イビルアイ尻尾√   作:冠尾かざり

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18 揺ら揺ら遊覧揺蕩う

-前回のあらすじ

ワーカー達をナザリックに出荷する依頼を受ける


 

 

 

 

 

 近隣諸国の中でも目覚ましい発展を見せているバハルス帝国の首都、ナウでヤングな帝都アーウィンタールから、八足馬(スレイプニール)が牽引する幌馬車が西へ西へと歩みを進めていた。

 

 そのワーカーチームを乗せた馬車を護衛するのが俺たちの仕事である。

 と言っても、帝国は専業兵士を巡回させて領内の警備をしっかりしているから暫くは出番が無さそうだ。危険なモンスターが現れる可能性は皆無と思っていいし、野盗だって八足馬(スレイプニール)の姿を見たら関わるのを避けるだろう。つまりは暇ということである。

 暇過ぎて″馬車が作った轍から落ちたら死ぬゲーム″とかを始めてしまう程だが、今回は冒険者としての仕事の他にやる事が1つあるのだ。

 

 俺がやるべき超重要な任務。

 それは、原作で死亡するキャラを生存させることだ。特にアルシェ。主にアルシェ。

 

 今回のイベントで死なないのは奴隷エルフの3人と『フォーサイト』のアルシェ以外の3人だ。死なないと言っても、奴隷エルフと『フォーサイト』では天と地ほどの差があるが…。

 それはさておき、俺はアルシェ尻尾が見たいのだ!

 そのために『フォーサイト』にナザリック観光の助言をしたり、アインズ様にアルシェちゃんの境遇に同情してもらったり有用性を吹き込んだりと、色々と企んでいるのであります。

 

 

 早速『フォーサイト』に突撃ーッ!っと行きたいところではあるが、残念な事に俺は現在『フォーサイト』からは離れた場所にいる。2台ある馬車の前後左右に護衛を1人ずつって陣形なんだが、彼らから一番遠いところに配置されてしまった。帝国領内にいるうちは治安がいいから、そんなにガチガチに決められた陣形でも無いんだけども。

 

 そのかわりに『ヘビーマッシャー』と『天武』のホロ馬車が近くにあるので、先にこっちから交流を深めることにしよう。

 エルヤー君とのギクシャクした雰囲気も早めに解消しておかなければ仕事に支障をきたすからな。ラキュースが俺をここに配置したのは多分そういう事を期待してだろう。

 

 ということで馬車の荷台へぴょんっと飛び込んで、お邪魔しま~す!

 

 馬車の中は10人近くの人が居座るには少し狭いと感じるが、天井がそこそこ高くなってるし風通しが良くて外の光を淡く通す帆の壁のおかげで、狭所特有の圧迫感はそれほど無い。

 出入りの邪魔にならないように旅の荷物は奥の方に置かれ、手前側にはそこそこ柔らかそうなソファーマットが敷かれてある。ワーカーたちが腰を痛める心配は無さそうだ。

 

 

 突然に馬車の中へと入ってきた俺の姿に、出入り口から左右に分かれるように陣取っている2チームのワーカーたちは瞬時にそれぞれの武器を手に取る。うむうむ、なかなか悪くない反応速度じゃな!

 内装を軽く見回していた俺と目が合ったエルヤー君が何事かと問いかけてくる。

 

 

「何か問題がありましたか?」

 

「いんや、何も問題は無いよ。

 何も無さ過ぎて暇だったからさ、遊びに来たわけだよ」

 

 少し緊張した雰囲気を和らげるために気の抜けた感じで返事をしたが、遊びに来たと聞いて『ヘビーマッシャー』の神官の人が不満気に眉を寄せる。表情には出さないが他の人たちも内心は不服に思っているかもしれない。ちょっと軽い調子で行き過ぎたな、反省。

 悪い印象を持たれたままでいるのはよろしくないので、俺が馬車の中に入ってきた理由を話す。

 

 

「ウチのガガーランと良くない雰囲気だったでしょ?

 だから、このままじゃいけないと思ってね。仲良くなりに来たんだ」

 

 横から感じる視線が同情的なものに変わった。

 悪人が居ると同情を買うのが楽で助かるぜ。同行者の中にエルヤー君に好意的な人は1人も居ないからなっ!

 傲慢なエルヤー君と仲良くしなければならない事に対してか、そんな厄介な役目を押し付けられた俺を不憫に思ってか。とりあえず、マイナスイメージは払拭(ふっしょく)できたな。

 

「仲良くは大変結構な事ですが、仕事を放棄してくるなんて感心しませんね。

 アダマンタイト級に相応しい姿を見せて欲しいものです」

 

 好意的な人が1人も居ないエルヤー君が早速チクチクと口撃してきた。

 ため息交じりで嫌味を隠さない、いちいち腹立つ言動だ。中々に煽りレベルが高く、ちょっとイラッとしたぜ。

 

「私以外がちゃんと働いてるからダイジョーブ!」

 

 エルヤー君の軽い皮肉の言葉を華麗にスルーして、ニコリと笑顔を作り「だから心配はいらない」とサムズアップしてみせる。俺をキレさせたら大したもんですよ。

 俺のパーフェクト無邪気スマイルをカウンターで食らったエルヤー君は毒気を抜かれて呆れた表情を浮かべる。エルヤー君どころか『ヘビーマッシャー』の人たちも呆れの視線を向けてきた。

 

 怠け者だと思われるのは心外なので「ほら、あそこ」と 馬車の外の俺が担当していた場所を指し示す。

 指をさした先にあるのは俺が魔法で召喚した″妖精さん″の姿だ。思念で指示を送ってこちらに向かって一礼をさせる。それを見てワーカーたちの表情は感心したものに変わる。

 

 

 納得いただけた様なので、エルヤー君の友好度を上げるために雑談に興じる。

 

 じゃあ、まず年齢を教えてくれるかな? 24歳?(幻聴)

 もう働いてるの? ワーカー? あっ…ふ~ん…(察し)

 

 

 

「───エルヤー君の得物は刀か。随分と珍しいものを使うね。

 普通の剣と違って扱いが難しいでしょう?」

 

 

 最初は()()()に面食らっていたエルヤー君だが、割とすぐに慣れてしまった。流石は天才剣士。適応能力も高いぜ!

 そして厨二病心くすぐられる武器KATANA。ブレイン氏の装備とはまた少し違う形状の物だから気になるでしょう? これは詳しく聞かずにはいられまい!

 

「おや、コレの事を知っているのですか、流石ですね。

 確かに刀はとても繊細な武器で、凡人が振るうには向きませんね。

 しかし、それを容易く扱うから私は天才なのです。故に『天武』」

 

 故に『天武』(ドヤ顔)

 やったー!エルヤー君、カッコイイー!

 

「ひゅー、流石は闘技場の常勝者。やりますねぇ!」

 

 褒めるとすっげぇ得意気な顔をするエルヤー君。

 あっと言う間にかなり親しくなってしまった。ちょっとチョロくない? 流石は原作で子供脳おじさんと言われていただけはあるな。

 

 

「あと数年も修行したら、ブレイン氏並の刀使いになりそうだね」

 

 そんなご満悦顔に冷や水を浴びせてやる。

 暗に自分より強い刀使いが居ると言われて、端整な顔を歪めるエルヤー君。うひひ、悔しかろう?w

 

「それは一体誰です?

 私以上の使い手が居るとは思えないのですが…」

 

「ブレイン・アングラウス。

 王国の御前試合の決勝戦でガゼフ・ストロノーフと激戦を繰り広げた人だよ。

 ガゼフさんに敗れた後は武者修行の旅に出たらしくてね。今はアダマンタイト級の実力はあるよ」

 

「アダマンタイト級…」

 

 ブレイン氏の力量がアダマンタイト級だと聞いて苦々しい顔を浮かべるエルヤー君。そうだ…もっと苦しめ…もっと苦しめ…。

 エルヤー君はミスリルからオリハルコン級くらいの実力だからね。ちょっと、見た感じが弱すぎでござるよw(ハムスケ並感)

 もし二人が闘う事になったら、秘剣『虎落笛』でイチコロよ! まぁ、ブレイン氏は基本的に待ちの剣士だから、遠距離攻撃に徹すればワンチャンあるかもしれないが。

 

 

「汝はブレイン・アングラウスと知己であるのか?」

 

 苦虫を噛み潰したような顔のエルヤー君を見てニヤニヤしていると、寸胴カブトムシ鎧のグリンガムさんが会話に混ざってきた。なんだ、このおっさん!?

 

 

「かつて我もアングラウスと矛を交えた事があるのだが───」

 

 そして唐突に語り始めるグリンガムさん。

 なんと、当時の御前試合の選手だったらしい。しかも準々決勝でブレイン氏と当ったとか。世界ってのは意外と狭いもんだなぁ。

 

「───あれから修行をしてさらに強くなったという事なら、アダマンタイト級の実力があるとのターリア殿の言は正しいだろう」

 

 

 ブレイン氏の方が強いという情報の確度が補強されて、より一層に怒りと屈辱に歪むエルヤー君の表情。なるほど、グリンガムさんもエル虐に参加しにきたのか。

 ぷんぷん怒って拗ねてしまうエルヤー君。可愛いね、うんちして♡(提案)

 グリンガムさんと目と目が合って、何かが通じ合ったような気がする。イッツ an 以心伝心! 世界に広げよう! エル虐の輪!

 

 

 せっかくだからこの機会に『ヘビーマッシャー』とも親交を深めようか。むしろ個人的にはエルヤー君よりも彼らの方に興味がある。なんたって、あの恐怖公の犠牲者だからな! 気分的には好きなAV(セクシー)俳優とお話しする機会を得たって感じやな。

 

 話を聞くと、原作では語られない色んな姿が見えてきて、やっぱりこの世界に生きる一つの生命なんだなァ~、って思う。

 この世界の人の命を軽く見るのは悪い癖だな、と苦笑を噛み殺しつつ交流する。

 

 

「へー、じゃあグリンガムさんって王国の人だったんだね」

 

「左様だ。当時は宮仕えする算段であったのだが…。

 しかし王国の腐敗に嫌気がさしたのでな」

 

 その後に言葉は続かなかったが「それでこのザマだ」と聞こえてきそうな苦笑をしている。

 おそらく、貴族か『八本指』を敵に回して王国に居場所が無くなってしまったのだろう。だから王国から逃げ出して帝国のワーカーになったんだろうな。

 だが、暗い雰囲気では無い所を見るに後悔はしていないみたいだ。

 

 

 そんなグリンガムさんが率いる『ヘビーマッシャー』は10人以上のワーカーが所属するチームだ。小規模のギルドと言っても良いかもしれない。

 その中から必要な人材を選ぶことによって、適切な能力を持ったメンバーで依頼に挑めるのだ。

 

 今回の場合は遺跡探索に最も適したチームというわけだ。戦闘以外に関しては他のワーカーチームより優れているかもしれない。

 実際に原作では幾つものナザリックのトラップに耐えて、かなりの時間を生き粘っていたからな。

 

 『ヘビーマッシャー』の人達を観察する。成程、確かに遺跡探索チームって感じだ。

 盗賊の人は暗殺や急所攻撃とかよりも探知系や鍵開けの技能が高そう。

 魔術師(ウィザード)は知識担当らしく地理や歴史に詳しい。

 神官の人はアンデッド、病毒対策だな。

 戦士は屋内でも小回りの利く装備を持ってきている。

 

 そして、リーダーのグリンガムさん。

 樽のような体と立派なヒゲ、ドワーフの血でも混じっていらっしゃる?

 コイツ、これで純人間とか言ってるらしいっすよ? 嘘つけ、絶対嘘だゾ。

 そして変な言葉遣いしてんな。吟遊詩人がこんな感じでセリフを言ってるのを見たことがあるぞ。たぶんこの変な言葉遣いはドワーフの英雄譚とかを参考にしているんだろうな。そうに違いない!

 

 

 

 そんなこんなで軽い情報交換を交えつつ談笑した。

 ワーカーたちと少し仲が深まったところで、ちょっと疑惑についてを聞いてみる。

 

「そういえば、エルヤー君は法国の出身って噂は本当なの?」

 

 

 不敵な微笑を(たた)えていたエルヤー君が顔を引き攣らせる。

 『ヘビーマッシャー』の人たちも「野郎…タブー中のタブーに触れやがった……」と戦慄している。

 聞き辛いことを平然と問いかける俺、ちょっと尊敬しちゃいますね。

 

 しかし、エルヤー君は固まったまま答える様子は無い。謝っておくか。

 

「聞いちゃいけない事だったかな? めんごめんご。

 法国の人だったらエルフ国との戦争の状況に詳しいかと思ってさ」

 

 両手を合わせてぺこぺこと謝る。いや、めんごめんごって酷いチョイスだな…(自戒)

 エルヤー君は少し息を吐いてから複雑そうな顔をして口を開いた。

 

「別に隠している訳では無いんですがね、まさか出身について問われるとは思いませんでしたよ…。

 まあ、それなりの情報屋が調べれば簡単に分かる事でしょうから、別に構いませんけどね」

 

「って言うことは、法国の出身って噂は事実なんだ?」

 

「ええ、事実ですよ。洗礼名は捨てましたがね?

 しかし、噂されるのは名を上げたという事の証明ですが…。なんとも微妙な気持ちです。

 その噂とやらは、どこぞの卑しい情報屋が流したモノでしょうね」

 

 たぶん、人間以外に対する態度からの推測だと思うんですけど(名推理)

 

 

「それから、私は戦争には参加していません。

 なので戦況については分かりかねますね」

 

 エルヤー君は何かを思い出して忌々しそうに吐き捨てる。

 多分、そこにワーカーに成ったエピソードが在るのだろうな。

 

 そして結局、エルヤー君は大した情報を持っていなかった。

 もしかしたら法国とエルフ国の情報が得られるかと少し期待していたんだけどな、残念だ。

 

 

 そこで、ふと視界の隅に奴隷エルフの姿が入り込む。

 …この娘たち当事者じゃね?

 思い立ったら吉日!善は急げよ!っということで彼女らに突撃する。

 

 

「君たちって戦争奴隷でしょ?

 エルフ国の王様ってどれくらい強いの?」

 

 再び戦慄する一同「野郎…アンタッチャブルにタッチャしやがったッッ!!」という声が聞こえてきそうだ。

 地雷原に平然と突っ込むターリアさん、まじリスペクト(自画自賛)

 

 そういえば、奴隷エルフを見るのは初めてだ。

 珍しいモノが見れたし、コレだけはエルヤー君に感謝だな。

 しかしながら、エルフってファンタジー作品でいっつも奴隷にされてんな。

 

 

「…」

 

 奴隷エルフは俺の質問に困惑して、エルヤー君の方を見て顔を窺っている。

 主人の許可が無ければ他人と口をきけないのかな?

 

「…答えてさしあげろ」

 

 エルヤー君から許可が下りた。

 強者の話という事でエルヤー君も少し興味があるらしい。座りをなおして少し前のめりになって居る。

 そして興味があるのは『ヘビーマッシャー』も同じようで、奴隷エルフの言葉をそわそわしながら待っている。チラチラ見てただろ(因縁)。

 

 

「わ、私は直接会ったことはありませんが…。

 エルフの国の全軍よりも王ただ一人の方が強いと言われ、その力は魔神をも凌ぐほどと聞いています」

 

 奴隷エルフはビクビクとこちらの様子を窺いながら王様について語り出した。

 しかしながら、何でそんなに俺に対してビビってるんだ? やわらかスマイルを叩き付けているというのに…。

 

 グリンガムさん達は魔神という物語の存在が引き合いに出される程の強大さを思い興奮している。

 だが、エルヤー君はふんわりとした抽象的な情報に満足しなかったらしく、王様の強さについて語った奴隷エルフを睨み付ける。

 

「知っている情報はたったそれだけか?

 使えない奴ですね」

 

 鋭い怒りの視線を浴びせられた奴隷エルフはびくりと体を強張らせて謝罪の言葉を繰り返し必死に許しを請う。

 それからエルヤー君は口汚く罵ったが、暴力が振るわれる事は無かった。

 どうやら、俺が一方的に押し決めた「エルフに酷い扱いをしない」って言うのを律儀に守っているらしい。

 こういうところで意外と真面目だから今回の依頼にも呼ばれたのだろう。名の知れた上級のワーカーというのは伊達では無い。

 

 奴隷エルフの卑屈に過ぎる態度にはむかむかしたモノがこみ上げて来るけど、それだって法国がエルフを奴隷として売るために徹底的に心をへし折った結果だ。やっぱ、宗教って糞だわ。

 エルヤー君への好感度が、少しだけ回復した。

 

 

「まぁまぁ、落ち着いて、エルヤー君。

 …魔神級の強さという事は第7位階以上の魔法を使えるのかな?」

 

「い、位階は分かりませんが、時を操る魔法が使えるらしいです…」

 

 おいおい、マジかよ。それって第9位階以上はあるんじゃないか? 完全覚醒した神人とか竜王クラスの化物じゃん。

 長寿であるエルフだからこそ可能な成長ということか…。

 

 

 皆それぞれエルフの王様の規格外の強さを思って黙り込み、それから休憩の時間になって馬車が停まるまで暫く沈黙が続いた。

 

 

 

 

 太陽が大空の頂点まで昇りきり、後は降るにまかせるだけと傾き出した頃。

 遺跡探索へ向かう一行の2台の馬車が休憩のために停まった。

 八足馬(スレイプニール)達はまだまだ元気だが、人間はそうはいかない。特に御者なんかは俺達よりも圧倒的に体力が少ないからな。

 ワーカー達も座りっぱなしで身体が凝って堪らないと、みんな馬車から降りて思い思いに身体を伸ばしている。

 

 俺も仲間たちのもとへ行きエルヤー君と仲良くなった成果を報告する。

 エルフへの態度は法国出身の人間だから仕方がないこと。少し傲慢で子供っぽいけど意外と律義なところがあること。

 それを聞くとガガーランたちは複雑な表情を浮かべながらも、ひとまずは今回の仕事の仲間として受け入れることを納得したようだ。

 

 

 軽く報告を終えた後は『竜狩り(ドラゴンハント)』と『フォーサイト』の幌馬車のもとへと向かう。

 

 さて、ようやく本命だ。

 

 

 

 

 


-グリンガム

なんだその話し方ぁ! まぁじ、むかつく!(セリフを考えるのが面倒くさい)

ジュージューになるまで調教してやるからな!

黒棺(ブラック・カプセル)行きだオラ!(九十番台詠唱破棄)

 

 

誤字報告に感謝

 

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