イビルアイ尻尾√   作:冠尾かざり

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17 帝都に別れを

-前回のあらすじ

アインズ様″口だけの賢者″が考案したアイテムを買う


 

 

 

 

 

 

 魔法省の一室。

 長時間のデスクワークをするための部屋だ。用意された椅子はクッションが柔らか過ぎず硬過ぎず良い塩梅のもの。そして疲れた体を伸ばすのに邪魔にならないよう無駄な装飾でゴテゴテしていない。

 フールーダは運び出した書類が机の上へと乱雑に置かれた部屋の中で法国の調査資料を読み返していた。

 

 

 確認し終わった書類を横に退けて、疲労が溜まった目を休めるために顔を上げる。

 

 目を閉じて思い返すのは先日のこと。

 あの時、自分の持つ情報では師の期待に応える事が出来なかった。

 師は「気にする事は無い」と仰ってくださったが、それに甘んじているようでは弟子失格だ。そんな様ではいつか見捨てられるだろう。

 

 失望されることを想像して身震いする。

 

 作業を妨げる余計な思考を捨て、意識を手元の資料に戻す。

 

 

 やがて、それなりの厚さがあった書類の束を全て読み終えて長い息を吐く。

 やはり碌な情報が無い。

 数少ない重要な情報を書き写したが、果たしてこれが何処まで師の役に立つだろうか。せめて無駄にならない事を祈るばかりだ。

 

 

「師よ」

 

 調べものに一段落着き、席を立ったところで弟子の一人から声が掛かる。

 何事かの報告があるようだ。

 

 

「どうした?」

 

「アダマンタイト級冒険者の方々が師に面会を求めておられます」

 

 アダマンタイト級冒険者と聞いて思い浮かんだのは『漆黒』だ。

 もしかして師がいらっしゃったのか?

 

「先日にいらした方々か?」

 

「いえ、王国の『蒼の薔薇』です。

 魔法詠唱者であるイビルアイ様とターリア様がお見えになっています」

 

 

 会いに来たのは師のチームでは無い?

 では、会う必要は無いか…?

 …いや、同じ時期に訪ねてきた王国のアダマンタイト級冒険者だ。無関係である可能性は低い。…会ってみるべきだな。

 

「分かった、あの応接室にお通しせよ」

 

 

 

 急いで身だしなみを整えて、魔法省で最上級の応接室に向かう。

 部屋の前で己の身なりの最終チェックを済ませ、扉をノックして入室する。

 

 

 部屋に居たのは二人の少女。

 流石はアダマンタイト級冒険者と言うべきか、身に着けている装備はどれも一級品の様だ。華やかさこそ無いが、この煌びやかに飾られている応接間に埋もれない輝きがある。

 それらは『蒼の薔薇』が積み上げてきた数々の偉業、功績の大きさを示し、彼女たちの冒険者としての能力が確かなモノであると確信させられる。

 そして、彼女らの魔法詠唱者としての力量もこの眼(タレント)が教えてくれる。

 

 紺色の髪の少女、ターリア。

 王国の孤児院出身で親は不明。10歳に満たない頃から冒険者活動を始める。

 魔法詠唱者としての才能を開花させ、ソロの上級冒険者として名を上げた。

 のちに『蒼の薔薇』に加入。

 

 そんな彼女は第6位階ほどの魔法の力を持つようだ。

 

 

「ほぉ、この私に迫るか」

 

「…並んだと思っていたけど、まだ向こうの方が上か。

 流石は帝国の切り札。やりますねぇ!」

 

 

 未だ成熟しきっていないような少女が自分と同じ領域に居る。

 帝国が持つ情報に間違いが無く、彼女が見た目通りの年齢であるならば恐ろしい才能だ。

 

 

 そして、もう一人。

 来歴不明のイビルアイ(邪眼)という偽名を名乗る少女。

 いや、少女と言うよりは子供か、あるいは背の縮んだ老人と言った感じだが…。

 その仮面の少女イビルアイからは、第7位階の力量に相当する魔法のオーラを感じられた。それも、もう次の領域に足を踏み入れようかという力強さだ。

 

 

「なんと!

 魔神級の力を持つと言うのかっ!?」

 

「ふん、あのババアと同じ位はできるようだな」

 

 

 第7位階魔法とは大儀式を用いて行使されるものである。

 それを習得しているなんて、もはや人外の領域だ。

 あるいは、彼女は本当に人間では無いのかもしれない。

 

 『蒼の薔薇』、これ程の力を持つとは…。

 復活魔法が使えるというリーダーを含めて、他のアダマンタイト級冒険者とは格が違う。彼女らを超える冒険者は、師のチーム『漆黒』の他には無いだろう。

 その気になれば、王国など如何とでも成るだろうに…。

 つくづく冒険者が国家の問題に不干渉という規定があってよかったと思う。

 

 

 出会い頭だというのに、気が付けば互いに力量を測り合っていた。

 一通り比べ合って、ふと冷静に戻ったところでお互いに顔を見合わせて苦笑し(一人は仮面で分からないが)改めて自己紹介を交わす。

 

 

「それで、今日はどういったご用件でしょうか?」

 

 挨拶もそこそこにして、二人に用件を聞く。

 もし、師に関係する話なら最優先で事に当たらなければならない。

 

 ターリアがニコリと愛嬌のある笑みを浮かべて口を開く。

 

「せっかく帝国に来たのですから、帝国最高の魔法詠唱者であるパラダイン様と魔法談義でも出来ればと思いましてね。

 アポイントメントも無しに押しかけて申し訳ないです」

 

 そう言って軽く頭を下げるターリア。

 アダマンタイト級冒険者は非常識な奴らばかりだと聞くが、()()()ほんの少し良識があるようだ。

 

 そして用件は、魔法談義をしに来ただけみたいだ。

 なんだ、師は関係無いのか…。

 もちろん、己と同等以上の魔法詠唱者の話を聞く事ができるのは嬉しい。

 

 

「おお、魔法談義ですか。

 それならばこちらも歓迎するところ」

 

 師とは無関係という事ならば、それはそれで結構。

 それならば心置きなく魔法談義に挑めるというものだ!

 

 給仕を呼び長時間の論議に耐えうる量の飲み物とお茶請けを運ばせる。

 さあ、これで準備万端だ!

 

 

 

 

 そうして始まった魔法談義は、とても有意義なものになった。

 

 彼女たちが言うには、研究や特訓で鍛えるよりも強敵との実戦を経験したほうが成長が早いらしい。それならば、魔法省の管理を高弟の誰かに任せて、自分は冒険者の様にモンスター退治に出てみるのも良いかもしれない。

 そして、視点の異なる魔法理論を聞いて、新しい考えが次々に生まれてくる。

 

 やはり別の環境で才能を伸ばした魔法詠唱者の話はとても良い刺激になる。

 弟子たちとの魔法談義ではこうは行くまい。

 あるいは、彼女たちの斬新な考え方は、若者が持つ発想力が故かもしれない。

 

 

 彼女たちの若々しい姿を見て思い出すのは、1人の優秀だった少女。

 かつて弟子だったあの娘も順調に成長していけば、彼女たちの様に自分と同等以上の魔法詠唱者に成ったのだろうか?

 やはり惜しい事をした。

 

 

 ───アルシェ・イーブ・リイル・フルトか…」

 

 

「ん?誰だ、それは?」

 

 おっと、声に出てしまっていたか。

 魔法談義も区切りの良いところだし、小休憩もかねて世間話を挟むのも悪くないか。

 

「かつて私の弟子にターリア殿と同い年くらいの優秀な娘が居たのだよ。今はもう弟子を辞めてしまったがね。

 その娘も正しく導けば今ごろはアダマンタイト級の実力を得ていたかもしれない。

 だから思ったのだよ。惜しい事をした、と」

 

「へぇ~、どんな子だったの?」

 

 世間話にするには話が広がりにくい話題だったなと苦笑し、魔法談義の続きを始めようと口を開こうとしたところで、ターリアが元弟子の話に食い付いた。

 少し前のめりで聞いてくる様子を見るに、同年代の娘と聞いて興味が湧いたのだろう。

 

 アルシェ・イーブ・リイル・フルト。

 自分と同じ生まれながらの異能(タレント)を彼女は持っていた。それだけで十分に価値のある人材であったはずだ。

 第3位階魔法の領域に到達しようかという所で弟子を辞めてしまった。何故、これから魔法詠唱者として花開こうかという時に去って行ったのか。事情は知らないが帝国でこれ以上の環境は無いだろうに、なんと勿体無い事か。

 

 知っている事はあまり多くは無いが、元師弟として覚えている事を話す。

 

 

「───名前から分かる通り貴族の娘だった。

 …そういえば身分を剥奪された貴族の中に同じ名前があったかもしれん。

 ならばそれが弟子を辞めた原因だったか…」

 

 今度、暇が出来たら少し調べてみるか。

 もし第3位階魔法まで使えるのであれば、それなりの地位を約束しても良いだろう。

 

 

「あっ、そうだ。

 パラダイン様に聞きたいことがあったんだ」

 

 唐突に思い出したようにターリアが話題を変える。

 何か質問があるようだ。

 

「ほう、聞きたいことかね?

 魔法の事ならば──少しは役に立てるだろう」

 

 師にお会いした時の事を思い出して思わず苦笑してしまいそうになる。

 ここで笑ってしまうのは不自然で失礼な態度に映ってしまいかねないので慌てて顔に力を入れる。幸い、表情筋は動きを止める命令に従ったようだった。

 

 

「なんだったか…。

 たしか、魂は大きさに違いはあっても同じもの。

 大いなる世界の流れから打ち上げられた飛沫のような存在、だったかな?」

 

 ターリアが額に指を置きながら過去の記憶を拾い集める様に言葉を紡ぐ。

 それは非常に気になる言葉だった。

 

「…それはいったい?」

 

 詳しい話を聞き返す。

 もしかしたら声が震えてしまっていたかもしれない。

 

 

「いや、私も詳しくは知らないんだけどね。

 ある貴重な書物に載っていた内容らしいんだ。

 大魔法詠唱者のパラダイン様なら深い考察を聞けると思ってね」

 

「なんだ、そんな言葉は初めて聞いたぞ。

 私には一言の相談も無いのか?」

 

「たった今、思い出した事だからね。仕方がないね」

 

 イビルアイとターリアの気の抜けたやり取りを聞き流しながら、先ほどターリアが口にした言葉についての考えをまとめる。

 

 

「その言葉が世界の真実であると言うならば───」

 

 少し興奮を鎮めるために一呼吸置く。

 

「魂というモノを理解した時には、おおよその事が不可能では無くなるだろう。

 まずは寿命の克服だな。あるいは若返ることも可能かもしれん。

 そして才能の限界の超克。もはや才の無さを嘆く必要もなくなる。

 これ等が叶うならば第10位階魔法の習得(魔法の深淵を覗くこと)も夢では無いッ!!」

 

 

「…ナルホドォ!」

 

 いかん、いかん。勢いよく言いすぎた。ターリアが少し引いてしまっている。

 第10位階魔法の領域に足を踏み入れる事を想像して、思わず興奮を抑えきれなかった。

 

 コホン、と少し誤魔化して話を変える。

 

 

「…その書物、できれば実際に見て詳しく調べてみたいものだ」

 

「入手手段は知らないけど、六大神とか八欲王の遺産レベルのレアアイテムだと思うよ」

 

 八欲王か…。入手は難しいか?

 そして六大神。また法国か! 師を煩わせるばかりか魔法の深奥を秘匿するとは、なんともけしからん者どもだ!

 

 

「あるいは、その書物を読んだ者に会ってみたいですな」

 

 実際に見る事が難しいなら、内容を知っている者に話を聞くだけでもいい。

 望みは薄いだろうが、ターリアに少し期待を込めた視線を送る。

 

「私も会ってみたいと思っていたんだよね…」

 

 思って()()、か…。

 おそらく書物を読んだ人物は既に亡き者なのだろう。

 そう言ったターリアは、表情を笑みで固めるように顔を(りき)ませている。

 彼女も無念に思っているみたいだ。

 

 

 そのあとも魔法談義を続ける。

 そして、日が落ちる頃にまた会う約束をして二人は帰っていった。

 

 

 

 

 

 

──────

 

 

 

 

 

 

 帝都は未来のにおいがする~♪

 わたくし、観光の達人、ターリアです。

 ということで数日の間、適当に街を歩き回って帝都観光を楽しんだ。都会の雰囲気に酔って無駄な買い物もしてしまった気がするけど、楽しかったからヨシ!

 

 では、そろそろお仕事の時間だ。

 アインズ様と一緒に帝都の冒険者組合に顔を出す。

 

 往来の多い大通りに面した冒険者組合の小奇麗な扉を抜けて組合の中に入ると、早々に俺たちのアダマンタイトの冒険者プレートに注目が集まる。

 周囲から『漣 八連』か『銀糸鳥』かとひそひそ声が聞こえてくる。

 

 ざんねんでしたっ! 我々は王国のアダマンタイト級冒険者でございます!

 

 冒険者たちの勘違いにニヤニヤしていると、受付カウンターから受付嬢が出て来て俺達にぺこりと頭を下げて挨拶をしてきた。

 

 

「『漆黒』と『蒼の薔薇』の皆様ですね?」

 

「あら耳が早い」

 

 見事に俺たちの正体を看破してみせた受付嬢にラキュースが少しおどけた様に返す。

 流石は多くの冒険者が集まる組合だ。既に俺たちの情報を手に入れているようだな。別に素性を隠していたわけではないが。

 

 2人の会話は響くような大きい声では無かったが、耳をそばだてていた周囲の冒険者が聞き取るには十分な音量だった。

 周囲のひそひそ声がざわざわ声にランクアップした。とりわけ『漆黒』の噂の真否についてが多く聞こえるように感じる。

 

 

「皆様にご指名の依頼が入っております」

 

 そして早速、名指しの依頼が舞い込んできた。

 受付嬢の「皆様」と言ったことから『漆黒』と『蒼の薔薇』の2チームに依頼が入っている様だ。

 恐らくは例の原作イベントに関するモノだろうが、アインズ様達だけでなく俺たちにも依頼が来たのか。こりゃあ、都合がいいぜ!

 

 

「おいおい、アダマンタイト級冒険者を2チーム同時に雇うなんてよ、随分な物好きが居たもんだなオイ」

 

 ガガーランが肩を竦めて軽口をたたくが、その瞳には警戒の色を宿しており、さり気ない動作で俺たちにも注意を促している。

 やっぱ冒険者歴が長いだけあってガガーランは勘が冴えわたっているな。お察しの通り、この依頼は謀略にまみれているぞ。

 だが依頼を受ける事は確定しているので、さっさと話を進める。

 

「とりあえず詳しい話を聞いてみますかね?

 モモン氏もそれで良いよね?」

 

「ああ、そうだな。

 その依頼の詳細を聞かせてくれ、受付嬢」

 

「畏まりました。会議室までご案内します」

 

 

 ということで先導する受付嬢さんについて行く。俺たちが去った後では様々な憶測や噂話などが飛び交って、やかましい声が廊下まで聞こえてきた。

 案内された会議室はそこそこ盗聴対策をされているらしく部屋に入った途端に外の喧騒がピタリと聞こえなくなる。

 全員が適当な席に着いたところで、お偉いさんっぽい人がやって来て依頼の説明を始めた。

 

 依頼内容は新たに発見された遺跡への護衛だ。

 今回の依頼はどこかの伯爵様が出したもので、丁度良くアダマンタイト級冒険者が帝都に居るという事で指名依頼になったわけだ。

 まったく、どこから俺たちの事を聞きつけたのか(すっとぼけ)

 伯爵様の肝いりの案件らしく、最低でもどちらか1チームは依頼を引き受けて欲しいとのことだ。いっそ滑稽にも見えそうな挙動でペコペコ頭を下げて、説明していた組合員が懇願してくる。必死過ぎて少し引くわ。

 

 そんな話を果実水をごくごく飲みながら聞き流す。あ~、うんめぇなこれ!

 

 少しして依頼人の執事さんが登場。依頼内容の詳細を話し始める。

 目的地が王国領と聞いてラキュースが眉をひそめたり、執事が冒険者の不文律を持ち出して対抗したりと、論戦をバチバチと繰り広げている。

 

 お茶請け食い尽くしたんですけど~。ま~だ時間掛かりそうですかね~?

 

 

「モモン氏はどうするの?」

 

 そろそろ論戦を眺めるのも飽きたんで、アインズ様に話を振る。

 『漆黒』が依頼を受けるなら、なし崩し的に『蒼の薔薇』の参加も決まるだろう。

 

「…我々はこの依頼を受けようと思う」

 

「モモン氏が依頼を受けるなら私達も受けて良いんじゃない?」

 

 報酬も悪くない額だしな!

 

「ちょっと、ターリア。

 そんないい加減には決められないでしょう?」

 

 まだレスバトルは終わっていないと言いたげなラキュースが俺を睨む。

 でも、イビルアイのために出された分のお菓子だって全部食べちゃったんスよ。もうこんな所に居座る理由は無くなったのです。

 

「まったく、貴族ってのは無駄に話を長引かせるからイケない。

 どっちにしろ、無視できない情報がある以上は受けないわけにはいかないでしょ?」

 

 ガガーランもイビルアイもうんうんと頷いている。

 ほら見ろ! お前の話は長いんじゃい!(せっかち)

 だいたい、未知の遺跡と聞いてラキュースが興味をそそられないわけ無いんだよなぁ。大方、自分たちも遺跡探索に参加するために、依頼人の咎を責め立てて譲歩を引き出そうとしていたのだろう。いやいやいや、ナザリックに侵入したら死ぬぅ!!

 

 

「はぁ~~~。…わかったわよ。

 私達も受けるわ、この依頼」

 

「では決まりですな」

 

 

 ラキュースのクソデカため息をゴング代わりに論戦は終わりを告げた。

 

 

 

 

 

 

──────

 

 

 

 

 

 

 依頼当日の早朝。

 さすがにこの時間となると少し肌寒い。もう秋だからな。

 フェメール伯爵の保有する屋敷にて、今回の依頼の旅に必要となる荷物を大きめの幌馬車2台に運び入れる。約30人分の水や食料を往復8日分+滞在3日となるので積み込む荷物はかなりの量だ。

 まあ、力持ちのアインズ様、ナーベちゃん、イビルアイが居るのに加えて、魔法の力を使って楽々と運んだから作業は1往復で終わったがな。

 

 馬車の中に物資を詰め込み終わって暇になったので、八足馬(スレイプニール)を撫でたり髪の毛をモシャモシャ齧られたりと戯れて時間を潰していると、先導する執事さんとワーカーたちの姿が見えた。

 ワーカーたちは4頭の八足馬(スレイプニール)を見て驚き、俺たちのアダマンタイト級の冒険者プレートを見て驚き。もう、ダブル驚きですよね。

 

 今回の依頼に同行するワーカーは4チームだ。

 アルシェちゃんが所属する『フォーサイト』

 恐怖公の犠牲者たち『ヘビーマッシャー』

 ″緑葉(グリンリーフ)″おじいちゃんが率いる『竜狩り』

 そして『天武』エルヤー・ウズルス。

 

 

「あの野郎…!」

 

 早速とエルヤーの姿を見つけたガガーランが嫌悪感をむき出しにする。

 

「分かっていると思うけど今回はお仕事だからね、ガガーラン」

 

 ガガーランは「わーってるよ」と言いつつ、エルヤーに近づいて行って「よう!」と声を掛ける。…自分から突っ込んでいくのか(困惑)。

 

 

「おや、先日にお会いした『蒼の薔薇』の皆さんじゃないですか。

 ならば、馬車を警護する冒険者とはあなた方の事でしたか。

 足手まといが同行するんじゃないかと心配していましたが杞憂だったようですね」

 

 エルヤーは俺たちの情報を得ているようだな。腐ってもベテランのワーカーという事か。

 北市場で会ったときは名乗って無かったが、後から俺たちのことを調べたのだろう。

 そして初っ端からでました。自信過剰で傲岸不遜なエルヤー節。

 

 

「へえ、俺たちの事をよく調べてるじゃねえか。

 ならよお、無抵抗な女に手を上げるような糞野郎が嫌いだって事も知ってるかよ?」

 

 奴隷のエルフの一人に真新しい殴られた跡が付いているのを見てガガーランが怒気を放つ。俺の忠告は無駄になってしまったようだ。

 

「私も弱者を甚振るのは、あまり好きではありませんね。

 ですが、アレ等はエルフですよ?」

 

 出たよ、法国特有の人間至上主義。人間以外を下等な生き物として扱い徹底的に排除しようとする思想。やはり宗教は悪…。

 そんな思想に染まっている癖に、エルヤーはエルフの奴隷を抱いているのだ。法国の連中から見たらすっげぇ変態だ。だから、放逐されて帝国へ流れて来たに違いない。

 

 法国味を感じさせるセリフを聞いてガガーランも困惑をしている。

 

「あん? なに言ってんだ?」

 

「ああ、なるほど。

 王国は奴隷が禁止されていましたね。であるならば、その怒りも納得です。

 ですが、帝国では違法でない事を理解していただけると嬉しいですね」

 

 そして、エルヤーも見当違いの解釈を始める。

 収拾がつかなくなりそうなんで割り込ませてもらおうか。

 

 

「はい、ストーップ。

 そちらのチームの都合について私達はもう文句を言わない。

 『天武』さんもエルフに出来るだけ酷い扱いはしない。

 お互いに少しずつ譲歩する。みんな、ハッピー。これで良いね?

 以上。閉廷。みんな解散」

 

 有無を言わせず話を終わらせる。仲裁の鬼、ターリアです。

 お互いに納得のいかないという憮然とした表情をしているが文句は言ってこなかった。せめて今回の依頼の間だけでも仲良くして?

 

 

「ひゃひゃひゃ、華やかて良いのぅ」

 

 静まった不穏な空気を破るおじいちゃん。ナイスぅ!

 パルパトラ″緑葉(グリンリーフ)″オグリオン、年の功とはよく言ったものだ。

 

 おじいちゃんが作った流れに乗って場の雰囲気を一掃するぜ。

 

「それじゃあ、全員集合したことだし軽く自己紹介でもしますか!」

 

 美少女ターリアの快活な一声によって陰鬱な空気が一掃され、ワーカーたちの表情が晴れた。

 俺は気遣いもできる人間だからな(自画自賛)

 

 

「その前に……君たちに聞きたいことがある」

 

 アインズ様がむんずと一歩前に踏み出して自己紹介の流れを止める。なんだお前!

 

「何故、遺跡に向かう?」

 

 あ~~、アインズ様的にこの質問は必須か。じゃあ仕方ないね。

 ナザリックに侵入した者の扱いについての大きな判断基準の一つだからな。

 

「そりゃ金ですよ」

 

 『竜狩り』のおっさんが簡潔に答える。正直者かっ!

 アインズ様はワーカーたちの顔を見渡し、全員に(奴隷エルフ以外に)異論がない事を確かめる。

 薄汚い盗掘者ルート一直線だな。絶対、助からねぇぜ?

 

 

「そこで未知を探求しに行くんだ!って言えば格好がつくのにさ」

 

「私は強い敵も求めていますけどね」

 

 エルヤーがドヤ顔をしながら強気な発言で注目を集める。

 

 やったー!エルヤー君、カッコイイー!

 エルフ奴隷を甚振ってイキってる雑魚が調子乗ってんじゃねぇぞ(豹変)

 

 

「ひゃひゃひゃ。

 そちらの質問は終わりのようしゃか、こっちも質問して良いかのぉ?」

 

「どうぞ、御老人」

 

「主か桁外れに強いという噂は真実なのかを確かめたいんしゃよ───」

 

 

 という事で始まりました。モモンvsパルパトラの模擬戦。

 場所を屋敷の庭へと移して両者が向かい合うと、無防備な姿勢のアインズ様にパルパトラが躍り掛かる。

 

 流石は100レベル相当の戦士の能力。

 ガガーランと模擬戦した時も凄かったが、戦槌よりも初速が上である槍の攻撃を全て回避するというのは驚きだ。

 そして、おじいちゃんも(よわい)80とは思えない技のキレだ。旅の途中で模擬戦を申し込んで、槍の扱いの指南を受けよう。

 

 

「見事しゃの。やめしゃ、やめ。

 儂しゃ勝てんところかかすり傷さえも微妙しゃ」

 

 パルパトラの降伏宣言で模擬戦は終了。

 ワーカーたちがアインズ様の実力に納得したところで出発だ。

 

 この旅の途中で何とかアルシェちゃんの生存フラグをたたせよう!

 

 

 

 


-エルヤー君

噛ませキャラ系天才剣士。イケメンだけど自己中。

本当はエルフが大好きだけど、法国に価値観を歪められてしまった。宗教の犠牲者。

今回の依頼の途中、エルフたちを抱いていない。妙な所で気が利く男。

ナザリックさえ現れなければ結構エンジョイした人生を送ったと思う。

 

誤字報告に感謝

 

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