それぞれの戦場で戦いが始まる中、銀時は取り敢えず前に進んでいた。
「よっ!ほっ!…はぁ疲れたァ~」
進んでも進んでも何もない部屋か通路に出る。
「んだよコレ…こんな事ならジャスタウェイ残しときゃ良かったぜ」
自分の計画性のなさと一時のテンションに身を任せたせいなのだが、銀時は悪態を付きながら次の壁の前に向かう。
すると…
「あー。マジ疲れたァッ!?」
目の前の壁から岩でできたようなトゲが顔目掛けて伸びてきた。
辛うじて避けた銀時だったが、額から血がたれてきている。
恐らく銀時じゃなかったら避けることができず顔面に串刺しになっていただろう。
「っぶねェ!!マジで三途の川見えたぞ今ァ!」
額の血を拭い、前の壁に向けて斬撃を放つ。
壁が崩れ銀時の目に入った光景は…
「怖っ!ミリオじゃないと避けれねェだろアレ…」
トゲを避けながらエリを庇っているミリオの姿だった。
まだ誰も銀時の存在に気づいていない。
「この子ごと…!」
「ああ。壊れても支障はない」
銀時はいまだにいつも通りだったが、治崎の声が耳に届いた。
それを聞いた瞬間に表情が一変した。
「なにを…言ってやがんだあの野郎…」
治崎はさらに続ける。
ミリオは険しい表情で治崎の攻撃を躱している。
「すぐに修復すれば蘇生出来る。原型を留めていなくとも元通りに治せる。その子は身を以て知っているハズだ」
治崎はエリをただの道具としか思っていない。
それが分かった銀時は走り出した。
その顔はいつもの気の抜けた顔ではない。
まさに鬼…夜叉だ。
「壊理が傷を負ったらどうする。この状況下治せるのは「オイ」っ!?があっ!!?」
「銀さん!!!」
銀時はミリオに気を取られている治崎に木刀を叩き込む。
刀で首を断ち切らなかったのはギリギリ理性が残っていたからか…。
銀時に気づいたミリオは先ほどまでの険しい表情を一転させ嬉しそうに叫んだ。
「よォ。ミリオ。それと…ガキンチョ」
銀時はミリオとエリに歩み寄り、エリの頭を乱暴気味に撫でた。
それは、あの時と同じように不器用ながらも優しさのある温かい手だった。
少なくともエリはそう感じたのだ。
エリは驚いたように顔を上げ銀時を見る。
「あ、あの時の…ダ、ダメだよ…!皆殺されちゃう…」
エリは一瞬嬉しそうな顔をしたが、すぐに頭を振り銀時達に言った。
「アホ。ガキが一丁前に心配すんなっつの。安心して守られとけ」
「…っ!………うん」
それを聞いた銀時はかるーくチョップをかまし、ぶっきらぼうに言った。
だが、エリにはそれだけで充分だったようだ。
この人なら何とかしてくれる。
そう思ってしまうほどに頼もしい横顔に映った。
「痛いじゃないか…白夜叉。お前も有象無象共と同じようだ」
「また厄介なのが来やしたね」
声がした方に顔を向けると、治崎が立ち上がっていて、横にクロノもいた。
治崎はどうやら吹き飛んだ先に壁を作って衝撃を少し殺したらしい。
ほとんどダメージがないようだ。
「おい壊理。早く戻ってこい。そんな薄っぺらい希望にすがって何になる。またお前のせいで死ぬぞ」
「…っ」
「っ!治崎ぃ!!!」
治崎の言葉にエリはうつむき、震えてしまう。
きっと頭のなかで色々な光景が流れているのだろう。
それも考えられない程に残酷な。
だが、それを見て黙っている銀時ではない。
「黙りやがれ。クソ外道が」
「…はっ。お前に何が分かる。俺はそいつを使って世の中に蔓延る無駄に数の多いだけの病人を治すんだよ」
「おめェの薄汚れた理想なんて分かりたくもねェよ。ただ1つ分かることは…おめェがどうしようもねェクズ野郎だってことだけだ」
銀時は刀を抜いていいはなった。
治崎が喚こうが銀時には関係ない。
目の前の敵を黙らせるしか方法がないのなんて分かっている。
言葉ではどうしようもない…価値観があまりにも違うのだから。
・
今までの不利な状況とは違い、2対2。
お互いに距離を保ったまま銀時はミリオに話しかける。
「ミリオ。行けるか?」
「もちろん!銀さんがいれば負ける気がしないよね!」
先程までの険しい表情はどこへやら、ミリオに笑顔が戻っている。
いつもとは違う、銀時の真剣な雰囲気も頼もしさを倍増させているだろう。
「そりゃあ良い。ガキ…エリは俺が預かる。あのクソ外道の個性だとミリオが自由に動ける方が都合が良いからな」
「分かりました!エリちゃんをよろしくお願いします!」
「ああ。ちゃんと掴まっとけよ?」
「うん…!」
(やっぱり温かい…安心する…)
刀を持っていない方の腕でエリを抱えると、腕に抱きつき顔を胸に埋めてきた。
「あはは!ずいぶん懐かれてますね!」
「…特になんもしてねェんだがなァ」
頭をかきながら銀時は言う。
取り敢えず準備完了だ。
「んじゃ…ヒーローらしく退治といくか。背中は守ってやる。前だけ見とけよ」
「はい!やる気出てきたぁ!」
そうして2人は並び立つ。
改めて考えると、現時点で全てのヒーローを含めて最強のタッグなのではないだろうか。
元々、銀時に着いていける人物自体数えるほどしかいないのだが…。
一方の治崎達もダメージが抜けたようで動き出そうとしていた。
「クロノ。さっさと終わらせる…やるぞ」
「ええ。オーバーホール」
治崎の合図でクロノが銃を構える。
個性を破壊する薬が入った銃だ。
「さっきの修復で逃げ道は無い」
「あの通り抜ける個性も、白夜叉のは分かりやせんが…こいつを撃ち込みゃこっちの勝ちです」
そう言ってクロノは銃に指をかけ、治崎が足場と遮蔽物を崩す。
「銀さん!来ます!」
「分かってらァ!」
銃の標的にされたのは足場が崩れる前に上手く避けた銀時ではなく、空中に避難したミリオだった。
銀時は着地と同時に走り出す。
「当たるわけにはいかないよね!」
ミリオはマントで目眩ましをして避けるのか体を隠す。
クロノは取り敢えずマントに向かって銃をうったが上手く避けられたようだった。
「ズラされた…!ヒーローのマントってかっこつけだと思ってやした」
そんな悪態を付きながらマントが地面に付くのを警戒しながら見ているクロノ。
だが、ミリオはそこにはもういない。
完璧に意表を付いた。
クロノが気づく前にミリオは地面に潜ってクロノの顎に向かって拳を突き上げにかかっている。
「クロノ!」
ミリオの虚を付く行動にギリギリ気づいた治崎はクロノに呼び掛けながら個性で妨害をする。
もし、ミリオ1人だったら避けられていただろうが、ここにはもう1人いる。
「ミリオ!構わず振りきれェ!」
銀時はミリオの行動を予測してクロノの方に回り込んでいたのだ。
そして、地面から伸びてきた岩を両断しミリオへの妨害を防いでみせた。
そして…
「分かって…ますっ!!!」
ミリオは銀時を信じて初めから振りきるつもりでいたらしく、思い切り振りきった。
「なっ…がはっ!!」
「クロノ!!!」
クロノは後ろに回転しながら吹っ飛んだが、途中で治崎が個性で壁を作り受け止める。
気絶させることは叶わなかったが、大分ダメージが入ったようだ。
「…ふぅ。初めてにしちゃ上出来だな」
「いやー、銀さんがいると動きやすいですよ!」
ミリオの個性を使った自在な動きに合わせる銀時。
先を読んでサポートに回ることが出来るこの実力は相手の予想を遥かに上回っていることだろう。
さらに、治崎とクロノは銀時が無個性と言う事を知らない。
圧倒的にこちら側に戦況が傾いた。
なんにせよ、戦いははまだ始まったばかりだ。
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