銀時が撃たれた。
実際はなんともないのだが、敵は盛大な勘違いをしている。
「くくっ…。個性なんてものが備わってるから夢を見る。自分が何者かになれると…精神に疾患を抱えるんだ」
「…はっ。んなモンなくても俺は俺にしかなれねェよ」
(完璧に騙されてやがんな。ミリオには当たらなかったが…痛かったからぜってェ一発かますぜ)
銀時は傷口をおさえながら治崎に言った。
心の中では物騒なことを考えているが取り敢えずまだ泳がせるつもりのようだった。
「…イラつくな。お前はもう守る側の人間じゃないんだよ。弁えろよ白夜叉」
「治崎ぃ!お前ぇ!!!」
あまりの物言いにミリオは銀時が無個性で演技をしていることも忘れて声を荒げる。
まぁその方がやりやすいのが確かだが。
「一番滑稽なのはお前だよルミリオン。白夜叉に守られてるお前はすでにヒーローですらない」
「っ!くそっ…!」
治崎の言葉に苦しげな顔で拳を強く握るミリオ。
銀時は気にするなと肩に手を置きなだめた。
それよりもミリオは真面目に忘れているようだ。
これが演技だったら大したものだ。
「ミリオ。気にすんな。なにがあろうと俺は俺…お前はお前だ。意思さえありゃあ変わることはねェよ」
(なんかミリオのやつ俺が無個性なことガチで忘れてねェ?大丈夫か?)
「銀さん…!俺のせいで…!」
銀時は内心で少し呆れながらも演技をしていた。
すると、治崎が少しイライラした様子で話をしてきた。
「…はぁー。茶番は終わりにしようか…さぁエリを渡せ」
「悪ィが…答えはNOだ」
「そうか。なら消えろ」
銀時が迷いなく答えると、治崎は無表情で吐き捨てるように言いながら個性を発動した。
すると、銀時の回りから刺が伸び銀時を襲う。
「銀さん!!!エリちゃん!!!」
「…ちっ。悪運の強い奴だ」
治崎は銀時をエリごと殺すつもりで、一切の躊躇もなく攻撃を放った。
その攻撃で銀時は串刺しになったと思われたが、上手くかわしダメージは避けていた。
治崎は忌々しげに呟いたが、銀時は治崎に目もくれずエリの心配をする。
「いっつつ…。大丈夫かよ?エリ」
「わ、私は大丈夫…っ!ち、血が…」
「へっ…心配すんな。かすり傷だ」
「あー。こんなに腹が立つのは久しぶりだ。分かった…俺が直接壊してやろう。お前に触れさえすれば全てが終わる」
その光景を見て、治崎が対に自らの手で止めを指すべく動いた。
治崎は先ほどの攻撃でほぼ磔のような状態の銀時にゆっくり近づいていく。
だが、これこそが銀時の狙いなのだ。
銀時はダメ押しに口を開く。
「やってみろよ…
「…クッ…ハハッ…ハハハハハッ………死ね」
銀時の言葉に狂気的に笑い手を伸ばす。
治崎の最後の言葉は人間が発したと思えないほどに冷たい声だった。
そして、治崎の手が銀時に…
届くことなく地面に落ちた。
「…は?」
「オ、オーバーホール!!!」
今の今まで控えていたクロノが叫ぶが全く届いていない。
伸ばしたはずの治崎の手は銀時には届かない。
気づいたときには肩から先がなくなっていた。
一瞬だが、全ての時間が止まったような沈黙。
そして、傷口から血が吹き出すと共に表現しようのない痛みが全身を駆け巡った。
「がぁっっ!!?あァァァァアッ!!!う、腕っ…!!!」
「痛ェだろ…これでちったァ分かったかよ。エリの気持ちが。壊されるモンの気持ちがよ」
銀時は痛みを耐えるようにうずくまる治崎を見下ろしながら言った。
・
治崎の頭には様々な感情が渦巻いていた。
特に大きいのが痛みと困惑だった。
「ぐぅっ…はっ…はっ…!な、んでだ…!た、確かに個性は…ぐっ…消えた…はずだっ!」
「はぁ?何を言ってんだ?おめェ」
治崎は一番の疑問を痛みに耐えながらも叫ぶように言った。
それを聞いた銀時は、呆れたように返した。
だが、治崎はまったく理解が追い付いていないようだ。
「な、なにを…」
「いつ俺が個性を持ってるって言ったよ」
「…は?」
「だからよォ…いつ俺が個性を持ってるって言ったんだよ」
そして、三度目の追及でようやく1つの答えにたどり着いた。
白夜叉が…坂田銀時が、無個性だと言うことに。
だが…
「個性がない…だと。個性がない奴がヒーローの真似事をしていたと…そう言うことか」
治崎は理解が追い付かないのか、放心したように呟く。
銀時は治崎の本質を真っ向から打ち砕くかのように確信をつく。
「なんだかなァ。治す治すって言ってる割にはよォ…おめェが一番執着してやがるな。個性によォ」
「っ!」
そこで初めて治崎の顔が痛み以外の理由で歪んだ。
銀時はそんな治崎に目もくれず続けた。
「まァいいけどよ。それより早く腕治せよ。治せんだろ?こんなモンじゃねェぞ…エリが味わってきた痛みは」
「ぐっ…!」
治崎は忌々しげに銀時を睨んでいる。
治崎にとって銀時は1番の害悪だろう。
壊す個性がない、だが誰よりもヒーローだ。
「んだよ…別に治さねェなら治さねェでいいけどよ。んじゃ左腕もいっとくか」
…やっぱりヒーローじゃないかもしれない。
多分悪魔とか鬼の類いだ。
銀時は無表情のままゆっくり治崎に歩み寄っていく。
すると…
「先輩!!!無事ですか!!?」
「あん?…緑谷ぁッ!?」
「先生!?ま、間違えたぁぁぁぁ!」
銀時の横の壁が吹き飛び緑谷が現れ、その勢いのまま銀時の顔面目掛けて拳を振り抜いた。
銀時は現れたのが緑谷だったためか警戒を怠りモロにくらい盛大に吹き飛んだ。
「ぎ、銀さーん!!!」
ミリオの叫びが空間を支配した。
銀時のまともな初ダメージは緑谷の一撃となった。
シリアスブレイク!
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