あの惨劇から五日ほど経った頃のことだ。
俺はカルデアという歴史を保護する施設の通路で倒れていたところを親切な女の子、マシュ・キリエライトに助けてられた。
ただ、あの時は言えなかったけど。今ならハッキリと言えることがある。それは暖房機の影響でマシュの服が透けて、うっすらと「親しみやすい後輩」というクソダサいシャツを着ていたことだ。
女の子の趣味へ口出しするのは男としてダメだと思いながらも「それ、ダサくね?」と言いそうになった。それでもなんとか堪えて特異点からカルデアへ帰ってきた。
マシュのお母さんは「強さは愛だ」というシャツを着てるし、ロマンやレフさんなんて諦めたような表情を浮かべている。俺の感性は間違っていないと安心したけど、俺達が二人の感性を正しくしないとダメな気がする。
まあ、うん、ダ・ヴィンチちゃんは魔術礼装っていうアイテムを無料で提供してくれるけど。なんだか使うことを躊躇うほどテレビで見たことのあるモノを渡してくる。
とりあえず、今日はカルデアへ来てから貰ったモノの中で一番の危なそうなアイテムを並べよう。マシュの魔術礼装はお母さんが作っているそうだ。
「マシュ、昨日まで俺の専用装備って『G3-X』じゃなかったっけ?」
「お母さん曰く『藤丸の身体機能と合致していない装備は彼を危険にさらす可能性がある』とのことです。それに、ダ・ヴィンチちゃんが新型装備の製作を行っているので問題はないかと…」
そのダ・ヴィンチちゃんの作ろうとする装備の半分は俺の身体を改造するために作られてたんだよね。いや、そんなことをマシュには言えない。
「先輩、脳を休めるためにエミヤ食堂でスイーツを食べましょう」
「そうだね、そうしようか」
俺は難しいことを考えるのは苦手だけど。
それでもダ・ヴィンチちゃんの作った魔術礼装を着ようとする度胸のある人はカルデアには一人もいないそうだ。
カルデア居住区画と隣接している作業区画の中央部にて営業しているエミヤ食堂は俺を含めてカルデア所属の人には至福の一時を与えてくれる場所だ。
最初は英雄なのに料理することが出来るのかと見物しに来ていた人なんて心躍るお子さまランチを食べている。
ちょっとした好奇心で「大人なのにお子さまランチを食べても良いのか」とスタッフの人に聞いたら「大人だって旗付きオムライスは食べたいんだよおぉぉ…!」等と泣かれてしまった。
大人は大変なんだなと思いながらマシュの授業は真面目に受けようと思うことにした。一応、俺も強化魔術と治癒魔術の二つは覚えることは出来た。
それにマシュは俺の知らないことを教えてくれるし、マシュの授業は今後の特異点の修復に役立つことばかりだ。
「先輩、それは何ですか?」
「えっ、マヨネーズだけど。マシュも使いたいなら新しいのをあげるよ?」
「い、いえ、私は結構です…」
「そっか、マヨネーズは美味しいんだけどな…」
俺は赤色のキャップを捻って外し、テーブルの上に置かれたチョコレートパフェの上にマヨネーズを溢れるほど盛り付ける。
うん、まろやかな甘味へ酸味というアクセントが加わって更に美味しくなってるよ。なぜかマシュのパフェを掬っていた手は止まり、口元を押さえながらエミヤの方を見ている。
「パフェ、美味しいよ!」
「そうか、マヨネーズで溺死してしまえ」
「えっ、なんで!?」
なんで、エミヤは怒ってるのかな?
それにしてもエミヤは俺のことをよく見てるな。ホントにビックリしたよ、まさか俺の夢であるマヨネーズの楽園へ行ってマヨネーズのプールで泳ぐことを知ってるなんてさ。
よし、あとでエミヤにもマヨネーズ王国の王様の話を聞かせてあげよう。きっとエミヤは俺の話を喜んで聞いてくれるはずだ。