皆さん準備は整いましたか?
決着はついた。
人数的に16人までになるのだが、司のチームはギリギリで範囲外。
暴れそうな鈴を宥める女子2人を横に、司はくじを作っていた。
そして、
「……で、どうするの?」
「くじ引きで決めればいいんじゃない?」
「はい」
「司ちゃんえらいー」
当たり2本と外れ2本。
合計4本のくじを握って、司は3人に向けて拳を突き出した。
「当たった奴が出るってことで文句ない?」
若干鼻息の荒い鈴。
まだ怒っているようだ。
司は頷いて同意した。
他の2人もそれでいいと返した。
「「「せーのっ!」」」
結果。
鈴と司が当たりを引いた。
第3試合に司対上鳴。
第7試合に鈴対切島。
「ふむ……」
『どうしたんだい
「いや、不思議な縁もあるものだなって」
ベリアルの台詞の大半をスルーし、司は思案する。
ほとんど原作と同じ流れになっている。
それも司たちが埋め合わせのような形になっている。
何やら不思議な感覚である。
レクリエーションをこなし、司は試合を眺める。
得に代わり映えのしない流れだったことだけは覚えている。
しかし細かいところまでは覚えていなかった。
実のところ緊張でもしていたのだろうか、と自問自答してみるが答えは返ってこなかった。
「空飛ぶえーっとボーイだよな? フライングボーイ黒羽司!
スパーキングキリングボーイ上鳴電気!!」
何やら誤解されている司だが、気にも留めずに全身の力を抜く。
4枚羽を展開できるようになってから、本格的な戦闘で能力を使うのは初めてだ。
できるだけ
「そういえばUSJでは助けてもらってたなー。ありがとうよ」
「ん? ……クラスメイトだし、気にしなくていいよ」
不意に、上鳴電気が声をかけてくる。
司はそれに生返事で応える。
「まあ、ここでは勝たせてもらうけど……なっ!」
上鳴電気はその言葉と共に電流を地面を通して放出した。
バリバリと派手な音がするが、威力は騎馬戦の時よりも弱いだろうか。
そんなことを考えながら、司は2枚羽で飛翔する。
むざむざ喰らいに行く必要はない。
遠距離から仕留めればいい。
「やっぱり空飛んで逃げるよな……でも、俺だって負けてねぇっ!」
上鳴電気は空中に手を向け、電気を放出する。
するとその手から、司に向かって電気が奔った。
初めてみる攻撃で一瞬驚いたが、すぐさま司はその電気を回避する。
「くそぉ初披露だったのになぁ!」
「まあ、驚いたよ」
「驚いてるようには見えねー!」
すぐさま次の攻撃を繰り出す上鳴電気に、司は今のところ反撃せずに回避を繰り返す。
無理する必要はない。
どうせ途中で電池切れだ。
しかし、と司は考える。
本来であれば放電することはできるがこれほどのコントロールを行うことはできなかったはずだ。
それが、何らかの理由でできるようになっている。
それは何なのか。
司は何となく気になった。
「どうした黒羽司! 空を飛んで回避するだけかー!? それとも何か隠し種でも持っているのかー!」
「持ってるな。担任の俺にも隠すような奴を」
「マジかー!」
実況にバラされる秘密。
いや、秘密というほどではないが。
ゴエティアの剣のことである。
「げ、やっぱりか!」
「悪いね」
「うおっ! 危ねぇ!」
司はゴエティアの剣を展開し、上鳴電気に向けて射出する。
上鳴電気はギリギリのところで避けようとするが、ちょっと軌道を変えて直撃するように誘導する。
それに気付いた上鳴電気は即座に反応して大きく回避をした。
中々に反射神経が良い。
「うおー! 空を飛ぶだけじゃなくて遠距離攻撃までできる! こいつは無敵かー!?」
「あれは黒羽司の蝙蝠の牙だ。本数制限はあるらしいが。少なくとも俺は見たことないな」
「やべー能力持ってやがるぜ! 流石A組かー!?」
そこは関係ないんじゃないかな。
司はそう思いながらも剣をどんどんと展開して次々投げつけていく。
いつもより剣の精度が高い気がする。
司はそんなことも考えながら、色々と試していた。
「うおおおおおおっ!」
「ん……?」
10本ほど投げたところで、上鳴電気が全力疾走して司へと向かってきた。
遠距離戦ではらちが明かないと思ったのか、接近戦を挑もうとしているようだ。
「まあそんなことを許すわけないんだけど」
ひらりと宙を舞い、地上から手の届く範囲から逃れる。
とはいえ場外ラインの上には出ない。
何が起こるか分からないからだ。
司は慎重であった。
「いくぜ……今考えた必殺技!」
上鳴電気が体操着を脱ぎ、司に向かって投げつけてきた。
司はそれを見て一瞬動きを止めて斬り裂こうと考えたが、即座にやめて素直に回避した。
すると、地面にまで落ちた体操服から電気が迸った。
なるほど、電気を溜めた服で砲撃か。
中々考えるじゃないか。
司は感心した。
しかし反撃もここまでか。
何となく上鳴電気の雰囲気が緩くなってきた。
電池切れだ。
司はゴエティアの剣の向きをひっくり返し、柄の方で上鳴電気の頭をぶっ叩いた。
「ぐえー……」
「決着! 勝者は最後まで冷静に対処し続けた黒羽司だぁー! というかいつまで飛べるんだソレ!?」
「そりゃ飛べるだろ。蝙蝠なんだから」
「そっかー!」
司はゆっくりと地面へ降り、息を吐く。
地味に緊張した戦いであった。
なんだかんだ電気で動きを止められたら負けに繋がっていただろう。
流石にそんな状況になっても戦うのは諦めなかっただろうが。
地面に突き刺さっている剣を見る。
それはついこの間USJで使ったゴエティアの剣のそれとは大きさが異なっていた。
硬く、大きくなっていたのである。
やはり、この状態でも性能は上がる。
司はそう確信して剣を全て消滅させた。
復旧の邪魔になるからだ。
さて、観戦に戻ろうか。
司は競技場をゆっくりと降りていったのだった。
「いやー強かったな司!」
「凄かったよ司君!」
観客席に戻ると、控え室に行っていないクラスメイト達が集まってきた。
それはそうだ。
戦闘能力で言えばかなり高いであろう上鳴電気に対してほぼ完封勝利を収めたのである。
「あ、ありがとう」
司も勢いに押され気味だ。
質問攻めにあい、司は対応に追われた。
その為、じっと司を見つめる鈴の存在に気付くことはなかった。
「……ふん」
「鈴、どうしたの?」
「なんでもないっ!」