UNITIA 神託の使徒×終焉の女神 -BEYOND THAT-   作:トブト

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〜Symptom〜 揺れる水面 その1

 

 

31

 

 

 

キルシュバウム王国・キルシュバウム城。

 

荘厳と様式美を兼ね、要人を守る堅牢さも備えており、国の象徴としても機能するミストレアの中でも歴史と伝統が長い建築物。

人によっては崇拝の対象とも言えるこの城塞への立ち入りは一般の者は基本入れず、如何に王国を守護する守護騎士団と魔法師団といえども限られた者しか王室への出入りを許されない。

 

王室・謁見の間。

 

「ふざけるな‼︎」

 

煌びやかな内装で来賓を迎える場であるその広間で後ろの髪を結び端正の整った顔立ちでありながらも威厳ある風格を漂わせる重厚な鎧を身に纏う女性騎士が澄んだ声を張り上げて広間を轟かす。

 

 

アセリア。

 

バウム王国守護騎士団団長。

王国最強の騎士として名高い四賢人のひとり。

王都、国を守る者のトップとして責任感が強く、常に上を目指す姿勢と騎士道精神には人心を自然と掴む程のひたむきさと強さがあり、人望も厚い。

彼女に憧れて騎士団に志望する者も多く、誠実な人柄に惹かれて彼女の元には人が集まっていくのだが──。

 

この時ばかりのアセリアからは他の者を近づかせないような気迫めいたものを感じさせられるのであった。

まるで戦場さながらの殺気を放ち、誠実な騎士は目の前の人物を睨みつける。

 

「アセリアさん落ち着いてください。女王陛下の御前ですよ。仮にも王国の最後の砦とも称されるあなたが冷静さを欠くなどそれこそ問題なのですよ。今は慎んでください」

 

そのすぐ側で緑を基調とした貴族の出で立ちをした服装の上から鎧を身につけ、頭にはこの国の大総督という役職を象徴する戦場を見渡す鳥をモチーフにした軍帽を被る知性溢れる黒髪ロングツインテールの女性。

 

カロルの忠告は功を奏し、今にも腰に差した剣を抜きかねない勢いだった誠実な騎士は己を抑えて冷静さを取り戻したかのように取り繕うがその憤りまでは隠せてはいなかった。

その様子にやれやれと緑の軍師は肩を竦めると、そのまま視線を現在進行形でその誠実な騎士に敵意を向けられているにも関わらず余裕ある笑みを崩さない気取った態度を見せる人物に目を向ける。

 

「アルドルフさん。先程の発言に関してですが私からも説明を願いたいところです」

 

声を掛けられた人物──紫の髪に社交場に出るような中世の礼服を纏った身なりの整った男性──バウム王国宰相でありアセリア、カロルと並ぶ四賢人のひとりであるアルドルフは余裕の笑みを浮かべたままに口を開く。

 

「説明も何も……言葉通りの意味ですよ」

 

そこには含みもあるような雰囲気を漂わせて。

 

「現在各地で執り行われている貴族たちの独断による武器の製造と領民たちへの徴兵はこのまま継続、義務化させ、ミストレア全体の戦力の強化を推進致します」

「………………っ‼︎」

 

紳士な宰相の発言にまたも激情に駆られそうになるアセリアを目で制して緑の軍師は続きを促す。

 

「……理由としましては以前私自らがネオラントへ視察に向かった際──」

「あぁ、あの珍しく貴方以外の四賢人三人の意見が珍しく一致した近年稀に見る奇跡を起こしたにも関わらずそれでも押し通した観光の時ですね。何か面白いものでも見れましたか?」

「……コホン、視察へ向かった際──」

 

そこでアルドルフは自身が身をもって体験した出来事──元封鎖エリアB3『クレーブス』の一件を話した。

内容自体は以前の報告により四賢人全員に情報を共有されてはいるが、ここで女王のいる前で改めて語って聞かせることに意味があった。

そしてそれが狙いでも──。

 

「たしかに封鎖エリアB3……クレーブスのことで情報局の脅威はネオラントに留まらずミストレアにも及んでいることは分かりましたが……それとミストレア全域の戦力強化に何の関係が?」

 

カロルはさらに続きを言うように促す。

 

「情報局なる組織は政府直属の組織でもあり、DC計画というレリック保持者の増産を目的としており、実験の被験体を集めるためにミストレアからも被害者が出ていることからもその規模は並のものでもなく、さらにはそれほど大きく動いているにも関わらず表社会には決して露出することもなく…」

「つまり、どういうことですか?」

 

緑の軍師は要点を聞く。

 

「ネオラントの政府中枢がミストレアに戦争を仕掛けようとしている可能性が高い、ということです」

「バカな‼︎」

 

そこに待ったを掛けるようにアセリアが声を荒げる。

 

「何の確証もない憶測だけの判断で国民に労苦を強いるというのか⁉︎宰相の身でありながら自分が何を言っているのか分かっているのか⁉︎アルドルフ‼︎」

 

その反論にそれまで余裕の笑みを崩さないでいたアルドルフの顔から笑みが消え。

 

「……言動には注意を払いたまえ。騎士団長殿」

 

その目を鋭く捉える。

 

「確かに私は騎士団長殿と違って由緒ある血筋の生まれではない。しかし貴族制という制度の偏りを無くすために国の声、貴族ではない民衆の声を不意にさせないために誰もが意思尊重される社会を作るために支持され、宰相という役人に就き、その働きを認められて四賢人という誉れ高き称号を賜るに至ったのだ。その私へ向けての疑心の声を上げるということは平民への疑心ひいては平民を差別していると同義。王国を守護する者の団をまとめる者がしていい発言とは思えませんな」

「その民たちを危機へと追いやろうとしているのが自身であることに自覚はないのか⁉︎今と同じ発言を‼︎自分の口から民衆へと直接伝え聞かせられるのか⁉︎」

 

議論の熱は苛烈さを増していく。

 

「ちょっとお二方。そこまでに」

「では問いますが騎士団長殿。現状鑑みるに今バウム王国内の暴動と近辺での貴族の暴走の問題をどのように収束させるというので?現在守護騎士団は暴動の規制と貴族への勧告に向けて動いているようですが一度流れた川の水を堰き止めたところでその水の勢いを殺せなければいずれは決壊し、洪水を引き起こすのだということをお分かりでいるのか?」

「こちらこそ逆に問おう!貴族の暴走に目を瞑り民たちへの過労苦は仕方なしとする判断が本当に国のため、国民のためになると本気で思っているのか⁉︎もはや国民たちの限界は超えているのだ!そこに火に油を注ぐようなことをすればそれこそ暴動激化の引き金になりかねん‼︎」

「落ち着いて」

「要は無益な労働と過酷な訓練で徒らに民を疲弊させることに問題があるのであろう?ならばそうさせないために国から指示する者を派遣して現場を監督させ各工程ごとの無駄を省かせて効率化を図ればよろしい。さらには兵役に従事した者にはそれ相応の応酬を与える形で──」

「そういう問題ではないと言っているのが分からないのか⁉︎そもそも確証もない段階で徴兵などすればそれこそミストレアがネオラントに戦争を仕掛けようとしていると誤解を招きかねないのだぞ⁉︎二世界大戦での同じ過ちを繰り返すことはあってはならないのだ‼︎」

「確証というのであれば先の親交会議が行われたリブラでの倉庫にあった爆破事件で露呈したネオラントの兵器こそ──」

「あれこそ未だ真相が不明な点が多いのだぞ‼︎爆破を行なったのも──」

「静粛に‼︎‼︎‼︎」

 

白熱した熱を冷ますようなカロルの一声。

ピシャン、と打ち水を浴びたかのような衝撃に議論していたふたりの四賢人も静かになるのだった。

それを見て緑の軍師はため息を吐いた後に。

 

「…ひとまず一度休憩にいたしましょうか。それまでに両名頭を冷やしておいてくださいね」

 

と、提案する。

 

「……あぁ」

「……失礼」

 

その提案にふたりの四賢人も反論することはなく。

 

「女王陛下もよろしいですか?」

 

最後に確認を取るようにカロルは御簾の向こうにいる人物に声を掛ける。

 

「認めます。それではこれより小休憩を挟みます。今より10分後に再び各々ここに集まるように。それまでは休息を」

 

御簾の向こうから聞こえる声に三人の四賢人はそれぞれ忠誠の儀で返すのであった。

 

 

 

 

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