イビルアイ尻尾√   作:冠尾かざり

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08 デート戦

-前回のあらすじ

エ・ランテル滞在1日目前半の部~オリ主、冒険者組合へ赴く~


 

 

 

 

 エ・ランテル冒険者組合の扉を開け、漆黒の兜を軽く傾けて空を見やる。

 太陽の位置を見るに、昼の少し前と言ったところか。

 これからの予定を少し考えつつ、背後に居る二人の同行者に意識を向ける。

 

 『蒼の薔薇』のイビルアイとターリア。

 王都での大規模作戦の後、モモンに同行してエ・ランテルまでついて来たアダマンタイト級冒険者。

 

 その二人が、わざわざ人が多く、それも同業者が多い冒険者組合で頼みごとをしてきた。

 狙いは幾つか考えられる。

 1つは、周囲の人間にモモンと親密であるかのように振る舞う事で、エ・ランテルでの地位を高めるためだ。

 この街では知らぬ者などいない程の名声を持つモモンと親しいと知れ渡れば、エ・ランテルでの活動が行い易くなるだろう。

 冒険者組合同士の仲が悪いとは聞いた事は無い。それでも、他の街の冒険者より自分の街の冒険者を贔屓したくなるものだ。それはアダマンタイト級冒険者だとしても例外ではない。

 彼女は自分たちの扱いが悪くならないように組合へ牽制したのだ。

 

 次に、こちらの情報を入手する手段を増やすという事だ。

 仲が良いという事で、我々の情報を聞き出しやすくなるはずだ。

 更に、案内をさせることで行きつけの店や行動範囲を知り、それによって()()出会う事も増えるだろう。

 

 そして、皆の前でエ・ランテルの案内を請け負った以上は無下(むげ)には扱えない。英雄モモンとして相応しいエスコートを成し遂げねばならない。

 彼女たちに向き直り、最初の予定を告げる。

 

 

「まずは冒険者が良く利用する食堂に案内しよう。

 少し早いが、まずはそこで昼食でも済ませようか」

 

 そして昼食を提案する。

 人間である彼女達には食事が必要だ。モモンも人間という設定なので、食事について言及しないのは少しばかり不自然になってしまう。

 長い時間が掛かるであろう街の案内の中で、空腹など感じないこの身体ではそれを言い出すタイミングを掴み難い。だから最初に済ませてしまおうというわけだ。

 もちろんこの身体で食事を摂ることはできない。

 だが、それをカバーする言い訳は幾つか用意してある。

 

 

「どうすっかな~俺もな~。

 腹減ったなあ。行きてぇなぁ」

 

 ターリアが空腹の状態らしく、昼食を摂ることに賛同する。

 若干言動はおかしいが、タイミングはばっちりだったようだ。

 

 

 組合の近くで営業している、上級冒険者がよく利用する食事処に入る。

 日当りの良い席に座り、メニューの書かれた紙を広げると、ウェイトレスが注文を取りに来た。

 ナーベラルに適当な物を注文させる。パンケーキの様な物を頼むようだ。

 続いてターリアも軽食を選んだ。…空腹じゃなかったのか?まあ小食なのだろう。

 

「イビルアイさんはどうしますか?」

 

「私は遠慮しておく。

 この仮面を外すわけにもいかないからな」

 

「そうですか?

 ああ私も不要だ。以上の注文で頼む」

 

 あの仮面は飲食不要の効果でも付いているマジックアイテムなのだろうか?

 それはともかく、イビルアイも食事を摂らないなら都合がいい。

 自分も、ごく当たり前といった風に食事は不要と言い放つ。

 ウェイトレスは一礼すると、特にこちらを(いぶか)しむ事無く店の奥へと去った。

 

 

 注文が届くまでの間、二人を観察しながら思考する。

 自分の創造主たるモモンガ様───アインズ様が「ナザリックとの関係を気取られ無いよう注意しろ」と警戒をするように指示した二人。

 イビルアイに関しては、やたらと距離を詰めてくるので最初は警戒したが、これは、モモンに対して好意を持っているだけだろうと判断。

 

 警戒すべきはターリアという少女。

 相手の興味を惹くのが上手く、話の持って行き方が(さか)しい。

 その言動から、こちらと親交を深めようとしているというのがハッキリと分かる。

 だがしかし、その視線の中に我々を探るという気配が僅かに感じられる。アインズ様から最高の頭脳と知略を与えられ創造された自分の目は誤魔化せない。

 

 

「モモン氏たちは普段こういう店を利用するの?」

 

「現在のような状況を含めるのなら、まあ、そうとも言えるのかもしれないな」

 

「あっ…ふ~ん」

 

 早速踏み込んできた。

 当たり障りのない事を言って、こちらの素性を探るような話題を回避する。

 はぐらかした事を理解したのだろう。何かを察したような顔をして静かになる。

 程なくして注文が届いた。

 

 

「ナーベちゃんのヤツと半分こしたい…したくない?」

 

「したくありません。そのふざけた事を言う舌を引っこ抜いてやりましょうか?」

 

「えー、どうしても駄目?」

 

「駄目です」

 

「ああああああああああああああああ!」

 

 ターリアとナーベラルが騒がしく食事を始める。

 やがて根負けしたらしいナーベラルが、自分のパンケーキをターリアに分けていた。

 …ナーベラルが成長したのか、ターリアがしつこ過ぎたのかはわからない。

 

 

「全くアイツは騒がしい…。

 うちの馬鹿がすまない、モモン様」

 

「ここは冒険者が良く利用する食堂だからな、多少騒がしくても構わないさ」

 

「アレでも魔法詠唱者としては優秀、いや天才と言ってもいいんだけどな…。

 新しく魔法を開発できるのは私達くらいのものだろう」

 

「ほう、新しい魔法の開発ですか。

 …しかしそれが既存の魔法かどうかなんて調べようが無いんじゃないか?」

 

 報告にもあった新たな魔法の開発技術。

 この世界にはユグドラシルには無かった魔法が多数存在している。生活魔法などその筆頭だ。

 魔法に関して未だに謎な事は多い。彼女の知識がそれらを解き明かす一助となり得るなら、この話には大きな価値がある。

 

「ああ、開発した時に何となく分かるモノなんだ、新しく世界に魔法が刻まれた、とな。

 ……八欲王の(のこ)した、かの強力なマジックアイテムにも、その魔法の名が新しく刻まれていることだろう」

 

「八欲王の遺した強力なマジックアイテムですか!

 …それは一体どのような物なのですか?」

 

「……ここで話せるような内容では無いからな。

 こ、今度二人で落ち着いた場所にでも行ったときに続きを──」

 

 

 また新たに出てきた重要そうな情報に、兜の下でひっそりとほくそ笑む。

 イビルアイは勿体ぶってここでは語らなかったが、詳しい話を聞く約束を取り付ける事も出来た。

 今はこれで十分だろう。

 

 ふと目をやると、何時の間にか食事を終えていたナーベラル達がお茶を飲んでいた。

 そろそろ街の案内をするべく店を出る。

 

 

 

 さて、昼食も終えた所で、いよいよエ・ランテルの案内を始めよう。

 上級冒険者が良く利用する店や通りに加えて観光名所とされる場所も紹介する方針でいいだろう。頭の中で案内ルートを構築し、歩き出す。

 

 イビルアイが傍にやって来て、先ほどの話の続きを始める。

 時折、過去の転移者だと思われる存在について言及し、その情報が少しずつ明らかになっていく。

 

 モモンがイビルアイと話し込んでいるのを見て、ターリアはナーベラルの方へと向かう。こちらの話が邪魔されないのは都合がいい。

 ナーベラルも彼女と少し仲良く(?)なったみたいだからな、しばらくの間こちらの話に邪魔が入るのを防いでくれるだろう。

 ターリアは動揺を誘うような言動をして、ナーベラルから我々の情報を探ろうとしている様だった。だが、ナーベラルもそれを理解して警戒しているので、今のところは上手く躱している様だ。

 

 

「モモンさんの思考を邪魔するような無駄な事はしません」

 

「えー、勿体無い!

 じゃあ、私がモモン氏役をやるから、何か話しかけてきてよ」

 

「一体なぜそんな話になるのですか?

 そんなくだらない事はやりません」

 

「ナーベよ、これは冒険者として必要な事だ(低い声)」

 

「全く似ていません。不快です。死んでください」

 

 

 向こうの二人がおかしな会話を始めたが、イビルアイが気になる情報を口にしたのでこちらの話に集中する。

 

 しばらく街の案内をしながら、八欲王について信憑性の高いとされる説の話を聞いていると、突然、ナーベラルが大きな声を上げた。

 

 

「モモン様はそんなこと言いません!!」

 

 

 何があったか分からないが、マズい!

 ナーベラルが激昂して敬称をつけ間違えている。

 モモンが何処かの国の高貴な出自で、ナーベはその従者という噂が広まっているから、致命的な失言では無いが…。

 

 ナーベラルも滅多な事では口を滑らせないが、感情が高ぶったときは別である。

 今もターリアは、ナーベラルをからかって怒らせている。

 取り返しがつかなくなる前に、二人を止めに行かなくては。

 

 

 興奮するナーベラルのもとへと向かおうとしたところで、イビルアイが無視できない言葉を口にする。

 その言葉に一瞬動きを止め、迷う。

 そしてこの状況に、ハッとする。

 

 

 ──分断作戦。

 

 

 イビルアイがモモンを引き付けている間に、ターリアがナーベラルを攻略する。

 これはそういう状況だ。

 

 イビルアイがモモンを慕っているのは演技とは思えなかったので、気付くのが遅れてしまった。否、実際イビルアイのモモンに対する好意は本物だろう。だからこそ、今まで気付けなかった!

 という事は、これはターリアがイビルアイを利用した策なのだろう。

 仲間の恋愛感情さえ利用するその精神性に空恐ろしさを感じる。

 

 

 最初からナーベラルを狙っていたのか?

 否、午前中はモモンに張り付くように話しかけてきていた。

 恐らくは、自分が演じるモモンに情報を漏らす隙が無いと見て、計画を変更したのだろう。

 

 

 アインズ様は何と(おっしゃ)っていた?

 ───ナザリックとの関係を気取られ無いよう注意しろ───。否、その前だ。───動揺を誘うような行動に、思わず反応してしまう失態を犯した───。

 その時は言葉通りの意味で捉えてしまったが、これは敢えてモモンに隙を作っていたのではないか?

 

 失態を犯した振りをすることで情報を与え、ターリアの興味を満たす。やがて満足すれば、大人しくなるだろう。

 ナーベラルにターリアの相手をするのは荷が重いと判断したアインズ様は、その興味の矛先がナーベラルへと向かないように行動していたのだ。

 そういう風に考えた方がしっくりとくる。

 至高の御方が無意味な失態を演じるなど有り得なかったのだ。

 よく考えてみれば気付けた筈のことだった。

 

 背筋が凍る。

 

 主人の期待に応える事が出来なかった?

 

 自分の失態が原因でアインズ様がお隠れになってしまわれることを考え、心臓が締め付けられるような痛みを発する。

 

 

 

 …最悪の結果だけは避けねばならない。

 価値がある情報を口にするイビルアイを断腸の思いで振り払い、ナーベラルの冷静さを取り戻しに向かう。

 

 

 楽しそうにナーベラルを(もてあそ)んでいたターリア。

 二人の間に入って白熱していた会話を止めると、ターリアはすぐに身を引いた。そして、モモンがナーベラルを(なだ)める姿を何処か納得したような表情で見ている。

 

 …やはり、こちらが何か重要な情報を隠していることを確信している。

 幸いな事にそれからは大人しくなり、こちらの情報を探る様な動きは無かった。

 だがそれは厄介な事でもある。好奇心だけで動いている訳では無い、引き際を弁えた優秀な知略を持った存在。警戒せよとの言葉が身に()みた。

 

 

 ナザリックの不利益にならない限り、彼女たちを殺すことは有り得ないだろう。

 アインズ様が仰ったとおり、この二人はこの世界の重要な情報を知り、貴重な技術を持っている。

 

 あるいは、アインズ様が失態を演じてモモンの隙を見せたというのは、ナザリックに取り込むに相応しいかの試験の意味合いも有るのかもしれない。

 今回、自分の裏をかいてみせた知略。その頭脳がナザリックのために使われれば、それは素晴らしい事だろう。

 

 わずかな情報でナザリックの存在に気付き接触を謀ったという、王都に居る協力者。デミウルゴスをして見所があると言わしめた人間。

 その協力者の様に、もしも彼女らが真実の核心へと迫るのなら、ナザリックへの取り込みを考えても良いかもしれない。

 

 

 

 

 

 

──────

 

 

 

 

 

 

 街の案内という名の逢引。

 いや逢引と言うには少々血生臭い、冒険者のための施設を多く回ったのだが。まあ、冒険者に対する街の案内なのだから仕方ないだろう。

 それでもモモン様は観光名所の案内を合間合間に挟んでくれて、街を歩き回るのを飽きさせなかった。こういう所が素敵!さすがももんさまだな!!

 

 

 ターリアの助言通りに私の知識を少し披露すると、モモン様はとても興味を持ってくれた。少し前のめりになって食い付くように私の話を聞いてくれる。モモン様が少し近い、止まっている筈の心臓がドキドキする。

 モモン様は聞き上手で、私は気持ち良く話す事が出来て、とても楽しい時間を過ごせた。

 だが、幸せな時間も最初だけだった。

 

 心に余裕が出来て緊張せずに会話ができるようになると、モモン様の仕草が気になるようになって、私もその視線の先を追ってしまう。

 そうして気付いたことは、モモン様がターリアの方を見ていることだった。

 最初は相方であるナーベの事を見ているのかと思ったが、そうではない。明らかにターリアの動きを意識し、その視界の中心にとらえている。

 偶然でも気のせいでも無い、何度もターリアに視線を向けているのだ。

 

 

 モモン様はターリアに気がある───。

 

 

 ふと頭を過った想像に、燃え上がるような嫉妬と、身を凍らせるような恐怖が心を支配する。

 二つの感情にぐちゃぐちゃに頭の中をかき乱され、理性が働かずにグルグルと渦巻く感情のままに行動してしまう。

 自分が暴走している自覚はあるが、私はモモン様の気を惹くために人通りのある場所で言うべきではない、この世界の秘密を口にしてしまった。

 

 

「モモン様の強さの理由は六大神や八欲王などの、ぷれいやーと呼ばれる存在の血を引くから───」

 

「───ちょっと失礼する」

 

 だが、モモン様は私の前から去ってしまった。

 興味のない話題だったのだろうか?否、こちらの言葉に今まで以上に反応していた。

 それでも私を振り払って、ターリアのもとへと行った。

 

 

 やはりモモン様はターリアが気になるみたいだ。

 

 それが恋愛感情でない事を祈りつつ、仮面の内側からターリアを睨み付ける。

 

「ターリア……私は負けないぞ…っ!」

 

 

 

 

 

 

──────

 

 

 

 

 

 

 太陽がすっかり傾き、寂れ喧騒。

 夕焼けの哀愁漂うオレンジが、人の歩みを優しく染める。

 建物の間から射す光と、影になった部分が丁度良く三角の形になっている。それはまるで2種類の巨大なケーキを、規則正しく延々と並べている様に見えて、それが少しおかしく見えてフフッと小さな笑いがこぼれた。

 

 

 モモンに案内してもらったエ・ランテルは、王都で想像していた以上に発展していた。と言うより、王都が古臭い街のまま時が止まっているんだなぁ。

 そしてエスコートの手際が良かったのはパンドラズ・アクターの成せる技だろう。おかげで普通に街の観光を楽しめた。

 流石に中身がアインズ様じゃ、こうは行かなかっただろう。さすアイ。

 

 

「皆さんお疲れ様でした。以上で街案内はお終いです。

 私の案内が御二人の役に立てたなら幸いです」

 

「あっ、おい待てい。

 まだ肝心なとこ(たず)ね忘れてるゾ」

 

 宿に戻ってきたところで案内終了の雰囲気を出しているモモンが口を開く。

 だけど、あと一つ寄ってない所があるから呼び止める。

 

「なんだ、ターリア。他に行きたい場所があったのか?

 だったら街中を歩いている時に言えばいいものを」

 

「いや、街の案内が不十分だった私の落ち度です。

 ちなみに、何処へ行きたかったか聞いても?」

 

「″森の賢王″ハムスケを見に行きたいゾ」

 

「「あ~」」

 

 

 みんなが納得したところで『黄金の輝き亭』の裏庭へ行き、ハムスケの御尊顔を拝みに行く。

 モモンが呼ぶと魔獣用の小屋からハムスケがこちらへ向かって走ってきた。

 

「殿~しばらく会えなくて寂しかったでござるよ~」

 

 

 かわいい。

 でっかいハムスターだ。かわいい。

 

「うおぉぉおおお、モフモフじゃあぁぁぁあ!!!」

 

「むおぉ!何でござるか、この子供は!?」

 

 

 モモンのそばに来たハムスケにダイブする。

 柔らかい毛皮が迎え入れてくれると思ったら滅茶苦茶に硬かった。ふっ……そんな気はしていたさ(諦念)

 

「なかなか良い毛皮を持っているじゃないの…。

 だけど、本気で殺り合ったら僕の方が強いんだからねぇ!」

 

 体中に擦り傷を付けながら負け惜しみを言う。

 そして近くで見ると、でかい鼠だ。怖い。

 

 

「いったい何だったんでござるか…」

 

「あー、ハムスケ。

 この二人は同業者のイビルアイとターリアだ」

 

「森の賢王。確かにそこそこ強い魔獣の様だな」

 

 

 それから背にのせて貰ったりしてからハムスケと別れた。

 

 そしてようやく今日のイベントは終了です。

 モモンが再び解散の音頭を取る。

 

「改めて、皆さん今日はお疲れ様でした。今度こそ、お終いです。

 それでは我々はここで失礼させてもらいます」

 

「お~う。

 それじゃあ、また明日~」

 

 

 そう。また明日である。

 明日は明日で付き纏う理由を考えてあるからな~。覚悟せよ(無慈悲な宣告)

 

 手を大きく振って、去っていく二人を見送る。

 ナーベはうんざりした様な顔をして、モモンは疲れたような雰囲気を出していた。

 

 

 

「それじゃあ私たちも、参るか」

 

「…ターリア。お前には負けないからなっ!」

 

 続いて俺たちも帰ろうかというところで、イビルアイが変な事を言い出す。

 ま~た俺がモモンに惚れているとでも勘違いしてるんですかね~?

 まぁ…こういう理不尽な気持ちが湧いてくるのが初恋ってもんやからな……。もう許せるぞおい。

 

「つまりお前の頭ん中ではどういうことになってんの?

 言葉にすることで上手く気持ちを整理できることもある。言うてみい」

 

 人生の先輩(前世を加算しても年下)として後輩の悩みをうまく晴らしてやらぁな。

 イビルアイは頭を抱え何事かをむぐむぐと呟いて、やがて俺に向き直ると一呼吸して心配事を語り出した。

 

 

「モモン様はお前に気があるのかもしれん」

 

「────いや、そうはならんやろ」

 

「実際なっているだろうが!

 ……いや、分かっているんだ。くだらない嫉妬だって」

 

 

 いきなり何を言い出すかと思いきや…。

 いや確かに、ナーベを弄り過ぎた感はあるよ。「モモンはそんなこと言わない」とか言わせちゃったし。これは反省。

 パンドラズ・アクターもかなり焦ったんじゃないか?それで俺が余計な行動を起こさないかをチラチラ見ていたら、気がある風に見えるというわけだ。

 でも一番悪いのは興奮して大声出したナーベちゃんです(責任転嫁)

 

 

「そういう理不尽な気持ちが湧いてくるのが初恋ってもんや…。

 今はいっぱい悩んで、それで答えを出せばいいさ」

 

 

 イビルアイの頭を抱き寄せて抱擁。頭をなでなでする。

 仮面越しに鼻をすする音が聞こえる。……泣いているのか、イビルアイ?

 

 うーうー言いながら俺への恨み言、上手くいかない苛立ち、初恋の苦しさ等を全部俺の胸の中で吐き出す。

 ひとしきり泣いた後、落ち着いたイビルアイが恥ずかしげに距離を取る。

 

 

 

「あー醜い所を見せたな。すまなかった、ターリア」

 

「気にするな。

 それより、仮面の中大丈夫?鼻水とかでグチャグチャになってない?」

 

「…っ!

 お前と言うやつは……っ!

 はぁぁぁ……。一人で悩んでいた私が馬鹿みたいじゃないか…」

 

「お、そうだな」

 

「ぐ、お前…っ!もういいっ!!

 

 ………………ありがとうな」

 

 

 

 

 …ツンデレめ

 

 

 

 

 


-パンドラズ・アクター

マジックアイテムで釣られクター

オリ主が有能だと勘違い…勘違いでは無いかもしれない

 

 

誤字報告に感謝

 

 


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