治崎を退けた後、ヒーローと警察達は怪我人の回収や被害の確認に追われている。
地上では、一際大きな怪我を負ったナイトアイがベットに寝かされ運ばれていた。
それを少し遠目に銀時とミリオとエリを抱えた緑谷が見守っている。
すると、
「銀時、ミリオ、緑谷…」
「サー!」
「ナイトアイ!」
ナイトアイが僅かな力を振り絞って話しかけてきた。
どうしても伝えたいことがあるようだ。
「私は…1度として、私の予知を疑ったことはなかった。オールマイトとの一件で変えられるはずがないと、諦めていたんだ。…だが、未来を変えんとするお前達を見て私は、明るい未来を願った…いや、無意識に願っていたよ。お前達は、未来を捻じ曲げたんだ」
そして、確かに光を宿した目で銀時達を見つめながら言った。
「私に明日を信じる力をくれて、ありがとう」
「未来さん…」
「銀時…今の私は、オールマイトに顔向けできるだろうか」
「んなモンできるに決まってんだろ。なんなら引きずってでも連れてきてやらァ。だからよ…絶対に生きて戻ってこい」
「ああ」
その言葉を最後にナイトアイはゆっくりと目を閉じて運ばれていった。
・
ナイトアイを見送った銀時は、地上をリューキュウ達、プロのヒーローと警察に任せて地下に降りている。
雄英の生徒の中で、切島だけがまだ地上に出てきていないようで安否確認に向かったのだ。
「お~い!泡女~!」
地下を歩いていると、怪我人や地上に戻っていない人の捜索をしているバブルガールを見つけて声をかけた。
先程まで死闘をしていたとは思えないこの緊張感の無さはさすが銀時と言ったところだろう。
「さ、坂田さん!?ちょっ、ちょっと!大声でその名前で呼ぶのやめてくださいよ!」
慌てて銀時に呼び方をやめさせるように言ったバブルガールだったが、ここでまさかの問題発言が飛び出した。
「あー、悪ィ悪ィ。バ○ブガールだったか?」
「な、な、な、何言ってるんですかぁ!!?セクハラですよ!ぶっ飛ばしますよ!?」
この世の終わりのような顔をしたバブルガールは速攻で回りに聞いていた人がいないかを確認してから銀時に詰め寄る。
だが、銀時は全く悪びれる様子もなく続けた。
「はぁ?セクハラはお前の名前と頭ん中だろォが。ほんッとにいやらしい」
「あ、あなたねぇ…!」
「んん?なにィ?やるの?別にいいけど、俺が勝ったらまたあの拷問器具みてェなのにくくりつけちゃうよォ?」
「くうっ…!こんな悪魔みたいな人がヒーローだなんて…しかも恐ろしく強いし…って、そう言えばこんなところで何してるんですか?」
悔しそうに握りしめた拳をおろしながらバブルガールは銀時に問いかけた。
一応、この男も生徒の安否確認で来ているのだ。
銀時は思い出したようにして切島の名前を出す。
「あー、そーいや…切島見てねェか?」
「切島くん…ですか?えっと…」
「あれだよ、ファットんとこに行ってた赤い髪の雄英生」
「あー!あの熱血くんですか!それなら…」
やっとのことで本題に入り、バブルガールから場所を聞いた銀時はゆっくり歩き出した。
・
バブルガールと別れたあと、言われた通りの方向に少し歩くと全身ボロボロの男が数人の警察と話しているのを見つけた。
「ん?あんなんいたか?」
銀時は考える素振りをしながら歩いていくと、ボロボロの男がこちらに気づいて声をかけてきた。
「おー!銀!無事に終わったみたいやな!」
「あん?馴れ馴れしいヤツだなァ。誰だあんた」
銀時は気づいていないが、話しかけてきたのは個性の副作用?により一時的に脂肪が取れたファットガムだ。
めんどくさそうな顔で返す銀時に、ファットは自分のお腹を軽く叩きながら言う。
「せやせや!銀はコッチを見んのは初めてやんな!俺や!みんな大好きファットさんや!」
「はぁ?いやいやいや、俺の知ってるファットはもっとこう…暇な小学生が夏休みに全力で作った無駄にピカピカしてる泥団子くれェまるっとしてんぞ」
失礼な物言いだが、さすがはファットで普通に話しに乗ってきた。
「あー、あれなぁ。休み明けに誰が1番丸くて光ってるかの品評会しよんねんな」
「そーそー。んで、ヒビでも入った日にゃキチガイの如く暴れだすんだよなァ」
「分かる分かる!テレビゲームやり過ぎた子供が親に強制的に電源切られた時くらい怒りよんねん!」
こんな中身のない話で盛り上がること10分。
ようやく…
「そーいや銀は何しに降りてきたん?」
「おっと、忘れるとこだったぜ。切島知らねェか?確か一緒だったよな?」
「切島くんならあっちの部屋で寝とる」
どうやら、切島は少なからず怪我を負ってしまったようでベットに寝かされているらしい。
「寝てるだァ?」
「そや。ちと、厄介な敵さんと遭遇してもうてな。守るつもりが守られてもうたわ」
ファットは戦闘の時のことを思い出して、悔しそうに、でもどこか嬉しそうに言った。
「…そォか」
「まあ、切島くんのとこ行ったってや」
「あぁ、悪ィな。行ってくるわ」
こうして、銀時はファットと別れて切島のいる部屋へと向かった。
部屋に入ると起きていたようで、銀時に気づいて話しかけてきた。
「先生…」
「よぉ。随分と派手にやったみてェじゃねーか」
「はは…やったと言うよりはやられたっスね。多分、先生との特訓がなかったらただの役立たずでした」
切島は手を軽く握りながら、力なく言う。
意外にも気持ちが沈むとネガティブになってしまうことが多いようだ。
そんな切島に銀時はファットが先程言っていたことを遠回しに伝える。
「そォかい。んじゃ、そんなお前に朗報だ。どっかの誰かさんが言ってたぜ。『守るつもりが守られた』ってよ」
その一言で誰の言葉かに気がついたのだろう。
切島は弾けるように体を起こし、強く拳を握りしめて言った。
「っ!!!………先生!俺、もっと強くなりてぇ!誰からも!何からも守れる漢になりてぇ!」
「…ふっ。仕方ねェ、道は示してやらァ」
銀時は仕方なくといった雰囲気を出しているがどこか嬉しそうだ。
今にも走り出しそうな切島に待ったをかけて銀時は目を瞑るように促した。
「っス!まずはなにから…」
「まァ待て。まずは…ちと落ち着け。んで目ェ瞑れ」
「は、はい!」
「いいか?お前がこれからヒーローとして、走って走って走って…そんで振り返った時に、お前に守られたヤツが、ありがとうって言ってくれるヤツが、誰よりも多いって考えたらどォよ?」
強くなるためには、まず強くなるための明確なビジョンが必要だ。
切島は言われた通りに考えを巡らせる。
(誰…よりも。坂田先生よりも…オールマイトよりもっ…!)
その瞬間、様々な感覚やら感情が全身に走り体が震えた。
目を開けた切島は興奮したように言う。
「………っか、考えただけで震えるっスね!!!なんか、目標ってかビジョン?とにかくそんな感じのが少し見えた気がします!」
「んなら、その感覚を忘れんなよ。お前らにゃオールマイトっつー正真正銘の化け物が遥か先に立ってンだかんな。下向いてる暇ねェぞ」
「押忍!」
轟、爆豪に続いて切島。
銀時は教師として、1人の漢として切島の背中を押した。
やはり、この男は教師に向いているのかも知れない。
こうして、今回の死穢八斎會との争いは無事に幕を閉じたのであった。
銀時の問題発言は穴埋めってことで皆さんに解釈を任せます!笑
まぁ、地上波だったら確実にピー音が入るとだけ言っておきます!
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