イビルアイ尻尾√   作:冠尾かざり

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03 ここまでプロローグ

 

-前回のあらすじ

麻薬村にあった暗号文をラナーが解読する

 


 

 

 

 

 翌日。

 装備を持って登城。

 今夜から仕掛ける事になる『八本指』拠点の情報と攻略手順の再確認や、捕縛した構成員の処遇や集めた資料の扱いなど、襲撃計画の最終確認のために『蒼の薔薇』がラナーの(もと)に集まった。

 

 顔を合わせて早々に計画の変更を告げられた。突然の仕様変更はやめルルォ!

 なんと、クライムが違法娼館を襲撃し、奴隷売買部門の長であるコッコドールと警備部門幹部『六腕』の一人″幻魔″サキュロントを捕縛したのだ。

 計画の変更を余儀なくされた想定外の出来事だが、良い方向への想定外だ。

 皆から褒められてクライムは照れている。勿論、俺も褒めてやる。

 

 

「師匠との特訓のおかげで、魔法の兆候を(わず)かに感じる事ができて致命傷を避ける事ができました」

 

「おー、修行を付けた甲斐が有ったな。

 それと今回の戦いで魂の位階(レベル)が上がったようだな。生命力が増えているように感じられる」

 

「魂の位階ですか…。確かに戦闘中に身体が軽くなる感覚がありました」

 

 

 強くなったと言われてクライムは嬉しそうだ。

 

 クライムはサキュロントに対して防戦一方だったが助けが来るまで時間を稼ぎ、同行者のブレイン・アングラウスが一撃で決めたらしい。

 ブレイン・アングラウスは王国最強の戦士であるガゼフ・ストロノーフと互角の勝負をしたという剣士である。そんな英雄の領域にいる者に出会って、さらに厄介事に協力してもらえるなんて、とんでもない幸運な事である。

 そしてブレインが自分より強いと断言する″謎の執事″セバスも現る、と。

 執事でセバスって安直過ぎんだろ。偽名かな?

 

 雑談もそこそこに計画の話を進める。

 

 

「それで王女よ。計画の一部変更というのは襲撃する場所を選定し直すと言うことか?」

 

「はい、イビルアイさん。今日中に同時に襲撃をかけて、一気に落とすべきだと考えています」

 

 

 一同沈黙!

 おい、どうするよ?お前が言えよ。やべぇよ…やべぇよ…。っと視線で語り合う。

 

 

「い、いや、王女さんよぉ。手が足りないという話じゃなかったのかよ?

 夜中の内に協力してくれるところが出てきたのか?

 冒険者を雇うというわけにもいかないんだろ?」

 

 

 ガガーランの言葉を皮切りに、メンバー怒涛のダメ出しがラナーに降り注ぐ。ダメダメ、こんなんじゃ仕事になんないよ~。

 そもそも、これって冒険者の仕事じゃないんだよなぁ。警察機関が腐敗するのは、いつの時代も一緒か。

 

 

「おっしゃる通りです。ですから、信頼できる貴族の力を借りようと思っております。

 それと王国戦士長様をお呼びします」

 

 

 だが、天才美少女ラナーちゃんに抜け目は無かった。私は初めから信じていたぞ(手のひら返し)

 信頼できる貴族1人と戦士長ガゼフ・ストロノーフの協力を得られるらしい。

 

 

「では、クライム。レエブン候を呼んで下さい」

 

「候をですか?確かに王子と一緒におられる時に出会いましたが……」

 

 

 エリアス・ブラント・デイル・レエブン。

 六大貴族と言われる大貴族の一人であり、貴族たちの中では資金力などで群を抜いている。

 

 みんなレエブン候の名前を聞いて表情を曇らせ、不安を口にする。

 

 

「おいおい、王女様よ。信頼できんのか、その侯爵様はよ」

 

「レエブン候は蝙蝠って聞く」

 

「王派閥と貴族派閥に間を彷徨(さまよ)う蝙蝠。利益を求めるような奴なら、八本指からの金でも動く」

 

「そこから情報が漏れるなど、考えたくもないぞ、王女」

 

 

 酷い言われようだ。まあ、顔が胡散臭(うさんくさ)いから仕方がないね。

 皆がレエブン候に対して否定的な意見を言っているが、俺は肯定的な意見を出す。

 

 

「レエブン候はまともな領地運営している人だから大丈夫じゃない?

 『八本指』が王国の発展に邪魔になるって理解してくれたら協力してくれるでしょ」

 

 

 俺はレエブン領出身の孤児だが、孤児院でそれなりに保護されていた。これが他の領だったらまともに生きられたか分からない。

 つまり、レエブン候は人材と治安の大切さを理解しているのだ。

 直接的では無いが、命の恩人とも言えるので、俺は信用することにした。

 

 皆の不安は晴れなかったが、ラナーの説得によりレエブン候を呼ぶことになった。

 

 

「畏まりました。ではこれからレエブン候をお呼びしてきます」

 

「お願いね、クライム。じゃあ、時間がかかるでしょうし、その間に紅茶でも飲む?」

 

 

 わーい、お茶会だ。

 

 クライムがレエブン候を呼んで来るまでをお茶会をしながら待っていると、大した時間を掛けずにクライムが帰ってきた。

 余りの早さに門前払いにでもされたのかと思ったが、クライムの後から二人の男が入室した。

 1人は当然のごとくレエブン候だ。めっちゃ高そうな服を着ていらっしゃる。胡散臭い顔によく似合っているな。

 次に続くもう1人が小太りの男。平凡な貴族って感じだが、対するレエブン候の腰が低い。

 その人物を目にし、ラナーが驚いたように声を上げる。

 

 

「お兄様」

 

「よう。腹違いの妹。元気そうじゃないか……ってアルベイン家の御令嬢ということはかの蒼薔薇か。これは凄いな。アダマンタイト級冒険者をこんなところで見られるとは」

 

 

 なんと第二王子らしい。普通すぎて気付かんかったわ。第一王子の方が目立つから仕方ないね。

 ラキュースが礼を見せたので、俺もそれに(なら)う。だが他のメンバーは続かない。…これだから野蛮な冒険者は。

 

 

「ってことで、俺たち以外は隣の部屋に行ってもらうということで問題ないか?」

 

 

 横暴だな。流石は王族。お茶請けも全然手を付けて無いんだが。…もしやこの王子、お菓子を独り占めするつもりでは?チッ、これだからデブは…(豹変)

 だが無情。早速、追い出されてしまった。

 聞かれちゃ不味いお話をするらしい。俺たち『蒼の薔薇』は王国のヤバい裏事情とか幾つか知っているし、今更って気がするけどな。

 

 向こうが密談している間、こっちはこっちで変更された計画について相談する。

 

 

「同時に仕掛けるって事はよ、メンバーを分けるって事だよな?ガゼフのおっさんと俺たちで7人、暗号文に書いてあったのも7か所、まあ数は丁度良いな」

 

「そこにレエブン候の私兵が加わるって訳ね」

 

 

 ガガーランの言葉にラキュースが補足する。

 実力的にも人柄的にもガゼフさんなら申し分ないな。ガゼフさんは神的に良い人だからな。

 後はレエブン候の私兵の質と数次第だな。まぁ大貴族の私兵なんだから大丈夫だろう。

 

 

「ふん、私は一人でも問題は無いがな」

 

「集めた証拠品を運び出すのに人手が居る」

 

「そもそも、イビルアイじゃ証拠品の選別は無理」

 

「うぐっ」

 

 

 突然イキりだしたチビっ子仮面を双子が沈める。ホントお子様脳から全然成長しないな(呆れ)

 イビルアイは勿論、みんな一人でも並の奴等には負けないだろうから、そこそこ使える奴が同行するなら拠点制圧は容易いだろう。

 

 

「問題は『六腕』か」

 

「クライムが1人捕らえたのはデカいな」

 

「警戒して固まるかもしれないわね」

 

「『六腕』が2人以上居た場合は時間稼ぎをして援軍待ち。『六腕』が居なかった拠点はすぐに片付けて、近くの拠点に援軍に行くのがベターだな」

 

 

 大まかな方針を決め、装備の点検をして待っていると、ラナーたちに呼ばれた。向こうも話が終わったらしい。…俺の茶菓子は無事だろうか?

 

 協力は問題なく取り付けられたようだ。さらにガゼフさんも何時の間にか合流していた。ガゼフさんは神的に良い人だからな。

 そしてなんと、第二王子の情報提供によって襲撃拠点が2ヵ所増えるみたいだ。手が足りなーい!

 1か所はブレイン・アングラウスが引き受けてくれるらしい。…ガゼフさんの家で同棲してるとかお前らホモか?

 最後の1か所は、もう妥協して早い者勝ち競争に成った。う~ん、適当。

 

 

 レエブン候の保有する屋敷に移動。

 作戦メンバーが集まって、兵の振り分けや、襲撃タイミングの調整、注意事項などを決める。

 結構集まったな、流石は大貴族。

 

 今回協力する事になった臨時メンバーと挨拶し、出来る事の確認や役割分担を終える。

 丁度良い機会なのでレエブン候にも挨拶に行く。

 レエブン候に自分の出身を明かし、孤児院の運営をしっかりしていた事に感謝を告げると、冒険者を引退したら私兵になってくれと頼まれた。おう、考えてやるよ。

 

 ホモ疑惑のブレイン氏も見つけた。ホモではなく一時的に泊めて貰っているだけらしい。ガゼフさんは神的に良い人だからな。

 そして、ブレイン氏の装備。なんと、刀である。ロマンの塊やないかー!!

 

 

「ほう、刀ですか…たいしたものですね」

 

「お、嬢ちゃんコレを知ってるのか?」

 

「刀。その最大の特徴は、鉄さえも切り裂く鋭い切れ味。

 反して、耐久力が低いから打ち合いには向かない。

 その細くて薄い刀身による、風を切るような神速の抜刀術は防ぐことは困難だろう」

 

「詳しいんだな。意外、でも無いか。

 アダマンタイト級冒険者というのは伊達では無いらしい」

 

 

 おっと、思わず少年心が溢れてしまった。

 でも刀なんてロマンの塊を見たら、前世に置いて来たジャパニーズソウルが蘇っても仕方あるまいて。

 ブレイン氏がこちらの力量を測ろうとしているが、それを無視して詰め寄る。

 

 

「今度、触らせてください。オナシャス!」

 

「お、おう、構わない「アリガトナス!!」…おう」

 

 

 珍しい装備である刀を触らせてもらう約束をして別れる。

 

 

 

 さて、日も落ちた。

 

 そろそろ襲撃の時間だ。

 

 

 

 

 

 

──────

 

 

 

 

 

 

 さて、やってまいりました『八本指』拠点。

 魔法で探査した逃げ道を全部包囲して、突入班は透明化して最奥から制圧を開始する。

 偉そうな奴を捕まえて、犯罪の証拠を確保したら、あとは無双ゲーや。

 

 襲撃に気付いたならず者達がわらわら湧いてくる。

 

 飛んできた投げナイフを槍で打ち払う。その隙に剣士が距離を詰めて来る。放たれた切り上げを、首を傾け仰け反り回避。それに合わせて蹴りを放つ。剣士の腕にヒット、骨の折れる感触。んー、気持ちいい。

 片足が浮いて居るのを隙だと見た戦士がさらに詰めてくる。だが、その為の槍。石突で地を打ち第三の足とするのだ。隙など無い。高速で体勢を立て直し、向かって来た戦士を無力化。一合も持たないとか弱すぎる。

 やっぱモンスターと違って人間は脆いな。

 

 

「おじさん達、弱ーいw

 そんなんで警備のおしごと勤まるのー?ww」

 

「く、このクソガキ…っ!」

 

 

 幼稚な挑発で口撃。

 怒りが僅かに連携を乱れさせて隙ができる。そこを遠慮なく突く。また1人沈む。

 落ちた武器を蹴り飛ばして遠距離攻撃をしようとしていた奴にぶつける。ダブルヒット!二枚抜き、良い感じや。

 

 

「ざぁこ♡ ざぁーこ♡

 子供相手に手も足も出ない雑魚警備♡ 悔しくないのー?w」

 

「ぐ、この…」

 

「きゃははは♡ よわよわー♡

 動きがぎこちないよー?w もしかして緊張♡、してるー?ww」

 

 

 連携が欠けた所からボロボロと崩れていく。ジェンガの如き見事な崩壊。

 味方の活躍もあって、もう数えるほどしか警備兵は居ない。

 相手の呼吸に恐怖が混じる。

 動きが鈍くなった兵なんて、ただの案山子ですな。

 

 

「くらえ魅了魔法、えーい。あ、通った。じゃあ、みんな捕まえてねー」

 

 

 酷く雑な演技で言ったが、何人か信じたらしい。

 真に受けた敵が動揺し、周囲に注意を向けた隙に一気に制圧。

 

 

「魔力が勿体無いから魔法なんて使うわけ無いじゃんw」

 

 

 メスガキ戦法がうまく決まったな。

 同行しているレエブン候の私兵はドン引いてる。君たちにメスガキの良さは、まだ理解できないようだな。

 

 後は金庫の開錠と隠し部屋の探索だな。

 

 

 

 

 

 

──────

 

 

 

 

 

 

 

 嫌な予感がする。

 

 探索には少しだけ手間取ったが、警備兵には雑魚しかいなかった。それはつまり、『六腕』が他の場所に居るという事。

 1対1なら仲間達は後れを取る事は無いだろう。だが、2人以上固まっていたら…?

 

 集めた押収品を同行していたレエブン候の私兵に任せて、次の合流地点へ急ぐ。

 

 嫌な予感がする。

 

 

 『八本指』の拠点を出て全速力で走る。次の拠点はそんなに遠くない。

 ティアが担当していた場所に到着。…すでに制圧が完了している様だ。

 最後の拠点に向かったのだろう。俺もそこへ向かって駆け出す。

 建物の間をすり抜け、壁を蹴り、屋根を駆け抜ける。

 

 合流地点にたどり着くと、そこにはイビルアイと見覚えのない2人の人物がいた。

 何かしら会話をしているので敵では無さそうだ。

 1人は軽装の黒髪の女、斥候か魔法詠唱者だろうか。遠くからでもかなりの美人だとわかる。

 もう1人は漆黒の全身鎧を着た戦士、体格的に男だろう。大剣を片手に1本ずつ持っている。マジか、大剣二刀流とかどんな膂力(りょりょく)だよ。

 認識阻害の装備をしているのか、2人からは魔力も何も感じないが、本能が警鐘を鳴らしている。

 特に漆黒の戦士。敵対する事を想像するだけで鳥肌が立つ。

 

 ───あれはヤバい

 

 戦士がこちらに視線を向ける。この距離からでも俺の気配に気付くのかよ。イビルアイはこちらに気付いていない。

 

 

「何者だ?」

 

 

 漆黒の戦士に敵意を向けられた時、大きな危機感と既視感がターリアを襲った。

 周りの景色の色が失われ、時が止まった様に思考が加速する。

 イビルアイの己を呼ぶ声、漆黒の戦士の警戒の視線、安眠の屍衣(シュラウド・オブ・スリープ)に包まれた仲間の亡骸、黒髪の美女の蔑む様な視線、夜の王都の喧騒、今世の思い出、前世の記憶。

 

 様々な情報がグルグルと頭の中を廻ってはじけた。

 

 そして一つの事柄が脳裏で閃いた。

 

 

 

 オーバーロードだこれぇ!

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 ここは、襲撃予定最後の拠点。

 

 ガガーランとティアが強力な蟲のメイドと戦い、苦戦している所に私が到着し参戦した。

 蟲のメイドをあと一歩という所まで追いつめたところで、強大な力を持つ悪魔が現れ、一瞬でガガーランとティアが殺されてしまう。

 私も悪魔に向かって行くが全く歯が立たず、いよいよ死を覚悟したところで漆黒の戦士モモンが現れる。

 激戦の末に、ヤルダバオトと名乗る悪魔を漆黒の戦士モモンが退ける。

 状況の確認をする話し合いで、お互いの意見が食い違い口論になってしまう。

 そこで、先に折れたモモンに謝らせてしまった。

 

 

「あ、頭を上げてください!

 あなたのような素敵な方がそんなこ───! うえ!?」

 

 

 私は何を口走っているんだぁあぁああ!

 でも仕方がないじゃないか!本当に素敵なんだから!!(逆ギレ)

 

 素敵な方だなんて言っちゃったら、好意を持っているのがバレバレじゃないか。あーー!恋慕を告白したようなものじゃないかぁあああ!!

 これは実質、愛の告白では?(冷静)

 

 恐る恐る隣の反応をうかがうと、モモンとナーベは二人揃って夜空を見上げていた。

 何をしているか最初はさっぱり分からなかったが、先ほど自分があげた奇声を二人は警告だと受け止めたようだった。

 

 違うんですぅう!

 

 うえ!?って上で。うえがうえって何なんだよ!(錯乱)

 このままでは何もない所で叫んでしまう恥ずかしい奴になってしまうぅぅ!

 

 

「何者だ?」

 

 

 うんうんと頭を抱えていると、モモンが剣を構え警戒したまま屋敷の上を睨み付けている。

 視線を追って屋上を見上げると、そこに居たのはターリアだった。

 

 

「あ、ターリア! ターリアじゃないか!」

 

 

 神がかり的なタイミングだ。

 恥をかかずに済んだ。でかした!

 

 

 

 

 

 


 

-イビルアイ

ポンコツ化。

尻尾を生やすからな。覚悟せよ。

 

お話の都合で八本指の拠点が増えてます

 

 

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