とりあえず格闘家で戦いたいと思います。   作:アズライルン

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超久しぶりの投稿


第三十八話

 中規模ギルドからオーブを奪ったムサシ丸とアジタートはそれを皮切りに次々のギルドを襲い、奪っていく。ある程度時間が経つとメイプル達防衛組に合流しようと戻ろうとしたら楓の木の拠点から出てくる他のギルドプレイヤーを発見した。

 

「俺らのギルドを襲った悪いプレイヤー……」

 

「だ~れだ?」

 

 この瞬間、楓の木のオーブを狙いに来たプレイヤーは顔を青ざめた。イズが延々と鉄球を作り、それを投げるSTR極振りマイユイによってやられて不利と見て逃げ出したのだが、運悪くムサシ丸とアジタートに鉢合わせしてしまった。そのギルドメンバーは無表情で指の関節を鳴らすムサシ丸と邪悪な獰猛な笑みを浮かべるアジタートによって全滅した。

 

「さっき他のギルドのプレイヤーが出て来たのを見えたのだが大丈夫だったか?」

 

 急いで中へ入ると無傷のメイプル達の姿があった。

 

「メイプルさんが守ってくれたから…」

 

「私達は大丈夫です」

 

「二人共物凄く頑張ってくれたよ。イズさんがたくさん作ってくれた鉄球を物凄い勢いで投げて倒していたよ」

 

「それは杞憂だったみたい」

 

 VITに極振りしているメイプルは兎も角、他のメンバーはやられやすいので心配だったがマイとユイの『投擲』を覚えていたおかげで1デスすることなく難を逃れたのだ。

 

「寧ろ、僕はムサシ丸とアジタートと鉢合わせした事に同情するよ」

 

 何せ、メイプルとマイとユイと言う異常枠から逃げる事が出来たと思ったらムサシ丸とアジタートと言う三人とは別ベクトルの異常枠と居合わせてしまったのだから流石のカナデもその不運に同情した。

 そうしていると他のギルドを攻撃にしに行っていたクロムとカスミが戻ってきた。どうやらサリーは奪ったオーブをカスミに任せて偵察に行っている。

 

「小規模ギルドはさっきのムサシ丸くんとアジタートのおかげでメンバー全員が1デスしているから私達への攻撃を控えるかもしれないわね」

 

「それならある程度の余裕は出来るな」

 

「しかし、あれだな。ムサシ丸と遠距離が得意なプレイヤーを組ませたら大抵の相手なら容易く倒せそうだな」

 

 カスミが奪ってきたオーブの数を見てムサシ丸なら遠距離が主体のプレイヤーと組ませれば大抵の敵は相手になら倒せるのではないかと話した。実際にアイテム集めの時にムサシ丸は首を横に振る。

 

「どうですかね?少なくとも一人だけ苦手と言えるプレイヤーがいますよ」

 

「そうなのか?それは一体誰だ?」

 

「炎帝の国の『トラッパー』マルクス。このイベントでは正直彼と会いたくないです」

 

「意外だな。弓使いみたいな遠距離物理攻撃が苦手だと思っていた」

 

 カスミはアジタートのような弓使いがムサシ丸の苦手な相手だと常々思っていたからマルクスの名が挙がった事に驚いた。

 

「遠距離でも相手を視認出来てさえいれば搦手の対処と同じ要領で出来る。爺ちゃん曰く『搦手を使う奴は目の奥が濁ったり呼吸が早くなったりと細部にその兆しが見える』。だけど、それは仕掛けて来た奴を目視できる状態でなきゃ意味がない」

 

「確かに私の場合、音でも拾えるけどその場にいないんじゃ無理だね」

 

 ムサシ丸の会話にアジタートは便乗する。彼女の場合、自身の体質によって音で搦手や奇襲を察知して動けるがいない相手には意味がない。

 

「となると炎帝の国は侵攻されるルートのあちこちに罠を仕掛けていると思って行動しておいた良いかもな」

 

「そうなりますね」

 

 ムサシ丸は圧倒的な視野の広さと格闘経験による先読みで、アジタートも自身の共感覚で不意打ちや奇襲に対応できるがそもそもその場にいない相手では何の意味をなさないのだ。

 

「(ムサシ丸君にもアジタートにも意外な弱点があるのね…後、やっぱり従姉弟関係なのか弱点も同じなのかしら?)」

 

 イズは意外過ぎる二人の弱点を聞いて目を丸くする。どこか似ている二人だが弱点まで似ているとは思ってもみなかった。

 そう思っていたら楓の木の本拠地に十名以上のプレイヤーが押し寄せて来た。

 

「大所帯だな」

 

「数的に結託した小規模ギルドか中規模ギルドだな」

 

「メイプル、いつものお願い」

 

「任せて!『身捧ぐ慈愛』!」

 

 カナデの指示に従って身捧ぐ慈愛を発動させたメイプル。それによって魔法陣内にいるマイとユイ、イズ、カナデはちょっとやそっとの攻撃ではビクともしない防御力を得た。それを知らない魔法使いはファイヤーボールでマイとユイに攻撃する。

 

「『マジックリフレクター』」

 

 マイとユイの間にムサシ丸がマジックリフレクターを発動させた。本来ならば、魔法を蹴り飛ばすのだがそうするとムサシ丸だとバレてしまうため終盤までなるべく蹴らないようにサリーに言われて壁を張るような動作で発動させた。

 放った魔法が返って来た事を見て敵の後衛は避けるために一時的に列を乱した。

 

「てめぇはこれでも喰らっていろ」

 

 マジックリフレクターによって返ってくる自身の魔法に気を取られている瞬間、ムサシ丸は敵陣の背後に回り、弓使いのプレイヤーの一人を持ち上げる。流れるようにその勢いのまま自分の肩の上に仰向けの状態に乗せて顎と腿を掴み、自分の首を支点にして弓使いのプレイヤーの背中を弓なりに反らせた。

 

「ギャァァァァァァァァァ!?」

 

「(あ、アルゼンチン・バックブリーカー!?)」

 

「(こんな場所でプロレス技かよ!?)」

 

 まさかのプロレス技にクロムとカスミは目を丸くした。これがマイユイのSTR極振りなら一瞬の痛みで済んだのだが極振りしていないムサシ丸がやると痛みが続くのだ。アルゼンチン・バックブリーカーを喰らった弓使いは痛みに悶絶しながら背骨を折られて光の粒子となった。

 

「『色付与(カラー・エンチャント)(グリーン)』、『色付与(カラー・エンチャント)(ブルー)』、『属性付与(ソウル・エンチャント)幻想(ルナ)』」

 

 ムサシ丸の行動に面食らった敵にアジタートはアルカンシェルを構えて前衛に矢を射る。放たれた矢は緑、青、黄色のオーラを纏い、分裂しては不規則な軌道を描きながら眉間や首に当たり、二人のプレイヤーは光の粒子となった。

 

「おっ、ラッキー」

 

 どうやらパッシブスキルの『弱点撃ち(ウィーク・ショット)』の5%の即死効果を得られた事にアジタートは喜色の声を上げた。片手剣使いは先にアジタートを処分しないと拙いと判断して超加速でアジタートに迫ったがそれが仇となった。

 

「下ががら空きじゃぁ!」

 

 その訳はアジタートが片手剣使いの攻撃を避けると同時に股間を蹴り上げたからだ。

 

「(うわぁ……本当に蹴りやがったよ)」

 

 男性プレイヤーの悶絶する叫び声を聞いたクロムはイベント中との事で内心合掌した。

 モンスター、プレイヤー問わず、人の形をしているなら隙とあらば問答無用で急所に蹴りを叩き込むアジタートが相手だと必然的にそうなってしまうと思っていたからだ。内股になっている片手剣使いはアジタートの踵落としで倒された。

 

「今更思ったのだがアジタートの蹴りの鋭さは凄まじいな」

 

「蹴り技に関しては俺より分がありますからね」

 

 弓使いや魔法使いは特性上距離を詰められると弱いのでそれを補うために近接用のスキルを取得するのが常だが、アジタートの場合は元々プレイヤースキルの高さ故か他のプレイヤーが取得している近接用のスキルを持っていないのだ。

 そんなアジタートに目が行き過ぎると近接戦闘が得意なムサシ丸とカスミ、クロム、更にはメイプルに守られた状態で鉄球を投げまくるマイとユイの標的になる。そんな猛攻に陣形を整えながら戦える筈もなく削られていき、最終的には全滅した。

 

「これで最後か」

 

「そのようだな。これで少しは楽になると良いのだがな」

 

 敵が全滅した頃にはサリーが戻ってきた。ムサシ丸がサリーに今起きた事を話すとカナデ同じリアクションを取っていた。

 そして指定された時間となると集められたオーブは元のギルドに戻った。

 

「これでポイントは追加されたから出だしは順調って所か」

 

「しかし、私達が10位以内に入賞するためには厳しいな。我々は現在17位で小規模ギルドでは良い方だが小規模ギルドの潰れる速度を鑑みれば楽観視は出来ないな」

 

 楓の木の目標である上位入賞を果たすには集められるオーブの数と言う大きな問題が残っていた。

 

「よし、休憩終わり。私はまた外に出るね」

 

「(これは相当気負っているわね……)何か必要であれば言ってね」

 

「うん、その時になったら頼むから」

 

 サリーとアジタートの会話だが、アジタートはその内心を見透かしていた。サリーが掲げる目標に難しいと判断して無茶をしようとしている事に。

 

「それじゃぁ行って来る」

 

「気を付けろよ」

 

 全員にそう言ってサリーは本拠地を出て行った。

 

「小規模ギルドが残っているうちにオーブを奪えるだけ奪おうと言う考えなんだろうが……大丈夫かな…」

 

「サリーの事だから他にも考えがあるのだろうが不安だな」

 

 心配しているクロムにカスミもサリーの行動には危機感を抱いていたようで彼同様に不安であった。

 

「私も行きますか。夜間なら私の体質がかなり優位に働くからね」

 

「護衛はいるか?」

 

「いや、いらない。護衛がいない方が都合がいい」

 

 アジタートもそう言って楓の木の本拠地を出て行った。

 

「今思ったがアジタートって攻撃に出ても防衛に出ても強いよな」

 

「アジタート姉さんがいる状態で敵意を向けたら速攻で潜伏場所を即座に発見して攻撃して来ますからね」

 

 共感覚による索敵と言う他にないプレイヤースキルを持っているアジタートは今回のようなイベントのような形式だと敵に取っては厄介なプレイヤーだ。何せ、どんなに隠密系のスキルを積もうと奇襲しようとした瞬間にはアジタートの体質で位置を把握されるのだ。

 

「僕も行って来るよ。拠点にいるだけじゃ勿体ないし」

 

「なら、俺は拠点の周囲の視てくる。夜襲するギルドがいない訳じゃないしな。中はメイプルとマイとユイに任せておけば何とかなるだろう」

 

「俺もムサシ丸と一緒に行こう。(タンク)役はいた方が良いだろう」

 

「私も同行しよう」

 

「なら、私も三人に付いて行くわ」

 

 カナデが出ると言うとムサシ丸が楓の木の本拠地の周辺の偵察に行くと言い出したため、クロムにカスミ、イズが名乗りを上げた。

 彼自身もサリーの行動が何時もの彼女と違う事に気付き、その手助けになればと行動に移そうと思った。カナデの言動とそしてサリーの行動、そして彼女と会話した後のアジタートの様子に対して違和感を感じたムサシ丸はこれから起こるかもしれない最悪(・・)の未来を予見して行動した。

 

 

 

 

 その頃、サリーは小規模ギルドを中心にオーブを奪い続けている。

 

「(予想していた以上に小規模ギルドが潰れるペースが早い。これ以上は流石に看過できない)」

 

 ゲーマーとしての経験から楓の木が置かれている状況は最悪ではないが、良い物ではない。だからこそ、サリーは多少の無理をしてでもオーブを奪い取る事を選んだ。

 

「(一個でも多く他のギルドからオーブを奪わないと…それに次のプランのためにも)」

 

 そんな考えの元で我武者羅に小中ギルドから奪っていく。あれからどのくらい時間が経ったのか一日目の夜が明けようとしている。

 

「はぁ…はぁ……これなら次のプランに移れ……そう…かな」

 

 荒い息を上げながら確保しているオーブの数を見てサリーは少し安堵の表情を浮かべる。これだけの数のオーブを持ち帰ればある程度の余裕は出来るだろう。今は拠点に戻ろうと立ち上がったサリーだが、大勢の視線を感じた。

 付けられていると思って慌てて短剣を構えて岩陰から覗くと青と銀を基調としたプレイヤーの集団と見知った装備のプレイヤー。

 

「フレデリカ…」

 

「やっほ~サリーちゃん」

 

 その場にいたのは集う聖剣のフレデリカとその仲間のプレイヤー。自分が暴れている際に気付かれないように尾行していたようだ。

 今のコンディションでは一デスは免れない。だからと言ってそう易々と黙ってやられるつもりはサリーにはない。そう思って前に出ようとした瞬間だった。

 

「『色付与(カラー・エンチャント)(レッド)』、『色付与(カラー・エンチャント)(オレンジ)』、色付与(カラー・エンチャント)(ブルー)』、『属性付与(エレメント・エンチャント)(ヒート)』」

 

 赤と橙と青の色が混じった矢がサリーを避けるように拡散して集う聖剣のプレイヤーに襲い掛かって来た。その威力たるやフレデリカの周囲にいた複数のプレイヤーのHPを0にした。

 

「な、何!?」

 

 いきなりの攻撃にフレデリカは困惑している中、サリーだけはこの攻撃を知っている。

 

「私自身のSTRを上昇させる赤と武器のSTRを上昇させる(ヒート)を使うともはや砲弾クラスの一撃が出せるのは分かっていたけど、青と橙を足すと洒落にならない威力が矢が拡散して出るか。けど、反動が大きすぎるからこれはおいそれとは使えないね」

 

 そう言って現れたのはアルカンシェルを構えたアジタート。

 

「あ、アジタート……」

 

「やっぱりサリーちゃんの後を追っておいて正解だったか」

 

ムサシ丸のテイムモンスターは

  • メカっぽいオルトロス
  • 悪魔チックなTレックス
  • 空飛ぶ鯨
  • その他
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