天彗ノ御魂 ~demon slayer alternative~   作:レティス

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お久しぶりです。就職してから小説執筆に手が回らなかった“紙鳥”レティスです。
今色々な意味で話題沸騰中の鬼滅の刃にはまりまして、話題に乗っかってモンハンとのクロス小説を書いてみました!
主役は呼吸にかなり関係してるバルファルクにしてみました。
それと注意事項ですが、作者はコミック勢なので、くれぐれもジャンプの内容はなるべくバラさないようお願いします。
それでは、どうぞ!



始動 -INVOKE-

 

 

 

 

 

 

ガキィンッ! ダァンッ!

 

 

ザシュッ!

 

 

 

 

『ギェイアアッ!』

 

 

 

 

 

ギュオォォォンッ!!

 

 

 

 

 

遺群嶺…それは人の足では決して辿り着く事は出来ない未踏の地。その頂、浸る水面に龍気が洩れた高地にて、俺と狩人達は互いに殺し合っていた。

狩人達が剣や弩を構えて攻撃してくる中、俺は翼脚から龍気をジェット噴射しながら高速で狩人にぶつける。体と翼脚に繋がっている靭帯は伸縮自在。そのリーチは斬竜の尾も凌駕する。超音速で放つ槍、それは“常人”が受けようものなら一瞬で体が四散するだろう。

 

「はっ!」

 

 

だが“狩人”はその常人の内には含まれない。獣や竜を屠る彼らは、確実に獣を狩るために様々な技を繰り出してくる。

狩人の一人は俺の翼脚の一突きを錐揉みに回転しながら擦れ違った。

一人が弩を打ち続ける中、一人は太刀を振り、一人は大剣を叩きつけ、一人は薙刀に張り付いた虫を俺目がけてぶつけて体液を吸い上げる。

俺は龍だ。それも空を飛ぶ飛竜や陸地に特化した獣竜の比ではない。古より猛威を振るう古龍だ。その生命力は人間や飛竜らを上回る。

 

 

 

 

 

ザシュッ!

 

 

『ギュアアアッ!?』

 

 

されど戦いの蓄積で、俺の命は既に風前の灯火だった。紫外線から身を守る銀色の甲殻はあちこちがボロボロ、翼脚からの龍気噴射の勢いも衰えてきた。いくら古龍の身とて、このままでは

身が持たない。

 

 

 

 

 

キュィィィィィィィィィンッ…!

 

 

 

 

 

俺はその場で呼吸を行い、体内に大量の酸素を取り入れる。胸部の肺胞に、離陸するための龍気を生成するために。こんな弱りきった体では彗星の如き突貫は出来ん。離脱可能な程度の酸素を…

 

 

「せいぃぃっ!」

 

 

 

 

 

 

ドゴォッ!

 

 

『ギャォァッ!?』

 

 

 

 

 

 

バチバチィ!……ドガァァン!!

 

 

 

 

 

 

刹那、その隙を見た大剣使いの狩人が、大剣を地面に引きずりながら斬竜の如き斬り上げを胸部に叩き込んできた。衝撃で呼吸が乱れた結果、生成中の龍気が胸部で暴発した。

全身に渡って痙攣が起こる。視界が揺らぐ。もはや逃走は叶わぬ。俺が死ぬか、狩人が死ぬか、結末はどちらか片方だ…。

 

 

『キュイイイイイイァァァァァ!!』

 

 

俺は助走を付けながら体内に残る龍気を翼脚に集中。勢いよく噴射しながら特効を仕掛ける。一発の弾丸の如く、速度を増しながら、狩人達目がけて…

 

 

 

 

 

 

ザシュッッッッ…!

 

 

 

 

『ガァ……!』

 

 

練気解放気刃斬り…円月殺法の構えから放つ居合い斬り。太刀使いの一閃は、確実に音速で突貫する俺を斬り裂いた。

斬り裂かれた。俺の心臓の部分は確実に斬り裂かれた。呼吸する術を失った俺はそのまま推進力を失って墜落。何度か転がった後、倒れ込む。

 

 

『キュォォォォォォォォン……。』

 

 

力を振り絞って立ち上がるも、既に散り逝く身。翼脚から出る龍気は弱々しく、徐々に小さくなっていく。心臓や肺胞を潰されてはもう動きようがない。後は骸になるだけ……

 

 

 

悠久の時を生きてきた俺だが、とうとうここまでか……

 

 

 

 

これが……自然の摂理か……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はっ…!?」

 

 

俺が目が覚めると、そこは何処かの部屋の中だった。どうして俺はこんなところにいる…?狩人達に仕留められて、俺は二度と目覚めないはずだった……。

俺は自分の体を確認してみた。十の年を経た少年の体だ。妙になれない感覚だと思ったが、人間の身体になっていたのか…となると、俺は生まれ変わったって事か…。

ここは何処だ?和装って事は俺が覚えてる辺り、ユクモの地なのだろうか?

 

 

「…ここは…。」

 

 

俺は体を起こし、部屋を見渡す。襖は閉ざされている。俺のいる寝室には布団以外には必要最低限なものしかない。夜間用の蝋燭くらいだ。

 

 

「ん…?」

「あっ…!」

 

 

ふと襖が開いた音が聞こえた。俺はその方向へ顔を向けると、そこには緋色のショートヘアの少女が襖から俺を覗いていた。少女は俺が目覚めたのを確認するや否や、何処かへ駆け出していった。恐らく彼女の両親のところだろう。

数秒後、その少女は両親を連れて俺のいる寝室に入ってきた。

 

 

「おお、ようやく目が覚めたのかい。」

「えっと…俺は…どうしてここに?」

「貴方が森の中で倒れているのを“梨那”が見つけてきたのよ。」

 

 

梨那と呼ばれた緋色の髪の少女が俺を見つけてここに運んでくれたようだ。どうやら俺が人に生まれ変わって倒れてた場所は見知らぬ森の中だったらしい。あのまま見つけてくれなかったら、俺はとっくに獣に喰われていただろう。

 

「ありがとう、梨那。」

「うんうん…厳密に言うと、私一人じゃ運べなかったから、一旦お父さんを呼びに戻ったの。」

「いや、助けてくれた事には変わりないよ。」

 

 

俺は自分を助けてくれた梨那とその両親に礼を言う。

 

「ところで、君は何処から来たんだい?」

「…分からない。そもそも、俺に親すらいたすらかも分からない。」

 

 

梨那の父と問いに答える俺。勿論これは嘘だ。前世は龍だった俺に親の概念なんて存在しない。飛竜や牙獣等ならいたかもしれないが、桁違いの寿命を持つ古龍に家族等存在するはずがない…いや、俺にもいたかもしれない。

 

 

「もしかして、記憶がないのかい?」

「…はい。」

 

 

俺は静かに呟きながら頷く。記憶がないと言ったら嘘になる。だが、この記憶は他人に話せるものではない。

 

 

「もしよければ、うちの家に住んでいくかい?」

「いいんですか?見ず知らずの俺を受け入れてくれて?」

「ええ、記憶も住む場所もないなんてとても不憫な事だわ。」

 

 

出会ってそこまで経ってないにも関わらず、ここまで厚く招かれるのには俺自身驚いた。前世は人ですらない俺を、見知らぬ俺を家族として迎え入れようとする姿勢。とても温かさを感じた。

 

 

「はい、これからお世話になります。」

 

 

俺はその歓迎を受け入れた。梨那とその両親の微笑みと共に家族として迎え入れられた俺。その喜びに前世も何も関係なかった。

 

 

「そういえば、君の名前はなんて言うの?」

「…え?」

 

 

唐突に梨那に尋ねられた俺自身の名前。前世では龍であり、専ら狩人達からは天彗龍か、バルファルクとしか呼ばれてこなかった。この世界で通用しそうな名前ではない。“天彗龍”とは、前世の俺が紅い軌跡を描きながら空を飛ぶ姿が、まるで彗星だという事から名付けられた。そしてバルファルクは、狩人曰く“豪胆な隼”という意味から名付けられたらしい。

そこから俺の新たな名を考えるとなると…そうだな…。

 

 

「…森羅……“豪鶻森羅(たぐち しんら)”。それが俺の名前だ。」

 

 

俺は梨那とその両親に自身の新しい名前を言う。この地で通用する名前として、苗字をバルファルクから、本名彗星のある宇宙から取った…………って、あれ?

 

 

 

 

 

 

 

何で俺はこの知識を知ってるんだ?

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

俺がこの“昴斗(すばるぼし)家”のお世話になってから、何日か経った。一般的な農民として、田植えや魚釣りなどして働きながら過ごしている。それだけじゃない。俺は家族として迎え入れられてから我流で鍛練を積んでいる。走り込みと腕立て等の基本的な事、そして“呼吸”だ。

古龍だった頃、俺は独特な呼吸法で酸素を体内に取り入れ、龍気を生成して飛んでいた。当然人の身に生まれ変わっているのだから、空を飛ぶ事なんて出来ない。せめて前世で行っていた事を何とか活かせないか考えてみた。

そう考えた末に、一度に大量の酸素を取り込むと体温上昇と共に一時的に身体能力が上がる事が分かった。前世では“空を飛ぶための呼吸法”だったのに対し、今は“身体能力を向上させるための呼吸法”に変化していった。前世の技も案外捨てたもんじゃないな。

とはいえ、これを“四六時中出来るのか”といえばそうじゃない。人間の体に生まれ変わった故に一度に吸い込める酸素量には上限がある。また、大量に酸素を取り込む度に体に痛みが走る。今の身体では呼吸時の酸素量に体が順応しないのだ。

おまけにこれを睡眠の時もやろうとすれば「いびきが煩い」と梨那に枕で袋叩きにされるため、睡眠時は封印。そりゃ、ジェットエンジンの如き呼吸なんて聞いたら睡眠妨害だよな…うん…。

…と、変わった鍛練を積んでる以外は普通の人と変わりない毎日を送っている。

 

 

「よし…これで十分だな。」

 

 

俺は夕餉用の鮎を人数分獲り、籠に入れて布を被せる。今の季節は夏。この時期は鮎が旬で沢山獲れる。さて、さっさと家に帰ろう。

 

 

「森ちゃ~ん!」

「ん?梨那?」

 

 

梨那がこちらにやってきた。波奏さん(梨那の母)の手伝いをしてたはずだが、終わらせてこっちに来たのか…ってか“森ちゃん”って呼び方、なんかやだなぁ…。

最初は森羅君って呼んでたのに、2年前ほどから森ちゃんって呼び名に変わった…その呼び方だと俺が尻丸出しで暴走する5歳児みたいに聞こえてくる。もしくは考えるのを止める警察官のどっちかだ。せめて後者の意味であってほしい。

 

 

「そろそろご飯の準備だから戻ってきて~!」

「ああ、今戻るぞ。」

 

 

俺は籠を持って梨那のもとへ行こうとする…って、梨那…なんでこっちに寄ってきた?

 

 

「梨那、ここ足場悪いから気をつけろよ?」

「えっ?うわわっ!?」

「お、おい梨那!?」

 

 

そら言わんこっちゃない。悪い足場に体幹崩れそうじゃないか。

俺は籠を置いてすぐに梨那のもとへ駆け寄る。この川、比較的流れは緩やかだが、いかんせん足場が悪い。川の水の波紋で足場の深さが分かりづらい。だから川を渡る際は細心の注意を払わないといけない。

 

 

「きゃっ!?た、倒れるっ!?森ちゃんっ!助けてっ!?」

「動くなって!下の岩がゴツゴツしてるから下手に動いたら…ってうおおおっ!?」

「きゃあああああ!?」

 

 

 

 

 

 

 

ザパァァァァァァァンッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

結局、二人揃って体幹崩して転倒。川に浸かる事になった。幸い、俺が下敷きになった事で梨那が強打する事はなかった。けど、起き上がらないと溺死する。

 

 

「「…ぷっはぁっ!」」

 

 

俺と梨那はすぐに川から起き上がる。

 

 

「あーあ…盛大にずぶ濡れだなこれ…梨那、怪我はないか?」

「うん……けど、服がビショビショだよぉ……。」

 

 

梨那に怪我こそなかったものの、川に転倒したために俺と同じく全身ずぶ濡れ…………ん?

 

 

「あ…。」

「…へっ?」

 

 

ああ、なんてこった。倒れた際の勢いで梨那の着ている服がはだけていて、肩と胸部が露出…………あ、やべ…

 

 

「……。」

「…あう…うう…ううう…!」

 

 

あれから3年経ち、梨那の身体も成長してきた。慎ましやかながら凛々しく、そしてまだ小さめではあるが、膨らみが………あ、やべ…それ以上は考えちゃいけない。理性が龍気のように蒸散しそうだ……って、目視してる時点でとっくに手遅れなんだけどなぁ……。

涙目の梨那の顔がどんどん赤くなっていく。そりゃあ、りんごが真っ赤に熟成していくかの如く…。

 

 

「あ、あの…梨那…?」

「…………の……」

「わ、悪かったって…それにほらっ、ここの川は足場悪いから転びやすいからな。いやー怪我無くて良かったよ本当に。」

「…し…ちゃ…の……」

「…そ、それにしても、梨那…。」

「…何…?」

「…随分…“ご立派な体”になったな…。」

 

 

あっ……しまった……つい口が滑っt

 

 

「森ちゃんの…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

馬鹿ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

 

 

ドゴォォォォンッ!!

 

 

 

「う わ ら ば ぁ!」

 

 

 

 

ザッパァァァンッ!!

 

 

 

 

梨那の会心の一発が俺の顎に直撃。その慎ましやかな体の何処に人間を打ち上げられるだけの力があるのかは知らないが、俺の身体は確実に宙を舞い、そのまま川に着水。更にずぶ濡れだなこりゃ…自業自得とはいえ。

 

 

「森ちゃんの変態っ!馬鹿っ!アホっ!女の子の裸を見るなんて最低っ!!」

「いっててて……つい口が滑っちゃっただけじゃないか……ん?」

 

 

梨那に罵倒されながら起き上がる俺。その際、身体の妙な“浮遊感”に気づいた………………………ん?

 

 

 

“浮遊”………?

 

 

「…あれ?」

 

 

俺は視線を下に向けると、そこは水面。だが、その距離まではある程度離れている。“滝”から流れ落ちる淡水によって、水面に絶え間なく波紋が走る…………って、滝ぃ!?

 

 

「ちょっ!?なんで滝まで殴り飛ばしt」

 

 

 

 

 

 

ザッパァァァァァァァァン!!

 

 

 

 

 

 

いや、隙の生じぬ二段構え。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

「はぁ…帰ったらすぐに着替えないと…。」

「…っつぅ……変な着水したから全身が痛ぇ…」

「森ちゃんが悪い。」

「…そうだけど、流石に滝まで殴り飛ばすのはやり過ぎだと思う。」

「森ちゃんの自業自得っ!」

「(´ ・ω・`)」

 

 

梨那に罵倒されてしょんぼりとした表情しかつくれない俺。そんな俺をジト目で睨んでくる梨那。自分でやらかしといてこんな事言うのはなんだけど、かわいい。

そんな事を思いながら、俺は梨那と一緒に家までの帰路を歩く。

 

 

「…ねぇ森ちゃん。」

「ん…?」

「“あの日”の約束、覚えてる?」

「……えっと…“花火を見に行く”…だっけ?」

「うん、前回と前々回は駄目だったけど、今年こそは森ちゃんと一緒に見に行くって約束。それでさっきの事許してあげる。」

 

 

花火か…俺が昴斗家にお世話になって数週間経った日に、梨那に連れられて見に行ったんだっけか。確かに綺麗だった。前世の頃はあんな体験に興味すらなかったのに、人間に生まれ変わってみるとここまで感動するものがあるんだな。

梨那は花火を見る事が好きらしく、夏になるのが楽しみだという。2年前は生憎の雨で中止。そして去年は、その地域に“鬼”という化け物が出没したために外出してはいけないと注意された。

鬼というのは、昔から各地域に出没している人喰いの化け物だ。夜間に動き出し、人間を見つけては喰い殺すという。言うならば、前世でいう俺達のようなモンスターだ。各地に潜む鬼を仕留める“鬼狩り様”という存在がおり、鬼狩り様が鬼を倒してくれるのだという。

鬼が彷徨く夜中に花火を見に行くだなんて自殺行為だよな…けど、俺もあの花火を見て確かに綺麗だと感じた。欲張った言い方だけど、危険を冒してでも目指すものがあるからな。俺がいた世界では常にそうだった。

 

 

「分かったよ。俺が梨那を守りながら花火を見に行く。これでいいか?」

「!…うん!」

 

 

刹那、俺の言葉を梨那がパァッとした笑顔を浮かべながら俺に抱きついてきた。ちょっ…流石にこれは恥ずかしいぞおい……。

俺は突然の梨那の行動に顔が真っ赤になった。だって俺、恋愛なんて全くした事ないし、そもそも前世に恋なんて古龍の俺には皆無だったからな?いや、古龍同士の恋もあるにはあるよ?けどあるとしたら炎龍しか思いつかねぇぞ。

梨那とは幼馴染み程度しか思ってなかったのに、いざ女性として見たらこうも頭がボーッとするもんなのか?

 

 

「…森ちゃん?」

「……はっ!?…えっ…えーと、何だ梨那?」

 

 

硬直から我を取り戻した俺。けど声が未だ籠っている。

 

 

「もしかして………“こ ー ふ ん”してた?」

 

 

 

 

 

 

 

 

ブーーーーーーーーッ!

 

 

 

俺はすぐに梨那のいる方の反対側に向けて鼻血を噴射した。こんな色っぽい声でそんな事言われたらそりゃ鼻血出るよねぇ!?

 

 

「っ…いきなり何囁いてくるんだよ!?」

「あははっ!冗談だよ冗談。私は先に行ってるね。」

 

 

これが冗談ならこんなに鼻血出ねぇよ!?貧血なったらどうすんだよ!?

梨那は笑いながら一足先に帰路を駆けていく……ったく、意外と悪戯好きなのかアイツ…。

俺は手の甲で鼻を拭うと、止まっていた足を再び動かす。

それにしても、梨那がここまでアプローチを仕掛けてくるとは思わなかったなぁ…俺は…元は龍という、鬼とは比べ物にならない化け物だっていうのに…。

俺は前世の姿を思い浮かべる。古龍だった頃の俺は、狩人…人間達とは殺し合う関係でしかなかった。喰うか、喰われるか。狩るか、狩られるか…そんな世界の中、悠久を生きてきた。

俺が人間に生まれ変わって、最初に昴斗家に出会った時、そんな殺意…というか、怨念は不思議と浮かんでこなかった。むしろ温かさを感じた。何故だろうか……前にもこんな感情を抱いた事があるような……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バサバサバサッ!

 

 

カァー! カァー!

 

 

 

 

 

「っ!?」

 

 

大量に森から飛び立った鴉の群れと同時に、俺は驚いた。いや、別に鴉の群れと鳴き声に驚いたんじゃない。俺の第六感と前世での経験が疼く…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

災厄が訪れる時は、いつも“黒い翼”が空を舞う。

 

 

「…まさか…!?」

 

 

前世では災厄…古龍が現れる前兆としてガブラスが空を舞う。もう夕日が完全に隠れる寸前である事、鴉の群れが何かに恐れを成して飛び去っていた事、そして鴉の群れがいた木々の先には…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「きゃああああああああああああ!!」

 

 

 

 

「っ!?梨那っ!!」

 

 

的中した。いや、的中してしまった。梨那の悲鳴が確かに聞こえた。俺は咄嗟に走り出す。ジェットエンジンの如き甲高い呼吸で酸素を取り込みながら、俺は帰路を全力疾走する。

鬼だ。こんな世界で不吉な予感を催す存在と言えば、もはや鬼しか考えられない。走れ…!龍気が使えなくても…翼が無くても…この足で…!

一秒でも速く家へ…!

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

「はぁ…はぁ…………っ!」

 

 

全力疾走の末、息を切らしながら家に到着した。

 

 

「っ…そんな…!」

 

 

俺の視界には、文字通りの地獄絵図が広がっていた。滅茶苦茶に散らかされ、万遍無く返り血をぶちまけられた室内。障子戸は踏みつけられたかの如くへし折られており、家具は片手でリンゴを潰された状態のように跡形もなくなっていた。

目の前には二人の死体。波奏さんと泰山さん……梨那の両親だ。そして二つの死体を貪る“何か”…蒼白い肌に、竜人族のような耳、そして牙……

 

 

「ん~?人間かぁ?餌になる人間がやってきたなぁ。」

「!!」

 

 

鬼だ…鬼が、我が家を襲っていた。

 




主題歌
『0-GRAVITY』GRANRODEO




~next voyager~


「ケケケッ…!お前も喰ってやるっ!」

「梨那っ!?…どこにいるんだ!?梨那!?」

「南無阿弥陀仏…南無阿弥陀仏…。」

「鬼を屠る術を知りたいか?少年。」


次回『鍛練 -BUILD UP-』
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