【悲報】無惨さま、禰豆子の鬼化に失敗して殺っちまった模様。   作:ζ+

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ぶっちゃけ説明回です。
次回から最終選別となります。

※独自解釈・設定・捏造過多


第三話

 鬼と鬼殺しの因縁は千年にも及ぶ。

 しかし、長い歴史の中では紛失した文献の方が多く、全てが分かっているわけではない。

 だが、大まかな流れだけでも知り、そこから現在を理解することが大切である。

 そう(むし)柱、胡蝶(こちょう)しのぶは語った。

 

 それは"原初の鬼"と、それを滅するべく誰か(・・)のために立ち上がった英雄(サムライ)から始まった血に濡れた宿命。

 血を分け与えられ、増えていく不滅の鬼に対し、英雄は”呼吸”という個々人によって千差万別される鬼殺しの技術を開拓し対抗する。

 しかし、年月には敵わない。

 英雄は最期に(ことわり)さえ超越した存在であると見せつけたものの、寿命に抗うことなく亡くなってしまう。

 英雄とて人であるから限りある命しか持たないのだ。

 

 とは言え、英雄譚はこれで終わりではない。

 人から人へ想いを紡いでいくことこそ不滅であり、最も大切なこと。

 大切な言葉と信念、そして”呼吸”は、個人を超えて広がっていく。

 例え英雄のような極大の光は失われても、

 その背を見たどこかの誰かに伝わって、勇気の拳は握りしめられる。

 

 そうして受け継ぎし者たち──鬼殺隊。

 その数およそ数百名。

 政府から正式に認められていない組織。

 だが、古より存在し続け今日も鬼を狩る。

 

 鬼。

 主食は人間。

 人間を殺して、その血肉と臓腑を喰らう。

 身体能力が高く、傷などもたちどころに治る。

 切り落とされた肉も繋がり、手足を新たに生やすことも可能。

 体の形を変えたり、"血鬼術"と呼ばれる異能を持つ鬼もいる。

 太陽の(ヒカリ)か、特別な刀"日輪刀"で(くび)を切り落とさない限り殺せない。

 

 鬼殺隊は生身の身体で鬼に立ち向かう。

 人であるから傷の治りも遅く、失った手足が元に戻ることはない。

 それでも、彼らは戦い抜く。

 誰か(・・)の明日を守るために。

 

 一方、最初に抱いた俺の原動力は彼らのように大層なものではなかった。

 ただ、失った家族の敵を討つこと。

 刺し違えてでもという、身を(いと)わない復讐心だ。

 だから、家族を失なった直後、誰とも会うことがなかったなら、この流れの末裔(まつえい)を志すことはなかっただろう。

 

 そんな俺を変えたのは水柱、冨岡義勇(とみおかぎゆう)との邂逅だ。

 第一声は、この言葉だった。

 

『泣くな。絶望するな。

 そんなことは今することじゃない』

 

 かつての生活は楽じゃないけど、幸せだった。

 しかし、人生には移ろって動いていく空模様がある。

 ずっと晴れることはないし、ずっと雪が降り続けることもない。

 

 そして幸せが壊れるときには、血の”匂い”がするのだ。

 

 そう、何の前触れもなく、唐突に家族を皆失った。

 俺が街に炭を売りに行って留守にしている間に、鬼に家族を皆殺しにされた。

 もう、話すことも触れ合うこともできない。

 ただ、その事実に絶望する。

 

 だが──ふざけるな、認められるか。

 母ちゃん、花子、竹雄、茂、六太──そして禰豆子(ねずこ)

 お前たちが殺される理由なんてなかった。

 何も悪いことなどはしていない。

 なぜ。どうして、こんなことが許されるッ! 

 その嘆きの果てに凝縮していく呪い、怒り。

 一言でいえば、憎しみに支配され復讐しか考えられなかった。

 

 彼はそんな俺の目の前にやってきた。

 

『お前が打ちのめされているのはわかってる。家族を殺され、妹は鬼の血を受け入れることも拒むこともできず、再生と死を繰り返す果てに停止(・・)した。つらいだろう。叫び出したいだろう。わかるよ。俺があと半日早く来ていれば、お前の家族は死んでなかったかもしれない』

 

『しかし時を巻いて戻す術はない。そうだ、怒れ。許せないという強く純粋な怒りは、手足を動かすための揺るぎない原動力になる。脆弱な覚悟では家族の仇を討つことも、地獄(なみだ)の先に笑顔を取り戻すこともできやしない』

 

 狂い哭く先に聞いたのは、義勇さんの地獄(なみだ)の先に笑顔を取り戻せという強い言葉だった。

 そうだ。

  復讐に囚われてはいけない。

 それだけでは、何も生まないのだから。

 その地獄(なみだ)の先に笑顔の花が咲くことを証明して見せなければならないのだ。

 この衝動の行きつく先、悪鬼滅殺は過程に過ぎない。

 それに全て捧げるだけだなんて、それこそ死んだ家族に顔向け出来ない。

 

 そうして俺は、覚悟を決める。

 

『俺の仕事は()を斬ることだ。もしお前が望むなら、狭霧山の麓に住んでいる鱗瀧左近次(うろこだきさこんじ)という老人を訪ねろ。冨岡義勇に言われて来たと言え』

 

 それで鬼殺しの手段が手に入るのなら。

 是非もなければ斯くやあらん。

 必ず成し遂げよう。 

 悪鬼滅殺の彼方に、優しい明日があると信じて。

 

 

 

 ***

 

 

 

「試すのは、今からだ」

 

 俺が鱗滝(うろこだき)さんの家に着いたのは、もう日が沈んでずいぶん経った頃だった。

 教えられた場所に向かうと、天狗の面をつけた老人が一人佇んでいた。

 

「お前は"突破"して、"受け継ぐ"ことが出来るのか見せてもらう」

 

「はい!」

 

 いきなりそういわれたものの、本来であればもう到着し修行することができていたのだ。

 俺は疲れていたし体を休めたいという気持ちもあったが、この程度で根は上げられない。

 それに──覚悟(・・)はとうに決まっている。

 

「儂と同じく、"鼻"が効くそうだな」

 

「はい、"匂い"が分かりますが……?」

 

「よし。では荷物は預かろう。刀も今は(・・)預かる。ここに置くといい」

 

 なぜわざわざ”鼻”が効くかどうかを尋ねたのだろう。

 それに刀も含みがある言い方だ。

 いや、今考えることじゃない。

 待たせてはいけないし、早く荷物を置こう。

 

「では、ついてこい」

 

「っ!?」

 

 はやい! 

 

 俺が荷物を置くや否や、予兆すらなくいきなり爆発したかのように走り出した。

 向かう先は、この目の前の木々が生い茂る山の中か。

 

 いけない。

 月明かりがなくてとても暗く、よく見えないから見失ってしまう。

 急いで追い着こう。

 

 だが、やはり完全に追いつくには至らない。

 俺は山育ちだし、病み上がりとはいえ蝶屋敷でも傷が開かない程度の軽度な筋トレは怠らなかった。

 すばしっこさという点でも、鱗滝さんは身長が高いし体も大きいから避けなければならない木々などの障害物も多いが、俺は小さい分、鱗滝さんより避けるとう動作で速度を殺す回数が少ない。

 では、俺と鱗滝さんは何が違うのだろう。

 

「ハァ……ハァ……」

 

 あぁ、そうか。

 この山は──

 

「ハァ、ハァ……くッ」

 

 空気が薄い(・・)

 ただの呼吸だけで、胸が苦しい。

 

「くっ、はっ……」

 

 だめだ、呼吸を正せ。

 意識しろ。

 

「スゥ、スっ……はっ、はっ」

 

 そう、とにかく苦しいときは”呼吸”だ。

 それで俺は一度、命を救われている。

 灰いっぱいに空気を吸い込み、そこから細胞の隅々まで酸素を行き渡らせるような感じで。

 そうだ。

 体が熱くなってきた。

 鈍かった動きにキレが出る。

 そして、ムダに力が入っているところも分かってきた。

 山登りはまだ続く。

 鱗滝さんも……よし、ちゃんと追えている。

 大丈夫だ、この調子。

 

「────、──」

 

 おい、なんだこれ。

 力が急に入らない。

 そうか、さらに空気が薄くなっているのか。

 足りない。

 もっと、呼吸を整えろ。

 正しい(・・・)呼吸を目指すんだ。

 

 しまった、鱗滝さんにだいぶ離されてしまった。

 しかも、鱗滝さんはさらにスピードを上げている。

 ありえない。

 こんなに、苦しいのに。

 先ほどまで余裕で避けれていた木々の枝や、地面に足を取られてしまっている。

 

 集中しろ。

 こんなところで、終われない。

 なぜなら俺は、鬼殺しを完遂し、笑顔を取り戻すと誓ったのだから。

 

 …………

 ……

 ……

 

 ──木々が開ける。

 どうやらゴールのようだ。

 俺はなんとか持ち直し、ここまで辿り着くことができた。

 

「ぜぇ、はぁ……すぅ、ハァ……」

 

 俺は満身創痍で、足がガクガクと震えて止まらない。

 対して鱗滝さんは、息一つ切らしていない。

 月並みな感想だが、すごい。

 俺は──分かってはいたが、まだ全然だ。

 しかし、目指す理想が遥か高いにせよ、それに至るまでまだまだ鍛えられると確信している。

 頑張ろう。

 

「炭治郎、”全集中の呼吸”とはなんだ?」

 

 いきなりの質問に驚いた。

 だが、その呼吸の一端でもつかめていなければ、俺はここまで登ってくることは出来なかっただろう。

 思えば、初めて鬼と戦って死にかけた時、止血のために呼吸もどき(・・・)を成功させたのを鱗滝さんは知っている。

 この”山登り”は、俺の”呼吸”についての理解を試すものなのだろう。

 

「えっと、”全集中の呼吸”は、一度に大量の酸素を血中に取り込むことで、瞬間的に身体能力を大幅に上昇させます。しかし、相応の負荷を使用者にかけます」

 

 ”全集中の呼吸”は体中の血の巡りと心臓の鼓動を速くする。

 そして、体温が上げきったとき、人間のまま鬼のように強くなれる。

 とにかく肺を大きくする。

 血の中にたくさんの空気を取り込んで、血が吃驚したとき骨と筋肉が熱くなって強くなる。

 会得するには、死ぬほど鍛える。

 それしかない。

 また、それを24時間、常にできるようになたっ時こそ”柱”に一歩近づけるのだと。

 そうしのぶさんに教わった。

 

「ふむ、蟲柱に基本の知識は習ったか。だが、お前は知識としてそれを覚えただけで、体は慣れていない。それで全集中”常中”は不可能だろう」

 

 た、確かに。

 俺は蝶屋敷に運ばれるときと、この山登りでしか使えていない。

 そもそも”呼吸”が正しくできていたのかさえ不安になってきた。

 

「今はできなくて当然だ。儂がこれからそういった技術や鍛錬の方法を教えよう。あとはお前次第だ。お前が儂の教えたことを昇華できるかどうか」

 

「はい! よろしくお願いします!」

 

 

 

 ***

 

 

 

 こうして、俺の試練は始まった。

 後で振り返るため、記録をつけておこうと思う。

 

 繰り返すようだが、鍛錬の場は酸素の薄い山の中。

 これは俺の住んでいた山よりもっと標高が高い位置にある。

 そんな中を駆け上がり、駆け下り、跳んで跳ねて仕掛けられた罠を越える。

 言葉にすれば愉快に見える一方、おそろしくしんどい。

 

 そして罠は文字通り殺しに来る。

 一時でも意識の集中を欠けば死が待っている。

 その罠の数は日に日に増え、しかし絶妙に俺が死なない難易度というのが質が悪い。

 だが、ここで鱗滝さんに再会したときに言われた、”鼻”が生きた。

 匂いで分かるのだ。

 人が仕掛けた罠というものが。

 それに気づけたおかげで、だいぶマシ(・・)にはなってきた。

 そうして繰り返すうち、肌すれすれで避けたり、あるいは完全に回避したりできるようになった。

 

 ……と、鱗滝さんに嬉しそうに語ったら、鱗滝さんも嬉しそうであった。

 そして刀を無言でスッと出してくる。

 俺が持ってきた”ただの刀”だ。

 

 ん、どういうことですか……? 

 え、刀持って周回……ですか? 

 

 次の修行であった。

 

 ”今は”刀を預かるとは、こういうことだったのだろう。

 この長物、走るうえではとにかく邪魔であっだ。

 重いし、木々に引っかかるはで煩わしいことこの上ない。

 同じ山を走り回っているはずなのに、難易度が一気に上がっていた。

 しかし、それでも修業としてこなさねばならない。

 むしろ、この程度で根を上げるわけにはいかない。

 必ず俺は成し遂げる。

 これまでで鍛え上げた体力、気力、集中力__文字通り、全てを尽くして乗り切った。

 

 しかしこれは基礎体力作りに他ならない。

 これより刀の扱い方──技術についてだ。

 

 まずは素振り。

 次に素振り。

 最後も素振り。

 

 そして刀を持った時の転がり方を身をもって体得し、ついに鱗滝さんとの模擬実戦も行った。

 素手の鱗滝さんに対して、俺はただの刀を持つ。

 素手対真剣。

 勝負になんてならないはずだった。

 でも転がされる。

 勝てない。

 これが”技量”が足りないということなのだと教えられた。

 

 そして”呼吸法”や”型”のようなものも学んだ。

 これが、全集中”水の呼吸”。

 鬼殺しの技だ。

 

 決して忘れないよう、骨の髄まで覚えこませるため、繰り返し繰り返し鍛錬する。

 何度も何度も、そう何度も。

 時間が許す限り。

 

 そして、”ある事”にも挑戦する。

 

 

 

 ***

 

 

 

 あれから半年。

 

「……もはや教えることはない」

 

 俺は、徹底的に鍛え上げた。

 かつて、呼吸を解せず技を使って体を痛めたが、そんな無様をさらすことはもうないだろう。

 この修行の期間、体も技術も努力し、一心不乱に鍛えぬいた。

 とはいえ、まだまだ足りないと感じてる部分も多い。

 

「いえ、足りません!」

 

 そう、”ある事”がまだできていない。

 岩が斬れるほど剣技が上達しても、それがなければ柱に――すなわち、より上位の鬼と戦うことができない。

 だから、まだ終わるわけにはいかない。

 

「もう、ないのだ」

 

「いえ、まだです!」

 

「炭治郎、よく聞け。教えることはもう――」

 

「――まだです!」

 

 それでも、食い下がる。

 そして、その訳を――俺は”ある事”について相談した。

 蟲柱から聞いていたそれを。

 

「うむ……ならば許可しよう」

 

 無理やりだが、納得してもらった。

 そして一年弱。

 

 結論から言えば、俺はまだ得られていなかった。

 

「岩を斬れても、全集中"常中(じょうちゅう)"まで至れませんでした……」

 

 ”ある事”とは、”常中”である。

 ”常中”は全集中の呼吸の先にあり、柱ならば誰しもできることという。

 当然、鱗滝さんも元柱がゆえ、できる人だ。

 

 そして俺は、常中まで至れず、そんな鱗滝さんに合格を貰った。

 いや、無理やり言い渡されたといってもいいだろう。

 なぜなら、これ以上同じ場でとどまっても意味がないからだ。

 俺の目的は鬼殺しであるから、それが進まないのは言うまでもない。そして、人間は”慣れる”ものだ。これが厄介で、現状の環境に慣れてしまったが故、これ以上は急激な成長は見込めないだろうという鱗滝さんの判断だ。

 

「”常中”は極意だ。焦らずとも良い。この場でくすぶっていても、お前の成長にはならん」

 

 鱗滝さんは親切にそう言うが、歯がゆい気持ちはある。

 人間は可能性の塊だ。

 そんな、我が家に伝わる頼もしい言葉を誇っているが故、くやしいという気持ちが大きい。

 それでも、常中まで至った尊敬する師匠の言葉だ。

 これ以上の説得力はなく、俺はここでの修業を打ち切ることに決めた。

 

「ありがとう、ございます……分かりました」

 

「うむ」

 

 この後、修行の終了ということで鱗滝さんとたわいのない話に明け暮れた。

 いろいろと振り返ることは多い。

 しかし、ふとこれからのことに思いをはせると、一つ思い出したことがあった。

 

「……そういえば、鍛錬に没頭しすぎていて聞くのを忘れたのですが、義勇さんが”女の鬼”を追っていると言っていたのですが、何か知っていますか?」

 

「"女の鬼"か……義勇はそう言っていたのだな?」

 

 どうやら、義勇さんが何をしているのか詳しくは鱗滝さんも知らないらしい。

 いくら元”柱”であり、義勇さんの”育手”であっても、鬼殺隊の最高戦力である”柱”の動きはあまり知ることができないし、そもそも柱も何の任務に就いているかはあまり語ることはないそうだ。

 むしろ、意図的に秘密になっている部分もあるという。

 確かに、事前に柱が動くと情報が流れてしまえば、何かの拍子に鬼に知れ渡り、逃げられてしまうこともあり得るから納得だ。

 

「”女の鬼”と関係があるかはわからんが、少し前に"鬼喰い"を見たという噂をよく耳にした。鬼が共食いなどよほどのことがない限りはないためよく覚えている。しかも喰らっているのが単一の鬼となれば尚更だ。これが"女の鬼"だとしたら、姿を捉えられない鬼舞辻(きぶつじ)より、身近な手掛かりとして義勇が動くのも頷ける」

 

 ”鬼喰い”。

 鬼は鬼舞辻の呪いによってある程度統率されている。

 確かに、状況にはよるかもしれないが、そんな中いたずらに戦力を削るようなまねをするわけがない。

 確かにこれは奇怪だ。

 なぜそんなことをする鬼がいるのだろうか。

 いずれソイツ(・・・)も殺すにせよ、少々気にはなった。

 

「そうだ、鍛錬の中で折れてしまった刀は預かろう。いつまでも持っているものではない。(あるじ)の助けになったこいつも本望だろう。そして──これを持っていけ」

 

 その刀は一言でいえばとても美しかった。

 鞘から滑らかに引き抜かれ、その水色(・・)の刀身は鈍く俺の姿を映し出していた。

 そこには、修行中の髪がぼうぼうになった姿ではなく、きちんと髪を切り、整え、1年前よりはるかに体格が良くなった俺がいた。

 そして、ほんのりとだがこの刀からは血の匂いがする。

 

「儂の日輪刀だ。最終選別を終えれば、炭治郎専用の刀も支給される。必ず突破し、生きて返しにこい」

 

「はい!」

 

 最終戦別に向けて、ここでやれることはやりきったのだ。

 多少思うところはあれど、総合的には誤差の範囲に収まっている。

 

 呼吸は、鱗滝さんの指導と空気の薄い山で走り回ったお陰で技能として身に付いたし、"水の呼吸"という型も、もはや呼吸という本質を捉えた今、完全に鬼殺しの技術として確立させた。

 これからは、その先にある"常中"が一つの目標だ。

 体も、毎日の素振りや山を駆け回ったため鍛わっている。

 特にこれは、"呼吸"が出来ても体ができていなければ耐えきれず、破滅が待っているだけだ。だから、本気で鍛え抜いた自信がある。 

 

 加えて、心も万全だ。

 憎しみは捨てない。

 奴らを決して許さない。

 怒りを燃やして殺し尽くそう。

 ただの一人も逃がしはしない。

 

 こうして心技体が揃った。

 これにてようやく、ようやくなのだ。

 

「鱗滝さん、行ってきます!」

 

 こうして早朝、俺は最終戦別の舞台に向かう。

 鱗滝さんの”刀”と、厄除けとして貰った”狐の面”を身に着けて。

 




2020/06/26 
”ある事”について加筆修正
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