-前回のあらすじ
仲間たちと合流し帝国へ向かう
モモンとガガーランの模擬戦で盛り上がっている裏で、ティアが何やらコソコソと良からぬ事を企んでいる様子を見てしまった。
ちょっと関わりたくないけど、他の奴らは気が付いていないようだ。俺が行くしかないのか…。
放っておいたら面倒な事になる予感がするのだから仕方がない。
厄介事の芽を早めに摘むために、俺はティアの後を追う。
そして、なんと!
ティアの企みとは!
ナーベをナンパする事だった!
あほくさ。
「ナーベは美人だね」
「そんなくだらない世辞を言われても嬉しくありません」
「疲れてない?肩揉んであげる」
「必要ありません。土でも揉んでいなさい」
「綺麗な髪だね。触っていい?」
「駄目です。
「すんすん。
ナーベは良い匂いがする」
「気持ち悪い。その下劣な鼻は削ぎ落としてはいかが?」
ティアはナーベにちょっかいを掛けるが、にべも無くゴミを見るような目で罵られている。だが、ティアはちょっと嬉しそうだ。…まぁ、当人が満足なら良いんじゃないかな?
やがて、全く相手にされない事を悟ったティアがアプローチの方法を変えた。
モモンの方をチラリと一瞥して一言漏らす。
「モモンは強いね」
「当然です」
ふんすっと鼻を鳴らすナーベ。
その様子を見てティアの瞳がキラリと怪しく光る。
「モモンとは肉体関係を持っていたりするの?」
ド直球でセクハラをかましやがったァ!
「な、モモンさ──「ちょっと待ってもらおうか!」
ナーベが余計な事を言う前に割り込む。
即死級の失言は無いと思うが、万が一が有るからな。
それに、レズにストーカーされる苦痛をナーベちゃんに味わわせるわけにはいかぬ。
「部外者はナーベちゃんへの接触は禁止です。
質問が有るなら私を通してもらおうか!」
二人の間に割って入った俺Pを、ティアがギロリと睨んでくる。
「邪魔するのならば、ターリアから
「ヒェ」
ティアのこうげき。野獣の眼光!
その圧力に思わず口から空気が漏れ出てしまった。
コイツ…復活のペナルティでミスリル級冒険者くらいの力しかないのに…。俺をヤル気だ。本気の意志を感じる…。
コイツにはやると言ったらやる……スゴ味があるッ!
「おおおおちつけ!
ナーベちゃんは同性愛者じゃないから、攻め寄っても無駄だぞ!」
「…」
俺の言葉を無視してティアが無言で一歩詰め寄ってきた。
おい!無言で迫って来るのは怖いからやめろ!
「そ、それ以上近付くんじゃねぇ!」
俺がどうなってもいいのか!?
まさか、この俺が雑魚チンピラの様なセリフを言わされてしまうとは。
流れが良くない。俺の背に敗北が忍び寄って来るのを感じる。
「退かないのなら都合がいい。今日はターリアを頂きたい気分」
やべぇよ…やべぇよ…。
くっ、このままではヤられる。
覚悟を決めろ、俺ェ! でなければ呑まれるぞ!
俺が守護らねば、誰がナーベちゃんを守護る!
ひるんで退いてしまった一歩を戻し、覚悟を示すために更に一歩踏み込むッ!
「私が守護らねばならぬ…っ!!」
俺の覚悟が伝わったのか、ティアの足が止まる。
そして、ティアがゆっくりと構える。俺も迎撃の体勢をとる。
互いの闘気がぶつかり合い、俺とティアの周囲以外の景色が歪んでいく。もはや常人には立ち入る事の許されない、天然のバトルフィールドだ。
相手の挙動を一瞬たりとも見逃すまいと集中を高めていく。
永遠にも思える一瞬一瞬の中で、ティアの指先がピクリと動いた。
………っ!来るっ!!
──影分身っ!
分身の能力は本体よりも劣るが、単純に手数が増えるというだけで脅威だ!
──闇渡りっ!
一瞬で俺の背後をとってきた。死角からの攻撃はやはり脅威だ!
──毒針っ!
キラリと光る特殊な形の投擲武器。掠るだけでも致命傷になり得る毒は脅威だ!
ティアが忍術を用いて最初から全力で決めに来た。
どれも食らうのは危険な攻撃だが、この派手な動きの全部が囮。
本命は無色、無味、無臭の毒ガス!
毒針を分身もろとも巻き込む様に全てを捌いて、背後に回ったティアを回し蹴りで弾き飛ばす。
この間、無呼吸である。
そして無詠唱で空気清浄化の魔法を発動する。
「やめてよね。本気でケンカしたら、ティアが私に
「くっ、駄目だったか」
ふ、雑魚が。
レベルダウンしている奴を相手に負ける訳ないんだよなぁ。
そして守るべきものがある奴は強い。正義は必ず勝つ!
「さあ、もう安心だよ、ナーベちゃん。
……ナーベちゃん?」
「ナーベがいない」
返事が無いので振り返ってみると、いつの間にかナーベはいなくなってた。
俺達が睨み合いをしている内に何処かへ行ったみたいだ。かしこい!
「ターリアの所為でナーベに逃げられた」
「ざまぁw」
「今回はカチンと来た、ターリアは必ず仕留める。覚悟しておけ」
「ヒェ」
──────
夕方。
今日の行軍はここまでとし 野営の準備を始める。
魔道具でパパッと寝床を作れるので、後は魔法などで警戒網を敷くだけだ。
と言っても、商隊の人たちはそうも行かないので設営の手伝いをする。
そのついでに積み荷の食品を幾つか購入する。
商隊の護衛依頼はこういう時に便利だ。
早速購入した食材を使って晩御飯の準備をする。
意外かもしれないが、こういう時は大抵はガガーランが仕切る。
単純に、ティアとかイビルアイに任せたら危険だから消去法でもあるんだが…。
晩飯を調理している間は暇なので、仲間たちに腕相撲を挑む。
『ゲヘナの炎』の時の経験値が身体に馴染んで、最近になって完全なレベルアップを果たしたのだ。
ネオ・ニュー・ターリアの身体能力の成長具合をここで測ろうというわけだ。
レベルダウンしたティアは瞬殺の楽勝。
2Pカラーのティナも余裕の勝利。
ガガーランには惜敗。レベルダウンしても筋肉は裏切らないという事か。
イビルアイは…んにゃぴ。
そして、対ラキュース戦。
「何故勝てんのだーッ!」
勝負開始の位置からじりじりと、こちらの陣地へと俺の腕が押しやられていく。
あの細腕の何処にそんな力が眠って居ると言うのか?
「筋肉達磨に負けたのは納得できる。10割戦士だからな!」
完全に攻めと受けの体勢になった。
相手はまだ余裕がありそうな顔をしている。
「だが、お前は私と同じ魔法戦士型だろうがッ!!」
もう8割は持っていかれた。
たのむ俺の筋肉!……呼び掛けに応えてくれ!!
「英雄の領域を越え、逸脱者の領域に足を踏み入れたこの私が負ける!?
気持ち的には、もう第7位階魔法も使えるというのにぃ!!」
ラキュースが習得している〈
それに対して、俺は第6位階魔法が使えるようになったから、確実にラキュースよりレベルが高いはずなのに。一体どうなっているのか。コレガワカラナイ。
「ぐぬおぉぉぉぉおおおお!!」
「ターリア、生き汚い」
「うるさいぞ2Pカラー!気が散るから黙ってろ!」
今現在、手首を捻ることによって決定的な敗北を回避している。
確かにティナの言う通り汚い手段だ。いやもう、実質敗北と言ってもいい。95割くらい敗北状態だ。だが、今は雌伏の時なのだ!俺は反撃の機会をうかがっているのだ!
まあ、ここからの逆転は無理なんですけどね、初見さん。
「ヌゥン!ヘッ!ヘゥッ!ァ゛ア゛ア゛アアァァァァ゛!(目力先輩)」
「そろそろ、とどめを刺してもいいわよね?」
「ウ゛ア゛アアアァァァァ゛!!フウ゛ゥ゛ゥン!!(慟哭)」
「まったく、負けてからも煩い」
強い!理不尽!
これが鬼リーダーの鬼たる
あァァァんまりだァァアァ!と号泣し感情をリセット。ふう…スッキリしたぜ。
「ちゃんとバランス良く飯を食ってるか、ターリア?
栄養が偏った食事ばっかりじゃ、大きくなれねえぞ」
筋肉が言うと説得力が違うな。
でも現在すくすくと成長しているから心配いらない。
「こいつは肉と甘い物ばかり食べていたぞ」
「イビルアイ!余計な事を言うんじゃあないぜッ!」
「なに?そいつはお仕置きが必要だなぁおい!
おめえは目を離すとすぐ偏食に走るからなあ」
「うるさいんじゃい!若い内は何を食べても平気なんじゃい!」
たとえ平気じゃなくても魔法でどうにかなるんだから、好きなもん食べて生きたらええねん!
ギャーギャーと騒いでいる内に夕飯の準備が整った。
鍋の中を覗き見る。う~ん、普通。しいて言うならば、食材の切り方が不揃いだったり少し煮崩れしていたりと、料理人の性格がよく表れている。
「ガガーランの料理は雑だからなぁ」
「文句を言うならやらねえぞ?」
「ウソウソ!いつも料理を作ってくれて感謝してるぜ、ママーラン!!」
「だれがママーランだコラ」
ぶつくさ言いながらも食器に野菜スープをよそってくれた。
雑だが栄養バランスの良い料理だ。そして、
それでは、みんなで手を合わせて、いただきま~す!
先ずスープを一口飲む。これが食通ってやつよ!
「この美味しくないけど安心する味。
まさに実家の味って感じだな、ママーラン!」
「まったくよ、世話の焼ける生意気なガキだぜ」
ガガーランは良いお母さんになりそうだな。
というか、他のメンバーが酷いからマシに見えるだけかもしれない。
『蒼の薔薇』で一番に生活能力が高いのはガガーランだからな。
ラキュースとか嫁の貰い手が居なさそうだな!ガハハハ!
お、大丈夫か?額に青筋浮かべてるけどw
ちょ、ちょっとお待ちになって!お食事中にお暴力を振るうなんてお行儀が悪いことですのよ!(お嬢様)
そしてティア!
俺のスープに変な液体を混ぜようとするな!
え?最初から入っていた?
どうりでねぇ!
妙に身体が火照ってると思ったわ!〈解毒〉!〈解毒〉!!
久しぶりにメンバー全員が揃ったからか、今日は皆ではしゃぎたおした。
──────
道中は特に面白いことも無く帝都に到着した。
エ・ランテルの物と比べても遜色ない城塞の内側に足を踏み入れる。
帝都アーウィンタール。
古めかしい王都と違って本物の都会だ。道路がきれいに整備されているという点だけで生きている時代が違う。
帝都の奥の方には機能美を感じられる高層建築の並ぶ街並みが見えて、時代の先取りを感じられる。鮮血帝ってしゅごい。
そして街の中央には皇帝ジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクスが居る皇城が見える。
はぇ~、すっごい大きい。
「我々が良い宿を探しておく、『蒼の薔薇』は魔道具の方を見に行くといい」
「お、マジか。そいつは助かるぜ。
でも良いのかよ?そっちもマジックアイテムを見に来たんだろ?」
「ああ、構わないとも。
こちらは急ぎで必要な物など無い、帝国へ来たのは観光みたいなものだからな」
帝都に入って少し進んだ所で、モモンが宿の確保を買って出てくれた。
モモンからは俺たちと別行動を取りたいという雰囲気が出ている。これからフールーダに会いに行くんだろう。
だが、イビルアイが空気を読まずにモモンに付いて行こうとする。もちろん阻止だ。
「私もそっちに──「イビルアイは私と一緒にマジックアイテムの目利きでしょーが!」──くっ…余計なことを…っ!」
な~にが「くっ…余計なことを…っ!」じゃい!
ちょっとは気を利かせんかい!
「それじゃ、モモンさんの厚意に甘えさせて貰いましょうか」
「魔道具の店の方は私たちが下調べしておくよ。
それで明日、モモン氏たちを案内しようか」
戦闘目的のアイテムは必要無いだろうし見飽きているだろうから、アインズ様が興味を抱きそうな日用品のマジックアイテムを扱っている店をピックアップしておこう。
日用品のマジックアイテムと言えば、口だけ賢者なんていたな。プレイヤーなんだろうけど詳しい事は知らないから、これはイビルアイの分野だな。
「なあ、ターリアがいれば魔道具選びは問題無いだろう。
やっぱり私は向こうに行っても良いんじゃないか?」
もう話が纏まりかけているのに、尚も諦めないイビルアイ。
最近は恋愛力が上がった(?)から調子に乗り出してるな。
「向こうもチームの予定がある」
「イビルアイは配慮が足りない」
「うぐぅ」
だが忍者姉妹に撃墜される。
たとえイビルアイがちょっと成長したところで、恋愛クソザコ社交性皆無ロリババア吸血鬼であることには変わりはない。
イビルアイが大人しくなった所で魔道具が売っているであろう帝都の商業区へと向かう。
見せてもらおうか、帝国のマジックアイテムの性能とやらを!
魔法技術が王国よりも発展している帝国。
今回の買物はちょっと楽しみだ。
まずは観光を満喫しよう。
-ガガーラン
ママーラン
貴方をバブみです(洗脳)
誤字報告に感謝
書き溜めはお仕舞い