「演劇の練習に付き合ってほしい?」
ある日のこと、私はしずくちゃんに頼まれ事をされていた。
「はい。お願いできませんか?」
「でも私で練習になるかな?」
演技とか出来ないし……私じゃなくて他の人に頼めば……
「いえ、これは先輩にしか頼めません。台詞はなく、ただ立っているだけでいいんです」
それだけなら……いいかな?
「いいよ。何処でやる?部室?講堂?」
「そこの空き教室でやりましょう」
指差した教室は……確か昨日璃奈ちゃんとキスした……
空き教室で練習が始まった。
『どうして……貴方は私の気持ちに気づいてくれないのですか?』
こうして近くで見ると本当にしずくちゃんは凄い……ただ立ってるだけでこんなに演技に引き込まれる
『私は貴方の事が好き……好きです。だから……お願い……私の気持ちに気づいてください』
涙を流すしずくちゃん。私は咄嗟に駆け寄ろうとしたけど、これは演技だと気づいて止めた。するとしずくちゃんは私の方を見た。
『私は……貴方が大好きです……私は貴方の恋人になれますか?』
「あ……」
私も好きと答えそうになった……でもこれは……
「貴方が好きです。貴方の気持ち……教えてくれなくてもいいです。ただ……私の想いがこもった……」
しずくちゃんは私に近寄り、そっとキスをしてきた。
一瞬演技かと思ったけど……しずくちゃんの持つ台本は……白紙だった。
「ありがとうございます。先輩。練習に付き合ってくれて」
「練習……じゃないよね……その台本……白紙だし……」
「バレてましたか。昨日、通りかかった際に璃奈さんとキスをしていたのが見えたので……私にもしてもらえないかと思い……」
「それで……こんな形で」
「すみません。正直に話すのが恥ずかしいので…………」
しずくちゃんは顔を赤らめていた。だからってこんな演技の練習なんて手を使ったのか……
「こんな私でも先輩の恋人に…………理想の恋人になれますか?」
しずくちゃんの問いかけに私は…………
「もう充分……理想の恋人だよ……」
そう言ってキスをするのであった。
「私……こんな風にキスされたら……先輩の事……もっと好きになって……先輩の前だと……普段の通り出来なそうです……」
「いいんだよ。私の前では私の事が好きなしずくちゃんを見せてほしい」
「私……アドリブ……苦手ですから……はっきりと好きだって……愛してほしいと言いますよ」
「うん、言って……私も言うから」
「みんなと同じように愛してくれますか?」
「愛するよ」
「先輩……大好きです」
次回は一年生編のラスト、かすみちゃんです