でクエストのクリア報酬で手にした『武龍の宝刀・赫』のスキルである『烈火ノ魂』を発動させたカスミは、何と今度は龍人となってしまった。
「ハハ、そっか…カスミもメイプルと同じ領域に入ったのか……」
「いや、メイプルの暴虐に比べれば全然可愛い物だろ。精々、『身捧ぐ慈愛』と同レベルだな」
「「カスミさん、カッコイイです」」
カスミの姿にサリーは乾いた笑みを浮かべ、そんな彼女に対して暴虐状態のメイプルよりマシだと言うムサシ丸。そして目を輝かせているマイとユイ。
「竜属性付与と記載されていたが……こんな姿になるとは………」
『蒼海の神刀・縹』を手に入れたが、あれは場所さえ気を付ければ自分はまだ普通のプレイヤーだと思っていたが、『武龍の宝刀・赫』を手に入れた事により異常枠に入ってしまった事に頭を抱えてしまった。
「『烈火ノ魂』って姿が変わるだけなんですか?」
「いや、竜属性付与以外にもSTRとAGI上昇させるスキルだ。はぁ、嘆いても仕方がないか」
ムサシ丸の言葉で気持ちを切り替えてスキルの確認のために訓練用の案山子に向き直る。
「まずは…『炎龍刀』!」
スキルを唱えると炎が赫の刀身に纏わりつき、巨大な刀身となり、そのまま勢いで訓練用の案山子に向かって袈裟斬りで倒した。
「これは単純に威力と範囲が増大するスキルだな」
「シンプルなスキルね」
「次は『無限刃・
すると、今度は炎がもう一振りの刀になるとカスミは案山子の軍勢を斬り伏せていく。一体ずつ倒して行く度に攻撃の威力と移動速度が徐々に上がっている。
「今度は攻撃が当たる度にAGIとSTRが1%ずつ上昇するスキルか……しかも、上限がない上に戦闘が終了しない限り上昇値が消えないようだ」
「(『剣の舞』の上位互換のスキルか。つまり、攻撃が当たる度に速く、強くなるのか…)」
第四回イベントの特色を考えると、敵が多ければ多いほどカスミのステータスが上り続ける事になるのだ。
『烈火ノ魂』の確認を終えて、元の姿に戻ろうと刀を鞘に納めようとしたカスミにマイがある質問をした。
「カスミさん、その翼で空を飛べるのですか?」
「いや、流石に飛べな……」
飛べないと言いかけたカスミであったが、目を輝かせているマイとユイを見て、出来ないとは言いづらい雰囲気になっている事を察したカスミは「まずは浮く事が出来るかどうか確かめてからだ」と言って軽くジャンプして浮けるかどうか確認した。カスミ自身はすぐに地面に着地すると思っていた。
しかし、結果は落下するどころか浮いていた。
「う、嘘。本当に浮かんだ……」
「マジか……」
「「凄いです、カスミさん」」
「竜属性付与にこんな効果が…」
試した本人もまさか浮くとは思ってもみなかった。そのまま翼を使って飛行しようと試したがバランスを崩して落下した。幸いにも地面から数十センチくらいだったので着地は容易だった。
「カスミ、飛び回れそう?」
「今は浮くだけだな。自在に飛ぶとなると練習しなければならないな」
「そっか……体型リンクが強制的に消えて動きにくくなるから仕方がないか」
「その話は俺にとっては死活問題だな…」
現実と異なる体だと動かし辛くなるので、今まで培ってきた格闘技をベースとして戦っているムサシ丸にとっては死活問題である。
カスミのスキル確認を終えると次はムサシ丸の番となった。
「今度は俺か……『オルトロス・アーツ
右腕を案山子の方へ向けてスキルを発動させた。
すると、双頭狼の頭部の装飾から光弾が連続で発射されたのだ。その連射速度はムサシ丸が戦った機械双頭狼と劣らない物で訓練用案山子の大群を蜂の巣にした。
「まるで二連装式の機関銃ね…」
「NWOはファンタジー寄りのゲームなのだが……第三階層を考えると可笑しくはない……のか?」
オルトロス・アーツの威力を見てドン引きするサリーとカスミとは対称的にマイとユイは目を輝かせている。
スキルを使ったムサシ丸はこのスキルに対して思案顔でいた。
「俺の腕前じゃ狙い撃ちは無理だな。接近するために相手の動きを封じるか飛んで来る物理攻撃の破壊ぐらいだろうな」
「まぁ、狙いを定めなくてもあれだけの連射速度だと躱せる人は多くはいないから大丈夫だと思う。それにムサシ丸の十八番はクロスレンジだからね」
サリーの言うようにムサシ丸の得意距離はクロスレンジであり、オルトロス・アーツはあくまで接近するための手札の一つだ。これもこれで第四回イベントでは敵側からしたら十分脅威なのでこれはこれで良い収穫だと言えよう。
カスミは「第四回イベントまでに飛べる様にしておく」と言って修練場を後にしたので自分もレベル上げしようかなと思って訓練場を後にしようと思っていた所にサリーに呼び止められた。
「ムサシ丸、マイとユイの回避や攻撃を当てるために武術の動きを取り入れたいのだけど教える事は出来る?」
「別に俺は構わんが俺の動きは一朝一夕で身に着ける事は出来んぞ?」
サリーには何か考えがあるかもしれないが、ムサシ丸の回避や攻撃は武術の動きをベースとしているため第四回イベントまでの日数でマイとユイにその動きが身に付けられるとは思えない。
「付け焼き刃になるのは分かっているけど、少しでも二人に生き残れる確率を上げたいの」
サリーの考えには一理ある。
弓矢や魔法攻撃の避け方は無理でもナイフのような武器ならある程度教えられる。
「そうだな、分かった。……と言っても俺が教えられるのは基本だけだ。だからそこを徹底的にやろう」
「「ありがとうございます!」」
素直なマイとユイにムサシ丸はほほ笑んだ。
その頃、森の中でクロムとアジタートがレベル上げに勤しんでいた。ゲーム内での時間が夜になっているためゾンビやスケルトンと言ったアンデッド系のモンスターが姿を現している。
「まさかカスミも異常枠に踏み入れる事になるとはな…」
最初はクロムとアジタート、カスミでスイカ集めをしていたが刀を持った竜人の二体を見つけた。この竜人達はクエストの発生した時に現れるNPCで受けられる条件は『長剣の心得』と『刀の心得』がXである事でその条件を満たしているのはカスミだけだった。
第四回イベントのためと思ったカスミはクエストを受注し、その数時間後に彼女はそのクエストをクリアしてその報酬の装備である刀を貰った。
クロムは意気揚々と『スキルを試してくる』と言って去っていくカスミの後姿を見て直感した。この後、カスミがとんでもないことに遭うのだと。
「これで全員異常枠に染まった訳ね。それ、『クイックショット』」
クロムと話しながらアジタートはスケルトンの頭部を撃ち抜いた。
「にしても……クイックショットであんな威力が出せるなんてな…」
『クイックショット』は硬直時間の短さと発動時間は短いが威力が低い。敵を一撃で屠るためにはマイとユイのようなSTR一点に振る必要がある。
それなのにアジタートのSTRはサリーより上でカスミより低い程度だ。
「パッシブスキルの『ヘッドショット』と『
『ヘッドショット』は相手の頭部に攻撃が当たった時、その攻撃が2倍になり20%の確率でスタン状態させるスキルで『
「(俺を使って狙いを分からなくさせたり、敵の意識の隙をピンポイントで狙ったりとアジタートの動きは捕食者の動きだ。前にサリーがアジタートは鷹、ムサシ丸は狼と言っていたがこう言う意味だったのか…)
サリーがアジタートのプレイスタイルがまるで天空から獲物を狙う動作から鷹と称し、ムサシ丸が敵味方の動きを先読みして一番危険なポイントを潰したり、柔術や合気道の動きで敵の動きを一瞬だけ止めたりしてサリーとカスミ、アジタートの攻撃のサポートを行った動きから群れで狩りをする狼と称した。
改めて考えるとサリーの例えは的を得ていると思ったクロム。
「私的には急所の数が増えても良いと思うんだけどね…」
「まぁ、急所と言っても格闘技とか知っている人じゃないと分からないから仕方がないと思うぜ(それ以外の急所を知っていて狙うのは俺が知る中でムサシ丸かアジタートぐらいなんだよな…)」
クロムの脳裏には人型のモンスターに対して何の躊躇いも無く蟀谷に矢を射り、金的部分に蹴りを放つアジタートと鳩尾と首に貫手を放つムサシ丸の姿があった。
「(二人共戦闘事になると枷を外すからな…)」
唯一の救いと言って良いのか分からないが、ムサシ丸とアジタートは「現実は現実、ゲームはゲーム」と線引きが出来る事。現実ではあくまで護身程度で止めてはいるがNWO内で戦闘時になるとその枷を外して技を叩き込むのだ。中でも金的は男の自分から絶対に喰らいたくない。
「(願わくばイベントでアジタートの被害者が出ませんように……)」
ゾンビに金的を喰らわした後、至近距離で矢は放つアジタートを見てクロムは心の中で彼女の蹴りの被害者が出ない事を祈った。
ムサシ丸のテイムモンスターは
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メカっぽいオルトロス
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悪魔チックなTレックス
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空飛ぶ鯨
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その他