嘘予告:ファーさん召喚RTA   作:偽馬鹿

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まあ書き始めたら止まらないよね(言い訳)


ファーさん召喚RTA 2

「―――――え」

 

刺された。

 

「え……え?」

 

なんの理由もなく、ではない。

断ったのだ。

告白を。

目の前の男子の告白を。

 

そうしたら、刺された。

赤い血が流れる。

男子の歪んだ顔が見える。

 

「君が、君が悪いんだぞ!?」

 

そんなはずないでしょ。

薄れていく意識を必死に繋ぎ止めながら、少女は男子を睨んだ。

 

「ひっ!」

 

男子はその視線に驚き逃げていく。

はは、わたしの顔、そんなに怖かったのかな。

そんな風に思いながら、少女は倒れた。

 

「ぐえー……けほっけほっ」

 

もう駄目かな、と思った。

少女は倒れたままそう思った。

血はとめどなく流れる。

身体は先端から冷えていく。

 

周囲には人影がない。

当然だ。

相手が誰もいない公園を選んで告白したからだ。

それもこれも、わたしを逃がさないためだったのか。

 

「けほっ」

 

そこまで考えて、口から出る血を見て、もう駄目だと思った。

少女はもう動く力すら残っていなかった。

 

ああせめて。

お父さんお母さんが悲しまないように。

そんなことを考えながら、少女――結城(ゆいしろ)(べる)は目を閉じた。

 

 

 

「―――――おや? 何やら面白いことが起こったみたいだねぇ」

 

 

 

ふと、黒い何かがいた気がした。

 

 

 

 

 

 

「やあお嬢さん。ご機嫌いかがかな?」

「……………」

 

目が覚めると、変態がいた。

いや、死んだと思ったら目が覚めて、真っ黒衣装の変な奴がいたらそう思っても仕方ないだろう。

普通に知らない天井だ、とか言いたかったよ。

鈴は毒づく。

 

「おや、命の恩人に何か言うことはないのかい?」

 

両手を広げて大袈裟なリアクションをとる男。

胡散臭い……と思った鈴。

しかし、あのまま放っておかれたら死んでいたことも事実。

 

「あ、ありがとうございました……」

 

なんか納得いかないけれど、恩人は恩人。

一応のお礼は言っておく鈴である。

どことなく気持ちは入ってないが。

 

「どういたしまして。目の前で勝手に死なれるのは気分が悪いからね」

 

一言多い。

そう思いながら、曖昧な笑いで誤魔化す鈴だった。

 

 

 

「ベル!」

「ベルゥ!」

「お父さん、お母さん!」

 

数分後に、鈴の両親が顔を出した。

必死の形相で駆け寄って来て、鈴を抱きしめる両親。

鈴も「ぐえー」と言いながらも、自由になっている腕で両親を抱きしめる。

 

「あっあの!」

「ありがとうございましたっ!」

 

鈴の両親は男にお礼を言う。

それはもう、必死にだ。

何度も何度もペコペコと頭を下げた。

 

「いや、いや。そんなに頭を下げなくても大丈夫さ」

 

しかし、男はそれを制す

わたしにはすぐお礼を求めたのに、とか思いながら鈴はジロリと男を睨んだ。

男は肩をすくめ、いそいそと立ち去ろうとする。

 

「あの……!」

「せめて名前を……!」

 

両親は追いすがるように男に声をかける。

ちょっと待って欲しい、と思いつつも鈴もその名前を知りたかったので放置した。

別に気怠かったわけではない。

 

「そうだ。名前を教えておくのを忘れていた。俺は―――――」

 

 

 

―――――ベリアル

 

 

 

男――ベリアルはそう一言口にすると、影に溶け込むように消えてしまった。

 

 

 

 

 

「―――――はぁ」

 

一か月後、鈴は退院していた。

幸い傷は浅く、数針縫う程度で済んだらしい。

おかしいなぁ。

口から血が出るくらいの傷だったはずなんだけど。

鈴は不審に思いながらも、しかしあまり深く考えることはしなかった。

 

ちなみに告白してきた男子は自首したらしい。

なんとも味気ない顛末である。

謝罪したいとのことだったが、そんなものは鈴には必要なかった。

 

「だったら最初から刺すんじゃないよ」

 

悪態をつく。

当然だと思いながら鈴は自身の個性の特訓をする。

 

彼女の個性は鋼鉄の翼だ。

サイズはおおよそ30㎝。

それを自在に操ることが当面の目標である。

勿論、重すぎて飛べない。

 

ヒュンヒュンと、空間を断ち切るように振り回す。

こんなこと、誰もいない公園でしかできない。

いや、訓練できるような施設はあるのだが、子供のお小遣いでは行けないのであった。

翼の付け根がちょっと痛い。

それはそうだ。

サイズが多少小さいとはいえ鋼鉄の翼だ。

そんなもの、子供の体重を考えてみればわかる。

自分と同じくらいの重さの物を振り回しているのだ。

痛いに決まっている。

 

 

 

何故こんなことをしているのか。

決まっている。

ヒーローになりたいからだ。

 

小さい頃からヒーローに憧れていた。

自分の個性が中途半端なことは自覚できた。

けれど諦めきれなかった。

 

両親を説得してヒーロー学科、それも雄英高校を受けることにした。

そして、何とか受験までに傷も治った。

これでなんとか間に合いそう。

鈴はそう考えて特訓をしていたのである。

 

 

 

「―――――やあ、お嬢さん。元気にしてたかな?」

 

 

 

しかし。

そんなところに。

ついこの間出会った男、ベリアルが現れた。

 

「ッ―――――!」

「おおっと。そんなに興奮するなよお嬢さん。最後まで持たないぜ」

 

ガシャリと翼を突き出すと、飄々とした表情でおどけて見せるベリアル。

胡散臭い。

鈴はそう思って、翼を突き出したまま維持する。

しかし、そんなことを意に介せずにベリアルは近づいてくる。

 

「おいおい、そんなアブナイ物突き出して。お盛んだな」

「っ」

 

まるで普通の翼を掴むように鋼鉄の翼を掴んで、近寄ってくるベリアル。

なんだこいつ、と思いながらも力を込めるが、翼を全く動かせない。

凄い力だ。

 

「おいおいそんな風に睨むなよ。昂ってきちまう」

 

ギリリ、と音が鳴るがそれでも翼は動かない。

それどころか押しやられているようにも見えた。

なんだこいつ。

 

「なによあんたっ!」

 

切れた。

鈴は握りしめた拳でベリアルの顔面へと殴りかかった。

ベキィ! という音と共に顔面へと拳が叩き込まれた。

 

「いきなりかよ。前戯ぐらいしたらどうだ?」

 

ベリアルはその拳を顔面で受けながらも、普通に対応してくる。

ええ……と思った鈴。

というかそんな言葉使わないで欲しい恥ずかしい。

鈴はそんな思いを込めて2発目を打ち込もうとした。

 

しかしベリアルはその攻撃をひらりと回避した。

生意気な……なんて思った鈴だが、そこまで考えて命の恩人に失礼かと思い直した。

遅いけれど。

 

「ふぅん……まあ未熟な感じかな。まだまだ成長期って奴だ」

 

ひたりと拳を受けた顔面を触り、薄く笑うベリアル。

鈴はぞわりと背筋に何かが走ったように感じた。

それくらい気持ち悪かった。

いや怖かった。

 

「この能力ならオレが伸ばせるな。どうだい、オレに師事してみないか?」

「お願いします」

 

しかしその一言で鈴のベリアルに対する評価が一変した。

変態っぽい男から頼れそうな師匠に。

鈴は基本的に現金なのであった。

 

「実はオレの個性も翼でね。きっと役に立てるだろう」

 

バサリ、とベリアルの背中に漆黒の翼が展開される。

その翼には一筋の赤が差しているが、鈴からは見えなかった。

 

 

 

 

 

 

『―――――ふぅん。依り代の少年、()()(ポーン)にでもするのかい?』

 

まあそんなところ。

司はそう返答しながら思考する。

 

ジョギング中にぶっ倒れていた少女。

それを拾ったのは紛れもなく司であった。

病院まですぐそこだったが、不幸なことに体格的に運べない。

そんなわけでベリアル化して運んだのだ。

ついでに個性……ではなく、ベリアルの能力で目立たない程度に傷を癒した。

 

『それとも、あんな格好の女性が好みかい?』

 

ノーコメント。

 

ふわっふわの癖毛のボブカット。

綺麗な栗色の髪色。

それに少女らしい小さな体躯。

それでいてしなやかな筋肉がついている。

正直に言うとタイプだった。

 

とはいえ、この少女とは司として会うことはないだろうと思っていた。

何故なら彼女とのつながりはベリアルの姿だけであったし、何より師弟関係だ。

対等な友人としての関係などは作れないだろうというのが司の判断であった。

 

 

 

翼を振るう。

少女――鈴の翼は鋼鉄のそれである。

剣にもなるし、盾にもなる。

とても硬いし重い、とても強力な武器である。

 

それと同時に欠点もある。

まず彼女が操るには重過ぎるという点。

武器として振るおうとすると、どうしても身体が引っ張られる。

身体の成長よりも、翼の重量が勝っている状態なのである。

 

対してベリアルの翼は蝙蝠のそれのように見える。

しかし、そんな翼でも鈴の鋼鉄の翼を捌いてみせた。

 

「むぅ」

 

暫くして鈴は鋼の翼を畳み、座り込んで唸った。

どう考えても質量では鈴の方が上なのに、ベリアルは簡単に捌いて見せた。

それも先程のように手を使わず、翼だけで。

コンプレックスでありながらも自慢でもあった個性が簡単に対処されて、不満なのであった。

 

「攻撃に移る時に大振り過ぎるのと、それによる身体の制御力不足だな」

「はぁ……?」

 

制御力、と聞いても鈴にはよく分からなかった。

なんというか、わかりきってることをもう一度言われてる気がしたのである。

しかし、それだけでもない気がしていた。

 

「力押しじゃあ相手を満足させられないぜ。時にはテクニックで攻めるのさ」

「はい……」

「じわじわと相手を責め立てるんだ。焦ってたら先にイッちまうぜ?」

 

わかったから恥ずかしい言葉を使わないで欲しい。

鈴はそう思ったが口には出さなかった。

だって教えてもらえなくなるかもしれないし……。

鈴は現金であった。

 

ベリアルを模っている司は何となく物真似をしているが、割と似ていると思っていた。

なにせベリアルが爆笑しているからだ。

なんかムカつくが、まあ似ているということだろう。

 

「それとベルちゃん……あんた飛べるぜ」

「え……?」

 

飛べる。

鈴にとってそれは夢であった。

飛べない翼である背中のそれは、飛べないからこそコンプレックスになっていたのである。

 

それが、飛べるという。

自由に空を舞えるという。

それはどんなに嬉しいことか。

 

「ど、どうしたらいいの!?」

「おいおい焦るなって。教えてやるから、ちょっと大人しくな」

 

思い切り詰め寄ろうとした鈴だったが、あっさりと避けられる。

先程までの疲れも吹っ飛んだ。

それくらいの衝撃だった。

何故そんなことが分かるのか。

どうして確信したのか。

鈴は興味が尽きなかった。

 

「飛べる理由? 飛行機は飛べるじゃないか」

「……!」

 

盲点だった。

そうだ。

鳥のように飛ぶのが間違いだったのだ。

飛行機のように、助走をつけて勢いをつけて飛び立てばいいのだ。

なんて簡単なことに気付かなかったのか。

 

「おいおい。だから焦るなって。早いのはいいがそれだけが美徳じゃないぜ?」

 

すぐに走り出そうとしたら、制された。

どういうことか。

むっとした表情でベリアルを睨む鈴。

しかしベリアルは怯むことなく頭を撫でてきた。

やめろ髪が乱れる。

いや、癖毛のまま放ってある髪なのであるが。

 

「練習する必要があるな。身体が出来上がっていないから鍛えなくちゃならないだろうぜ」

 

ド正論だった。

確かに身体と翼のバランスが取れていないと鈴自身も思っていたところである。

やはり身長と筋力か。

ふんっ、と力こぶを作ろうとしても、出来る様子はなかった。

 

「はははは! いいねぇ。やる気があって」

「むっ」

「いやいや、馬鹿にしてるわけじゃない。むしろ応援してるんだぜ?」

 

何せオレが誰かに教えることなんて、滅多にないからな。

ベリアルはそう言うと、撫でていた手を離して数歩離れる。

少々残念な気持ちになったのは気のせい。

鈴はそう考えたところで即座に頭を振って思考を飛ばした。

 

「まあそんなわけだ。今日はここまでにしよう」

 

それだけ言うと、ベリアルは翼を展開して空へと飛んで行ってしまう。

ぼうっとして見ていた鈴だが、最後に声をあげた。

 

「ありがとうございましたっ!」

 

羨ましさ半分、自分も飛べるという高揚感半分。

そんな思いを込めて感謝の声を上げたのだった。

 

 

 

 

 

『――で、本当に飛べると思うかい少年?』

「飛べるだろうさ」

 

ベリアルの含み笑いを尻目に、司は確信していた。

あの少女――ベルは飛べると。

だって飛行機飛べるし。

騎空艇飛ぶじゃん?

 

『確かにそうだ。それにはオレも考えが及ばなかったよ』

 

笑いながら、ベリアルは肯定した。

そう、きっと飛べる。

 

個性は思い込みによる性能の向上が著しいと司は常日頃思っていた。

そして逆に思い込みによって個性の幅を狭めてしまうことも。

そしてそれはあのベルにも当てはまると思ったのだ。

更に言えばもったいない、と。

 

『それにしてもベル……ベルねぇ?』

「うん?」

 

ベリアルは笑いながらも何やら神妙な感じで呟く。

その様子に司は違和感を覚えたが、すぐにその違和感は消えていた。

隠したいことでもあったのか。

そう思ったが、そもそも狡知相手に駆け引きで勝てるとも思っていなかった。

なのでそれはスルー。

 

ちなみに彼は家に辿り着いた。

その中でチェス盤を取り出して、ベリアルとチェスをしていた。

相手に思考が丸見えになっているようだが、あんまり気にしていない。

そもそも彼らは勝ち負けを競っているわけではなかったからである。

 

『いや、オレの事を知ってるならわかるだろう? バブさんさ』

「……ああ、そういうことか」

 

カチリと駒を動かしてベリアルの駒を取る。

バブさん――ベルゼバブ。

そういえばあの少女はベルだったか。

不思議な縁である。

 

『ああ、そこに動かしてチェックだ』

「あ」

 

腕が勝手に動き、ベリアルの駒が司のキングにチェックをかける。

逃げ場はない。

詰みである。

 

というか身体が勝手に使われていることに、司はちょっとどころではない戦慄を覚えた。

やべーなこれ、って感じである。

ふとした瞬間に勝手に身体と動かされて危機に陥りそうだ、と思った。

そうでなくても薄氷の上にいるような状況だというのに。

 

『いやいや安心しろよ。まだまだ働いてもらわないと困るぜ』

「ならいいんだけどな」

 

チェス盤を片付けながら、ベリアルとの会話を続ける。

疲れるから嫌なんだけどな、とか言いながらも割と喋っているのはなんとなく親近感でも感じているからなのだろうか。

 

司はそう考えて、即座に否定した。

きっとそうじゃない。

きっと。

曖昧な感覚だったが、そう思った。

 

 

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