-前回のあらすじ
一行、エ・ランテルに到着
薄暗い部屋に一歩足を踏み入れる。
防音処理がしっかりとされた部屋だ、外の音が遠くなる。
「光れ」と唱え、備え付けられた魔道具に明かりを灯すと、部屋全体が明るく、されど眩しさは一切ない、落ち着いた環境へと変わった。
周りを見渡す。派手過ぎない調度品、清潔で柔らかいベッド、王都で利用している高級宿屋と比べても遜色ないものだ。
ここはエ・ランテル最高級の宿『黄金の輝き亭』の二人部屋。
予約なく訪れたが、そこは漆黒の英雄モモン様の紹介とアダマンタイト級冒険者の信用ですんなりと部屋を取れた。急な来客にもすぐに対応し良い部屋を用意できる、最高級の名に恥じない宿屋だ。
俺とイビルアイは暫くここで寝泊まりする事になる。
「それで、ラキュースは何て言ってた?」
「ガガーランとティアが生命力を大きく失ったからな…
2人が力を取り戻すまで冒険者稼業はお休み、だそうだ」
「じゃあ、しばらくはエ・ランテルを観光できるな」
「ああ、しばらくモモン様と一緒に居られるな」
お、そうだな。
イビルアイが〈
何か問題が起こったときは向こうから〈
「お前のおかげでモモン様と離れ離れにならずに済んだな。でかしたぞ!
それにしても、よく転移なんて思いついたな、ターリア?」
「いや、あんたは使用者本人でしょーが!
魔法詠唱者が魔法の使用用途を忘れてちゃあ、世話ないぜ」
「
「アンデッドは疲労を感じないんじゃなかったのか?」
「うぐぅ」
本日のぐうの音、頂きました!
長く生き過ぎてボケが始まったのか? 否、恋にはボケてるか…(キザ)
ボケたロリババアとか需要有るのだろうか?
「さて、明日はこっちの冒険者組合にも顔を出さなきゃな」
「ああそっちは任せた、ターリア。
……私には別の用事があるからな…。」
「そうかい?
それじゃあ、私はモモン氏と一緒に冒険者組合に行こうかなぁ?
モモン氏も依頼の報告とかが有るだろーしぃ?」
「…やっぱり私も一緒に行こう」
イビルアイが急に用事があるなんて言い出す。こいつ、俺に仕事を押し付けようとしてやがる!大方、モモンと一緒に居る為のでまかせだろう。
だが無駄ァ!!
俺を出し抜こうなんざぁ、100万光年早いんじゃ!(光年は距離)
イビルアイを弄るのは楽しいなぁ。心が潤う。
そんなイビルアイが、思いつめたような雰囲気で声を出す。
「ターリア…お前は本当にモモン様の事をなんとも思ってないんだよな?」
「何だよ急に?私がモモン氏に
私は女の子を見るのが好きだって言ってんでしょうが」
正確には美少女が凌辱されてるのを見るのが好き。
凌辱は凌辱でも、不幸な方の凌辱だと抜けない。(唐突な性癖語り)
「でも、モモン様は素敵な方だから…。
だから、ターリアが惚れてしまってもおかしくないだろ!?」
めんどくせーな!
こいつ、モモンを神格化し過ぎだろ。
俺の心は男だ。
ノンケをホモに変えるなんて、スーパーマンでも不可能だぞ!
「なんでやねん!
わーった、わーったよ!
イビルアイの恋路を手伝ってやるから!面倒くさい絡み方は止めてくれぇ!?」
「ほ、本当か!?」
「おう、任しとけや。
恋愛百戦錬磨、恋のキューピッドことターリアさんに任せな。恋愛クソザコの貧相なメスガキでも、男の一人や二人なんて簡単に惚れさせてイチコロだぜ?」
「お前も恋愛経験など無いだろうが!
…なんか不安だな」
失礼な。
プロデュースには、自信があるんだぜ。
「貴様っ!私の恋愛力を疑っているなッ!?
……よし。いい案を思いついた。
明日モモン氏に「この街の地理に疎いから案内して欲しい」と頼んでみよう。親切で紳士なモモン氏なら、快く引き受けてくれるだろう。
男女が街の観光名所を巡る…これはもうデートと言っても過言ではないッ!!
どうだ、お前には思いつけない恋愛テクニックだろう?(ドヤ顔)」
「確かにそれなら自然と逢引できる…。
な、なんて高等な恋愛テクニックなんだ…っ!
疑って悪かった!ターリア、私の恋に協力してくれ!」
「分かればよろしい。
これから私の事は、ラブ師匠と呼ぶがいい」
俺氏プロデュース、サトル×キーノが始まる。
そして、夜は
──────
おっはー!朝です!
エントランス前の待合室。
現在、モモン達『漆黒』を待ち続けている所です。「モモン様が私たちより先に宿を出てしまうかもしれない」と言うイビルアイに起こされて、早朝からな!
しばらくの間、魔法談義で時間を潰していると、通路の奥から漆黒の鎧の偉丈夫と黒髪の美女が現れた。モモンとナーベである。
おはようー、と挨拶をしながら彼らに近づくと、俺たちを
「っ!?またお前たちですか…!
いつまでも、モモンさんの周りを鬱陶しい…っ!」
「よせ、ナーベ。
…相方が失礼しました」
「まぁ言ってることは事実だから。仕方ないね」
綺麗な顔を歪ませ、ナーベが
普段は澄まし顔でモモンの隣に控えているけど、ナーベラルは感情的になっている時の方が可愛い。アインズ様に叱られてシュンってなって欲しい。
いずれナーベラルとも仲良くなりたいな。でも、彼女は人間に対して排他的だから難しいかな?
だけど、族長エンリと会話した時は幾分か柔らかかった。やはり、エンリは覇王…。
俺も姉妹を褒めればいいのかな?
「それで、御二人は我々を待っていたようだが…何か用件でも?」
「私たちは冒険者組合に顔出しに行くんだけど、モモン氏たちも組合に行くと思ってさ。
どうせなら雑談でもしながら一緒に行かない?」
「ああ、我々もこれから依頼の報告に行くところだ。
もちろん構わないとも」
こちらの提案に、モモンは予想通りの答えを返してくれた。
つーか、冒険者組合の場所が分からんからな。嫌だって言っても案内するんだよ。
では早速行こうとなり「組合の場所を知らないからエスコートよろしくぅ」とお願いした。
すると、モモンは了解したとばかりに真紅のマントをばさりと大袈裟に
んん??
この妙に芝居掛かった動き…。
こいつパンドラズ・アクターじゃね?
そんな今までとは一味違うモモンの姿に、イビルアイが夢中になっている。
だから、前をよく見ずに歩いていたイビルアイが、扉の先からやって来た他の客にぶつかりそうになるのは必然だった。
だがモモンが透かさずにイビルアイの手を引いて抱き寄せ、二人の衝突を回避する。
そして突き当りそうになった客に紳士的に詫びる。
そんな一連の動作が演劇のワンシーンの様に滑らかに、そして少しばかりオーバーな動きで行われた。
周囲からは密かに漏れ出た感嘆の声と押し殺された黄色い悲鳴が上がる。
間違いない。こいつぁ、パンドラズ・アクターだ!
モモンはこの街では知らぬ者が居ない大英雄だ。男なら誰しもが憧れるようなフルプレートの鎧とその装備に相応しい強さ、女性や子供にも優しく接する紳士的な態度と謙虚な姿勢。
そんな彼の自信に満ちた仰々しい仕草は皆を魅了する。
たしかに、舞台演者のような振る舞いは、がっしりとした外見と堂々とした態度に合っていて普通にカッコいい。動きもキマっている。
だけど中身がピンク卵だと思うと、すげぇうざいな。
「怪我は無いか?イビルアイ嬢」
「あぅ、その、助けっ、かりますた…!」
噛み噛みやなw
モモンに抱き寄せられた事で、頭ン中が一杯になっているんだろうな。
イビルアイの仮面が
でも、イビルアイー!そいつ別人やぞー!!
イビルアイは宿の外に出ても、ふらふらと地に足付かない様子で、あうあう言いながら歩いている。暫く使い物になら無さそうだ。
恋愛プロデュースで事前にアドバイスした事柄も、今は頭からブッ飛んでいるだろう。
イビルアイには、お前の貧相な子供ボディに性的な価値は無い、あったとしてもモモン程の男なら引く手数多で選び放題だから、他の女には無い価値で攻めるべきだ、と
お前の強みはこの世界の深い知識だ、と教え。いきなり全部の情報を開示してしまうと用済みになってしまうから、思わせぶりな所で止めて、親密になる度に少しずつ話すように、とアドバイスした。
教授した時には「すごいな…ラブ師匠」と、出会ってから初めて尊敬の態度を取られた。
しかし折角の恋愛アドバイス、もとい、生存アドバイスも今は役に立たなさそうだ。
まあ、今は中身アインズ様じゃ無いから、別に良いか。
ナーベラルと仲良くなろうと思っていたが、ここで
モモンの隣へと移動する。
パンドラズ・アクターならこの話題が丁度いいか。
俺は懐からマジックアイテムを取り出し、パンドラさんに見せる。
「モモン氏、こいつを見てくれ…どう思う?」
「ふむ、この袋はマジックアイテムですかな?」
「ご名答。
こいつは私が半年間かけて作り上げたアイテムでしてね」
「ほう!ターリアさんはマジックアイテム制作もなさっているのですか?」
俺はマジックアイテム制作だけでなく、装備の魔化も行っている。仲間の装備も幾つかは俺が魔化を施した物だ。
そんな俺が半年近く掛けてできた袋。
空間魔法のようなモノを片っ端から調べ、希少なモンスター素材を集め、試行錯誤の末に完成した一品。
そう!魔法世界の定番、アイテムボックス!!
俺はそんな伝説のアイテムに近い物を作ったのだ!
「なんと、これは実質無限に物を入れられるマジックアイテム。
名付けて『インフェルニティ・ポーチ』!」
「それはすごい!」
「ただ欠点がありましてね…。
一度入れた物は、二度と取り出す事が出来ないのですよ。
だけど、モモン氏なら上手いこと活用できるんじゃないかと思いましてね。
もし良かったら差し上げましょうか?」
失敗作である。
ただのゴミ箱である
失敗作の押し付けである。
半端な気持ちで入ってくるなよ…マジックアイテム創作の世界によぉ!
俺は全力で真面目に取り組んだんだが、ハンドレスオールロストコンボ袋になってしまってな…。
それでも、ゴミ箱を受け取ったモモン──パンドラズ・アクター──は喜んでくれた。良い事をすると気分が良い!
俺たちはそんな雑談をしながら組合までの道を歩いた。
──────
しばらく歩き、エ・ランテルの冒険者組合に到着。
流石、三国境の大都市。人がごった返している。王都より活気が有るかもしれない。
扉を開けると、こういった施設特有の暴力の気配がする匂いがむわっと吹き抜けた。
誰かが呟いた「漆黒の英雄モモンだ…」という言葉が聞こえると、組合内の人間の視線が一斉にこちらを向いた。
モモンがいつもの二人では無く、新たに二人の少女を連れて冒険者組合へ訪れたことに、周囲にいた人たちが興味を抱く。そして、その波紋が広がっていき、やがて様々な憶測が口々に飛び交うようになった。
今まで雑多な会話で溢れかえっていた組合内は、瞬く間に一つの話題で統一されていた。
モモンは矢のように視線が刺さる中を
───の前に。
モモンの中身は違うが、当初の予定通り街の案内をお願いする。
「モモン氏、厚かましい様で申し訳ないんだが…。
私たちはエ・ランテルに来たばかりでこの街の地理に疎い。
もし、この後に予定が無いなら、街を案内してくれると助かるんだが…」
「…ええ。構いませんよ。
緊急の依頼が無ければ、ですがね…」
ここは人が多く居る。
英雄モモンの名声や風評を気にするなら、この人目がある場所では断れまい!
案の定、モモン(パンドラ)は俺のお願いを快く引き受けてくれた。やったぜ。
受付に依頼達成の報告を済ませたモモンは、そのまま新たな依頼を受けることなくこちらへと戻ってきた。緊急の依頼は無かったようだ。
「では、行きましょうか」
「オッス、お願いしまーす」
イビルアイも落ち着きを取り戻したし、俺のアドバイス通りに行動すれば、上手いこと有用さをアピールしてくれるだろう。
さて、当初の予定通りに都市観光だ。観光という名のデートだ!
それもただのデートや無い…。
モモン×イビルアイ、俺×ナーベのダブルデートや!!
はたしてイビルアイはモモン(中身別)のハートを射止める事はできるのか!?
そして俺はナーベちゃんと仲良くなれるのか!?
『ラブ師匠』の真価が問われるのはこれからだ…っ!!
-ナーベラル
澄まし顔(ハニワ顔)口を閉じないとマヌケに見えますよ?
ナーベのヘコみ顔かわいい…かわいくない?
ランキング入りしてました。皆様ありがとうございます。
誤字報告に感謝