銀時達がパトロールを始めて僅か数分後。
監視対象の治崎と接触していた。
「うちの娘がすみませんね、ヒーロー」
こちら側の気も知らず、話しながら歩み寄ってくる。
「遊び盛りでケガが多いんですよ。困ったものです」
愛想良く話しかけてくる治崎を緑谷は信じられないと言うように見ている。
(ちっ…。予想外すぎんぜまったくよォ)
銀時はミリオにアイコンタクトでフードを被せるように指示を出し、治崎の前に出る。
「いやァ。こっちこそすんませんねェ」
「いえ、お気になさらずに。…うん?あなたは…白夜叉さんじゃないですか。こんなところで何を?」
銀時は早く納めようとしたようだったが、銀時に気づいた治崎が少し探るような素振りを見せてきた。
「コイツらの職場体験の付き添いっすよ」
「へぇ…」
「んじゃ急いでるんで。おめェら行くぞ」
「はい!」
「はいっ…」
これ以上追求される前に立ち去ろうとしたが、緑谷の様子が少しおかしい。
見てみると、緑谷とぶつかった女の子…エリが震えながらすがり付いているように見えた。
(あのチビ…明らかに…だが今は緑谷の方だ)
銀時は今の現状での最適な行動を取るために女の子に近寄った。
"緑谷。俺に任せろ"
治崎に気付かれないように緑谷に小声で話しかけ黙らせる。
「おー。どうした?何か怖いことでもあったのか?」
銀時はエリの頭に手をのせると、優しく撫で始めた。
治崎に感づかれないように、細心の注意を払いながら演技をする。
「…っ!」
エリは驚いた様に顔を上げ銀時を見る。
その顔は心なしか安心したような、年相応の表情とでも言うような顔だった。
だが、そんな顔もすぐに戻ってしまい目に涙が溜まっていく。
そして、すがるように小さく呟いた。
"たす…けて…"
"ああ。必ず助けてやる。だから…待ってろ"
銀時のその言葉を聞いたエリは感じたことのない感覚に戸惑いながらも緑谷を離し立ち上がった。
そして、治崎の方に駆けていった。
「ご迷惑をおかけしました。では、お仕事頑張って」
銀時達が黙って見ているなか、治崎は路地の奥に消えていった。
少しの沈黙の後、ミリオが口を開く。
「銀さん!治崎は…」
「ああ。ありゃあ黒だ…真っ黒。あーゆうクソみてェな奴を腐る程見てきた…間違いねェ」
「っ!ならなんでっ!あの子を助けなかったんですか!先生なら助けられたんでしょう!?なんでっ…!」
銀時の話を聞いた緑谷が声を荒げる。
「まァ落ち着け。無闇に突っ込めばいいって訳じゃねェんだ。それに…あのチビは必ず助ける」
「…わかり…ました…!」
「取り敢えずサーと合流しましょう!報告しないと!」
緑谷は納得こそしていないものの、銀時のいままでの活躍を見てきたからか、大人しく引き下がった。
その後、ミリオの言った通り行動を始めた。
前を歩く2人の後ろで銀時は考えていた。
(チビのあの時の反応は…温もりを知らねェのか…。ちっ…昔の俺を見てる様で気分悪ィぜ)
そう、銀時はエリの事を昔の自分に少し重ねていた。
暗闇でひたすらに剣を振り続ける様な感覚。
エリもそうだ、何も見えない暗闇でただひたすらに苦しんでいる。
その様子が分かってしまった。
銀時はため息を吐きながら1人呟く。
「はぁ…俺もこの世界に毒されちまったかなァ…必ず助けるなんてよォ」
1人の女の子を救うために白夜叉は動き出す。
・
治崎との接触の後、銀時達はナイトアイと合流した。
「マジで焦ったぜ。思いっきりフラグ回収しちまったよ」
「すまない。事前に見ておけば防げた」
「まぁとりあえず無事で良かったよ!」
こんな感じでお互いに状況の確認等を終えた。
その時、ミリオが思い出したようにナイトアイに報告をする。
「あ!そうだ!サー!新しい情報を得ましたよね!治崎には娘がいます!」
「娘…?」
「エリちゃんと呼ばれていました。手足に包帯を巻かれていて…とても怯えていました」
「ああ。あと…治崎は黒だ。アイツは確実に何かやってんぞ」
「そうか…情報を集めなくては…」
それぞれ、その時の状況や分かったことなどを伝える。
銀時自体、なにが行われているかは分かっていないが野性的な勘が告げている。
その根拠のない話をナイトアイは、銀時を信用する1人として納得しているようだ。
「バブル。この後はミリオと緑谷と3人でパトロールを続けてくれ」
「えっ!?は、はい!」
「頼んだ。銀時は一緒に来てくれ」
「りょーかい」
そうして、また新しく二手に別れた。
ナイトアイと銀時は少し路地を入ったところにある、静かなカフェの様なところに入った。
「ここなら誰にも話を聞かれることはない…話してくれるか」
「ああ。こっから先は俺の経験則と勘だが…治崎は娘を自分の野望のために『使って』やがる」
「っ!」
「内容までは分かんねェ。だが、確実に娘を使って何かを進めてんなありゃあ」
「そう…か…。ヤツを止めるためにはその子を保護する必要があるか…」
「そォだな。それに…約束しちまったからな」
「ん?何か言ったか?」
「いや、何でもねェ。それよりも早く情報を集めんぞ」
「ああ。すぐにでも動こう」
ある程度の方針は決まった。
ここから確かな情報を集め、行動を起こすために最善を尽くさなければならない。
・
今回のインターンの後、ナイトアイの事務所は緑谷を呼ぶことなく少しの時間が流れた。
その間は、銀時も学校で普通に授業をしていた。
今日はナイトアイからの連絡で指定の場所に集まるようだ。
「消太。行こーぜ」
「ああ」
銀時とイレイザーは集合場所に電車で向かう。
到着し中にはいると数多くのヒーローが集まっていた。
その中には知り合いもいた。
「うーぃ」
「おっ!銀時じゃねぇか!お前さんも呼ばれてたのか!」
「よォ、じぃさん。元気してたかよ」
「はっはっは!元気も元気!ピンピンしとるわ!」
神野で共に戦ったグラントリノも呼ばれていたようで話しかけてきた。
そうして話していると銀時の方に誰かが寄ってきた。
「おーおー!あんさんが白夜叉か!」
「あん?」
銀時が声の方に振り向くとまんまるとした体の男が立っていた。
その男は銀時をじっくり観察して言った。
「んー。なんや案外普通やな!夜叉っちゅうくらいやから鬼みたいなんを想像しとったわ!」
「…誰だ?あんた。…ってかその腹…バランスボールでも丸飲みにしたの?」
お互いに元々の気質か、中々に酷い言いようだ。
銀時にいたっては普通に悪口になっている。
男は銀時の言葉を聞いて少しポカンとした後に笑いだした。
「………ぷっ!あっはっはっ!なんや面白いやないの!にーちゃん!俺はファットガムや!よろしゅう!」
「ん?あー。坂田銀時だ」
「おう!銀な!」
良くは分からないがファットは銀時の事を気に入ったらしい。
そんなやり取りをしていると、入口が開く。
入ってきたのはビッグ3の面々と、緑谷、切島、麗日、蛙吹の4人だった。
「グラントリノ!?相澤先生も!?…坂田先生まで!?」
銀時が入口の方を眺めているとねじれが銀時に飛び込んでいった。
何故かは謎だ。
「あー!銀さんもいる!なんで?ねぇなんで?」
「ちょっ!おいこら!いちいちひっつくな!」
「銀さんも呼ばれたの?なんで?ねぇ!」
「あァ!うぜェ!離れやがれ!」
そうして2人でわちゃわちゃやっていると誰かがねじれの頭に軽くチョップした。
「ねじれ。ステイ」
「んー?あっ!リューキュウ!」
来たのはプロヒーローのリューキュウだった。
ねじれはリューキュウに気付くと、銀時を離してリューキュウの方に行った。
「はぁ…助かったぜ。すまねェな」
「いえ。苦労は分かるので。…挨拶がまだでしたね。私はリューキュウです。よろしくお願いします白夜叉さん」
「ああ。坂田銀時だ。んー…なんか誰かに似てんなァ…」
「えっ!?あ、あのー…」
銀時は挨拶もそこそこにリューキュウを頭から足の先まで眺めてそう言った。
見方によってはセクハラだ。
「…あー!あの、あばずれ酒乱女に似てんだ!雰囲気だけど!」
「あ、あばずれ…酒乱…ぐすっ…」
そして、思い出してスッキリした銀時はデリカシーの欠片もない言葉でリューキュウを攻撃した。
効果はバツグン!
リューキュウは泣いた。
クールビューティーが台無しだ。
銀時のせいだけど。
「あっ…わ、悪ィ!言い過ぎた」
「…ぐすっ…別にいいです。どうせ私なんて…」
「あー!銀さん泣かせたー!いけないんだー!」
「あっ!おまっ!静かにしろっ!」
回りに気付かれないうちに事態を片付けようとした銀時だったが、ねじれの声に皆が視線を向けてしまったようだ。
女性陣はドン引き、男性陣からは非難の視線を頂戴した銀時であった。
リューキュウって普段の感じは月詠に少し似てる気がするんだよな!
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