お待たせしました。 アンケートの結果により、奏世界でのお話です。
長いですが、読んで頂ければ幸いです。
では
ある日、ジオフロント作業区の一角から、4世紀前半のモノと推定される一枚の青銅盤が発見された。
裏面に残された文字から、古墳時代より以前に存在したと言われる、幻のツクヨの兵士の物だと分かった。
ここは奏が生存する並行世界。
根幹世界と呼ばれる響たちが居る世界に怪獣が現れたことによる影響か、並行世界でも怪獣が現れる始めるようになった。
S.O.N.Gをはじめとした各世界の特異災害対策組織は協議末、ノイズ以上の脅威となりえる怪獣対策の際には互いに協力しあうことが締結された。
そしてその一つが、根幹世界からの装者の派遣である。 増援の要請や連絡を密にするため、各世界には可能な限り装者が最低でも2人いることが理想とされた。
現在のところ装者の数が一番多く、またノイズや錬金術師たちとの争いが一番落ち着いている根幹世界からは人材を送り、代わりとして派遣された側の世界は知識面や技術面での協力が約束されている。
今日はローテーションにより雪音クリスが奏の世界の特異災害対策本部に駐留する予定だったが、奏は本日有給休暇を取得するため根幹世界からのもう一人代役を頼み込んでいた。
結果、現在この世界の本部には雪音クリスと立花響が待機していた。
「ツクヨの兵士、敵の兵をことごとく打ち倒して留まるところなし」
「それって滅茶苦茶強かったって意味だよね?」
「なんでそんなに強かったのですか!? 何か秘密があるんですよね!? ねえ了子さん!」
「ええそうよん。 伝説によるとツクヨの兵士にはモズイと呼ばれる守り神が付いていたのよ」
「モズイ?」
「モズイはツクヨの泉と呼ばれる美しい泉の底に住んでいて、兵士たちは皆、戦いに出る前の夜には必ずツクヨの泉に一つずつ石を捨てて行ったそうよ」
「えっ! 石だけ!? モズイって石ひとつだけで兵士たちを守ってくれたんですか? はえ~。 太っ腹な守り神もいるもんですね。・・て、あいたっ!」
「何言っているのだバカッ! 明日は戦いって時だぞ! その石にはきっと兵士たちの、たぶんあれだ! 勝利の願いが込められてたんだ」
そう言って響の頭を小突き、何故か十字を切る動作をするクリス。
「きっとモズイは泉の底で兵士たちの願いを聞き届けてくれたのね」
「そんな守り神が居てくれたら、どれだけ心強いことやら」
「そう思うだろう?」
友里あおいと藤尭朔也が話していると突然風鳴弦十郎が会話に参加し、みんながそちらへと振り向く。
「ところが! ツクヨの兵士はそんなありがたい守り神モズイをどこかの凍った泉に閉じ込めた後、忽然と姿を消してしまったらしい」
「「ええ~っ!」」
「あら、弦十郎くん知ってたの?」
「まあな。 ツクヨの兵士、モズイを凍れる泉に封じ込めた後、何処かへ消え失せりってな」
「な、なんでですか師匠! どうして自分たちの守り神にそんなことをするんですか!?」
「まあ、まあ。 その辺の謎が、今回の見つかった青銅盤から分かるんじゃあないかって期待されているのよん」
「あ、ところで了子。 その青銅盤の研究チーフは、なんでも若い女性だそうだな?」
「あら? それは私がもう若くないと言いたいのかしら?」
「待て待て! そうは言ってないだろう?」
「冗談よ。 アヤノ・トウコ博士、神子の社古代史研究所の職員。 美人で秀才よ! 私たちの協力者で、これまでもたくさんの聖遺物の回収で活躍してきてくれたわ。 ただ残念なことに・・、」
「ざ、残念なことに?」
「後輩に似たのか、それとも奏ちゃんが先輩似たのかしら? 奏ちゃんの小学校時代からの先輩なのよ」
「う~む。 気が強いってことか」
「そういうこと。 で、奏ちゃんのデートのお相手よ。 今日はその先輩と一緒に贅沢にも蟹を食べに行くらしいわ」
「マジすっか! やったー!」
「なんでおまえが喜ぶんだよ?」
「実は! 今日奏さんにお留守番を頼まれたときお土産買ってきてくれるって約束してくれたんだ! お土産なにかな~? やっぱり太巻きかな~? いやいや! 奏さんクラスならきっと蟹のお寿司をきっと! 楽しみだな!」
「・・卑しいやつだな、おまえ」
神子の社古代史研究所。
定時を過ぎ、職員のほとんどが退所した研究所にアヤノ博士はただ一人残り、ツクヨの兵士が残した青銅盤に向かって作業を続けていた。
「やっぱり。 わざと表面を潰してたんだわ」
アヤノ博士は青銅盤が鏡であることを見抜いていたのだ。
彼女はレーザーを使い青銅盤の表面の蓋を削り取っていくと推測通り、埃にまみれ、鈍く反射する鏡面が現れた。
一人作業を続ける博士。 だがその光景を見ていたモノが居た。
外からではなく、鏡の中から・・・何かが外の世界を覗き始めようとしていた・・・。
博士は現れた鏡面を布で拭き取る。
すると顕わになった鏡面には窓から差し込む月の姿が不気味にくっきりと映し出された。
彼女は驚いた。 4世紀前半の遺物から、現在我々が使うガラス鏡レベルの鏡が出てきたのだ。 それだけでも十分世紀の大発見だったであろう。
だが彼女が一番驚いたのはそこではなかった。 彼女の優秀過ぎる頭脳が段階を飛ばし一人真実にたどり着いてしまう・・。
「泉。・・・凍れる泉って、・・まさか!」
何かを確信する博士。
より詳しく調べるべく、青銅盤の淵に文字が刻まれているのを見つけ、古代文字を解読ソフトにかけ、それを読み上げていく・・・。
「これに・・触れるな。 我らここにモズイを・・・封じおくッ!?」
驚愕の事実に驚いている最中、 青銅盤の中に眠っていたナニカが蠢き始める。
「・・・一度モズイを解き放たば・・・ッ!?」
解読ソフトの結果を読み続けるアヤノ博士。
最後に書かれた衝撃的な内容に驚くと同時に突如、持っていた青銅盤から不気味なこの世のモノとは思えない声が漏れだす・・!
驚きの余り手を離し距離を取る博士。
そこへタイミングよく研究所の固定電話が鳴る。
慌てて電話に出る博士。 電話の相手は最近運転免許を取得し、買ったばかりのはずなのに既にあちこち凹みの跡が目立つ若葉マーク付きの車の側に立ち、予約した蟹専門店の前に駐車し待っていた奏からだった。
「あーっ! もうやっぱりまだそこに居た! アヤノ先輩! 早く来ないと蟹が逃げちゃいますよ~?」
久々の先輩との食事、それも蟹であることを楽しみにしていた彼女は遅刻魔に対して文句を言う。
だが、アヤノ博士はそれどころではないと、重要な用件だけ伝え始める。
「奏ッ! 凍れる泉ていうのは青銅盤の事だったのよッ! モズイは実在するッ!!」
「え? なに? 何のことですか先輩ッ!?」
「モズイは、今も生きているのよ! あいつは、あいつは守り神なんかじゃあない!」
ただ事ではないことを察した奏は車に乗り込み、電話をスピーカーモードに切り替えて研究所へと走らせる。
「落ち着いて先輩! 直ぐそっちに行きますから!」
「来てはダメ!」
「えっ!?」
「よく聞いて。 モズイは石を欲しがっている。 私より、あなたの方が危険なのよ!」
「どうしてあたしが?」
「あなたがシンフォギア装者だからよ! 装者は現代の・・ ッ!?」
研究所の明かりが落ちる。
と同時にひとりでにカタカタと揺れていた青銅盤がテーブルから落ち、割れる。
すると割れた青銅盤から黒いモヤが溢れ出してくる。モヤはどんどん増えて行き、ゆっくりと人ではない、微かに不気味な2つの目と大きな口をもつバケモノへと形作っていく・・。
アヤノ博士は震える足を何とか動かし、緊急警報のスイッチを押し、部屋の奥へと退避する。
「アヤノ先輩?」
通話が切れたことに嫌な予感を感じた奏はアクセルを踏み込み車を加速させる。
同時に、アヤノ博士が押した警報は特異災害対策本部にもすぐさま伝わった。
「エマージェンシーを受信! 神子の社古代史研究所からです!」
「よし! すぐさま1課を送れ! 立花君! 雪音君! すまないが君たちも急行してくれ!」
「「了解ですッ!」」
ドアが乱暴に叩かれる! 人間の力ではありえないほどの破壊音をたてながら!
それに合わせて机や棚、その場にある物で作られた即席のバリゲートがゆっくりと崩壊していく。
博士は時折破壊されていくバリゲートを見ながら一心不乱にパソコンを操作し、青銅盤に書かれていた文字の解読を完成させ、持ち運び用のメモリーディスクに保存する作業をしていた。
全ては可愛い後輩のために!
そうしている間に突き破られ、モズイの人ならざる手によってゆっくりとドアをこじ開けられ、バリゲートが破られそうになる!
まだか! まだ保存が終わらないのかと焦る博士ッ! 願いが通じたのかディスクへの保存が完了し、博士はそれを大事そうに持って更に研究所の中へと逃げるのであった!
アヤノ博士が奮闘しているそこへ、奏が運転する車が研究所に到着する。
「・・・ツッ!」
入り口に近づくとこの世のモノとは思えない声が彼女の耳に入る。
百戦錬磨の彼女ですらも、未だかつて経験したことのないその不気味さに一瞬怯む。 が、首に掛けたギアペンダントの存在を確かめるように握りしめると勇気を振り絞り、先輩を助けるために暗い研究所内に突入する。
微かに聞こえるアヤノ博士の物と思われるヒールの音を頼りに研究所内を突き進む奏。
角を曲がり、突き当りの丁字路の方へと向かおうとすると、そこをナニカが高速で通り過ぎていく。
人ではない、おぞましい ナニカを・・・!
一瞬とは言え、ナニカを見た奏の体は強張る・・・。
「ハァ・・・! ハァ・・・! ハァ・・・!」
呼吸が乱れる。
ただの一瞬、ほんの僅かに姿を見ただけで振り絞った勇気が枯渇し、動けなくなってしまう・・・。
「キャーー!!!」
「ッ! アヤノ先輩!」
博士の悲鳴が廊下に木霊する。
勇気とか恐れとか関係なく・・ 反射的に走り出す。
先ほどナニカが走った方向へと進み、暗い廊下を抜けた先にはナニカと廊下に倒れていたアヤノ博士が居た。
最後まで抵抗を続けたからか・・ 窓は割れ、観葉植物が植えられていた鉢は投げ倒され中に入っていた土が散乱していた。
戦士としての経験から、すぐさまギアを纏おうとする奏。
しかしそれよりも早く、ナニカは突如苦しそうな声をあげると体を黒いモヤに変化させ奏の方向へと向かってきたのだ!
身構える奏。
しかしモヤは彼女を通り過ぎ、どこかへと消えて行った。
あまりの恐怖体験に奏の手は震え、体は震え、声も震えあがっていた。
美しくセットされた髪も乱れ、一部白くなり始めている房もあった。
「・・センパイ? アヤノ先輩!! 先輩? しっかりしてください! アヤノ先輩!」
しばらく茫然自失していた奏だったが、泳いでいた目にアヤノ博士が入ってきたことにより気を取り戻し、彼女を介抱し始める。
見たところアヤノ博士は意識を失い、ひどいケガを負い、口から血が溢れ続けるという酷い状態だった。
すぐさま応援を呼ぼうとする奏は突如視線を感じて固まってしまう。
恐る恐る、視線を感じた方へと顔を向けるとそこには自分が居た。
壁に一面に張られた大きな鏡に映る、恐怖で顔を青くする弱い自分が居た。
そんな彼女の心を反映するかのように、先ほどまで晴れていた筈の空から雷鳴が轟き、雨が降りだした。
しばらくすると、特異災害対策本部の1課と装者である響、クリスの両名が研究所に到着。
実況見分が開始されていた。
アヤノ博士はすぐさま病院に搬送され、今日明日が峠だと診断された。
「はい! 奏さん! あったかいものをどうぞ!」
響は買ってきた缶コーヒーを奏に差し出す。 だが奏はそれを受け取らず、普段の彼女からは考えられない弱音を後輩の前で漏らし始める。
「・・・モズイを見たとき、あたし立ち止まっちまったんだ」
「奏さん・・」
「怖かった。 怖くて動けなかったんだ。 そのせいで・・・アヤノ先輩ッ! ・・・グス」
恐怖と悔しさのあまり、声を殺して小さく泣き出す奏に、響は声をかけることが出来なかった。
翌日、 特異災害対策本部ではモズイ対策会議が開かれていた。
クリスは報告と協力を要請するために根幹世界へと戻り、響も同行する予定だったがあの状態の奏を一人にするわけにはいかないとこの世界に残ることを希望し、この会議に参加することを許可された。
「今俺たちに判っていることは一つ! 凍れる泉というのは青銅盤の鏡だったこと。 二つ! そこから蘇ったモズイは、どうやら守り神なんて結構な代物で無かったこと。 それだけだ! モズイが次に、いつどこで現れるのか全く分からん。 皆の意見を聞きたい」
弦十郎からの発言を皮切りに、皆がの意見を述べ始める。
「あたしはまず、あの青銅盤が発掘されたジオフロント付近の地下水脈を調査して、ツクヨの泉を見つけるわ。 響ちゃんも手伝ってくれないかしら?」
「はいっ! もちろんです了子さん!」
「わたしと藤尭君は昨夜の現状をシミュレートしてモズイが消えた原因を突き止めます」
「監視カメラで見たところ、モズイの奴は消える直前に悲鳴を上げています。 何かあったはずです。 消えた理由がきっと」
「うむ。 ・・・奏、お前はどうする?」
「っ!・・・あ、あたしは・・・」
「・・・弦十郎くん。 奏ちゃんは今日一日休ませた方が・・」
「それは奏が決めることだ。 奏、どうする?」
「・・・・あたしは、あたしはもう一度古代史研究所へ行ってくる。 アヤノ先輩は兵士たちが捨てて行った石の事であたしに何かを伝えたがってた。 先輩がなにか残してくれているかもしれねぇ」
「・・分かった。 諸君! どんな細かいことも見逃すな! モズイは必ず俺たちが叩く! 作業を始めてくれ!」
「「「「「了解ッ!」」」」」
(よく聞いて。 モズイは石を欲しがっている。 私より、あなたの方が危険なのよ!)
奏は一人、古代史研究所に来ていた。 昨夜の騒動のため、研究所は一時封鎖され、昨日と変わらぬ状態で封鎖されていた。
「先輩のPCは電源が入ったまま? あんなに怖い目にあいながら作業してたのならきっと意味があるはずだ! てことはきっとメモリーディスクがどこかに・・・っ!」
背後から視線が刺さる。 振り向くが何もいない。 あるの鏡だけだったが奏は確かに感じていた。 奴の視線を! 奴がまだここにいることを!
「・・ふぅ。 恐れを捨てて!」
目を瞑り、深呼吸する。 心身をなんとか落ち着かせ、ディスクを探しに部屋を出た。
「司令! 了子さんと響ちゃんから連絡です! ツクヨの泉の場所が判明しました!」
「よし! 直ぐ捜索班を潜水装備と共に向かわせろ! 泉に潜って調査開始だ!」
「それがダメです! ツクヨの泉は・・・!」
『ツクヨの泉は・・埋め立てられてしまったみたいなんですよ師匠ッ!』
「響君? 了子、説明を頼む」
『・・泉があったところには今は高層ビルが建っているわ。 登記簿も一応確認してみたけれど、一番古いものでもその頃には既に埋め立てられているわ。 残念だけどモズイの手掛かりは・・もう無いわ』
折角の重要な手掛かりになると思われた泉の現状に、指令室は鎮痛な雰囲気に呑まれる。
「この建物のどこかに、必ずディスクがあるはず!・・・ヒィっ!」
暗い廊下をモズイの不気味な声が木霊する。
思わず声が漏れ、視界がゆがむ。 心臓が鷲掴みされた感覚に陥り、一時呼吸を忘れそうになる。
奏は恐怖のあまり、その場から逃げ出すことを優先し、ディスク探しを忘れ早足で駆け出してしまう。
気づくと昨晩モズイが消え、アヤノ博士が倒れていた場所に着いてしまう。
昨日の事が蘇る。 モズイの光る眼が、モヤとなって自分お通り過ぎて行った冷たい感触がフラッシュバックを起こす。
「先輩っ! あたし、どうしたらいいの?!」
膝をつき、肩を抱いてその場に蹲ってしまう。
普段の彼女からは想像できないほど心身とも弱々しくなってしまった一人の少女が其処に居た。
少女は縋る。 なんでも良いから縋れる物、一時的にでもこの恐怖から解放されるものを無意識に探し始める。
ふと目をやると、倒れた観葉植物の土の中に光る物を発見。 奏はそれが気になり、土を掃うとアヤノ博士が残したメモリーディスクが姿を現した。
「有った・・・。 ありがとうございます。 先輩ッ!」
奏は運転してきた車に乗り込み、急いで本部へと戻る。
すでに陽が沈み始めていた。
「だめだ。こっちのシミュレートじゃあなんでモズイが消えたのか分からない。 友里さんの方は何か解った?」
「もうすぐよ。 監視カメラからの画像処理が終わるわ」
「3次元解析か」
「でもダメね。これ以上多くはサーチできないわ」
「とりあえず時間を進めてみよう。 なにか分かるかもしれない」
「分かったわ。 ・・あ! 暗くなった!」
「確かこの時間の気象データによると・・、晴れから曇りになったはず。 となると光源は月か?」
「月? 月が雲に隠れた瞬間にモズイは消えたっていうの?」
謎が謎を呼ぶ状態に陥る指令室。 そこへ研究所から戻ってきた奏が指令室に入室する。
「弦十郎のダンナ! アヤノ先輩が残したディスクを発見したぞ!」
「うむ。 メインモニターに出してくれ!」
メインモニターにはアヤノ博士が解析した青銅盤に書かれた古代文字の翻訳が、モズイの真実が書かれていた。
モニターに表示された文字をみんながゆっくりと読み上げ始める。
「モズイは兵士の恐れを食らう・・」
「恐れを食らうだって!?」
「ツクヨの兵士は心の奥の恐れを石に込めて泉に捨てた・・」
「無敵の兵士になるために。 モズイは兵士の恐れを食らう魔物?」
残された青銅盤のメッセージを必死に読み、モズイの行動を理解しようとする面々。
ただ一人、実際にモズイに会い、アヤノ博士からの言葉を聞いた奏はすぐにモズイの目的が分かった!
(あなたの方が危険なのよ! あなたがシンフォギア装者だからよ!)
「シンフォギア装者は・・・、 この時代の兵士ッ!?」
「えッ!?」
「も、モズイは、 私たちを狙っているてことですか!? 私たちの恐れをッ!?」
「落ち着け響君! まだ続きがある・・」
「モズイは一度、蘇ったが最後、巨大な魔物となってツクヨの泉から現れる」
「そこに月が映る時・・」
静寂に包まれる指令室
「そんなバカな! ツクヨの泉はもう無くなっているんですよね? 了子さん!」
「間違いないわ! もうすっかり埋め立てられて・・」
「跡には超大きなビルが建っていました・・・」
「・・待て! それだ! その高層ビルに急行しろ!」
「でも弦十郎くん! 泉はもう・・」
「いいか! ツクヨの兵士は、あの青銅盤の鏡のことを凍れる泉と呼んだよな。 泉というのはだな、姿を映す物のことを言っているんだ。 本当の泉でなくても構わないんだ!」
弦十郎の読みは当たっていた。
ツクヨの泉があった跡地に建築されたガラス張りのビルに満月が映る。
するとビルのガラス面からモズイが巨大な怪獣となって出現した。
モズイの出現はすぐさま特異災害対策本部に知らされ、響と奏、それとサポートのため1課からも人員がすぐさま送られた。
「アヤノ先輩。 あなたは怖くなかったの?」
輸送ヘリの中で奏は迷っていた。 自分は戦えるのか。 モズイに立ち向かえるのかと。
そして直接戦う力の無いアヤノ博士が何故ああまでして立ち向かうことができたのか、自問自答を繰り返していた。
『怖かったはずだ。彼女も』
「ダンナ・・」
そんな彼女の言葉が聞こえていたのか、弦十郎は迷える彼女に・・、いや無線を聞いている全ての仲間に対して言葉を贈る。
『なぜツクヨの兵士がモズイを封じたか・・分かるか? 恐れを全て捨てた兵士は、自分の命も、人の命も省みない。 死と破壊しか生まないからだ。 そのことにツクヨの兵士たちは気づいたんだ! 恐れを恥じることはない! 俺だって怖いと感じることはある。 ただ・・大事なのは、 自分自身の恐れと真正面から向き合うことなんだ! 奏、それが戦うってことなんだ!』
『まもなく、モズイっと接敵します!』
「奏さん!」
奏はヘリから飛び降りる。
そして勇気の歌を。 恐れと向き合うための覚悟の歌を奏でる。
【Croitzal ronzell Gungnir zizzl】
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
ギア装着と同時に言葉ですらない雄叫びをあげながらやけくそに攻撃を開始する奏。
モズイも反撃とばかりに彼女に向かって口から大量の石を吐き出す。
奏はすんでのところでその攻撃をかわすが、躱された攻撃は彼女の後方にあった建物に広範囲で当たり、ただの石とは思えない破壊力を見せ付けた。
「あれが・・兵士たちが捨てて行った・・恐れ・・! ガっ!! しまった!」
奏はモズイの攻撃を食らい吹っ飛ばされてしまう。
『響ちゃん! 奏ちゃんの援護を!』
『1課も攻撃開始だ! なんとしても時間を稼げ!』
「了解ッ!」
だが、近接主体である響の拳が届く前にモズイの攻撃を食らってしまい、同様に吹っ飛ばされてしまう。
地上に展開された1課の職員による銃撃を物ともせず、モズイは奏のもとへ近づいていく。 彼女の恐れを食らうために ・・・
『奏ちゃん! 早く逃げなさい! 奏ちゃんツ!』
短時間だが気を失っていた奏は了子からの無線でなんとか目を覚ます。 幸いシンフォギアが解除されなかったことによりダメージは最小限になっていたが彼女の額からは血が流れていた。
目を覚ました彼女の目にはモズイがゆっくりと近づいてくるが見えた。
(モズイは石を欲しがっている。 恐れの石を)
「こ、こ、怖い・・、 く、来るな! 来るな~!!」
少女の悲痛な叫びが月夜に溶けていく。
モズイはそんな奏を見て、より良い恐れを手に入れるため、あえてゆっくりと歩を進め彼女の恐怖を煽っていた。
そして遂に。 モズイは手を伸ばせば届く距離まで近づき、奏に向かって手を伸ばそうとする。
「だれか、 たすけて・・・」
伸ばされる魔の手に目を瞑ると涙が溢れ、顔を背けながら助けを呼ぶ。
と、その時! 突如飛んできた青い斬撃がモズイを吹っ飛ばし、奏から引きはがした!
奏は斬撃が飛んできた方へと目を向けると、後ろにそびえ立つビルの上に、アメノハバキリを纏った風鳴翼が立っていた。
「翼・・! 来てくれたのかッ!」
モズイと対峙する翼。 モズイの方も先にこの障害を排除することを決めたのか、ターゲットを奏から変更し向き合う。
「月が覗いている内に、決着を付けよう! いざッ!」
そう言って翼は一度斬撃を放つ。
しかしモズイはモヤとなって大気に溶け込むかのように消えてその攻撃を躱す。
「なに! おのれ! 何処へ消え・・グッ!!」
翼は横から高速で来る影を自ら倒れるようにその攻撃を避ける。
避けながら翼は高速で近寄ってきた影の正体はモズイがモヤとなりそのまま突進してきたものだと確認する。
起き上がる翼。 だが辺りを見渡してもモズイの姿はない。
気配を探り、後方へと振り向けがそこにはモズイが居たがまた直ぐに消えてしまう。
またもや探すが連続して繰り出される高速タックルをよけ続けることは難しく、遂に攻撃をまともに食らってしまう。
月をバックに現れるモズイ。
不気味な顔が笑っているように見えた。
口からよだれの様に恐れの石を垂らしながら、翼の恐怖も頂こうとゆっくりと恐怖を植え付けるように翼に近づいてくる。
「はぁ・・・! はぁ・・・! はぁ・・・!」
翼の呼吸が、脈が乱れ、肩は大きく上下し、防人たる彼女の目と顔が恐怖で滲み、ゆがみ始める。
「つ、翼・・。 逃げてくれ! 泣き虫のおまえが敵う相手じゃあない! 逃げてくれ!!」
だが翼は深呼吸一つする。
そして油断し近づいてきたモズイに痛恨の一撃を与えたのだ。
モズイは驚く。 モズイを恐れない者などいない! または、恐れを捨てずに戦場に出向き、あまつさえ自分に刃向かう者にモズイは出会ったことが無かったからだ。
「納得がいかないようだな! なら冥途の土産に教えてやる! 私が一番恐れるのはお前ではない! もう失わないと決めた! その心を失うのが一番怖いのだ! 貴様如きに! 奪われてなるものか!!」
翼の怒涛の攻撃がモズイに降りかかる。
「翼・・。 あんな泣き虫だったのに・・。 怖い気持ちが無いわけでもないのに・・。 なのにあたしは・・・ッ!」
だがいくら翼でも一人では怪獣に勝つことは出来ず、少しずつでダメージが蓄積していき、形勢は悪くなる。
打開策が見いだせず、攻めあぐねていると突然モズイが苦しみだす。
空を見上げると先ほどまで辺りを照らしていた月が雲に隠れてしまっていた。
モズイは足を引き摺りながら、出てきたビルのガラスに逃げ込もうとする。
「翼さん! モズイが鏡の中へ逃げ込んでしまいます! 早く止めないと!」
倒壊したビルからなんとか這い出してきたが、まだダメージが残り動けずにいる響が翼に直ぐ攻撃するよう伝える。
「く、動け!!」
翼もただ一人で長時間モズイとの戦闘を繰り返したツケが回り、響同様動けずにいた。
増援も、クリスからの報告を受け、独断専行で大急ぎで駆けつけたため何時来るのか見込めない状況だった。
モズイがビルに到達し、勝機をこぼしそうになったその瞬間! モズイの背中に竜巻が当たり、入り込もうとしたビルごと吹っ飛ばしてしまう!
翼がそちらの方向を見ると先ほどまで回転していたであろう槍を構えていた奏が立っていた。
その目には、 もう恐怖の色は無かった。
翼の横に並び立つ奏。 膝をついていた翼に手を差し出し、申し入れをする。
「どうした? 防人の力ってのはそんなもんか?」
「・・いいえ! まだまだこんなものじゃあないわ! 奏こそ、もう大丈夫なの?」
「ああ。 恥ずかしいところを見せちまったな。・・・こんな情けないあたしでも、 一緒に歌ってくれるか?」
「もちろん! 歌おう! 一緒にッ!!」
ツヴァイウィングが歌う。
もう二度と一緒に歌えなかったはずの歌を!【ORBITAL BEAT】が月明かりの代わりに闇夜を照らす。
「幾千億の祈りもッ!」
「やわらかな光でさえもッ!」
「全て飲み込む
翼が斬る! モズイも反撃をするがそれを奏が槍で受け止め、その隙を再度翼が斬り払う!
「カルマのように~」
「転がるように~」
二人は空高く飛び上がりアームドギアをモズイに向かって投擲する。
「投げ出してしまえなくてッ! 今ッ!!」
「私ッ!」
「らしくッ!」
「「駆け抜けて~ッ!!!」」
互いの武器を巨大化させ蹴る! 翼の【天ノ逆鱗】と奏の【SPEAR∞ORBIT】がモズイに致命的なダメージを与えた!
「トドメだ! いくぞ翼!」
「ええ! 奏!!」
「「届け届け 高鳴る パルスに! 繋がれたこの Burning heart!!」」
二人のフォニックゲインが高まる!
恐怖を乗り越え、理論上不可能とされるユニゾンに匹敵するエネルギーを互いの信頼感のみで生み出していく!
「「 強く強く 心の!!」
「シリウスをただ見つめる~ッ!」
「「この闇を越えて~」」
歌い終わり、チャージされたエネルギーを巨大な竜巻へと変え敵をバラバラにする大技、
まだ装者が2人だけの時代からの得意技【
「やりましたね! 翼さん! 奏さん!」
「ああ! 心配かけてごめんな! だけどあたしならもう大丈夫だ! これで今日はぐっすりと眠れ・・ん?」
奏の端末に本部にいる了子から緊急通信が入る。
「奏ちゃん! アヤノ博士が!」
「先輩がどうかしたのかッ!?」
「意識が戻ったのよ! それで至急このメッセージをあなたに伝えてって!」
「えッ!?」
3人の間に緊張が走る! もしや、まだモズイに秘密が残されているのかと!
しかし・・・、 了子が通信機越しに見せたフリップにはある意味驚くべき内容が書かれていた。
「お見舞いは・・絶対ッ!! カニ(ハート)? ~~~ もうアヤノ先輩ったら!」
「え、ええ~っ??」
「あ! そうだった蟹だ! 奏さん! 翼さん! 頑張ったんですから今から蟹を食べに行きましょうよ!! 私! もうお腹が減りまくりです!」
3人は思わず笑ってしまう。
晴れてきた夜空に浮かぶ満月を見ると、いたずらが成功したと笑っているアヤノ博士の顔が映っているように見えたとか見えなかったとか。
次回予告
「オオシマ彗星は地球に激突する!」
「宇宙人が2体!?」
「我々は一刻も早く、彗星の破片を破壊する!」
「ザムシャー、あなたはなんのために地球に?」
「カ・ディンギルG、ファイア!」
「我が強さ・・・宇宙一であると証明してくれる・・・。」
次回! 戦姫絶唱シンフォギア! 宇宙の剣豪
お楽しみに!
ウルトラマンダイナ 第22話より出典のモズイでした。
ダイナのエピソードでも一番怖く、でも最終三部作を除けば一番好きな回です。
この回のリョウ役の演技が素晴らしいんですよね。
そして何より、最後! XXバズーカを撃つシーンから始まる「邂逅」という名のBGMが神がかりなタイミングで流れのですが、 もし見たこと無い方は是非見ていただきたいです。
これを書きたくて奏を泣かせたのはちょっと罪悪感がありましたが・・
個人的課題は初のホラー描写に挑戦です。
すこしでも体が冷えてくれればいいのですが。。
それではまた