バッドエンドではないですが、閲覧注意です。
グッと拳を握りしめる。
こんなことがあっていいの?
いや、ゼッタイ嫌だ。
こればっかりはPが何と言おうとゼッタイ嫌だ。
「初披露は延期しよ?」
「別に今度のライブで歌わないといけないってことはないじゃん!ちゃんと全員揃ってからにしよ!ね?」
必死に説得を試みる。
でも、その想いは届くことなく、
「ううん、次のステージでやって」
と断られてしまう。
さっきから押し問答の繰り返し。
限界に来ていた恵美は遂に耐え切れず大粒の涙を浮かべ始め、
「だって5人で
目を逸らすかのように俯いてしまう。
『どうして出られないの?!』
『なんで一緒に歌ってくれないの?!』
その台詞が言えない。
何故ならこの感情の向く相手の顔を見ていられなかったから。
そして。
「そう、私たちは5人で一つ。私の心は皆と一緒にステージに立っているから歌ってほしいの」
「あれだけ皆で練習したんだもの。その努力をふいにしちゃダメでしょ?」
「ファンの皆はどうするの?私たちはアイドルなんだからちゃんとしなくちゃ」
こんなことを言ってくるから。
私の分まで歌って。
一番辛いはずの彼女がこう思っている。言葉は叱咤激励だけど、泣いている。
ライバルであると同時に仲間、友達であるが故に、心の悲痛な叫びも一緒に伝わってくる。
仲間想いな恵美にとって、これ以上彼女の想いを受け入れないことは耐えられないものだった。
「うん…。分かった。アタシたち、歌ってくるよ!」
涙を溜めながら笑顔を浮かべ、彼女に向かってそう宣言するのが精いっぱいだった。
~~~~~~
Prrrrrr……
携帯が鳴る。
歩みを止めないままポケットから携帯を取り出し、電話先も見ずに通話ボタンを押す。
誰からかかってきたか見なくても分かる。
「もしもし、俺だ」
「P。アタシだけど、やっぱり歌わせて」
「…分かった。準備、進めるぞ」
「うん」
ただそれだけの通話で話は終わる。
だが、Pには今の声で何があったのか何となく想像がついた。
少し鼻声気味だが断固とした決意のこもった声。
…あの恵美の事だ。
間違いなく彼女の許へ行って会話したのだろう。
「これは急いで行かないとな…」
そう独り言を呟き、最寄り駅に向かう歩みを速めた。
折あしく、にわか雨が降りだしていた。
~~~~~~
駅から雨に降られつつも目的の建物に入る。すぐ目当ての子は見つかった。
「お疲れ様です、P」
「ああ、お疲れさま」
「服がびしょ濡れじゃないですか。すぐタオル持ってきますね」
向かい合って挨拶をしたと思ったら気を利かせようとしたので慌てて止める。
「すぐまた用事で出かけるから大丈夫。それより恵m」
「『恵美が泣いてたけど何か知らないか?』ですよね?まったくもう、恵美ったらPにご迷惑を…」
食い気味に来た訳を推理するも外れていた。
というか、勘だがワザと外した気がする。表情も違うな、と何となく思う。
「いや?恵美は何も言ってなかったし、俺が聞きたかったのは『恵美と会わなかったか?』ってことだったんだけど…」
「あ、すみません。お見通しかぁ…」
「お互いにな」
おくびにも出さず軽いやりとりを少し。
確信した。やや寂しげな感じがする。
「なぁ、誰にも言わないから本音を教えてもらってもいいか?」
いきなり本題に入る。
すると、図星だったのか、彼女の纏っていた空気が変わる。
「…本音、ですか?どうして」
「どうしてかって?それはアイドルのやりたいことをなるべく叶えるのが俺の役目だからな。それに…」
声が今までと全く違う硬質なものに変化してしまった。まるで話したくない、とでも言うかのようだ。
だが空気が読めないバカP(ジュリア談)らしく、あえて無視して続ける。
ただ、恥ずかしいから言いたいことは最小限に。でも真っ直ぐ目を見て、
「誰だって泣き顔より笑い顔を見たいだろ?」
全てお見通しと言わんばかりに肝心なところを全て端折って、言いたいことだけを彼女、田中琴葉に言い切った。
驚きからだろうか。目を見開いた後俯く琴葉。
幾ばくかの静寂。
流石に恥ずかしさの限界で咳払いでもしようかと思った矢先、肩が細かく震えだす。
その震えは段々と大きくなり…。
決壊。
「私も…、私も!本当は出たいです!!」
「楽しさも悔しさも共にした
「最高のステージを作り上げたかった…」
涙をぽろぽろ零しながら悔しそうに心情を吐露する。
そして、キッとこちらに睨むような視線を向け、
「ステージに立ちたかったです!!」
そう、断言した。
『ああ、やっぱり思った通りじゃないか。
彼女がそう簡単に諦めるわけがない。
諦めが悪くて、不器用で、不安を胸の内に隠してしまう。
でも、そんな彼女だからこそ、プロデュースしたくなる。支えたくなる』
自分も大概だなと苦笑しつつ俺は歩き出す。
そして、琴葉の横を通りながら、肩をポンと叩き、叱るような厳しい声で
「『次の』ステージは必ず用意する。必ずだ」
とだけ告げる。
恐らくそれで察したのだろう。息を呑む音が聞こえた。何か言いたそうなのも分かる。
けれど、立ち止まらないし振返りもしない。
いつかきっと琴葉なら後ろから追いかけて、追いついて、追いこして笑いかけてくれると信じているから。
身勝手かもしれないが、そう思いつつ建物の外に出た。
先ほどまでの雨が止み、雲の切れ間からは青空が覗いていた。
何かが吹っ切れた今の自分の心情を表しているようだった。
ええ、4thジレハで悩んだゆきよ様に着想を得たお話です。
恵美なら絶対琴葉のところへ行くだろうなぁ~。
でも押し切られるんだろうなぁ~。
あたりから膨らませてみましたw
琴葉の所へPがアフターフォローというか足を運んだのは、「次(リアルでいうところのミリオン5th)」にジレハをする覚悟(というか、ジレハやりたいかという思い)があるかの確認をしたかっただけ(建前)←
本当は琴葉の話聞いたりの展開でもよかった(本音)んですけど、SSじゃなくなるうえ、話の主旨から外れると思ったのであえて短くしました。
(文章力足りなくて書けなかったとか言えない←)