UNITIA 神託の使徒×終焉の女神 -BEYOND THAT-   作:トブト

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〜Prologue〜 動き始める物語 その3

 

 

 

 

 19

 

 

 

 「おいしーーーー!!」

 

 ひと口目から溢れんばかりの笑顔を振りまく小さな郵便屋。

 アリアお手製のシフォンケーキを気に入ったのか、次々とその小さな口へケーキを運んでいく。

 ひと口食べるごとに笑顔を振りまくのでそれに釣られて調査団一行もまた笑顔になる。

 

 「うふふ。そんなに焦らなくてもケーキは逃げたりしないよ?ねぇ、マキア」

 「大丈夫…この世の万物はいずれ自然へと還る…だから今ここで私が摂取しても結局はゼロになる…大丈夫…」

 「マキア…」

 

 約一名謎の悟りを開き始めている横で、メルメルはあっという間に皿の上のケーキを平らげてしまうのだった。

 

 「ごちそうさまです!とっっても美味しかったです!アリアさん!」

 「んふふ♪お粗末様です♪」

 

 小さな郵便屋が食い気味に絶賛する中アリアも微笑みながら応える。

 

 「ケーキを食べたら元気が出てきました!今ならより多くの人たちにハッピーをお届け出来そうです!」

 

 そう言って早々にメルメルは赤いショルダーバッグを肩に掛けて立ち上がる。

 

 「あれ?もう行っちゃうの?もう少しゆっくりしていけばいいのに」

 

 純白ワンピースが引き止めようとするも。

 

 「いえ!大変ありがたいお誘いではありますがまだまだお届け物を待っている方々がいますので!また今度お時間合う時に誘っていただけると嬉しいです!」

 

 やる気の過充電をされた郵便屋を止められそうな者はここにはいなさそうで。

 

 「そう…分かったわ。でもあまり無茶しちゃダメだからね?配達だって言っても大変なこともあるんでしょ?」

 

 より多く、たくさんの人たちへ幸福をお届けすることを信条とするメルメルは必然その届け先は多岐に渡り、ネオラント、ミストレアの二世界を方々にひとりで飛び渡る。たとえレリックによる恩恵があるとしてもその負担はひとりのかよわい少女には背負いきれないだろう。

 しかし、そんな心配は無用と言わんばかりに小さな郵便屋は答える。

 

 「大丈夫ですよリオノーラさん!なんてったってボクのレリックには跳躍とは別に届け先へと一瞬で瞬間移動してたどり着いちゃうことも出来ちゃうんですから!」

 

 メルメルのレリックの能力には跳躍以外にも届ける物と届け先を明確にイメージしただけでその場に飛ぶことの出来る瞬間移動がある。

 これによりたとえ世界の果てであろうとも彼女がイメージ出来れば一瞬で配達することが出来る。

 まさに配達運送業の者にとって理想的な能力に小さな郵便屋は誇らし気に胸を張る。

 

 「へぇ…さすがは風の配達人ね」

 

 えへへ、と慣れない異名に照れくさそうにするメルメルの横で。

 

 「それだ!」

 

 と、突如リアンは声を張り上げる。

 

 「うわわっ!?えっ!?なっ、なんですか!?」

 「ど、どうしたのよリアン!?いきなり大声出して!?」

 「んぐっ………!!?」

 「マ、マキア!?大丈夫!?アリアさんなにか飲み物を!喉を詰まらせたみたいです!」

 「は、はい!こちらに!」

 

 周りが短髪団長の大声に驚くなか、当の本人はというと確信めいた顔つきでメルメルの顔を見つめ続けていた。

 

 「リ、リアンさん…。そんなにまじまじと見つめられると……ボク………」

 

 短髪団長から注がれる熱い視線から隠れるように照れた郵便屋は帽子を目深に被る。

 

 「ちょ、ちょっとリアン!」

 

 突如ふたりの間で繰り広げられる甘酸っぱい雰囲気に慌ててリオノーラが引き離そうと短髪団長の服を引っ張る。

 

 「どうしたのですか?リアン」

 「戻りまし…えっ!?マ、マキアさん!?大丈夫ですか~!?」

 

 そこにいずこかへ行っていたテラとアンネマリーが戻り、場は混沌へと誘われようとしている中でリアンは興奮気味に口を開く。

 

 「ジェイニーだよ!ジェイニー!メルメルのレリックがあれば見つけられるかもしれない!」

 「あ」

 

 そこで純白ワンピースも何を言わんとしているのかを理解したようで。

 

 「そうか…!メルメルにジェイニー宛ての届け物をお願いすれば…!」

 「そうすればメルメルのレリックでジェイニーの居場所が分かるかもしれない!」

 

 ようやく活路を見い出せたふたりは一喜一憂するなか、期待の眼差しを小さな郵便屋へと向ける。

 

 「え、えと…」

 

 一方、未だ状況が飲み込めていないメルメルは困惑を隠せない様子でいた。

 

 「そ、その…ジェイニーさんって方にお届け物があるってことでしょうか?それでしたら引き受けますが…」

 「あ、そか。まず届け物がないと。なにかある?」

 「うーん………あ、なら…」

 

 と、しばらく考え込んでいた短髪団長は近くにあった紙とペンでさらさらと簡易的な文章を書きあげる。

 

 

 『ジェイニーへ

  リアンです。お元気ですか?久しぶりに会いたいです。

  またみんなで食べ歩きしながら一緒に遊びましょう。

  リアン・ドラサールより』

 

 

 「これでいいかな?」

 

 出来上がった文を純白ワンピースに見せる。

 

 「………文面はともかくリアンって字ヘタね…」

 「えっ!?そ、そう!?」

 

 指摘されて改めて自分の書いた文字を見るも、リアンはミストレア人。ネオラントとも交流が多いため必然ネオラントの文字を書く機会が増えるために覚えたが、まだ覚えたてということもあり字の良し悪しを判断することなど出来ないのであった。

 

 「き、気持ちがこもっていれば大丈夫ですよ!」

 

 必死な形相で自分の書いた字を検分する短髪団長にメルメルはフォローを入れてくれるも今はその優しさがリアンには痛い。

 

 「…………とりあえずこれをジェイニーに…」

 

 気落ちしながらも手紙をメルメルに渡す短髪団長。

 あとでネオラントの字の練習をしようと強く心に誓うのだった。

 

 「はい!お預かりします!それでこちらジェイニーさんはどちらにおられますか?」

 「え」

 「え?」

 

 この時リアンは思い違いを起こしていた。

 

 メルメルのレリックは届け先に届け物を一瞬で送るものではなく──『届け先の相手』と『届け物』、そして『届ける場所』を明確にイメージすることで瞬間移動を可能にするもので。

 いずれのひとつでも──例えばメルメル自身が行ったこともないような場所だと能力は発現しない。

 

 つまり、相手がどこにいるのか分からなければ瞬間移動は出来ない。

 

 「…………」

 「…………」

 「えと………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ふりだしに戻る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 20

 

 

 

 「ぷはぁっ!?……はぁー…死ぬかと思ったわ……」

 「マキアーーー!!無事でよかったよー!」

 「マ゛キ゛ア゛さ゛ん゛~!生き゛て゛て゛よ゛か゛った゛て゛す゛~!!」

 

 そして青髪制服は生還した。

 

 

 

 

 

 

 

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