ゼロの使い魔 黒騎士物語。   作:刀龍

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第三話 新しき日々の始まり

『ん……もう朝か…』

 

ふとゼルギウスは窓の外を見る。

 

やはりそこには、私の知らない世界がひろがっている。空を見上げればまだぼんやりと私の世界にはない二つの月が残っていた。

 

のどかな草原が広がり鳥がさえずっている、私のいた世界にはない平穏がこの世界にはあった。いや正確には今頃は私のいた世界も我が好敵手によって平穏な世界になって居るのではないだろうか。

 

私は、その世界には不必要だった。それだけのことだ。

 

そして私は、新たなこの世界に呼び出された。

私を使い魔として召還した、まだ後ろのベッドで眠る少女によって。

 

まだあどけない幼さが残る寝顔を幸せそうに枕に埋めているこの少女は私を召還した、言わば主人のような存在だ。

 

昨日の昼間の強気な態度が嘘のように可愛らしい寝顔をしている、将来大変な美人になるであろうと思える、しかし私はこの幸せそうに眠る少女を起こさなければいけない。

 

使い魔の仕事の一つに主人を起こすと言うものがある、と昨日彼女に説明を受けた。

私は彼女の使い魔にあるからして、彼女を起こすという私の使い魔としての初仕事になる。

 

気持ちよさそうに寝ている彼女には悪いのだが、このゼルギウス、使い魔として主人を起こそうと思う、何故かよくわからないがこの状況を楽しんでいる私がいた。

 

 

『ルイズ、朝だ起きてくれないか?』

 

『ん…もぅ朝なの?』

 

と寝ぼけているのか可愛らしい声をだして彼女は眠りから覚めたようだ。

 

 

『ん……あんた…だれ?』

 

『ゼルギウス、君が召還した使い魔だ、君を起こすことが仕事と言うので起こしたのだが…もう少し寝るか?』

 

『ん…そう言えば召還したわね…ううん起きるわ、着替え取ってくれる?』

 

目を覚ますと目の前に黒尽めの鎧を着込んだ男が私の目の前にいた。

 

一瞬だれ?となったけど声を聞いて昨日召還した、私の使い魔ゼルギウスと分かった。

兜をつけていたから顔が伺えないけど、私にしては都合がいいかもしれない。

 

だって彼の顔がみえると恥ずかしくなってきて、雑用を頼めなくなっちゃうから。

 

私の使い魔のくせに魅力的な顔をしているから、昨日の夜に下着をもたせたときには恥ずかしさで顔が沸騰するかと思った。

 

でも兜をしていれば、なんだかゴーレムみたいだから頼みやすくて助かる。

 

顔が見えないのは少し残念な気もするけど………

 

『ん?どうしたルイズ?私の格好に何かおかしい所でも有るだろうか?』

 

『なっ、なんでもないわよ、てゆーか着替えるからそのタンスの二番目の服出して』

 

『そうか、ならいいのだが』

 

じっーとこちらを見る、ルイズの視線を感じる。

やはり、学校に鎧はいけないのだろうか場違いかもしれないから、今度ルイズに頼んで服でも買いにいかせてもらおうと思いながらタンスを開け恐らく学校の制服であろう服を取り出した。

 

『この服でいいのだろうか?』

 

『そうね、その服で大丈夫よ、えっとその…、それじゃ着せて』

 

『質問なのだが、使い魔とはそこまでするのか?』

 

『そうよ、下僕や召使いがいる貴族は服を自分でなんか着ないのよ、いいから早く』

 

うん、やはり兜をつけてくれていた方が頼みやすい、とルイズは残念なような少し楽になったような微妙な心境になる。

 

とルイズに服を着せ準備が整ったところでどうやら朝食を食べに行くらしく部屋を出ると、隣に同じ様な作りの扉が三つ並んでいた。

 

そしてその扉の一つから燃え盛る炎のような赤色の髪をした少女が出てきた。

 

をルイズを可憐と表すならば彼女は妖艶、男を誘うような挑戦的な目つき、我を見ろと言わんばかりの大きく張り出した胸、くびれたウエスト、キュッと引き締まったヒップ、すらりと伸びたなまめかしい脚、どんな男の目にも止まるであろう絶世の美女だ。

 

だが、ゼルギウスにしてみれば彼女の様なタイプははいて捨てるほど出会ってきたのでさして気にはならない、それに彼女はまだ若いと彼は結論づける、色々な経験をした凄みのある色気がない。

彼からしてみればまだまだ、ふつうの女の子、と言う感じなのだが、隣のルイズはそうでもないらしい。

 

『あら、おはよう、ミス・ヴァリエール』

 

『ごきげんよう、ミス・ツェルプストー』

 

交わしてる言葉次第は清々しい朝の挨拶なのだが彼女達の様子がおかしい。

 

ルイズは邪魔者が来たと言わんばかりに睨みつけているし、ツェルプストーと呼ばれた彼女の方は挑発的な目でルイズよりも頭二つ大きいので見下ろしていた。

どうした?と思って見ていると。

 

『それにしても、本当に人間を召還したのね、フフフ、傭兵とか言う話だっけ?アナタ本当に召還したの?それにその重そうなで暑そうな鎧、動けないんじゃなくて?』

 

アイツは私を小馬鹿にしたような笑いで言ってきた、無性に腹が立つ。

 

『うるさいわよ!この乳デカ女!またとごぞの男でもたぶらかして聴いてきたんでしょ!それにあんたのその重そうで、デカい乳よりかは重くないわよ!』

 

ここぞとばかりに言い返してやると、アイツは顔を悔しさに歪めた、ざまあ見ろと思って睨みつけていると、アイツはまたニヤリとした笑みに戻り。

 

『使い魔って召還者の実力表しているって聴くわよね?人間を召還するなんて聴いたことないもの、流石ゼロのルイズ、伊達じゃないわ、召還したかも怪しいけど』

 

フフフとアイツは口に手を当ててわざとらしく笑う。

 

『それに何回も失敗したって言う話じゃない?私は一発で成功したわ、それにこの私微熱のキュルケにピッタリの使い魔をね、おいでーフレイムー』

 

と彼女が呼ぶと火に近づいたときの独特の熱気と共に、牛ぐらいはあるであろうヌルリとした光沢のある真っ赤なオオトカゲがでてきた。

 

(ほぅ、この世界にはこんな生物もいるのか…)

 

とゼルギウスは兜の奥にある目を関心ともに細める。

 

ルイズは熱気と悔しさに顔を歪めていた。

 

『どう?火竜山脈のサラマンダーよ~、こんなに大きくて尻尾の炎が立派なのはそうはいないわ、好事家に見せたらお城だって買えちゃうわよ、うふふ、私にぴったりでしょ?ルイズ』

 

『ぜっ、ぜっんぜん、う、うらやましくなんてないわ!!ただの少し大きくて赤いトカゲじゃない!』

 

『あらそう?でも顔には悔しくては仕方ないですー、って書かれているわよ?うふふ、そうよね、悔しいわよね~、だって私は高貴なサラマンダー、あなたは重そうな鎧をつけた雇った傭兵、悔しくて仕方ないわよね』

 

フフンと自慢気にそのルイズとは比べものにならないほど豊かな胸を反らせる。

 

ふかー!とルイズは威嚇する猫のように悔しげに睨みつける。

 

(んふふ、少しルイズをびっくりさせてやろうかしら?フレイム、あいつの顔の前に火を吹いてびっくりさせてやりなさい、んふふふ絶対びっくりするわ)

 

キュルル、とフレイムは主人の要望に応えることにした、この人間の小さき少女には悪いが他ならぬ主の頼みだ仕方がないと思い、火を吹くため口を開けようとしたとき。

 

ズンッ!という重い風切り音とともに目の前に剣が振り下ろされた。

 

『それ以上我が主に近づくな。何かするつもりなら斬るぞ、身の程をしれ。爬虫類。』

 

腹に響くような低い声で目の前の人間が剣を向けてきた、フレイムは命の危機を本能が感じ取っていた。

 

このフレイムと言うサラマンダーは、火竜山脈でも上位に位置する魔物の一つだ、そしてフレイムはそのサラマンダーのなかでも大きくて強者の部類に属する。

 

そのフレイムが、絶対的に勝てないと思える相手が目の前にいた。圧倒的強者。このフレイムより明らかに上の存在。例えるならば龍に睨まれた蛙、フレイムは目の前に死の暴風を感じ取り、恐怖に震るえ逃げることも出来ず、ただその場に固まっていた。

 

その時スッと剣がおろされた。その場に流れていた死の空気が消え、目の前の黒い鎧を纏いし人ならざる強さを持つ人間が剣を納めた。

 

『トカゲよ、私の気が変わらぬ内にされ。』  

 

フレイムは目の前の男が何を喋っているのかよくわからなかったが、去れと言われたことはハッキリと理解した。

 

ルイズに火を吹こうとしていたトカゲは、すこし忠告したらコクコクと頷き、キュルケと言う彼女の腕の袖をくわえて、凄まじい速度で去っていった。

 

『ルイズ?大丈夫か?』

 

『あっ、えっ!うん、大丈夫よ』 

 

私はただ呆然としていた、私の使い魔のゼルがキュルケのサラマンダーを脅しだけで追い払ってしまったことに驚きを隠せなかった。

 

だって、仮にもサラマンダーそれも火竜山脈の大きくて見た目はトカゲでも竜種に属するのに彼は威嚇だけでサラマンダーを動かなくした、その時の彼の殺気にその場にいた私とキュルケも動けずにいた。

 

恐怖のあまりに。

 

本当に凄かった、人が放てる殺気なのかと思うくらい凄かった、まるで隣に神に価する生物がその身を怒りに震わせているようで、一種の感動すらおぼえたぐらいだ。

 

だから彼の言葉にすぐ反応できなかった。

 

『そうか、何もないか良かった。あのトカゲが主人に命じられたのか知らんが、何かしようとしたのでな、少し脅したのだ。驚かせてしまったならすまない。』

 

『ううん、大丈夫よ!確かに少しびっくりしちゃったけど…でも…』

 

彼は兜で目が見えないが申し訳無さそうに頭を少しうなだれていた。

 

確かにビックリしたし怖かったのも確かだ、でもそれ以上に感じたことがある。

 

私の為に怒ってくれたことが嬉しかった。

 

キュルケのサラマンダーを追い払えた、それも威嚇だけで。

 

なんだか、私の使い魔なのかと疑ってしまうぐらいだけど、でもなんだか私の努力が報われた気がして、ちょっとだけだけど心が軽くなった。

 

『流石私の使い魔って思っただけよ!、ふふ』

 

 

彼女が嬉しそうに笑っている。

 

私も何故だか嬉しくなってしまう、やはり彼女の使い魔として心も通じ合うのか分からないが、こんな気持ちも悪くない。

 

使い魔と言うより騎士の守るという本分にそっているからなのか、分からないが。

 

 

『さぁゼル、おなかも減ったし朝ご飯食べ行くわよ!』

 

 

『了解、ついて行くので案内を頼む』

 

 

とルイズと歩き出す。なんだか騒がしい一日になりそうだ。

 

 

 

そして、今思えば私の知らない沢山の幸せがここから始まったのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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