とりあえず格闘家で戦いたいと思います。 作:アズライルン
狼をベースにゴリラ、チーター、鮫、隼、サソリ等の蟲や動物の一部を生やした
「(ストレートやラリアット、噛みつきの攻撃は強化され、新たに突進とボディプレスが追加された)」
突進を避けてから半分以下になったHPをポーションで回復する。隼の翼や雀蜂の翅でAGIが強化されたとはいえ、長年培ってきた技術で回避できる。
「(厄介なのが遠距離攻撃の追加か。虎の口から炎、北極熊の口からは冷凍ガス、狼の頭部からは雷を帯びた針を吐き、そして伸びたサソリの尻尾に刺突か。あれは毒攻撃だから要注意。尻尾攻撃以外にもブレスも状態異常がありそうだから注意しないといかんな…)」
今までVRMMOをしてこなかったため遠距離攻撃の回避に力を注いでいる。完璧に回避できない攻撃も出てきてHPが削られていく。
ムサシ丸も防御に徹するだけでなく暴獣の猛攻の合間から攻撃して暴獣のHPを削る。
「(HPを多めに設定しておいて良かった。後、異常耐性も)」
ソロでプレイする前提で最初からHPを高めに設定し、『異常耐性:中』を取得していたため何とか暴獣の猛攻を捌くことができた。相手のHPを残り数mmにまで追い込んだ。すると、暴獣は前から炎・氷・雷を帯びた針が室内全体を埋め尽くす勢いで攻撃してきた。
防ぎきれない。そう悟ったムサシ丸はとある行動に賭け、実行に移した。その後にブレス攻撃が襲い掛かった。普通のプレイヤーならこの攻撃で死んでいただろう。
だがしかし―――――
「アッブねぇな!」
ムサシ丸は天井スレスレまで跳び、岩が突き出ている部分を掴んでブレスの範囲から逃れていた。
何故生き残れたのか?そう思う人はいるだろう。ムサシ丸は跳躍と言うスキルを持っていないし仮に持っていたとしても天井スレスレまで跳ぶことはできない。
しかし、現に彼は回避することができたのか?
それにはある理由があった。
「(一か八かで
ムサシ丸は高いSTRにものを言わせた蹴りを地面に浴びせ、その反動を利用して跳んだのだ。
もちろん、それが成功する保証がないのはムサシ丸もそのことは理解している。しかし、自分の直感はそれが正しいと教えてくれた。
「(此処で倒す!)」
回避の時と同じように天井を蹴り、その勢いを利用して暴獣の頭部に迫り、空中で回転して威力を上げたかかと落としを叩き込んだ。
それが決定打となって暴獣は光の粒子となって消えた。
「ギリギリ勝てた……」
補充していた回復系アイテムはなくなり、ボロボロになったアイアンナックルを見て本当に辛勝だったと実感する。
「後でイズさんに一日でダメにしちゃった事を謝らないと…」
折角作って貰ったのにボロボロにしてしまっては彼女に対して申し訳ない思いで胸がいっぱいになる。
『レベルが26に上がりました』
『スキル「
『スキル「体術Ⅳ」が「体術Ⅴ」に進化しました』
『スキル「キッカー」を取得しました』
『スキル「
俺の気持ちを無視するかのようにアナウンスが流れた。ムサシ丸は獲得したスキルを確認する。
暴獣拳以外のスキルはステータスを上げるスキルで特に『キッカー』は蹴りスキルの威力を二倍にするスキルだ。
そして暴獣拳と言うスキルはあまりにも強力すぎる。STRを倍にしてダメージを与える剛の型、使用中STRが三割減る代わりに連続攻撃ができる迅の型、MPを大量に消費して打撃と共に毒、炎上、凍結と言った状態異常を敵に与える魔の型の三つが使用できる。これだけ聞けばかなりの強力スキルだが欠点として一つの型を使うと武器の耐久値が大幅に減少してしまい、耐久値の低い武具では使った瞬間に壊れるのだ。
使いどころを考えないといけないスキルだ。
「
ドキドキしながら宝箱を開けると出てきたのは紺碧と黒をベースに左肩に狼の頭部を模した装飾のついた道着に北極熊、虎、蠍、ゴリラ、雀蜂のレリーフが施されたライトブルーの金属製の手甲と鮫、隼、マンモス、チーターのレリーフが施された手甲と同じ色の金属と革でできたブーツに似た履物。そして爪のようなレリーフの首飾り。
・ユニークシリーズ
単独でかつボスを初回戦闘で撃破しダンジョンを攻略した者に贈られる攻略者だけの為の唯一無二の装備。
『暴獣の道着』
VIT+25
【破壊不能】
・スキルボックス
空欄
『暴獣の具足』
VIT+15
STR+30
【破壊不能】
・スキルボックス
空欄
『暴獣の首飾り』
DEX+10
【破壊不能】
・スキルボックス
空欄
「えぇー」
余りにも破格な装備に思わず声が出てしまった。破壊不可と言う事は暴獣拳のリスクがなくなるのだ。
しかし、ダンジョンの難しさを考えるとそれだけの報酬を貰っても良いと納得している自分もいる。
試しに装備してみるとかなりしっくりくる。
「手甲とブーツはセットなのか……なら、スキルの暴獣拳を付与するか」
手に入れたスキルを付与したムサシ丸は魔法陣に乗って暴獣の住処を後にした。彼にとって、スキルを試すよりも重要な要件を果たすために。
運営では――――――
『暴獣がやられた!?』
『マジか……どこのパーティーだ?』
『パーティーじゃなくてソロでムサシ丸って言うプレイヤーにやられた!!?』
『はぁっ!?あのダンジョンは格闘家がいないと入れない仕組みになっていて、格闘家は
『そのムサシ丸自身が格闘家でPSがあまりにも高すぎるんだよ!?』
映し出された映像には暴獣と戦っているムサシ丸の姿があった。
『マジか……』
『とりあえず、ムサシ丸の動向を監視しよう。見るとあいつはステータスやスキルで戦うより持ち前の技術で戦っている感じだ。現にブレス攻撃の反応が遅れている』
『しゅ、主任!毒竜がメイプルに倒されました!!』
『な、なんだってーーーー!!?』
運営が悲痛な叫び声を上げている最中、ムサシ丸は必死にイズに土下座をしていた。