【悲報】無惨さま、禰豆子の鬼化に失敗して殺っちまった模様。   作:ζ+

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閲覧ありがとうございます。

こちら光に焦がれた炭治郎くんが主人公の「鬼滅の刃」の二次創作です。
お間違えないことを確認されたら、「まだだ」にお気をつけてお進みください。


第一章「光の殉教者」
第一話


 奪われたものは、奪い返さねばならない。

 涙も、嘆きも、痛みも、皆すべて、希望(ヒカリ)で焼き尽くしてやるべきだ。

 そして地獄の先にも花は咲く事を、人は陽だまりに辿り着けるという事を、証明してみせる。

 

 故に──

 

「おまえが」

 

 俺は、目の前の者に確認する。

 それは、俺の覚悟を決めることと同意犠だ。

 

「ん?」

 

「喰ったのか、この人たちを」

 

「ああ、うまかったぞ。で、おまえは──なんだ、ただのヒトか」

 

 まるで何でもないかのように答えるそこ者に、怒りが沸いて収まらない。

 しかし、"違う"。

 こいつではない。

 そう分かると、幾分か俺の気も落ち着いてくる。

 だが、許すなんてことはありえない。

 平穏な日常を、何の罪もない人々を不幸に落とす鬼共は皆殺しにしてやるべきだ。

 

「おまえこそ、ただの鬼か」

 

「んだとォ?」

 

匂い(・・)が違うんだ。俺が探してる奴と」

 

「そうか。で、用はないからもう行っちまうとか、寂しいこと言わねェよな?」

 

 どうやら、鬼は目の前のごちそう(・・・・)では満足していないらしい。

 その証拠に、月明かりに照らされた廃寺の中、口元が赤く染まった鬼は、涎を垂らして俺を穴があかんばかりに凝視していた。

 

「逃げたりしねェよな?」

 

 ひとり、ふたり……

 それだけ喰らっておいて、呆れたものだ。

 本当に鬼はどうしようもない。

 

 ごめんなさい、そこの人たち。

 すぐに鬼を倒し、埋葬してあげますから。

 

 そんな風に亡骸に向かって合掌し、鬼に向き合う。

 腰に差した()の柄に手を置きながら。

 

「もちろんだ。これは村にいる知り合いの鍛冶職人のおじさんに貰った()。そして目の前には抹殺すべき悪鬼もいる。この状況で、どうして俺が逃げなくてはならない!」

 

「ははっ、よく言ったッ!」

 

 だから、殺す。

 もうこのような悲しい人たちを生まないために。

 俺は、刀を抜き、正面に構えた。

 すると、ドンッという衝撃と共に、鬼の醜悪な顔面が目の前に詰まっていた。

 

「ハハ、やるな。なかなかいい反射神経じゃねェか」

 

「くっ、なんて力なんだ」

 

 気を抜いたら、押し倒されてそのまま殺されてしまう。

 だから、俺は必死に押し返す。

 だが、そんなものは微々たるものでじわりじわりと推し負けていく。

 まるで、死神がゆっくりと近づいてきているような感覚に、ぶるりと身体の奥底から震える。

 

「そりゃぁ、たっぷりここで喰ってるからな。喰った分だけ強くなる。腹も満たされる。この廃寺はオレの天国……さッ!」

 

 鬼はニヤリとおぞましく嗤った。

 すると突然、体が飛ばされたかと思うと、腹にズシリとした痛みが走った。

 そしてそのまま扉を突き破り、俺の体は寺の石畳に強烈に叩きつけられる。

 

「ぐッ」

 

「オラ、まだまだァ!」

 

 そして、すぐさま距離を縮められ、鬼の拳が俺の頭を左から打ち付けた。

 刀を構える暇もない。

 視界がぐるりと回転する。

 転がされたのか。

 

「おいおい……大丈夫かよ、お侍さん。もうフラフラじゃねぇか。無理して立たなくてもいいんだぞ?」

 

 ──喰って俺の力にしてやるから。

 親切な言葉とは裏腹に、目はそう言っていた。

 

「ハァハァ、余計なお世話だ」

 

 確かに言われた通り、まっすぐ立っているつもりなのに視界が揺れる。

 頭を殴られたダメージは大きいようだ。

 こいつの拳は、岩のように硬い。

 

「喰われちまえよォ、楽になるぜ……おっ、いい満月じゃねェか」

 

「おまえこそ、余所見なんてしてていいのか」

 

 息を整え今度こそ。

 空に気をとられている今がチャンスだ。

 俺は鬼を斬り殺さんと飛びかかり、刀を振り上げた。

 

「いや、大振りすぎんだろ」

 

「なに……ぐッ」

 

 思いっきり腹に衝撃が入る。

 一瞬だが息ができない。

 どうやら誘われていたらしい。

 

「お侍とか言って悪かったな。おまえ、ただの棒切れ持ったガキだわ」

 

「がはっ、はぁはぁ……まだ、だ……ッ!」

 

 俺は、落としかけた刀の柄を再び強く握りしめ、一歩踏み出した。

 

 たしかに先の一振りは焦って大振りだった。

 この鬼ははやい(・・・)

 刀を抜いた途端に見えないはやさで距離を詰められたし、その後の追撃も見えなかった。

 そんな相手に、力任せの一撃なんて無茶な話だ。

 

「はァッ」

 

 だから今度はしっかりと。

 相手は人喰いの化け物。

 油断は禁物だ。

 

「ほぅ?」

 

 そんなことを意識したおかげか、俺の刀と、鬼の拳が金属が打ち付けあうような甲高い音を響かせながら、何度も、何度も重なり合う。

 

「刀があたれば、斬れるし殺せる。あたれば(・・・・)な。その前提がダメだ。おまえさん、誰かに指導して貰ったことがないんじゃねぇか? そういう培った技量ってのは、殺意じゃまかなえねェんだよ」

 

 未だに打ち合ってはいるが、この鬼の余裕。

 手加減されているのは、言われなくても分かった。

 

「こんな風に、なっ!」

 

 鬼としては少し力を込めただけかもしれない。

 しかしそれだけで仮初めの拮抗は崩れ、俺は吹き飛ばされた。

 

 足りないのは鬼のいう通り技量、そしてこのように押し負けてしまわないための筋力か。

 

「しかし、技量──そう、か……」

 

 だが、技量は足りなくても技ならば──

 

「まだ立ち上がるか。いやはや根性は見上げたものよなァ。じゃぁちょっと、キツいのいくぜ?」

 

「……俺は、義勇さんに1つだけ技を見せてもらった(・・・・・・・)んだ。鬼殺しの技を」

 

 俺は間合いを図る。

 思い出せ、あの時の技を。

 

「ほぅ、何かあるのか」

 

「水の呼吸──」

 

 只人故の、本気(・・)のそれを──

 

「ならばオレも、相応に相手をしよう。オレは血鬼術こそまだ使えないが……ヒトの時に培った技術はある。故にこれはただの、拳の極み。これで立てたら誉めてやるぜ、ニンゲンッ!」

 

「壱の型、水面(みなも)斬り」

 

「見事」

 

 鬼は、首を斬れば死ぬ。

 これで終わりだ。

 

「──なんてな」

 

 ──ッ!? 

 

「こんな傷すぐ治るからな。ほらもう血は止まった」

 

 くそ、わかっていた筈だろ。

 相手は化け物。

 実際に相対して、この程度で終わりなはずはない。

 ならば、繰り返す。

 死ぬまで切り刻んでやるだけだ。

 

「まだだッ! 水のこきゅ──」

 

「──遅ぇ」

 

 だから、嘘だろ。

 現実は……なんだ、どうして。

 

「二度はやらせねェよ」

 

 主役(ヒーロー)の腹に手がねじ込まれているのだ? 

 

「──まだだっ!」

 

「頭突きでこれか。おまえ、頭かてェな」

 

 ダメだ、すぐには動けない。

 時間稼ぎをしなくては。

 

「不思議そうな顔をするな。俺だって、首を斬られたのは初めてだ。噂では、鬼殺しは首を刈るって話だったんだがな。いや、何か忘れて……まあいいか。おまえもそんな感じに聞いてたんだろ? しかし冷静になると、不思議なもんだな。俺は本当に不死身の化け物だったらしい」

 

 だめだ、血が止まらないッ

 力が抜けていく……

 

「あ、ぐあぁ……ッ」

 

 だが、それがどうした。

 是非もなし。

 

「しかしお前、なんでまだ立てるんだ? いや、腹に穴あけたんだぞ。おかしいだろ」

 

「俺は……死なない、朽ちない、諦めない。誓ったんだ。家族と、息絶え絶えの妹と。かならず家族を殺した鬼を殺す。悪鬼滅殺。それだけに留まらない。一匹残らず、総ての鬼を滅ぼし尽くすと」

 

「ははッ! 不死身なところは、似たもの同士ってわけか! 面白れぇ。だがしかし、御大層なこと言う割には、おまえのそれはただの復讐だろ。つまらねぇな」

 

「違う。心中するつもりもないければ、復讐に終わるつもりはない。その先に、輝ける明日があると。人は陽だまりに辿り着けると証明して見せるんだッ!」

 

 そうとも俺は。

 復讐では終わらない。

 悪鬼滅殺──かならず鬼殺しを完遂する。

 その先にある未来を創造して。

 

「ほぅ、まだ斬りかかってくる元気があるか。ホントにおまえ、ニンゲンか?」

 

 思い出せ。

 先の”水の呼吸”は何かが足りなかった。

 結局俺がなせたのは、技の模倣。

 本質をとらえられていない。

 あれでは”水面切り”と叫けびながら、刀を真一文字に払って攻撃しただけだ。

 それじゃ鬼殺しの技には足りない。

 義勇さんの”壱の型”にはほど遠い。

 だとしても、諦める訳にはいかない。

 

「禰豆子、見ていてくれ。俺は、必ずやり遂げる。だから──」

 

 水の呼吸(・・)、その本質はまだつかめない

 だからこれは、賭けになる。

 ただの模倣。

 しかし、偽物が本物に敵わないと誰が決めた。

 忘れるな。俺は人間。

 人間は可能性の塊なんだ。

 気合と根性でなんともできる。

 故に、

 

 ま だ だ ッ ! 

 

「水の呼吸──」

 

 "勝つ"のは俺だ。

 

「壱の型、水面斬ィりぃイイイ!」

 

 

 

 

 

 

「そうか、それがおまえの全力か。だが、すまねェ」

 

 

 

 

 

 

 え……? 

 

「オレは、戦の中に生きたかった。だから頭を垂れて鬼にまでなったが……それを忘れて欲望にとりつかれた。屈辱だ。その勇ましく突き進む姿、尊敬するよ。お互い死力を尽くした果てになら、おまえに殺されてやってもよかった」

 

 技は……完ぺきだった。

 まるでそうなるのが当然かのように、俺の刀は鬼の首に吸い込まれていった。

 ピンと張った糸。

 それの上を滑るみたいに。

 

「あ……れ……」

 

「今回は、ふむ。切り落としたな。俺の胴体と体がお別れだ」

 

 俺は、宙に浮かんでいる。

 首を捕まれながら。

 息が苦しい。

 

「でも、死なねェんだ。思い出したよ。その刀じゃだめだ」

 

「く……そ……」

 

 酸素が回らない。

 

「日の光を溜め込んだ金属があるって話だ。鬼は、日光を浴びると炭化して死ぬ。日の光が毒ってことさ」

 

「……たり、ない……」

 

「楽しかったぜ。さぁ、首の骨を折るぞ。首を抑えられては、得意な石頭での頭突きもできまい」

 

 もはや、俺の体は動かない。

 正しい”壱の型”を、本質を捉えることなく、感覚的な覚醒で再現したからだろう。

 その代償に、体中の筋肉が悲鳴を上げ、関節は少し動いただけで激痛が走った。

 もはや、この鬼の手をほどくこともできない。

 

「だから、じゃぁな──ッ!?」

 

 薄れ行く意識の中、視界の端に"天狗の面"が映り込んだ。

 

「おまえは、誰だ?」

 

 どうやら鬼は"誰か"と話しているらしく、俺をどさりと投げ捨て、自身の頭を拾っていた。

 ガツンと地面に叩きつけられた俺は、ただ全身を迸る痛みに耐えながら、目を開き続けるので精一杯だった。

 

「……」

 

「何とか言え……ッおい、何て速さだよッ!? オレが捉えきれねぇだと!?」

 

「……」

 

 今のは──水の呼吸? 

 

「……」

 

 その一瞬にして、鬼の首は落ちていた。

 

「……呼吸を解せず、"技"を使ったか」

 

 鬼を殺し、刀を納めながら近づいてきた男が、初めて喋った。

 足音がしない。

 声は聞こえているから、耳は生きているはず……

 この男は誰なんだ。

 

「儂は鱗滝左近次(うろこだきさこんじ)。義勇の紹介はお前で間違い無いな?」

 

「いい、何もいうな。その出血量では幾分も持つまい」

 

「だから、“呼吸”をしろ」

 

 どういうことなんだろう? 

 血が足りないせいか、意図が読めない。

 

炭治郎(・・・)、呼吸だ。全身に酸素を取り込み、細胞ひとつひとつまで、おまえ自身の身体の存在を感じろ」

 

 だが、その渋い声色には優しさがあった。

 ならば俺も答えなければ。

 

「儂はこのまま、おまえを治療できるだろう"屋敷"に担いでいく。その間、この出血では普通だったら(・・・・・・)死んでいるだろう。だから──」

 

「そうだ、できているぞ。それが"全集中の呼吸"だ。そのまま損傷箇所を止血しろ。うまくいけば、おまえは生きる」

 

「こらえろよ、炭治郎!」

 

 ……

 

 




閲覧ありがとうございました。
よろしければ気合と根性に満ち溢れた炭治郎くんに、
コメント・高評価での応援よろしくお願いします。
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