最後の戦場に銀時と緑谷が並び立った。
治崎は相も変わらず自分の目的のために止まることはないようだ。
「お前達も壊理も…力の価値をわかってない」
治崎自身、エリを1人の人間として見ていない。
自分の野望を叶えるための道具なのだろう。
「個性は伸ばすことで飛躍する。俺は研究を重ね、壊理の力を抽出し到達点まで引き出すことに成功した。結果…壊理には肉体どころか種としての流れ…個性因子を消滅させ人間を正常に戻す力が備わっている。」
やろうと思えば本当に世界を変えてしまえるような強大で規格外の力。
それを1人の少女が持っている。
だからこそエリは利用されているのだろう。
「そして、壊理の力を使うことによって個性で成り立つこの世界を…理を壊す…!」
治崎は叫ぶように言った。
そんな時、黙って聞いていた銀時が口を開く。
「まァ…確かに個性なんて曖昧なモンがあっから敵っつーアホがわんさか出てくんだろォよ。それに、正義にゃ色んな形があるっつーのも分かる」
「そうだ。だからこそ俺は壊理の力を…」
治崎の言葉を遮るようにして銀時は続ける。
「だがな、エリを…力の使い方も分からねェ子供を、テメーの都合で利用した時点で…おめェは紛れもねェ悪だ」
銀時は刀を治崎に向けて突きつけながら言った。
「もォ終わりにしようぜ。おめェの理想は聞き飽きた」
「…そうか。ならば、お前達を殺して壊理を返して貰う。それで全てを終わらせるとしようか」
治崎はその言葉を最後に動きだし、銀時達の方に向かってくる。
銀時はちらっと緑谷に視線をやってから刀を構えた。
「緑谷。メインはおめェだ。しっかり決めろよ」
「はいっ!…先生、来ます!」
治崎はもう目の前の2人しか見えていないようで一点集中で個性によってできた刺をを打ち込んだ。
2人を殺すべく打ち込まれた攻撃は銀時によって細切れに刻まれて届かない。
「…ふぅ。図体がでかくなってもやるこたァ変わんねェのな」
銀時が呆れたように言う中、緑谷が力強く地面を蹴ると体がぶれ一瞬にして治崎に肉薄した。
緑谷は周辺に被害が及ばないように治崎を蹴り上げる。
「おーおー。随分とまァぶっ飛っでんな…っと、俺も行かねェとな」
巨体を1蹴りで宙に蹴り上げた緑谷を眺めながら呑気に言う銀時。
気づいたように銀時は遅れて地上に出てきたリューキュウ達の元へ急いだ。
「麗日ー。ちょっと俺を浮かせて緑谷ん所にぶん投げてくれ」
「わ、分かりまし…って若くなっとる!?」
「色々あってよ。まァ、取り敢えず頼むわ」
驚く麗日達をよそに銀時は準備を始めた。
・
治崎を蹴り上げた緑谷は、全身を襲う体の内側に引っ張られるような感覚に顔を歪めている。
「ぐっ…!」
(エリちゃんの力が強まってる…!)
エリの個性は時間がたつごとに強さをまして、ワンフォーオールの力さえも飲み込もうとしていた。
エリ自身も必死に抑えようとはしているがべた踏み状態だ。
(早く決着を着けないと…僕どころかエリちゃんも危ない…!)
緑谷は気合いを入れ直して宙を蹴って治崎を追う。
一方で緑谷の一撃で宙を舞っている治崎。
(俺の考えが成功すれば八斎會は必ず…)
治崎の頭にはこれまでの記憶が流れていた。
実際、治崎に着いてきたのは数人だ。
八斎會の組長は治崎の理想に見え隠れする闇の深さにストップをかけていた。
だが、治崎は止まらなかった。
「…どいつもこいつも!大局を見ようとしない!!」
下からやってくる緑谷を視野に入れた治崎は声を荒げる。
そんな時、横からこの戦いのなかで何度も聞いた気の抜けた、だがなぜか力強さを感じさせる声が鼓膜を揺らした。
「そりゃ違ェな。見ようとしてねェのは、目を背けてんのはおめェだ。治崎」
「白夜叉…俺が崩すのはこの世界!!その構造そのものだ!!」
「馬鹿言っちゃいけねェよ。個性なんかなくたって俺達人間はそう簡単に変わりゃしねェ。金や権力の為に平気で殺しをするクズがいりゃ、困ってるヤツがいたら損得なしで平気で手を差し伸べちまうバカだっていやがる。おめェのちっぽけな力でどうこうできるほど人間は落ちぶれちゃいねェよ」
「…っ!白夜叉ァ!」
治崎は一瞬銀時に気圧されたように顔を歪めたが、負けじと個性を発動する。
全身に纏っていた物を分解して修復し全てを両腕に纏わせて全力で殴りかかった。
「俺の邪魔をするな!!」
「ふッ…っラァッ!」
その大きな力を持った、だが悪足掻きのような攻撃は銀時の刀に斬られ肘から先が切り離される。
痛がる素振りも見せず、切り離された腕をすぐさま修復し始める治崎。
だが…
「緑谷ァ!!」
銀時が叫ぶと、銀時の横を抜けて緑谷が治崎に肉薄し修復を始めようとしていた体に連打を浴びせる。
全てが100%の超連打。
「目の前の…小さな女の子1人救えないで!皆を救けるヒーローになれるかよ!!!」
「なっ…ん、だ…!」
修復は間に合うはずもなく、治崎の纏っていた物は弾け飛び生身の上半身がさらされた。
「上出来だ。とどめ行くぜ、緑谷」
「はい!先生!」
なす術もなく空中をさまよう治崎に向かう2人。
銀時は木刀に持ち変えて構え、緑谷は拳を握り腕を振りかぶった。
戦場では、戦ってきた全員が…1人の少女を護るべく立ち上がった全員が2人のヒーローを見上げている。
「これでッ!!」
「終ェだ、治崎」
銀時と緑谷は全身全霊の一撃を見舞った。
「はああああああ!!!!」
「せェェッラァ!!!!」
2人の一撃により、治崎は勢いよく地面に激突し大きなクレーターを作る。
治崎が意識を失って倒れ込んだことで、今ここに決着が着いた。
治崎廻の計画の全てが闇に消えた瞬間だった。
・
銀時達を見上げるナイトアイは希望と言う光に魅せられていた。
「未来は変わらないと…いや、違うな…未来は変えられないと思っていた」
ナイトアイは、確かに緑谷が殺され治崎が逃亡を成功させるところまで視えた。
最悪の未来だった。
だが、どうだろうか…今まさに自分が目にしている光景は。
「これは奇跡ではない…銀時が、緑谷が、ミリオが…繋ぎ、手繰り寄せた必然…か」
ナイトアイは眩しそうに空に手をかざしながら言った。
「信じて良かった…私にも見えたよ、銀時。明るい未来が」
・
地上に降り立った緑谷はすぐさまエリに声をかけた。
銀時は着地した途端にどこかへ走っていったらしく、この場にはいない。
「エリちゃん…怪我はない?ごめんよ。僕が至らないばかりに…」
緑谷はフルカウルの出力を100%で維持した状態だったが、次の瞬間、明らかにエリの個性が勢いを増し始めた。
「がっ…!?」
(勢いがっ…このままじゃ呑まれる…!)
考える猶予もなく、エリの個性が体を蝕んでゆく。
エリ自身も意識はあるが体から溢れてくる力を制御できないようだ。
(嫌!止まって!おにいちゃんが!死んじゃう!)
エリの意思とは反対にさらに勢いを増してゆく。
緑谷出久と言う人間が内側から真っ白に塗りつぶされてゆく感覚。
緑谷とエリが必死で抗っていると、聞き慣れた声が耳に届いた。
「本日最後の仕事だ、消太。生徒の事は俺達がちゃんと見とかねェとな」
どこかに行っていたと思っていた銀時が、いまだにクロノの個性で普段通りに動けないイレイザーをおぶって連れてきた。
(ああ。俺達が見ておく)
イレイザーが個性を発動すると、制御の効かなくなっていたエリの体から力が抜け、やがて緑谷を侵していた脅威が去っていった。
「はぁっ…はぁっ…はぁっ…!」
これでやっと全てが終わった。
敵との戦闘で大怪我を負った者も多かったが、学生組は良い経験になったことだろう。
「ふぅ~。今回はちと疲れ…た?んんっ?」
おぶっていたイレイザーを降ろして一息着いた銀時だったが、ふと違和感に気づいた。
「おいおい!嘘だろォ!?嘘だと言ってくれ…!」
銀時は焦ったように騒ぎだし、顔やら体を触っている。
全員が新手の敵かと、辺りを警戒した次の瞬間、銀時の叫びが響き渡った。
「も、元に戻ってやがるッ…!俺のピチピチ10代ボディ…カムバァァァァァック!!!」
まさかの発言に全員がため息を吐いたり、顔をひきつらせてアホを見ていた。
本当にどうでもいいが、どうやらエリの個性の余波を受けたのか若返る前に戻ってしまったらしい。
なんともまぁ締まらない幕引きだった。
死穢八斎會編終わりましたね!
ヒーロー側が過剰戦力だった事もあってほぼ苦戦する場面がなかったし最後があっさりしすぎだったかな…?
まぁ、まだまだヒロアカが続く限りは書いていこうと思いますので読んでいただけると嬉しいです!
それと何か、このキャラの口調がおかしいんじゃない?
とか、ここをもっとこうした方がいいんじゃない?
的なことも大歓迎ですので是非お願いします!
感想、評価等もお待ちしてます!