しばらくぶりでございます。
今年もよろしくお願いします。
原因不明の蒸し風呂状態に陥ったなった特異災害対策機動部本部
その怪獣は火の神に仕えるという伝説の怪獣ソドムなのか?
次回 戦姫絶唱シンフォギア 発熱怪獣3000度 おたのしみに
ある日、リディアン音楽院及びその地下に存在する二課本部は、真冬にも拘わらず猛烈な暑さに襲われていた。
購買ではアイスクリームなどの冷たいものが飛ぶように売れ、服装も男女問わず夏の時期ですらしなかったタンクトップ姿と公務員にあるまじきラフな格好で仕事する職員で溢れていた。
それは司令室のメインオペレーターである友里あおいと藤尭朔也も例外ではない。
「・・・暑いわね藤尭くん・・・・・・・」
「・・・暑いですね友里さ、・・ってずるいですよ! 一人だけアイスコーヒー飲んで! 俺にもくださいよ!」
「い や よ。 それぐらい自分で用意しなさい」
暑さの影響か、 普段から進んで茶坊主を買って出て、 絶妙なタイミングであったかいものを淹れてくれるはずのあおいは朔也の要求を拒否。
ひとり冷たいコーヒーで涼を取っていた。
朔也もその態度に怒る気力が起こらず、 また、 普段見る事のできないあおいの薄着姿、 それも汗で張り付き、 熱で仄かにピンク色に上気した肩や頬に目もくれずひたすら机に突っ伏していた。
「ねえ、・・・いま何度?」
すると朔也は、最新設備に囲まれた基地には似つかわしくない古めかしいガラス製温度計が「びよよ~ん」と情けないSEが付きそうな感じで取り出し現在の室温を確認する。
「さんじゅ~~~~う~ろくってん~~ごどっ!」
「それあなたの体温じゃないの・・・・・・・?」
「この部屋ですよ。 外は真冬だっていうのに何でこの本部だけこんな暑いんだよッ!?」
この話は危ない。
そう感じたあおいは多少強引に別の話題に切り替えることにした。
「そういえば奏ちゃんは?」
「営業に行きましたよ。 普段行かない癖に」
「ふぅ。 いや~寒いな~! 寒さが心地いいね!」
隣町の商店街、 この世界で絶大な人気を博す天羽奏は放っておいても向こうから声掛けが来るほどの売れっ子歌手である。
そのため殆ど売り込みや営業に出向くことは殆どなく、 半ば体のイイ、 かつ尤もらしい言い訳で奏は冬の散歩を楽しんでいた。
「あちち。 ・・・ふぅ。 友里さんのコーヒーも美味いけど缶コーヒーも結構イケるな! 折角だし缶コーヒーのCMの仕事でもしちゃおうかな~なんてな!」
「奏ちゃんめぇ~、 うまいこと逃げたな」
ぼやく朔也。
この話題も失敗だったなと密かに思い、 どう話題を変えようかと悩んでいると司令室のドアが開いた。
救いの天使よ、 来い! この雰囲気を何とかしてくれと願う。
そして、 その願いは聞き届けられた。
入ってきた人物は確かにこの負の雰囲気を吹き飛ばす豪傑ではあった。
絶体絶命の状況においてこの人物の存在は組織の精神的支柱となる頼もしい存在であろう。
が! 失礼ながらも今日この状況では視界にすら入れたくないというのが本音だった。
それ程の熱い男、 入室して来たのは二課司令の風鳴弦十郎である。
「どうしたッ!? なんだその体たらくは、 もっとビシっとせんかッ!」
入室一番、 汗を掻きつつも普段と変わらない赤シャツ姿で情けない姿の部下たちに檄を飛ばす。
だが今日に限っては従順で優秀な部下たちの心には響かなかった。
「だって、司令。 この暑さですよ? 水道からお湯しか出ないんですよ?」
「風呂を沸かせる手間が省けるな。 だいたい君たち二人は了子君と一緒に暑さの原因を調べていたはずだが?」
「いえ、 それがですね・・・・」
「・・・暑いわね藤尭くん・・・・・・・」
「・・・暑いですね友里さん・・・」
司令室より更に地下、 本部最奥区画の更に地下の基礎部近く、 陽炎が立ちめく配管だらけのエリアで二人はまったく同じやり取りをしていた。
違うとすればこの時はあおいがアイスコーヒーを飲んでいないこと、 もう一人この場にいることだった。
「あ~~~~~~~~もうッ!!!!!! さっきからそればっかり!!」
配管の下から、 熱のせいかそれとも怒りによるものか、 顔を真っ赤にした櫻井了子が顔だけだし怒鳴り散らす。
「聞いていると余計熱くなるわッ!! もうここはイイから司令室に戻っててちょうだい!!」
「と言うわけでして・・・」
「まったく・・・ お前たち、 昔から心頭滅却すれば火もまた涼しと言ってだな! 人間気合を入れれば多少の暑さぐらいどうってことない物なのだッ! だいたいだな!・・・ん?」
説教を始める弦十郎の側を涼し風が一瞬だけ通る。
それに疑問を思いつつ、気のせいだろうと思い改め説教を再開したのだが・・・
「だいたい二課の隊員なら服装ぐらいびしっと! ・・・・・・はぁッ!?」
「あ、師匠!」
「・・・・・・」
振り返るとそこには居たのは並行世界よりこの世界の増援に来ていた異世界のシンフォギア装者、 立花響であった。
それ自体は不思議なことではない。
怪獣頻出期へと突入したこの時代、 怪獣との戦闘に対応できる装者が少ない世界には装者を交代で派遣してもらう契約を交わしており、 司令である弦十郎の頭には本日の当番が響であることは勿論知っていた。
驚いたのはその恰好にあった。
基本装者たちの服装に自由であり規定はない。
私服の時もあれば向こう側の組織、 S.O.N.Gの制服の場合もある。
だが今の響の恰好は冬の時期、 本部内の灼熱状況を鑑みても異様であった。
ひまわり色のワンピースに麦わら帽子。
手にはトロピカルジュースを持ち、 どこから調達したのか司令室の片隅にはサンラウンジャーやパラソル、 観葉植物みたいなものがずらりと並べられ、 さながらプールサイドの様相を成していた。
「せっかく暑いんですから楽しまないと損ですよッ! 師匠もそんな暑苦しい恰好をしてないですっきりとしましょう~」
まさに花が咲いたような笑顔で提案してくる響。
眉間を抑える弦十郎。
指揮下に入って貰っているとはいえよそ様の装者になんて言えば良いのか頭を悩ませてしまう。
「大変よ弦十郎くんッ! 暑さの原因が分かったわッ!」
その言葉にドアの方向へと目を向けた弦十郎は頭を抱え言葉にならない唸り声をあげてしまいうずくまってしまう。
扉の前には真っ赤なビキニに白衣と奇抜な組み合わせの了子が突っ立っていた。
「げ、 弦十郎くん? どうしたの? もしかして熱中症?」
「し、師匠ッ!? 大丈夫ですか? ぐ、具合でも悪いんですかッ!?」
心配で駆け寄ってくる了子と響。
だが、掛ける言葉は全て的外れであった。
彼も人間である。
季節はずれの猛暑、 士気とモラルの低下、 自由過ぎる部下たちに遂に鉄で出来ていると噂される堪忍袋の緒が遂に切れたのだ!
「バカモノーーーーーーーーッ!!!!!!!!!」
その怒声は、 遥か地上のリディアンにも届き、後に学校の7不思議に数えられたとかなかったとか。
しばらくして、 外に出ていた奏も強制的に呼び戻され、 一同は司令室に集められ作戦会議が行われた。
各々は普段通りの服装に着替えさせられ、 必死にうちわや扇子で扇いでいた。
「は~い!」
「はい! 了子君!!!」
ジュリ扇を持った了子が挙手し、 日の丸があしらわれた軍扇も持った弦十郎が指名する。
「原因はこれよ。 本部を支える地下の基礎部に怪獣が取り付いているの。」
そういうとモニターに基地の図面と、 怪獣が居ると思われる部分が赤く点滅している画像が映し出される。
「あ、そう言えば3日前に地震がありましたね。 その際の地殻変動で地底怪獣が迷子になったのかも」
白檀製のおしゃれな扇子を持ったあおいが推測を立てた。
「怪獣が居る事は分かった。 だがこの暑さとの関連は?」
「それがね、 コンピュータが幾つもはじき出した推論の筆頭が、 この怪獣の体温がなんと、2500℃もあるっていうものだったのよ~」
「2000ッ!?」
「500℃ッ!?」
商店街の宣伝用に配られた安いうちわを持った奏とハンディファンお響がそのとんでもない数値に目を剥きながら驚く。
「なるほど。 クーラーが効かないはずよね」
「信じられないのよね。 いくらコンピュータの推測とは言え、 体温がまさかね~~」
「でッ! 対策は?」
「データが正しければ、 怪獣を冷やすことから始めるべきでしょうけど・・・」
「よしッ! では対地底怪獣用に開発した地底戦車から冷却弾で攻撃しよう!」
「それがね~だめなのよ。 戦車が置いてある地下格納庫付近は1時間前にはもう立ち入り禁止になって封鎖されちゃったわ」
「なんとかならんのか?」
「熱でエレベーターが動かないの。 それに報告によると戦車のボンネットで目玉焼きが焼けたそうよ」
「「ええええッ!?」」
「焼いてみたのか?」
「整備班からの報告だしそうじゃないかしら?」
「ちょ、ちょっと待ってくださいッ!? いま、エレベーターが動かないって言いませんでした? ・・・てことは?」
渋団扇の朔也の発言に全員の視線が了子へと集中する。
「あ、気付いちゃった? 実は・・・ エレベーターが動かないので地上にも上がれませんッ! さあどうしましょう?」
額や背中に汗が流れ落ちる感覚に襲われる一同。
その汗は冷たく、 どこか不快だった。
「アッチ~~。 ギア装着してても熱いなんて・・・。 途中で壊れたりしないよな?」
「あ、 奏さんッ! 見てくださいアレッ!」
「うひゃ~ッ! 熱そうな奴ッ!」
危機的な状況に自然と気持ちが一体となった職員たちの努力の結果、 怪獣は再下層の排熱パイプの近くにいることが判明。
様々な意見出しと議論結果、 パイプのルートを切り替え、 そこから直接冷却ガスを浴びせて追い出す作戦が採用された。
だが切り替えは人力で行わなければならず、 更に切り替えポイントである最下層は500℃の超高温地帯と化していたため、 シンフォギア装者である奏と響の両名が強制的に担当となり、 最下層にある配管だらけの層へと送り出されることとなった。
そこにはマグマの様に赤く光る怪獣が、 外壁を突き破り顔を覗かせてイビキをかいていた。
どうやら怪獣は寝ているらしい。
「奏さんッ! あれですッ!」
「こいつが切り替えのレバーか。 コイツを下げるんだよな?」
二人はレバーに手を掛けると力いっぱい押し下げようとするが、 シンフォギアによるパワーブーストにも関わらず、 レバーはピクリとも下がらなかった。
「か、 堅ったいですね!!」
「クソッ! 錆びついているのかッ!?」
更に力をチャージするため、 より大きな声で合唱する二人。
すると寝ていた怪獣は目を覚まし不機嫌そうな唸り声をあげると、 二人に向けて火球を吐いた。
「危ないッ!」
いち早くそのことに気が付いた響は奏を押し倒すことにより寸でのところで火球を回避することに成功した。
「大丈夫ですかッ!? 奏さんッ!?」
「ああ。 助かったぜッ!」
「早くッ! レバーを切り替えないとッ!」
焦る二人、 なおも唸り声をあげる怪獣。
その口の中には火が集まり出し、 今にも第二射が発射されそうであった。
「畜生ッ! なんで下がらないんだッ!?」
「このォッ!!」
やけくそになった二人は力いっぱいレバーを蹴り上げる。
するとうんともすんとも動かなかったレバーが嘘のように簡単に跳ね上がったのだ。
実はこのレバー、 下げるのではなくあげるタイプだったのだ。
結果、 切り替えが成功したことにより怪獣に顔面付近にあったパイプより冷却ガスが吹きつけられ、 怪獣は苦しみだす。
「「やったぁ!!!!!!」」
肩を抱き合い喜びを分かち合う二人。
怪獣は体を揺らし穴から姿を消し、 同時に周辺の温度も急激に下がり始める。
やはりこの異常な高温は怪獣の仕業だったのだろう。
こうして基地周辺の異常現象は解決した。
だがそれはあくまで基地周辺の話であり、 根本的な問題が解決した訳ではない。
問題解決の開始前の問題を解決したに過ぎないのだ。
上空では二課所属のヘリコプターに同乗した了子が地底怪獣の追跡を行っていた。
巨大な地底怪獣が地表近くを掘り進むことはそれだけ強大なエネルギーと痕跡を地上に与えるのである。
そして、 基地のある町からそう遠く離れていない山中に辿り着くと突如土煙が上がり、 夕日をバックに怪獣が姿を現した。
その怪獣は朱く染まった夕日に負けない程赤々しい身体、 所々岩石のよう突起物を持つ、 まるでマグマの化身のような怪獣だった。
「あれはッ!? まさか実在したっていうのッ!?」
『どうした了子君ッ!? あの怪獣を知っているのか?』
「ええ。 あの怪獣の名前はソドム。 ニューギニアの古文書に書かれた怪獣・・・いいえ、 守り神と伝えられている存在にそっくりだわ。 でも、 なんでこんなところに?」
『守り神だとぉッ!?』
「火の神の怒りを鎮め、人々を噴火から救う守り神。 古文書の一説よ」
陽が陰ると同時にソドムは眠りにつく。
元々本部地下でも寝ていたため夜間の活動は無いと判断され、 二課は一度了子を基地に帰投させ体勢を立て直すこととなった。
「現状を纏めるわね。 古文書を始め現存する資料によればあの怪獣、 ソドムは火の神を、 つまり火山の噴火を抑えて人間や森を守ってくれる存在だそうよ」
「てことは良い怪獣なんですよね? 倒さなくてもいいんですよね?」
「・・・残念だけどそれは違うわ。 ソドムの現在の体温は2500℃。 あの体温では噴火を抑制するどころか逆に活発にさせてしまうわね」
「それだけじゃありません。 ソドムが寝ている箇所から10キロ圏内には街があります。 2500℃もある怪獣が少しでも近づけば地下を走るガス管を加熱し街に深刻なダメージを与えることになります」
「弦十郎くん。 ザンネンだけど現代社会にソドムの居場所は無いわ。 早急に退治することを推薦するわ」
「そんなッ!?」
「姐さんはそれで良いのかよ?!」
「・・・私は科学者よ。 確かに古文書や遺物は好きだし案外そういうところに問題解決のヒントが隠されていたりするわ。 シンフォギアだってそう。 でもこれは現実なの。 伝説では守り神だとしてもそれは間違いだったとしか言いようがないわ」
「でもッ!?」
「待て。 みんなの意見は分かった。 だが俺たちの仕事は人々をあらゆる危険から守ることだ。 ・・・明日早朝、 ソドム攻略戦を行う! ただし、 了子君は引き続きあの怪獣の特性などを調べてくれ。 以上で解散だッ!」
翌日、 日の出と共に活動を再開したソドムに対し 【怪獣冷却作戦】 が実行された。
通常兵器にしてもシンフォギアによる攻撃にしても、 2500℃の高熱をとにかく下げなければならない。
「奏さんッ! 準備が出来たみたいですよッ!」
「よしッ! 行くぞ響ッ!」
「はいッ!」
【Balwisyall Nescell Gungnir tron】
【Croitzal ronzell Gungnir zizzl】
「奏ちゃんと響ちゃん、 シンフォギア発動を確認!」
「よし。 冷却弾投下だッ!」
「投下しますッ!」
本部より操作された巨大ドローンから冷却弾が投下され冷却液がソドムに浴びせられる。
するとソドムは突然の冷たさに驚いたのか鈍重な見た目に反して飛び跳ねる。
その裏で了子は引き続きソドムの特性を調べていた。
「ソドムの頭とこの背中の角、 まるで接触変成岩に似てるわね。 ・・・変成岩? ・・・まさか? いいえでも・・・」
疑問を口にする了子。 だが、 冷却作戦は既に次の工程へ移ろうとしていた。
「響、 放水開始だッ!」
「了解ッ! スイッチ・オンッ!」
二課が突貫工事で準備した塔より大量の水が放水され、 発生した蒸気にソドムの姿が隠れてしまう。
水は液体の中でも最大の比熱、 つまり熱を冷ます力が強い物質なのだ。
これにより熱が冷めたところを攻撃する手はずだった。 しかし!
「やったか?」
「か、 奏さんッ! あれ見てくださいッ!」
蒸気のすぐ上にソドムの姿が立ちめいていた。
ソドムの体温が高すぎるために蜃気楼が発生したのだ。
「大変ですッ! 怪獣の体温が急激に上昇していますッ! 推定温度、 約3000℃ですッ!」
「3000℃だとぉッ!?」
『止まれッ! 止まるんだッ! ソドムッ!!』
水をぶっかけられたことに怒ったのか、 ソドムは放水塔の方へと突撃し塔を破壊し始める。
シンフォギア装者以外は無人のため人的被害は皆無だが酷く興奮している様子のソドムが何時街に近づくか見当がつかなかった。
奏はアームドギアである槍を顕現させ穂先からビームを放つが熱により周辺大気の歪みによって捻じ曲げられてしまう。
すこしでも攻撃が当たるように跳躍し近づこうとする奏だったがソドムの吐く高熱火炎に直撃してしまった。
『奏さんッ!!』
「奏ちゃんに火炎が直撃ッ! かなり危険な状態ですッ!」
「弦十郎くんッ! 現場に行くわッ! 響ちゃんにソドムの気を引くように指示してッ!」
「了子君ッ! どこに行くんだッ! 了子ッ!!」
そのころ現場では響が必死にソドムの気を引こうとしていた。
地面を踏み砕き隆起した巨大な岩を担ぎソドムに投げつけたが岩がソドムに迫ればその熱で融解し、 当たる時にはマグマの様にドロドロの状態となって手前に落ちる。
本部も矢継ぎ早に冷却弾を搭載したドローンを放つがより高温となったソドムの前に成す術もなく墜落してしまう。
だがその甲斐あってかソドムの気は奏から離れ響に集中、 了子が運転する車は奏が負傷した付近に無事到着し、 救出を開始したのだ。
「あちちっち! タダでさえ熱くて近づけないのに火まで噴かれたら近づけないよッ!」
シンフォギア装者たちの対怪獣戦の鉄則は攻撃を避けることである。
例え、 最大出力でなら月の欠片を消し飛ばすことも可能なシンフォギアシステムであっても怪獣ほどの大質量による物理攻撃は避けることが推奨されているのだ。
響はその戦術マニュアルに従い、 ターゲットが自分に移ったことを確認してからは常に動き回りソドムの吐く火炎を避け続けていた。
だが、 ここは整地がなされた場所ではない近郊の平野部である。
人間である以上一つの事に集中し続けることは困難であり、 遂に響は足場の悪いところに着地してしまいバランスを崩してしまう。
しまった、 と思いつつ目線の先のソドムを見ると何度も見た火炎を吐く動作を取るソドムの姿を見た響は防御態勢を取る。
しかし しばらくしても火炎で焼かれることは無く、 代わりに【ボフン、 ボフン】 と小規模の爆発のような音が聞こえた。
その音は奏に肩を貸し、 車まで連れてきた了子にも届いていた。
「姐さん・・・。 あの音ってもしかして、」
「くしゃみ・・・? ・・・・・・そうか! そういうことだったのねッ! 弦十郎くん、 直ちにソドムへの攻撃を中止して。 ソドムはやっぱり風邪をひいてたのよッ!」
『か、 怪獣が風邪ッ!?』
「私は、 とんでもない勘違いをしていたわ。 やっぱりソドムは古文書の通り守り神だったのよ」
『了子さんそれはどういう意味ですか?』
「あの子の特性を調べていたら分かったんだけどね、 ソドムは火山の地下に埋まっている変成岩を食べるのよ。 変成岩帯を食べ進めることによって出来た横穴にマグマが流れることによって、」
『マグマの圧力が下がり噴火が抑えられるということか』
「そのとおり。 それと数日前の地震についても調べてみたんだけど、 案の定、 本部の地下に変成岩の地層があったわ。 きっと、 変成岩を食べるのに夢中で出てはいけない地表の近くまで来ちゃったんだわ。 その時の地上との気温差で風邪をひいちゃったのね・・・。」
『じゃあ、 俺たちがやったのって…』
『病人に冷たい水をぶっかけたようなものね。 それじゃあ熱上がっても仕方ないわ・・・』
「弦十郎くん。 すぐに地底戦車を無人操作でこっちに送って頂戴」
『どうするつもりだ?』
「ソドムを地底に返してあげたいの。 あの子は自然に必要な存在よ。 人間の都合なんかで退治して良い存在じゃないわ。 地底戦車で誘導し元の世界への案内にするわ」
こうして、 好物である変成岩を括り付けた地底戦車の誘導によりソドムは地底へと帰って行ったのだ。
提出された今回の事件についての桜井了子からの報告書の総括には以下のようなことが記載されていた。
「怪獣とは、 私たちの常識を超えているからこそ怪獣と呼称されているが、 同時に私たちと同じ生物であることまでは忘れてはいけない。 そして、 神秘や浪漫と言った空想を楽しむ心を忘れてはならないのだ」 と。
「ねえ、・・・いま何度?」
「・・・41.5℃。 友里さんは?」
「・・・40℃丁度ね」
「やった・・・・。 俺の勝ちですね。 スペシャルランチ奢りでよろしく~」
「藤尭さんも友里さんもなにバカな事やってるんだよ~~。・・・・ヘックシッ! 姐さんもネギなんて持ってどうすんだよ?」
「ねぎって首に巻くんだっけ? それともおしりに差すんだっけ? 奏ちゃんで実験してもいいかしらん?」
「おいおい。 どうしたんだ皆ッ!?」
「あ、 弦十郎のダンナ。 それがぁさ、 ちょっと前まで凄く暑かったに突然寒くなっちまったから皆風邪を引いちゃってさ・・・・ヘッグシッ!」
ソドムによる酷暑問題は解決し、 真冬らしい温度が戻ってきた。
しかしあまりの急激な温度変化について行けず、 二課だけでなく周辺地域の住人はもれなく風邪を引いてしまったのだ。
「まったくだらしがないなッ! 俺が小さい頃はな~・・・・・・・ハックションッ!ビヤックションッ!!」
寒い日が続きます。 皆さんも風邪には、くれぐれもご注意ください。
By 作者
と言うわけで、久々の更新でございました。
ウルトラマンダイナ第21話「発熱怪獣3000度」よりソドムの登場でございました。
XDのガメラコラボを見て改めて感じたのですが、 ウルトラ怪獣は勿論そのバラエティの豊さが人気ではありますが、 強さ以前にこういった特殊能力が魅力的だなと改めて感じました。
ソドムいいですよね。 怪獣もいきものであることが分かる回であり、益獣という人間と共存が出来るという後のシリーズに影響を与えたのでは?と勝手に思っているぐらい好きです。
こういう、 シンフォギアと勝負以前になってしまう相手との戦いを描くのは大変ではありますが同時にやりがいを感じております。
それではまた、 次回をお待ちいただければ幸いです。
では。