イビルアイ尻尾√   作:冠尾かざり

11 / 19
11 ネ村

-前回のあらすじ

カルネ村にてアインズ様が登場。お話フェイズへ。


 

 

 

 

 俺、イビルアイ、モモン(パンドラ)、ルプスレギナ、そしてアインズ様の5人で村の奥へと歩みを進める。

 そうして案内されたのはカルネ村に新しく建築されたという、少し大きな屋敷の会議場だった。

 建てられたばかりだから、新築特有の木の香りがする。いいにほひ。

 内装はあまり完成していないみたいで、広々とした部屋の中には会議に使われそうな()()()()()机と椅子だけが並べられていた。

 

 全員が席に着いたところで、アインズ様の傍に控えていたルプスレギナが何処からともなくグラスと水差しを取り出し、俺たちに給仕しようとする。

 

 

「私は遠慮しておこう」

 

 だがイビルアイが受け取りを断る。うん、こいつには必要ないもんね。

 さらに続いてモモンも断る。

 

「私も結構です」

 

「私もけ──私はいただきます!(半ギレ)」

 

 俺も流れで断ってしまうところだったぜ。元日本人の(さが)よな。

 アインズ様は当然の如く不必要。グラスが置かれたのは俺の前だけである。俺一人だけが浮いている疎外感。とてもつらい。

 そしてこの部屋の仮面率、高スギィ!…俺も今度から被り物を用意しておこう。

 

 

「さて、村の中でゴブリンやオーガが共に暮らしている姿を見ただろう。

 君たちはあれを見てどう思う?

 人間種と亜人種、あるいは異形種が共存できると思うかね?」

 

「平等な立場での共存は無理だな。人間は弱い。

 人間以外の数が少ない内は上手くいくかもしれないが、数の優位が無くなればその関係は大きく変わるだろう。

 この辺りに人間の国家が幾つも存在しているのは、法国が台頭しようとする亜人たちを()っているからにすぎん。

 実際、ここから離れれば離れるほど、人間主体の国家は少なくなっていく」

 

 アインズ様が異種族との共存についての意見を聞いてきた。ナザリックが建国するに従って、国の在り方を決めるために参考にしたいのかな?

 イビルアイが厳しい意見を言ったので、俺はナザリックにできそうな理想論を挙げる。

 

「もし平等な共存を実現させるなら、強者による独裁が必要じゃないかな。

 絶対強者のもとでは皆等しく弱者。後はそれっぽい法で民を縛る。

 評議国なんかはそれに近いと思うよ」

 

「君たちは異形種と共に暮らすことに嫌悪感を覚えないのか?

 例えば、悪魔やアンデッドと仲良くできるかね?」

 

 俺たちの答えに「成程」と頷いたアインズ様はさらに質問を続ける。

 アインズ様は一般人の反応を知っているはずだから、これは冒険者とかの強者の意識調査かな?

 

「ある程度の知性と理性があって、趣味と実益が合えば仲良くできるでしょう。

 実際に犯罪組織『八本指』の警備部門のトップ『六腕』にはアンデッドが居たんだし。

 そうだよなあ、イビルアイ?」

 

「…ああ、そうだな」

 

 ニヤリといやらしい視線を送り、アンデッドのイビルアイに同意を求める。

 イビルアイは俺の言葉にピクリと反応し、歯切れ悪く答える。やっぱりイビルアイを弄るのは楽しいなぁ。

 

 

「でも、法国の教育を受けた人たちには無理だろうね」

 

 そして、さり気なく法国をdisっておく。

 アインズ様はふむふむと顎に手を置いて頷いている。参考になったかな?

 

 

 

「しかしながら、君たちは広い見識を持っているようだ。流石は、アダマンタイト級冒険者と言ったところだな。

 実は、私は最近になって外に出て来たばかりで、現在は周辺の情報を収集中でね。

 特に強者の情報を集めているのだが、君達ならそう言った情報に詳しいだろう。

 もし良かったら、君たちが知っていることを教えてはくれないか?」

 

 

 アインズ様が話題を変えて今度は強者について聞いてきた。

 お、これって『蒼の薔薇』を売り込んだり、王国滅亡を回避するチャンスじゃね?

 知っている情報をドバーっ!と出して、顔中原作知識まみれになろうや!

 

 

「貴重な情報をタダでやるわけには───」

 

「まぁいいじゃないか。ガゼフさんの恩人なんだから、ま、多少はね?

 という事で、先ずはガゼフさんの話から───」

 

 でしゃばり出したイビルアイを押さえつけて、ペラペラと強者の情報を喋る。

 

 

 ガゼフさんは凄い。剃刀の刃(レイザーエッジ)は凄い。竜の秘宝は凄い。何か凄い究極の凄い武技が凄い。

 死んでも忠義を貫こうとする人だから、一騎打ちとかすんなよ!

 

 そして俺たち『蒼の薔薇』

 俺とイビルアイは英雄の領域を超えた天才魔法詠唱者、さらに知識的に強者だ。

 ガガーランは強さこそ英雄レベル止まりだが、外見が最強だ。

 淫乱姉妹はレア職業の忍者だ。

 リーダーのラキュースは希少な復活魔法の使い手だし、何か凄いタレントを持っている。さらに貴族令嬢だドン☆

 

 『朱の雫』はラキュースの叔父さんの特殊な装備が強い。…貴族家なのにアダマンタイト級冒険者を二人も輩出するとか、この一族の血は一体どうなってんだ?

 

 さらに隠居した人たちも現役を引退して尚も強者だし、その輝かしい経歴と知識の深さは本物だ。

 

 王国の貴族は人間の屑ばっかりだけど、ちょっとは歴史のある国なんだから亡国は許してお兄さん!

 

 

 それから、帝国のフールーダ、聖王国の仲良し三人組、法国の秘密部隊、法国と戦争中のエルフ国の王、評議国の竜王たち、ここら辺を適当に話す。

 あと竜王国の女王は結構好きなキャラだから助けてあげて。

 

 

 

「なるほど、君たちはいろんな冒険をしてきたようだ。

 ……その旅の途中で赤いポーションを見た事は無いかね?

 あるいは、こんな金貨に見覚えは?」

 

 そう言ってアインズ様は懐から一枚の金貨を取り出した。

 美術品の様な彫刻が成された金貨である。おそらくはユグドラシルの金貨だろう。

 

 ほぉ~、これがユグドラシル金貨かぁ。女性の横顔が彫り込まれている。この辺がセクシー、エロいっ!

 こんなものを見せて来たという事は、いよいよプレイヤーについて聞いてくるつもりなのだろう。俺がアインズ様に話せる情報ってどんなモノだろう?

 

 俺がユグドラシル金貨をじっくりと観察しながら、頭の中でオーバーロードの情報を思い出していると、その金貨を見て硬直していたイビルアイが、独り言を漏らすようにブツブツと語り出した。

 そして、声を強張らせながらアインズ様に問う。

 

 

「王国戦士長を排除しに来た法国の特殊部隊を追い払う程の強大な力。

 あの小娘の村長に貴重なマジックアイテムを気軽に渡していること。

 最近この地に現れたこと。

 そして、その金貨。

 お前は…ゴウン殿はもしかして()()()()()なのか?」

 

 

「ちが……いや、そうだ。

 私はユグドラシルのプレイヤーだ」

 

 

 今日のイビルアイは冴えわたっている。まさかアインズ様がプレイヤーであることを看破するとは…。

 そして自分がプレイヤーであることを認めるアインズ様。一体全体この状況からどんな対応をとって来るのか、全く予想がつかないぞ。

 俺はいつでも「モモンガによろしく」と言えるように準備しておく。

 

 部屋にいる全員が息をのむ。

 高まった緊張感の中、纏う雰囲気が変わったアインズ様が言葉を紡ぐ。

 

 

「取り繕うのはやめて単刀直入に聞こう。

 私は他のプレイヤーを探している。

 君たちの知っている情報が欲しい」

 

「…それを知ってどうするつもりだ?

 八欲王のように争いを始めるというのなら、私は何も話すつもりは無い」

 

 他のプレイヤーを探していると聞いて、イビルアイが警戒を強める。

 部屋の緊張がまた一段と高まる。

 アインズ様はゆっくりと語り出す。

 

「私は幸せを求めているだけだ。何者にも脅かされる事の無い幸福な日々を。

 脅威となる存在を警戒し、情報を得ようとするのは当たり前の事だろう?

 そしてなにより───」

 

「なにより?」

 

「その情報の中に私の知っている者が居るかもしれない」

 

 アインズ様は一呼吸置いて続ける。

 

「私は…俺はかつての仲間たちに会いたいんだ……」

 

 零れる様に漏れ出た言葉を吐き出すアインズ様の姿は、迷子の子供の様に小さく頼りないものに見えた。

 その様子を見てイビルアイの警戒していた雰囲気が霧散する。

 

 

「そう、か……。疑って悪かった、ゴウン殿。

 私が知っているプレイヤーはただ1人、十三英雄のリーダーだけだ。

 だけど、リーダーはもういない…」

 

 今度はイビルアイが俯きながら酷く寂しそうに言った。

 もういない、という意味を理解したのだろうアインズ様は、気を使わしげに軽く頭を下げてイビルアイに謝った。

 

「そうか…悪いことを聞いてしまったな。すまない」

 

 

 重くなった部屋の雰囲気に全員が沈黙する。ケン()、どうにかしろ(他力本願)

 そんな暗い空気を振り払うようにアインズ様が俺に話を振った。さすアイ!

 

「ターリア殿…とモモン殿はプレイヤーについて何か知っていますか?」

 

「私が知っているのは、プレイヤーが100年周期で現れる事、強大な力と強力なマジックアイテムを持つことくらいかな。

 プレイヤーに会ったのは貴方が初めてですよ」

 

 嘘は言っていない。ちょっと詳しい情報を知っているだけだ。特にアインズ・ウール・ゴウンについては現地勢で一番詳しいぞ。

 何の役にも立たない俺の言葉の後に続いてモモンが答える。

 

「私も彼女と同じです。

 …ただ、私が追っている強大な吸血鬼がプレイヤーなのかもしれません」

 

 

 パンドラズ・アクターが何か思い付いたらしく、吸血鬼の話を持ち出す。

 ここでまさかの、モモンが吸血鬼を追っている設定が登場。

 まさか、こんなところで話が繋がるとは…流石アインズ様。

 

 いやいや、その話はモモンが1人で洗脳シャルティアに会いに行く為のでまかせ設定だろ!

 パンドラさんはこの設定をどう扱うつもりなのだろうか?

 

 

「そ、れはっ…そうですか。

 ……何か深い事情がありそうだ。詳しく聞くのはまたの機会にしておこう」

 

 アインズ様が動揺していらっしゃる。自分が適当につけた設定が持ち出されて焦っているのだろう。やっぱり何も考えて無かったじゃないか(呆れ)

 だがイビルアイの瞳には、その動揺がプレイヤーの痕跡が出てきたことによるものだと映ったようだった。さすがアインズ様!

 

 

 話題が途切れて妙な間ができる。

 お、そうだ(唐突)

 

「今度ウチのチームメンバーをここに連れて来ても良いですか?

 リーダーなんかは六大神と同じ存在に会えるって聞いたら喜ぶと思うんです」

 

「ああ、それは構わない。

 しかし私はこの村に住んでいる訳ではないから、会える保証はできないな」

 

「まあ、その時はルプーに取次ぎをお願いしますよ」

 

 許可は貰ったがあんまりいい反応じゃないな…。

 もう少し押しが必要か。

 

「それと、忍者姉妹なら何か詳しい情報を持っているかもしれないです。

 あの二人は元々は暗殺者組織に所属していたんですが、その組織にプレイヤーらしき存在が関わっていたとか何とか」

 

「なるほど…それは興味深い話だな。

 ルプスレギナから連絡が来たならば、必ず向かうと約束しよう」

 

 よし、興味を持ってくれたな。

 これで皆が気に入られれば万々歳だ。

 そして、アインズ様が『蒼の薔薇』に関心を持てば、ナザリックの何かしらの作戦が始まる時に、少しは気に掛けてくれるように成るだろう。

 

 

 

 日が暮れてナーベが帰ってきたところで、今回の秘密会議は解散となった。

 

 以上。閉廷。みんな解散。

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 今日はゴウン様がカルネ村にいらっしゃった。突然だったから皆が慌てていた。いつも飄々としているルプスレギナさんが驚いている姿がとても新鮮だった。

 

 何やら特殊なマジックアイテムを持ってきたから、それを装備してポーションの研究をしてみてほしいとの事だ。

 それは装備者の能力を抑える代わりに成長を早めるマジックアイテムらしい。ゴウン様はそんなすごい効果のマジックアイテムを持っているのか!?

 

 実際に装備してみると、身体の力を何割か失ったかのような脱力感に襲われた。

 そしてその装備の強い拘束感に、死刑を待つ重罪人はこんな感じなんだろうな、と他人事の様な感想を抱いた。

 身体がとても怠いがこれでまた一歩、赤い色のポーション″神の血″に近づける…!

 

 そういえばゴウン様の声が少し変わったような気がする。気のせいかな?

 

 

 研究所に入って早速作業を始める。

 重い身体に喝を入れて手を動かすが、想像していた以上にキツイ。

 なんだかフラスコを持ち上げることさえ重労働に感じる。

 

 脱力感に集中が欠けて、何度も初歩的なミスをしそうになる。

 おばあちゃんに叱られながら、ポーション作りを始めたばかりの頃を思い出した。

 

 幾つも失敗作(一般的な青いポーション)ができてしまったが、最後に現在の成功作である紫色のポーションが完成した。

 いつもと違う緊張感のある環境でポーションを完成させたので、今日は大きな達成感を得た。なんだか成長した気がする。ゴウン様にそういうマジックアイテムだと言われたから、そんな気がするだけなのかもしれないが…。

 

 

 心身ともに大きく疲労した体を引きずりながら研究所を出ると、会議場の前で見慣れない人たちが何やら相談事をしているのが見えた。

 

 1人は僕たちの大恩人であり、男としては憧れずにはいられない強大な力と膨大な財を持つ大魔法詠唱者。アインズ・ウール・ゴウン様。

 続く2人は、アダマンタイトの冒険者認識プレートを付けた少女二人。

 そして最後に漆黒の鎧。冒険者のモモンさん。超級の戦士であるが、その中身は魔法詠唱者のアインズ・ウール・ゴウン様である。

 

 彼らはカルネ村にやってきた冒険者で、今はこの村に居る間の滞在場所を相談しているらしい。何やら忙しそうなので、挨拶に行くのは後にしておこう。…僕は薬草臭いらしいし、体を洗わないとな。

 

 そう考えながら踵を返して歩き出そうとしたところで、ふと違和感を覚える。

 

 

 …ん? ゴウン様が二人??

 

 

 どうやら僕はとても疲れている様だ…。

 目頭をよく揉んでから振り返り、もう一度だけ会議場の方を見やる。

 

 

 ──魔法詠唱者のゴウン様。

 

 ──アダマンタイト級冒険者の少女2人。

 

 ──戦士モモンを演じるゴウン様。

 

 

 ……ゴウン様が二人いるぅ!!?

 

 

「ええぇぇぇぇええええ!!」

 

 

 日が沈み始めたカルネ村に、ンフィーレアの絶叫が響き渡った。

 

 

 

 

 


-ンフィーレア

くさい(薬品)

経験値増加の首輪やら何やらで成長加速!

 

誤字報告に感謝

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。