嘘予告:ファーさん召喚RTA   作:偽馬鹿

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RTAと言ってもゲームのようにガンガン攻略できるわけではないので、タグは付けない予定です(今更)


ファーさん召喚RTA 3

「やった」

 

鈴は雄英高校に合格した。

何とかBクラスに滑り込んだ、というべきか。

結局入学までには空を飛ぶことはできなかったが、それでも善戦したと当人は思っていたが。

 

「というかあの人怖かったなぁ」

 

鈴は恐らくグループトップの成績を叩き出したであろう男子を思い出していた。

そう、爆豪勝己である。

そんな相手から離れてちまちまと削って、なんとか合格したのであった。

 

「はぁー……」

「おや、どうしたんだい? 思春期特有の恋煩いかな?」

「違う」

 

今日も今日とてベリアルとの特訓であった。

しかも学校の敷地内である。

何故ベリアルがここにいるのかは思考から外れていた。

それよりも空が飛びたかったのである。

 

「―――――まずは時速90kmで走れるようになろうか」

「無理っ!」

 

ベリアルの提案に即反応する鈴。

これはもう慣れたもの。

大体無茶なことを言ってくるので、そこから妥協してもらうのである。

 

「ダチョウとやらが飛ぶためには、ジェット旅客機の翼が必要らしいぜ」

「そんなに重くないから!」

「……」

「何その沈黙!?」

 

最近こんな風に雑な扱いを受けている気がする鈴である。

いや、確かに実力は伸びてはいるのだけれど。

なんというか、不服なのであった。

 

 

 

……しかし。

鈴も色々と考えているわけである。

思春期という奴だ。

 

ベリアルという男と話しているとどうにももやもやする。

鈴自身、家族以外の男性と話すことがほとんどなかったからだろうか。

彼女の交友関係の中で、ベリアルは異質な存在であった。

 

「……むう」

 

しかもベリアルは鈴のことをどうとも思っていない様子である。

それが鈴的には不服であった。

そう、不服なのであった。

 

 

 

 

 

『どうだい、ベルちゃんの仕上がりの方は?』

 

カタリ、と駒を動かしながらベリアルは問う。

それに上々、と返しながら駒を動かす司。

もはや自分の腕が勝手に動くことは普通になっていた。

 

実際、鈴の動きは洗練されてきている。

翼の動かし方が丁寧になり、的確になってきている。

ベリアルの姿でもヒヤリとする場面もあった。

()()()()()()()、という但し書きがつくが。

 

 

 

司の状態で展開できる羽の数は今のところ2枚である。

それは天司の能力をそれだけしか引き出せないということでもある。

そしてベリアルは本来6枚羽。

最終的には8枚羽になっていたが、それは割愛。

 

つまり、ベリアルの素の力の3分の1しか扱えないということである。

しかも出力だけではなくコントロール力も3分の1の為、ほとんどの能力がゴミクズ同然になってしまっている。

剣を一瞬だけ展開して切り払う程度のことしかできない。

劣化したゴエティアといったところか。

 

また、ベリアルの姿になった場合は6枚羽の状態まで展開できる。

そして能力もほぼ同じ状態まで引き出せる。

 

 

 

司はカタリと駒を動かしてチェック。

すかさずベリアルが駒を動かしてチェック。

一進一退である。

漸くベリアル相手にチェックできるようになった司であったが、そのまま押し切られてチェックメイトであった。

 

『中々に楽しめたよ。またヤろう』

 

そう言って、ベリアルの気配が消えていく。

と同時にどっと疲れを感じる司。

しかし、少しずつ感じる疲れが弱くなっているようにも感じている。

これもベリアルに侵食されてる影響なのだろうか、と独り言を言う。

 

 

 

今日は個性把握テストだった。

50m走は羽を使った加速である程度。

握力はそこそこ。

立ち幅跳びは羽を使って飛んで難なくクリア。

反復横跳びは羽で微調整しつつ体重移動。

ボール投げはそこそこ。

持久走、上体起こし、長座体前屈もそんな感じだった。

 

とまあ、特に面白みのない結果に終わった。

それはそうだ。

目立つわけにもいかない。

羽があればできる程度の行動しかしていない、そういう個性に見えるだろう。

 

……まあ、入試ではちょっと反則したけれども。

 

 

 

それはともかく。

明日は何をするんだったか。

司は曖昧な記憶を辿ろうとしながら、しかし眠気に負けて眠りに落ちた。

 

 

 

 

 

「え……余りですか?」

「うん、すまないがそういうことになる!」

 

司は余ったらしい。

確かに奇数のクラスメイトがタッグを組んでいくとそうなるのも必然である。

だがしかし、こうも見事にハブられるだろうかと司は思った。

 

『これは傑作だ。運がないにも程がある』

 

うるさいな。

司が呟くと、ベリアルの気配はすぐに消えていった。

別に出てこようとしたわけではないらしい。

 

 

 

「というわけでBクラスの子と交流試合といこう!」

 

そんなやり取りをしている間に。

何やらお相手が決まったらしい。

入口の方から誰かがやってきた。

 

「……鈴です。よろしく」

「む……司です。よろしくね」

 

むすっとした表情で現れたのは、なんと鈴であった。

そうか、Bクラスで合格したのか。

なんとなく安堵した司であった。

 

しかし、何故あんなに機嫌が悪そうなのか。

いつも会う時はそこそこ機嫌がいいのに、と思ったところで思い出す。

常日頃、彼女と出会う時はベリアルの姿だったと。

 

「ははーん……」

 

こいつ、ベリアルに好意を持ってるな?

司は確信した。

司は単純だった。

 

「なんですか?」

「いや、別に?」

 

したり顔で返事をする司に、さらにむっとする鈴。

どうやらなにか考えてることには気づいているようである。

 

「とにかく! 試合をすればいいんですね!?」

「おお、怖い怖い」

 

司は少し笑いながら挑発する。

ベリアルの影響である。

それに鈴はさらにむかっとした表情を浮かべる。

一触即発状態である。

 

「えーそれでは、市街地に移動して戦ってもらうからね!」

 

先生の声で緊張が解ける。

うん、まだまだ未熟だなぁ、と司は思った。

 

 

 

 

 

とりあえず、指定された場所にまで辿り着いた2人。

そして双方示し合わせたかのように動き始めた。

 

 

 

バサリと司が羽を展開する。

枚数は2枚。

いつもの性能で頑張るつもりである。

 

一方鈴は鋼鉄の翼を広げる。

鋭いそれは敵意の塊であった。

その敵意は今、全て司に向けられていた。

 

 

 

両者が激突する。

鈴は鋼鉄の翼を突き出して。

司は紫色の剣を振り下ろした。

 

「っ!」

 

鈴は突如剣を取り出した司相手に一瞬怯んだが、すぐに立て直して左翼で薙ぎ払う。

司はその勢いに逆らうことなく剣を手放し、また新たな剣を展開して振り下ろす。

 

「っくそ、反則でしょ!」

「口が悪いなぁ」

 

悪態をつく鈴に率直な感想をつい言ってしまう司。

いや本当、ベリアル相手とは全く違った表情しか見ない。

逆に楽しくなってきた司である。

 

ちなみに司が剣を出している理由は、先生にバレていたからである。

一瞬だけ展開した奴を見抜けるとは、流石先生だなと思った司だった。

 

とにかく。

剣を隠す必要がなくなった司は、バンバン使うことにしたのである。

振り下ろしたそれは鈴の右翼で受け止められた。

 

司はまた剣を捨てる。

そして剣を更に展開して振り上げる。

いくらでも出せるから使い潰しても問題ないのである。

 

「ずるっずるいっ!」

「こういう個性なもんで」

 

バキンバキンと司の剣を弾き飛ばす鈴だが、重い鋼鉄の翼で何度も弾き飛ばすのは疲れるようで、次第に息が続かなくなっていく。

 

しかし、実は司も疲れていた。

剣を取り出すには結構な神経を使う。

何故ならベリアルの能力を引き出しつつ身体を動かすのがきついからだ。

能力を引き出す際に、いつもベリアルが出てくる感覚が彼を襲うのである。

 

「まあ最近慣れてきたけ……どっ!」

「何の話……!」

 

何本目か分からないほど使い捨てた剣を更に取り出し、司は襲い掛かる。

鈴はそれを両翼で弾き飛ばそうとする。

……振りをして肩で剣を受け止めた。

 

「む……!」

「死ね」

 

まさかの殺害宣告である。

司を挟み込むように、鈴の鋼鉄の翼が放たれた。

 

血が飛び散る。

仕留めた、と鈴が感じた。

肉を裂いた感覚が鈴に伝わったからだ。

 

 

 

―――――しかし。

 

「残念」

「っ!」

 

裂いたのは司の身体ではなく、羽だった。

身体を守るように広げて鋼鉄の翼を受け止めたのだ。

勿論怪我はした。

しかしそれは身体に直撃した時よりもマシだろう。

 

しかも硬い……!

鈴は司の羽が予想以上に硬いことに気付く。

裂いたのは表皮だけ。

その中の骨のような部位を裂くには至らなかったのだ。

 

「というわけでどん」

「痛っ!」

 

鈴が驚いている間に、司が詰め寄り蹴り飛ばす。

後ろに倒れた鈴の首筋に、剣を突きつけて動きを止めさせた。

 

 

 

 

「チェックメイト」

 

 

 

 

 

「むむむむむ……!」

「どうしたの? 不機嫌そうだけど」

 

拳藤一佳は机に突っ伏して唸っている鈴に声をかけた。

A組との交流試合に出たとのことだったが、それからこの調子である。

辛気臭いったらありゃしない。

 

そう考えて声をかけたところ、どうやらA組の相手にコテンパンにやられたらしい。

物間寧人がスススッと寄って来て何か声をかけようとしたが、その前にシャットアウトした。

ろくなことにならない。

 

「まあ、そのね」

「うん」

「前に言ったことあるじゃない?」

「ああ、えっと。師匠がいるんだっけ?」

「そう」

「それがどうしたの?」

 

話を聞いてみると、なんとA組の中にその師匠と戦い方が似ている人物がいたとのこと。

それも鈴の対戦相手だったようで。

 

「それで、嫉妬したと」

「そんなこと言ってない」

「いや言ってるでしょ」

 

顔に書いてある。

とは言ったものの、本人は絶対そんなはずないの一点張り。

これは自分から認めようとしないな?

と思って拳藤一佳は言い訳を始めた鈴の話をスルーした。

いやこれ、ただの惚気でしょ。

そんなことを思いながら、そそくさと退散するのであった。

 

 

 

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