UNITIA 神託の使徒×終焉の女神 -BEYOND THAT-   作:トブト

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〜Quiet〜 彼らの日常 その4

 

8

 

 

ジェイニー。

 

強化された肉体を持ち、目にも止まらない電光の如し速さで目的を果たす凄腕の若きエージェント。

アステル連邦の情報局一員として身を置いていた彼女は法では裁けない悪を根絶するために日夜暗躍を続けている。

その手段は潜入捜査から破壊活動まで多岐に渡り、目的のためならば手段は選ばない。

虹の調査団と出会ったのはまさにその任務での時であり、調査団が護衛任務として訪れたニンフェアである。

その護衛対象を誅するべくジェイニーは調査団と戦うことになるも、そこで調査団の口から告げられた真実に驚愕した。

 

『DC計画』。

 

 他者に異能の力『レリック』を移植、大量生産をするために行われた実験。

 その実験内容は非人道極まりなく、今現在も情報局主導の下で実験の被害者は増え続け―――。

 そしてその被検体の中でもジェイニーは最高傑作であると称されていた。

 

 

 

 

 

 情報局と戦うためにその情報を求める虹の調査団。

 しかし相手は政府直属組織。情報の操作隠蔽はお手の物でそもそもの調査も難航していた。

 だが先の見えない陰りにも一筋の光明が射し込む。

 情報局について精通した者、ジェイニーならば何か有力な情報を持っているに違いない。

 事態の進展があったことに一喜一憂する調査団一行。善は急げとさっそくジェイニーの元へ向かおうとした時、ある重大な問題に直面する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 誰もジェイニーの居所を知らなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

10

 

 

 

 〈リュインの調査〉

 

 「す、すみません!虹の調査団です!人を探しているのですが…」

 

 各々ジェイニーの行方を調べるために別行動を取ることにした調査団。

 赤ポニテは冒険者気質なのか地道に足で情報を集めていた。

 

 「………」

 

 しかし、誰も彼女に声を掛けるどころか見向きもしない。

 その理由の要因はリュインはミストレア人であり、ここがネオラントであるからだ。

 遥か昔に二世界がひとつとなった頃、共存を余儀なくされた両者の間では価値観や文化の違いで度々衝突することがあった。

 ついには二世界間を巻き込む大戦まで発展し、数多くの爪痕を残すことになる。

 やがて和平が結ばれ、戦争は終結したが大戦で残した遺恨はあまりにも深く――。

 

 「―――――!」

 

 一念発起とリュインは沈みかけた気持ちを起こすようにギュッと両の拳を強く握る。

 このくらいでへこたれてちゃお父さんに――リアンにも笑われる!

 憧れを胸に彼女はもう一度声を張る。

 

 「すみません!虹の調査団です!人を――」

 

 再び街行く人に声を掛け続ける。

 すると。

 

 「虹の調査団の人?」

 

 赤ポニテに声を掛ける者が。

 

 「は、はい。虹の調査団の者です!」

 

 声を掛けられたことに虚を突かれたのか少し妙な口調になってしまうも相手はそんなこと気にも留めない様子で。

 

 「あぁ、やっぱり!実はこの前困ってたところを虹の調査団の人に助けてもらったことがあるんだよ!あの時は本当に助かった!ありがとう!」

 

 そう言うとその人物はリュインに向かって頭を下げた。

 

 「そ、そんな!私たちは当然のことをしたまでで――」

 

 慌ててやめさせようと下げた頭を上げるように訴えるも――。

 

 「今、虹の調査団って言った?」

 

 新たに声を掛ける者が。

 

 「は、はい。虹の調査団の――」 

 「あら、よかったわ!実はこの前お財布を落とした時に拾ってわざわざ走って届けてくれたことがあるのよ!あの中にはお金以外にも大事なものが入ってて本当に助かったわ~。まだちゃんとしたお礼も言えてなくてつっかえる感じが残ってたのよ~。その節はどうもありがとうございました」

 

 そう言うとまたも頭を下げてお礼を述べられる赤ポニテ。

 リュインは恐縮しながらもちゃんと感謝の念を受け取り――。

 

 「あっ!虹の調査団のおねーちゃんだ!」

 

 次に街の子どもが駆け寄る。

 

 「ねーねー!今日はあのふわふわのまるまるいないの!?」

 「ふ、ふわふわのまるまる?グモモちゃんのことかな…?ごめんね今日は一緒じゃないの」

 

 申し訳なさそうに言うと子どもも少しだけ残念そうな顔をするも。

 

 「そっかー…。この前ね!一緒にいた変な服着たおねーちゃんと遊んでくれたんだ!また一緒に遊ぼうって言っておいて!」

 

 と、明るく無邪気な笑顔を向ける。

 

 「うん、分かった。そう伝えておくね」

 

 屈託なく笑う子どもの頭を撫でているとその後ろからその子の親らしき人物が。

 

 「虹の調査団の方ですか?」

 「は、はい。なにか…?」

 

 やけに重々しい空気に思わず身構えてしまう赤ポニテ。

 

 「いえ、実はお礼を申し上げたくて。この子は私が転勤族なばかりに友達が出来ず…いつも寂しい想いをさせていたのですが、この前調査団の方と遊んだことを楽しそうに語ってくれまして…。本当にありがとうございます」

 

 そう言うと目に涙を滲ませながら今度は深々と頭を下げられ、赤ポニテはあたふたとし始める。

 

 「そ、そんな!むしろこちらこそテラとグモモちゃんと遊んでくれて――」

 「あ、虹の調査団の人だ」

 「え、虹の調査団?」

 「どこどこ?」

 「なにか困ってるって?」

 「この前助けてくれた――」

 「大事なものを――」

 「おかげさまで――」

 「人を探してるって?」

 「あの時はどうも――」

 「この前のお礼を――」

 「こっちにいるよ!」

 「虹の調査団だ!」

 

 矢継ぎ早に赤ポニテの元に集まってくる街の人たち。

 そのいずれもネオラント人であるものの、感謝の念を伝えてくる者たちばかりである。

 

 「なんか困ってるんなら力になるよ?」

 「そうだ!今度は私たちが虹の調査団の力になろう!」

 「あの時のお礼もしたいし!」

 

 そして誰も彼女を邪険に扱ったりしない――ミストレア人であることを。

 

 「…………」

 

 自分の元に人が集まっていく光景を呆然と眺めていたリュイン。

 

 「人を探してるんだって?」

 「なにか力になれますか!?」

 「誰を探してるのー?」

 

 声を掛けてくれた人たちは皆、一度調査団に依頼した者や助けてもらった者たち。

 その時のお礼とばかりに誰もが彼女に積極的に力になろうとしていた。

 

 「…………」

 

 目を伏せる。

 目頭が熱くなるのを感じる。

 未だ二世界間の問題は全て解決したとは言えない。

 だが、虹の調査団の活動は、その存在はその垣根も超えてこうして実を結んでいる――そう実感した。

 

 「おねーちゃん泣いてるの?どこか痛い?」

 

 心配そうに顔を覗き込む子どもに気づき、リュインは。

 

 「ううん!今、すっごく嬉しいの!」

 

 雫を散らして満面の笑みを浮かべた。

 そして、再度集まってくれた人たちに対して向き直る。

 

 「すみません。虹の調査団です。人を――」

 

 二世界間で過去に起きた大戦の遺恨はあまりにも深い。

 しかし、その溝は徐々に、徐々にではあるが埋められていく。

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