とりあえず格闘家で戦いたいと思います。   作:アズライルン

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第三十七話

 各々がレベリングや素材集めをして現在は第四回イベントが始まる数時間前。メイプル達、女性陣は楓の木のギルドホームに設置された『ギルドの湯・意気軒昂』に浸かっていた。イズによってデザインされたギルドの湯は日本の洞窟風呂となっている。『ギルドの湯・意気軒昂』は一日一回限定でギルドメンバーのHPとMPの上限が10%アップするので極振りのメイプルやマイ、ユイは勿論、盾役(タンク)として他のメンバーよりダメージを負う頻度が高いクロムにとってはありがたい代物だ。

 どちらかが先に入るかと揉めそうになったがレディファーストと言う事で先に女性陣から堪能する事なった。

 

「はぁ~、極楽だわ」

 

「ムサシ丸君のおかげね」

 

「イズもこんな趣のある物を作ってくれて感謝する」

 

 温泉特有の硫黄の匂いと心地よい温度によってアジタートとカスミ、イズはリラックスしているがサリーとメイプルは恨めしそうに見えていた。

 

「良いな……」

 

 二人が恨めしそうな視線を送ったのはカスミ、イズ、アジタートの胸部だ。

 

「大人と子供だから仕方がないと思うけど……此処までとは思ってもみなかった。カスミなんて着物で分からなかったけどイズやアジタートよりも大きいし」

 

 幾ら大きくなる余地はあっても差があまりにも大きすぎる事にメイプルとサリーは

すっかり意気消沈していた。

 

「まぁまぁ、メイプルちゃん達はまだ成長期なんだから幾らでも大きくなれる機会はあるわ」

 

「個人差はあるけど普段の生活を改善するのも良いわね」

 

「それにな。幾ら大きくても良い事はないぞ。肩は凝るし、着る服が限定されるからな」

 

 イズとアジタートがフォローしつつカスミが大きいが故の欠点を言ったが、その発言が火に油を注ぐ物だとはカスミ自身気が付いていなかった。

 

「それは持つ者故の贅沢な悩みじゃぁぁぁ!!」

 

 サリーがいきなり発狂したかと思えば彼女はカスミの背後をとって胸を揉み始めた。

 

「ひゃわ!?さ、サリー///!い、いきなり何をする///!?」

 

「ふむ、感触は現実と同じか……それでもその大きさには妬ましい」

 

「だからって私の胸を…ひゃいっ///!」

 

「そうなの?じ、じゃ私も…」

 

「メイプルも便乗す……あん///!」

 

 その後も嫉妬に塗れたサリーの叫び声とカスミの艶やかな悲鳴が響くギルドホームでムサシ丸、クロム、カナデはそれらを無視して第四回イベントの内容とイベント内で自分達がどのように動けばいいのかを確認していた。

 と言うのもこの手の話に首を突っ込んだら命はないと全員察したからだ。

 

「第四回イベントで死ぬとステータスが減少し五回目でリタイアとなるのか」

 

「出来れば一回も死なないのが理想的だけど流石にそれは無理だから死ねるのは三回までだね」

 

「それに夜襲もあるからうちみたいな小規模ギルドは早々に休めないと考えておくべきだな」

 

 第四回イベントはずっと戦闘になるであろう事を考えて動くべきだと男性陣はシミュレーションしていた。

 

「最終日になるとどのギルドもメイプルのスキルに回数制限がある事を見抜かれているから気を付けないと駄目だね」

 

「ウチが上位になるには如何にメイプルの能力を隠し通せる事ができるかが重要になってくる。勿論、ムサシ丸とカスミの装備も言える事だが」

 

「確かに『オルトロス・アーツ』やカスミさんの『烈火ノ魂』がバレると対策してきますかね。注意は怠らないようにしておかないと」

 

 新たに入手したスキルがこのイベント内で明かされる事になる可能性があるので出来るだけ温存しておくのが良いだろう。

 

「基本はメイプルにマイ、ユイが拠点防衛。俺とカスミ、サリー、アジタートが他のギルドからオーブを奪う。ムサシ丸は攻撃と防衛のどちらかについてそのアシストでイズとカナデはサポーターだな」

 

「俺だけやる事が多いな」

 

「仕方ないと思うよ。ムサシ丸はSTR、VIT、AGIのバランスが良いから単騎で他のギルドからオーブを奪えるし。それにムサシ丸がいるだけで魔法使いにプレッシャーをかける事が出来るからね」

 

 マジックリフレクターを所持しているので下手に魔法攻撃すれば味方に被害が出るので敵側からしたら脅威なのでその場にいるだけで魔法使いへの強い牽制となる。

 

「上がったよ~」

 

 ムサシ丸達が色々と話し合っている間に女性陣がギルドの湯から上がった。その際に顔真っ赤にして疲れ切ったカスミと目のハイライトが若干消えているサリーを見たが触らぬ神になんとやらの気持ちでスルーした。

 そして全員の準備が整ったと同時に第四回イベントが始まり、目の前が真っ白に染まった。

 

 

 

 

 光が薄れるとそこは洞窟の最深部だった。広い部屋から通路が三本伸び、一つは水場がある場所に通じ、もう一つは横になれる場所に通じていた。そして最後が地上へ伸びる通路だった。

 

「入口が一つしかない処見るに小規模ギルドだとこんな感じなのかもな」

 

「となると大規模になると攻め込まれやすい場所にオーブが配置されていると思っていいわね」

 

 少なくとも背後から奇襲される心配がなくなったと考えれば守りやすいとも言える。

 

「作戦は前に言っていた事だけど私とカスミ、クロムさんの三人とムサシ丸とアジタートの二人がチームとして動いて攻撃。メイプルとマイ、ユイが拠点防衛、イズとカナデはメイプル達のバックアップをお願い」

 

 機動力の高いサリーとカスミ、そして柔軟に立ち回れるクロムで一チーム、遠距離攻撃が出来るアジタートと一人で複数人纏めて相手にして勝てるムサシ丸がもう一チームとして他ギルドを攻める。そして残ったメンバーが拠点の防衛に努める。

 

「序盤は大規模ギルドが優位になる。だから出来るだけ多くのオーブを集めてね」

 

「(サリーちゃんは皆には内緒にしている事があるわね)分かった」

 

 サリーが皆に指示を出していたが、アジタートだけはサリーがこのイベント時に何かをするつもりであると勘づいていたが敢えて伏せることにした。

 

 

 

 

 とあるギルド所属の魔法使い視点――――――

 

「はぁ……防衛に回ったのは良いが来ないと暇だな」

 

「仕方ねぇよ、どのギルドも慎重になっているからな」

 

 俺の名前はモッブ、中規模ギルドの『蜉蝣旅団』に所属している魔法使いだ。第四回イベントのギルド対抗戦では拠点防衛担当をしており、流石に『炎帝の国』のミィや『集う聖剣』のフレデリカ達には劣るがこれでも魔法使いとしてはそれなりに実力のあるプレイヤーだと自負している。誰も攻めてこないのはどのギルドも情報が少ないから慎重に行動しているのは良い事だが手持ち無沙汰になってしまう。

 

「敵襲だ!敵は二人だ」

 

 すると、仲間から敵襲の報を受けた。マントで顔と装備が分からないが襲ってきた人数を鑑みて小規模ギルドであると分かった。人数の少ないギルドはどうしても攻撃に割ける人数が少ないのも頷ける。

 これはオーブに辿り着く前に倒されると思っていた。大槌を持った仲間のプレイヤーがいの一番で攻撃した瞬間、大槌プレイヤーが姿を消した。

 

「はっ?」

 

 思わず間抜けな声が出てしまった。何故姿が消えたのか分からなかったが視線を上に上げると空高くぶっ飛ばされた大槌プレイヤーが光の粒子となって消えていくのが。どうやら攻撃が当たる瞬間に殴り飛ばしたようだ。

 あの動きからして格闘家でしかも、相当強い部類のプレイヤーであるのは間違いない。では、もう一人プレイヤーを見てみると弩が握られている所を見るに弓使いである事が分かった。後衛と前衛のバランスは良いが如何せん人数が少ないのですり潰されるのも時間の問題かと思ったが甘かった。

 

「そんな大振りな攻撃は当たらないよ!」

 

 弓使いはするりと斧の攻撃を避けると顎に蹴りを叩き込んだ。それだけに留まらず片手剣使いの首を問答無用で蹴りを入れる。ゲームだから痛みはないだろうが現実だと呼吸困難待ったナシだ。そして動けなくなった二人に近距離で止めの矢を放った。俺はこの二人を連携させてはいけないと判断し、まずは前衛役を倒す事に専念する。

 

「『ボルケーノキャノン』!」

 

 格闘家プレイヤーに溶岩の砲弾を放った。この魔法は俺が持っている中で最強の攻撃魔法でしかも、奴が回避するであろうポイントの後ろには槍使いと短剣使いがいる。例え魔法を避けられても二人のプレイヤーによる攻撃が飛んで来る。

 これで格闘家は倒す事ができたと確信していたが次の奴の行動で呆気なく消えた。

 

「『マジックリフレクター』」

 

 あいつは俺の放った魔法を紙一重で避けた後、まるでサッカーのヒールキックのように後方にいるメンバーに当てたのだ。マジックリフレクターは魔法攻撃を所持者の任意の方向で反射するがあんな体制で使う奴は初めて見た。

 無論、こんな動きをするなんて誰も予想している訳もなく背後にいた二人は蹴り飛ばされた魔法の餌食となった。

 

「中々の威力だな」

 

 俺の攻撃の余波でプレイヤーの顔が見えた。

 その顔は知っている。暴獣の二つ名を持っているプレイヤー、ムサシ丸だった。

 

「(まさか襲ってきたプレイヤーがよりにもよってムサシ丸かよ……と言うか前より化物度合いが上がってんじゃねぇか…)」

 

 接近されたら分が悪過ぎる。超加速で一端距離を取ろうとした矢先に眉間に衝撃を受けた。弓使いに撃たれたのだと理解したがもう遅い。俺は矢の一撃とムサシ丸から上段回し蹴りを喰らって視界が暗転した。

 まだ1デスでだから復帰できるが、味方に伝えないといけない事ができた。あの弩を使うプレイヤーには接近できても気を抜いてはいけない事。ムサシ丸がいる時、魔法攻撃をしてはいけない事を徹底してしないといけない事の二つを。

 

 

 

 

 ムサシ丸とアジタートが他のギルドを襲っている間、他のギルドも攻防が続いていた。『炎帝の国』や『集う聖剣』も例外ではない。

 

 

 集う聖剣の場合――――――

 

「あー、退屈!私も攻めたーい!」

 

「仕方ねぇだろ。俺達は足が遅ぇから」

 

「私も二人ほどじゃないけど遅いですし」

 

 防衛を任せているが誰も襲って来ずに退屈そうにしているフレデリカをドラグが返すと水色とピンクを基調とした髪の女性プレイヤーが会話に入ってきた。彼女の装備は金属製の軽鎧の上に革ジャンのような物を羽織り、頭には猫の耳を模した金色のヘッドセット、足にはスピーカーのような装飾が付いたブーツ。そして手にはギターらしき物が握られていた。

 

「敵襲!敵襲!」

 

 暇を持て余して談笑していると偵察をしていたギルドメンバーから敵襲の知らせを受けた。

 

「数はー?」

 

「およそ六十!こちらの防衛の数を上回っています!」

 

「敵さんも思い切ったね。なら、私が数を減らすから残りはドラグさんが叩く方針で」

 

「そうだな。犠牲は減らせってペインに口うるさく言われているし、範囲攻撃ならガット(・・・)が適任だな」

 

「じゃぁ私は二人の支援だね」

 

 方針が決め、他のメンバーを下がらせるとドラグが大斧を、フレデリカは杖を、そしてガットと呼ばれた女性プレイヤーはギターを構える。

 

「『ブレーメン二重奏(デュオ)打楽器(パーカッション)』!『メタルサンダー』!」

 

 ガットの周囲に現れたドラムを持った驢馬の幻影が現れると一緒になってギターを弾くと敵軍の頭上に雷雲が立ち込め、そのまま特大の落雷を見舞った。

 

「相変わらず激しいね。まぁそのおかげで楽が出来るけど。それ『多重炎弾』!」

 

「だな。俺もやるとするか『重突進』!」

 

 ガットの広範囲攻撃で大多数の敵が倒れたのを見計らってフレデリカが魔法を放ち、ドラグが突進する。

 

「『ブレーメン二重奏(デュオ)鍵盤楽器(クラヴィール)!」

 

 今度はキーボードを持った鶏の幻影が現れてガットがそれに併せて演奏すると敵軍の動きが鈍くなった。

 

「ナイス!『グランドランス』!」

 

 デバフを受けた敵にドラグが大斧を地面に叩きつけると槍状に尖った岩が襲い掛かり、まともに受けた者は散っていった。そして数が片手で数えられるようになり、不利と見た敵軍は逃げ出していった。

 

「ふぃー暴れた、暴れた」

 

「いつ見てもブレーメンの能力は凄いね」

 

「でも、発動には時間が少し掛かりますし楽器を増やすとその分MPの消費も大きいので個人だとさっきみたいに離れた場所で一掃するかこれに属性を付与して殴るしか出来ないです」

 

 彼女が選んだ装備は魔法使いであり、ギターの形をしているが立派な杖だ。しかしこのギターは斧のように振り回して扱えるのだ。

 

「最初見た時は俺もペインもドレットも目を丸くしたぜ」

 

「思ったんだけど運営もノリノリでギターを鈍器みたいに使おうと考えたんじゃない?ほら、昔のライブでギターを地面とかに叩きつけて破壊する熱狂したミュージシャンみたいな感じで」

 

「どっかで見た事あるなと思ったらそれか」

 

 一仕事を終えた三人は談笑するのであった。

 

 

 炎帝の国の場合――――――

 

「あの……本当に一人でよろしいでしょうか?」

 

「勿論、この鎧のスキルのせいで巻き込んじゃう可能性があるから。あなた達は他のギルドの人が戦っている最中に横から掠め盗る可能性があるから周囲の警戒をして欲しい」

 

 炎帝の国は楓の木と同様に二手に分かれてオーブを集めていた。あるギルドメンバーが他のギルドを発見してとある女性プレイヤーに大丈夫なのかと訊いてみた。その女性は白と薄紫色の基調とした機械的な鎧を身に纏って右腕にはハルバード、左腕には大型の円形の盾を装備していた。

 女性プレイヤーは自身のスキルが仲間のプレイヤーに迷惑をかけると言って仲間に周囲の警戒をするよう伝える。

 

「分かりました。クレセント(・・・・・)さん、ご武運を!」

 

 クレセントと呼ばれた女性プレイヤーが相手側がギリギリ視認でない地点でハルバードを構える。

 

「派手に行くよ。『ジェットストライカー』!」

 

 鎧の一部が翼のように展開すると同時に足の装甲からブースターらしき物が出現し、一気に加速した。

 

「おい!向こうから物凄い速さでこっちに向かって来ているぞ!?敵襲だ!」

 

「構えてももう遅い!」

 

 敵襲であると分かり、オーブの防衛にクレセントにとっては時すでに遅し。手に持ったハルバードで突き刺し、薙ぎ払って次々と倒して行く。

 『ジェットストライカー』。クレセントが身に着けている鎧に付与されたスキルでMPを消費し続けている間はAGIが常に5倍の状態になる。しかし、このスキルの真骨頂はそれではない。

 オーブの防衛担当をしているプレイヤー達は矢や魔法攻撃でクレセントに空中を飛びながら回避する。

 

「う、嘘だろ………あいつ空を飛んで…」

 

 このスキルの真骨頂は展開されたその翼で空中移動を可能にする事なのだ。空中をまるで我が物のように飛んでいるクレセントはその後も防衛するプレイヤーを倒して行く。

 

「『ライトニングランス』!」

 

 ハルバードから青白いエネルギー波を放ち、防衛していたプレイヤー全員を倒したクレセントは地面に降り立った。

 

「あれが第三階層の高難易度ダンジョンを単独でクリアした実力か……」

 

「流石はミィ様が直々にスカウトしたプレイヤーだ」

 

 彼女は第一回イベントではリアルの都合で参加できなくて無名の状態が続きフリーでいた。しかし、第三階層のダンジョンをクリアしたタイミングでミィにスカウトされて炎帝の国に所属し今では炎帝の国の幹部として皆から慕われている。

 

「オーブの回収が終わったから次に行くよ」

 

「分かりました!」

 

「了解です!」

 

 クレセントがオーブを回収して次の場所へ行こうと言うと炎帝の国のメンバーは反発することなく従ってその場を後にした。




オリキャラが複数登場したのでそのうち詳細を書こうかな

ムサシ丸のテイムモンスターは

  • メカっぽいオルトロス
  • 悪魔チックなTレックス
  • 空飛ぶ鯨
  • その他
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