UNITIA 神託の使徒×終焉の女神 -BEYOND THAT-   作:トブト

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〜Quiet〜 彼らの日常 その2

 

 

 「ごはんどこにする?」

 

 作戦会議も一入に、調査団一行は街のチェーン店が立ち並ぶ区画に足を運んでいた。

 

 「そうねー…ここらのものは粗方行ったことのある店ばかりだしたまには少し変わったお店とかに行ってみたいかも?」

 「それ面白そう!普段は何気なく行かないところとかだと新しい発見とかあって楽しいよね!」

 「私はパンが食べたいです」 

 「ぐもぐも!」

 

 三人と一匹が談笑に興じるのを背後に感じながら短髪団長と青髪制服もどの店に行くかで話し合う。

 

 「あたしはたくさん食べられるならどこでもいいわ。ふふん、腕が鳴るわね!」

 「マキア…その……程々に……してくれよ?この前それで出禁くらったんだから…」

 「?腕が鳴るのではなくお腹が鳴るのでは?」 

 「実力を発揮したいってことよ」

 「なるほど。マキアはお腹がすくと腕が鳴るんですね。覚えました」

 「……合ってるけど微妙にちがうかな…」

 

 物色すがら雑談を続ける調査団一行。

 

 「み、みなさ~ん!!」

 

 するとその背後から一行に呼びかける声が。

 

 「お、お、お、おいていかないでください~!!おねぇさんをひとりにしないで~!!」

 

 そこには保安省の制服を羽織りながらも街中であるにも関わらず身体のラインがハッキリ浮き出しているパイロットスーツを身に着け、なにがとは言わないがパーカーの前が閉じない大きい原因を左右に交互に揺らしながらゆるふわウェーブのかかった髪をした柔らかいおねぇさんといった印象を持つ人物が泣きながら駆け込んでくるのが見えた。

 

 「ちょっと、アンネマリー!早くしないと置いていくわよ!」

 「マ、マ、マ、マキアさんそんな~!?待っててくださいよ~!!おねぇさんはひとりにされると心細くて死んじゃうんですから~!!」

 「どこの小動物よ…」

 「ぐも?」

 「あんたのことじゃないわよ」

 

 虹の調査団が保有する『ブルーバード』を操縦するパイロット、アンネマリー。

 候補生時代の試験で歴代最高記録を叩きだすという異例の経歴の持ち主であるが、普段はのほほんとした性格で頼りないといった印象が目立ち、いい意味でも悪い意味でも場の空気を変える。

 マキアとは軍学校時代の先輩後輩の関係でアンネマリーの方が先輩なのだがマキアには頭が上がらない様子。

 

 「まぁまぁ、ちょっとは待っててあげようよ」

 「まったく…早くしなさいよ」

 

 小言を言いながらもしっかり待ってあげる青髪制服様。

 

 「お、おおおお待たせしまし―――きゃうっ!?」

 

 そしてようやく一行の元に追いつく手前、なぜか何もないところで盛大につまづいた。

 

 「危ない!」

 

 咄嗟に声を掛けるも時すでに遅く――。

 そのまま前に飛び出す形でゆるふわおねぇさんはその勢いのまま――。

 ズザァッ!

 地面へとダイブすることとなった。

 

 「だ、大丈夫!?」

 

 顔から滑るようにこけたアンネマリーを仲間たちは心配するも。

 

 「いたたたた……だ、大丈夫です~」

 

 と、いつもの調子の抜ける声が聞こえてひとまず安堵する。

 

 「それに思いのほか痛くなか…」

 

 立ち上がろうと顔を上げたところでアンネマリーは気づく。

 自分の下に、短髪団長が下敷きになっていることに。

 

 「リリリリリ、リアンさん!?」

 

 アンネマリーが転ぶ前、咄嗟に支えようと前に出た短髪団長であったのだが走った勢いそのままでつまづいたゆるふわおねぇさんの勢いを受け止めきれず、敢え無く押し倒される形となった。

 その結果、ゆるふわおねぇさんのゆるふわなものに顔を埋め、股下にはその細くも女性らしい足が入るような体勢でリアンは組み敷かれている。

 

 「ごごごごごごごめんなさい~!!す、すぐどきます――きゃっ!?」

 

 焦ったアンネマリーはすぐさまリアンの上からどこうとするもパニックになってしまっているからか上手く立ち上がれず、むしろその豊満な肢体をより押し付けることとなる。

 

 「ーーーーーーーーっっっ!!!???」

 「ちょ、ちょっと!?こんな街中で何してんのよ!?」

 「ごごご誤解です~!うまく起き上がれないんですよ~!!」

 「私知ってます。こういうのをラッキースk」

 「テラ、ストップ!」

 「?」

 

 早く起き上がろうとするゆるふわおねぇさんであるが焦りはより一層ミスを引き起こしやすいように返って状況が悪くなっていく。

 

 「むがふがごがっ!!?」

 「きゃっ!?リ、リアンさん…そこは!」

 「~~~~~!い・い・か・ら!早く離れなさい!」

 

 見かねたマキアがアンネマリーの首根っこを掴み剥がすようにしてようやく解放されるふたり。

 走ってきたゆるふわおねぇさんはともかく組み敷かれていた短髪団長は身体の色々な部分が当たったためかその顔を少し赤らめていた。

 

 「ご迷惑をおかけしました…。あの、大丈夫ですか?リアンさん?」

 

 己の行動に反省し、謝るゆるふわおねぇさんは自分の下敷きとなった短髪団長の身を案じるように詰め寄る。

 

 「だ、大丈夫だよ。アンネマリーさんが怪我しなくてよかった」

 

 自分の身より仲間の安否を気にかけてくれることに感激していたゆるふわおねぇさんであったが、すぐに異変に気付いた。

 短髪団長が前のめりの体勢のまま動かないことに。

 

 「リ、リアンさんどうしたんですか!?もしかしてやっぱりどこか痛めたんじゃ…!?」

 「えっ、そうなのリアン!?ちょっと見せてみて!」

 「っ!?」

 

 アンネマリーの言葉を聞いて純白ワンピースの少女も心配そうに詰め寄る。

 指摘を受けた短髪団長は近づいてくる仲間たちに負傷した箇所を見せないように一歩退き背中を向ける。

 

 「だ、大丈夫だよ!本当になんともないから!」

 「ウソ!やっぱりケガしたんでしょ!いいから見せて!」

 

 人のオーラが見えるというリオノーラを相手に短髪団長の嘘はすぐに見破られ――。

 

 「リーダー。あなたはこの団の長なんだからこれから先に何があるか分からないのよ。負傷してるのに後で起こってからじゃ遅いのよ。ここは変に隠さずに診てもらいなさい」

 「い、いやでも本当に大丈夫だから…」

 

 青髪制服に最もらしいことを言われるもなお拒み――。

 

 「リアン…昔あたしが怪我したのに黙ってたことに怒って言ってくれたよね?『本当は大丈夫じゃないのに心配させないように隠したその優しさがなによりもつらい』って。だからここはリオノーラに診てもらおう。ね?」

 「え、えとその…あの…」

 

 幼馴染である赤ポニテにも優しく諭され――。

 

 「すごくパンパンに腫れてます」

 

 そしていつのまにかテラが前に回り込んでいた。

 

 「テ、テラ!?」

 

 驚いたリアンは踵を返すように飛びすさり――。

 ガシッ。

 そして後ろから羽交い絞めにされる。

 

 「今よ!リオノーラ!」

 「うん!」

 

 その隙に治療を開始しようとする純白ワンピース。

 

 「えっ、ちょっ、待っ」

 

 拘束を解こうと暴れる短髪団長であったが青髪制服のその華奢な身体のどこにそんな力があるのか一向に振りほどける様子はない。

 

 「待って!やめ――」

 「いいからおとなしくしてなさい!」

 「ごめんね。すぐ終わるから我慢して――」

 

 そこでその場の全員――通行人も含めて――が一斉にそこを見た。

 短髪団長の負傷した箇所―――下腹部辺りを。

 

 「あ」 

 「あ」

 「あ」

 

 考えてみてほしい。

 

 普段はそのドジっぷりが目立つアンネマリーであるがその容姿は黙っていれば魅力的かつ誘惑的なのだ。

 女所帯である調査団を率いる団長であるリアンは普段は意識しないように努めているも先程のように遠慮なく密着された場合、彼女の女性らしさを否応でもなく感じ取ってしまう場合。

 必然、男としての反応を示してしまうのも自然の摂理であるわけで――。

 

 周囲から嫌悪と憐憫を含む視線が降り注がれる。

 

 「リ、リアンさん…そんな街中で…」

 

 一人なぜか照れながら顔を赤らめるゆるふわおねぇさんに対し、他三人の仲間の見る目は冷ややかなものであった。

 

 「…えっち」

 「…変態」

 「…すけべ」

 

 各々がそれぞれ相応しい烙印を押し付け。

 「すごくパンパンに腫れてます」

 「ぐもぐも」

 最後にトドメの一言がリアンの胸に突き刺さる。

 

 「理不尽だぁーーーーーーーっっっ!!!」

 

 その悲痛な叫びはネオラントの蒼い空へと響き、溶けて消えるのだった。

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