-前回のあらすじ
カルネ村で一泊。ルプスレギナと殴り合う。
モモン達『漆黒』が帝国に行くとのことなので、俺たち『蒼の薔薇』もそれに便乗して、消耗した魔道具の補充をしに行くことにした。
まあ、消耗した魔道具の補充なんて建前だ。
俺はアルシェをweb仕様にするため。イビルアイはモモンと添い遂げるため。そして、モモン達ナザリック勢は帝国を罠に嵌めるため。それぞれ、裏の思惑を秘めている訳である。
と言っても、王都での騒動でチーム財政は大赤字だったので、魔法技術の発展に力を入れている帝国で魔道具を少しでも安く購入したいと言うのも本当だ。
王都に居るラキュース達を転移魔法で運び、エ・ランテルで合流する。
ガガーランとティアは未だ生命力が戻っていないようだが、今の体の感覚には慣れたらしく、そろそろ本格的な武者修行に入れるとのことだ。今回の遠征が終わったら地獄の特訓が待っている。覚悟せよ。
ちなみに、ハムスケは王国でお留守番である。
帝国の人が見たら騒ぎになるからね。仕方がないね。
俺ですら近くで見たらビビるからな。もしかして、そういうスキルか種族特性を持っているのだろうか?
そして、エ・ランテルから帝国へ向かう。
徒歩で向かうのは怠いので、商隊の護衛依頼を受けて馬車に相乗りする。
帝国までの護衛依頼を出していた商隊のおっちゃんは、アダマンタイト級冒険者を格安で雇う事ができて嬉しそうだった。
エ・ランテルから帝国まで向かう道中は平和なものだ。
王国と帝国は敵国同士だが、民間の行き来はわりと多いので道中はそんなに危険は無い。せいぜいがカッツェ平野からやって来たハグレ者のアンデッドくらいだ。アダマンタイト級冒険者を雇っているから商隊の人たちは緊張感の欠片も無いようだ。
大あくびをかましているおっちゃんを横目に、モモン(アインズ様)が居る所に向かう。
アインズ様はラキュースから復活魔法についての詳しい話を聞いているみたいだ。
ラキュースの使える〈
そして魔法を使う際は、損傷が少ない復活対象の死体が近場に必要で、さらに黄金と触媒を用意する必要がある。
魔力が尽きぬ限り誰でも何度でも、という訳には行かず、意外と使い勝手が悪い。
俺も復活魔法を真似したことがあるけど死霊術に成っちゃうんだよね。もしくはゴーレム化。完全に別の存在になってしまう。
丁度良い機会だから二人の話に混ざって信仰系の魔法について詳しく聞いてみる。
俺もバフ系は使えるんだが回復系がさっぱりでな。欠損回復とか蘇生魔法とか使えるようになりたい。
「ということで、私にも信仰系の魔法について教えてくれやぁ」
「あら、ターリアさんは独学で信仰系魔法を習得しているのでしょう?
天才を自称する貴方なら私の教えなんて必要ないでしょ。
私は今、モモンさんとお話しているの。邪魔しないで下さるかしら?」
ラキュースが丁寧な対応で俺を拒絶する。
お前は社交界の貴族かっ! …ああ、そういえば本物の貴族だったわ!
綺麗な笑顔を浮かべているが、その裏側から隠せない怒気が漏れ出ている。
最初っから怒りゲージが溜まっている。なんでや?
「あのー、ラキュースさん?何か怒っていらっしゃる?」
「別に怒っていないわ。
ただ、私を笑い者にしようとした人は信用できないだけよ」
笑い者って…厨二病を暴露したことか?
あの場に居たのは身内か口の堅い人しかいなかったし、ちゃんと致命傷は避けるように配慮していたから、そんなに怒っているとは思わなかったな。
「もしかして、王国を飲み込むほどの暗黒のエネルギーの話?
それとも技名を叫ぶと気持ちが良いって話かな?」
あの時の事を思い出したのか、ラキュースの顔に少し赤みが増す。
「両方よ!
あの後ラナーには暫く茶化されたんだからっ!」
やっぱり怒っているじゃないか。
暗黒のエネルギー
もう今はひたすら謝り倒そう。
「わ、悪かったって、謝るよ。
何だったら靴も舐めるから。
許してい…許して…レロレロレロレロ」
「ちょ、本当に靴を舐めようとするのは止めてっ!
分かった、分かったから。もう、許すから、離 れ な さ い !!」
騒いでいる俺たちに向けられた周りの人たちの視線が痛い。
ラキュースが足を舐めさせる変態だと思われてるのか、俺が足を舐める変態だと思われているのか。
だが、普段から奇行を繰り返している俺にダメージは無い!(天下無敵)
「…私も信仰系魔法の仕組みなどには興味があるな。
是非、私にも教えていただきたい」
脱線し始めた話をアインズ様が元に戻す。さすアイ!
ラキュースは大きなため息を吐き、信仰系魔法について話し始める。
魔法を行使する時に大きな力を感じる事ができるが、それが信仰する神の力だとか、最初はそれっぽいことを説明していたが、途中から段々と内容が怪しいものになっていった。
「───つまり、邪神は私達を常日頃から狙って観察している。だから闇の意志に呑まれないように心を強く持つことが大事なのよ…。
だけど心の闇というものは誰しもが持つ物…。私はその業を受け入れることによって、この身に闇の力を取り込んで神官としての力に変えているの。光と闇は表裏一体。信仰系魔法の中に負属性のものが有るのはきっとそういう理由ね……」
おい、それってYO!お前が執筆している物語のネタじゃんか。アッアッアッ。
ちょっと厨二病……いや、かなり厨二病。
二十歳過ぎてコレだから、一生付き合っていく病に成りそうだな…。
他人が厨二病設定を得意げに話しているところを見ると、なんというか…全身がむず痒くなる様な感覚に陥る…。新手の精神攻撃かな?
隣をチラリと見ると、アインズ様も頭を抱えて小さく唸り声を上げている。アインズ様にダメージを与えるとは…。ラキュース、恐ろしい娘…っ!
話すうちに段々とラキュースのボルテージが上がってきている。
苦痛が堪え切れないレベルに成りそうなんで話を止める。
「──ッ!? 見られている……ッ!
……そこッ! 今も影から奴らがこちらを覗いているッ!!」
「スタァァップ!!
なるほど、全くわからんっ!
…だいたい神官の癖に刃物武器を使うっておかしいだろ!?」
「それは、私が神に選ばれし戦乙女として───」
「あー、はいはい、成程、タレントの効果ね!!」
いい加減に妄想設定を垂れ流すのは、やめろォ!(建前)やめろォ!(本音)
勢いづくラキュースを何とか止める。
古傷が切り開かれていく様な話が止まって、アインズ様もホッとしている。この様子を見るに、結構な回数の精神鎮静化を味わったに違いない。
それと対照に、話を遮られてラキュースは不満そうだ。
「むしろ、どの神様も信仰してないのに信仰系魔法が使えるターリアの方が異常よ」
そうかな…そうかも…。
まあ転生者特典というか、ラノベ的な視点を持っているからな。そのおかげで、当初は化学反応とか起こそうとして効率の悪い魔法に成っていたけどな!
魔法なんだから世の法則を無視して、結果だけを持ってくるのが正解なのだ。
「ほう、ターリアさんは信仰心を持たずに信仰系魔法を習得していると。
…魔法を使用する時に、魔力系魔法と信仰系魔法で違いはあるのか?」
アインズ様が興味を持ったみたいだ。
そういえば原作で神官の頭の中をアレコレと弄くる実験をしていたな。
「私は基本的に魔法は全部同じだと思っているよ。
もし、信仰心だけで魔法が使えるなら、人類の大半は魔法詠唱者に成っているさ。
魔法というのは魔力を呼び水に世界から望む現象を引き出す技術、というのが私の持論だ。
だから魔力系魔法と信仰系魔法の違いは、干渉する場所が違うに過ぎないよ。
私も信仰系魔法の領域に接続できている以上、うまく手繰り寄せれば蘇生魔法も使えるはずなんだよね。少なくとも魔力や力量は十分足りているはずなんだよ」
感覚的にはスキルツリーを伸ばしていく様な物だ。
オバロ世界はワールドアイテムか何かで位階魔法が定着して効果が固められている。
だから、それっぽい所に手を突っ込めば欲しい結果を得られるのだ。
復活魔法はガチャかクレーンゲームの様になってしまってるんだが…。
「なるほど、興味深いですね。
つまり素養と力量さえあれば、すべての魔法が使えると?」
「お、モモン氏も私の魔法理論に興味があるかね?
良かろう!教示して進ぜよう!」
イビルアイとの魔法談義でするような魔法の実験や憶測についての話をする。
それにしても、アインズ様は聞き上手だな。程よく相づちとか褒め言葉が挟まれて、話していて気持ちがいい。これなら女の子にモテそうなもんだけど、何で童貞なんだ?
ひと通り俺の魔法理論を話し終えたところで商隊一行は補給休憩に入った。
──────
馬を休めている間、ガガーランがモモンに模擬戦を挑んで稽古をつけて貰うようだ。
アダマンタイト級冒険者同士の戦いを見る事ができると聞いて、商隊の人たちは興奮し大盛り上がりをしている。
少し距離を開けて二人が向かい合う。
武器を構えるガガーランに対して、モモンは腕をだらりと垂らしたまま脱力したような状態だ。
モモンのいつでもどうぞと言う態度にガガーランは遠慮なく突っ込んで行き、小手調べとばかりに戦鎚を叩き付ける。これを軽やかに躱すモモン。それは織り込み済みだと追撃を繰り出していくガガーラン。
二人の戦いは(ガガーランの一方的な攻撃であるが)段々と白熱していき、模擬戦の域を越えるような苛烈なものになっていった。
ガガーランは縦横無尽に周囲を駆け回り戦鎚の一撃を繰り出していくが、モモンは軽く体を揺する様に攻撃を回避する。
途中から本気の全力で挑んでいるガガーランに対して、モモンは余裕がある様子で猛攻を避け切っている。そして驚くべきことに、モモンはその場からほとんど動いていない。
「砕けや!」
何度も回避された振り下ろし攻撃だが、ガガーランが吼えると
足場が砕け、さらにその衝撃が足に伝わったモモンは体勢が僅かに崩れた。
その僅かにできた隙を逃さず、ガガーランは己の持つ最強の必殺技を放った。
超級連続攻撃。
一撃一撃が全力の15連攻撃。
防御系武技〈要塞〉では防げず、上位の武技〈不落要塞〉でなければ耐え切れない。
武技を複数同時に発動させて放つガガーランの切り札だ。
だが、その必殺技がほとんど躱されている。
辛うじてモモンに当てることができた攻撃も、全てグレートソードで防がれている。
筋肉隆々の一級の戦士が両手で構えた金槌の攻撃を、片手で持った大剣で防ぐ。
信じられない様な光景だが、それだけ二人の実力差が大きく離れているという事だ。
「──ぷはぁっ!」
やがて連撃が終わり、ガガーランに大きな隙ができる。
「今のは少し驚いたな…」
猛攻をすべて防ぎ切ったモモンがポツリと漏らす。
そして、大剣の腹で軽く撫でるようにして無防備になったガガーランに一撃を加えた。
それだけでガガーランの巨体が吹き飛び無様に地に転がる。そして、そのまま起き上がる事は無く、大地に寝ころんだまま大きく肩で息をしている。戦いは決着したようだ。
「ハァ、ハァ、あー、いってぇ。
こりゃ、最強の戦士ってのはマジだわ」
「すまない。
手加減したつもりだったが、少し強すぎたようだ」
モモンが倒れているガガーランに歩み寄り、手を貸して立ち上がらせる。
ガガーランは満身創痍の状態で、刺突戦鎚を杖代わりに体を支えている。
「いや、丁度良いぐらいだったぜ。あれ位の反撃が無いと訓練にならねえからな。
付き合ってくれてありがとよ。また今度、挑ませてくれや」
「ああ、構わないとも。暇なときなら何時でも受けて立とう」
モモンとガガーランが固く握手を交わし、周りから歓声が上がる。
商隊の面々は改めて漆黒の英雄モモンの規格外の強さを目の当たりにして、畏怖の視線をモモンに向けている。
二人の健闘をたたえる声があちこちで上がる中で、視界の端でティアがふらりと移動するのが見えた。
俺の経験上、こういう時のティアは必ず良からぬ事を企んでいる。
なんだかモーレツに悪い予感がする…。
-ラキュース
神に仕える光の使徒でありながら、その身に闇の力を宿す混沌の戦乙女。
アダマンタイト級冒険者というのは表向きの顔でしかなく、その真の姿は人知れずに世界の闇と戦う孤独な戦士。
世界の守護者として闇陣営の敵と対面する度に、己の内に眠る闇の力が疼いてその身体を蝕んでいく。
このまま戦い続けていては魂までも侵蝕され、人格もろとも闇の力に呑まれてしまうだろう。
…そう。
誤字報告に感謝