その夜、剣君が寝てからフィアが、
「の、のぅ、ティナ」
と躊躇いがちに話しかけてきたから、
「どうしたの?」
と聞き返した。フィアはなにか決心したようにこっちをまっすぐ見て、
「優斗への気持ちはどうするつもりなのじゃ?」
と言ってきた。
「へ?……え、ちょ、な、なんでそんなこと聞くの!?」
「いや、優斗は恐らくこのまま精霊王になるじゃろ。その前にその、こ、告白しないのか?」
「…できればしたいよ。もし、告白してOK貰えたとして、もうほとんど一緒に居られる時間が無いんだよ!?フィアは嫌じゃ無いの!?」
「それもそうじゃが、言わんと後悔する方がもっと嫌なのじゃ」
そこで会話が途切れて静寂が訪れた。しばらくしてフィアが、
「…ユークリウッドに帰ってから順番に優斗と二人きりで出かけるようにせんか?その時に告白するかどうか決めんか?2人だけで優斗との思い出作りたいじゃろ?」
と、提案してきた。
「…わかった。でも、フィアが言い出しっぺなんだからフィアが先だよ?」
「う、うむ、わかったのじゃ。それじゃ、寝るとするかの。おやすみ、ティナ」
「うん。おやすみ、フィア。」
そして、私たちはそれぞれの部屋に戻って眠りについた。
それから数日して、ユークリウッドに着いた。なんだかフィアとティナの様子がおかしかったが気にするなと言われたので気にしないようにしていた。
そして翌日の昼、俺が家でゆっくりしていると、
「優斗、居るか!」
といきなりフィアが入ってきた。そして、居間にいる俺を見つけると腕をつかんで、
「一緒に行きたいところがあるから、ついてこい!」
と言って立たせて連れて行こうとするから、
「ちょ、ちょっと待て、フィア!2分、2分だけ準備するのに時間くれ!」
「そ、それもそうじゃな。外で待っとるからの」
そう言って外に出て行った。俺はすぐに準備をして家を出ると、
「お、来たか優斗!それじゃ、行くぞ!」
「あ、ちょい待て!」
俺が家から出てくるとすぐにフィアが歩き出したので、ついて行くしかできなかった。
数分後、近くの山の麓に来ていた。
「さて、日が暮れるまでには登り切るぞ!」
「マジかよ…まぁ、いいか。ところで、フィアは俺をどこに連れて行きたいんだ?」
「登り切るまでのお楽しみじゃ。ほら、行くぞ!」
「わかったよ」
結局目的を教えてくれないまま山登りが始まった。
そして数時間後、日暮れの少し前に頂上に着いた。
「スゲー、眺めだな!連れてきたかったのってここなのか?」
「いや、もう少し先じゃ」
「そうなのか?」
「うむ。こっちじゃ」
そう言って俺の手を引いて茂みへと入って行く。
「今から行くところは、ワシの好きな人と一緒に行きたいと思ってたところなんじゃ」
「…は?それって」
そこまで言うと、視界が一気に開け、辺り一面の金木犀が目に飛び込んできた。
「す、スゲー…てか、さっきのって」
「ワシは優斗のことが好きじゃ」
フィアは俺の前に出て、頬を赤くしながらそう告げてきた。
「お、俺は」
「へ、返事はまだよい!できれば早めが良いが、選定の日までにして欲しい。ただの、もう1人告白するかもしれん。…それを踏まえたうえで返事が欲しいのじゃ」
「わ、わかった、考えとくよ。ここに連れてきてくれてありがとうな、フィア」
「う、うむ。どういたしましてなのじゃ」
それからしばらく横に並んでその景色を眺めてから山を下りた。フィアを家に送って自分の家に帰った。その夜、
「まさか、フィアが俺のこと好きだったなんてな…もう1人ってティナじゃ…まぁ、そんな訳ねぇよな」
と呟いてそのまま眠りに落ちた。
そして翌日の昼、俺が昨日みたいに家でゆっくりしていると、コンコンとドアがノックされた。
「はいはい、誰ですか~、ってティナじゃねえか、どうしたんだ。」
「こ、こんにちは剣君。い、一緒に行きたいところがあるんだけど、時間…大丈夫?」
「いいぞ。それじゃ、準備するからちょっと待っててくれ」
「うん!」
俺はデジャビュを感じながらも家の中に戻って準備をして外に出てから、
「いったいどこに行くつもりなんだ?」
と訊くと、
「そ、それは行ってからのお楽しみね。ほら、行こ?」
と言って俺の腕を引っ張って歩き出したので、
「ちょ、自分で歩くから引っ張るな!」
と行ってついて行くしか無かった。
それから十数分後、俺たちは花畑に来ていた。
「ん?ここって…」
「そうだよ、私が初めて剣君に会った場所。覚えてる?」
「あぁ。俺が丁度こっちに来た時だったな。あのときは本当に助かった」
「どういたしまして」
「「……」」
それから2人の間に沈黙が訪れた。ティナは少しもじもじしていたが、やがてなにか決心したように口を開いた。
「ね、ねぇ、昨日フィアに告白された?」
「!?い、いきなりなんだよ!」
「豊穣祭からの帰りにね、フィアと話したんだ。順番に優斗と出かけようって、その時に告白するかどうかはその時に決めるって」
「そうだったのか」
「うん」
「…」
「わ、私ね、初めは告白しようとか全く考えてなかったの。どうしたって時間がほとんど無いから。でも、でもね、フィアに言われて気付いたの。言わないままじゃ嫌だって。だから言うね。私も剣君が好きです!」
と俺をまっすぐに見つめて伝えてきた。そして、
「へ、返事は今日じゃ無くて良いけど、できるだけ早くして欲しいな」
「………明日の昼、伝えたいことがあるからフィアの家に集まってくれねぇか?」
「それって…」
「頼む」
「…わかった」
「それじゃ、遅くなってもあれだし、帰るか?」
「う、うん」
俺たちはそうして花畑を後にした。ティナを家に送って俺も自分の家に帰った。
そして翌日、俺はフィアの家の前に居た。
「スーハー……・よし!」
深呼吸をしてからドアをノックして、
「入るぞ、フィア、ティナ」
「「ど、どうぞ(なのじゃ)」」
中に入って居間へ向かった。そこには緊張した面持ちの2人が待っていた。フィアは、
「は、話とはなんじゃ?」
と恐る恐る訊いてきた。俺は、
「2人の告白への返事だよ」
とビクッと体を震わせて目を閉じてしまった。
「俺には2人のどっちかって選べねぇわ。2人の気持ち、スゲー嬉しかったし、俺も2人が思ってくれてるのと同じくらい2人のことが好きだから!」
と告げると、2人は目を開けてきょとんとすると、
「「アハハハ!!」」
と笑い出した。俺は急に恥ずかしくなってきて、
「な、何笑ってんだよ!?」
と少し強めに言ってしまった。
「だ、だって、剣君らしいんだもん」
「そ、その通りじゃな。どっちかを選べんのなら、どっちも選べば良いんじゃよ、優斗」
と、少し笑いながら言ってきた。
「いやいや、そんなことして良いのか?」
「確か、本人さえ良ければ良いよね?」
「うむ!」
「と言うことだけど、剣君はどうなの?」
と、ふたりが期待の籠もった目で見てきた。俺は、
「それじゃ、フィア、ティナ、俺と付き合ってください!」
「「はい!」」
そうして俺は2人と付き合うことになった。それから選定の日まで3人で一緒に楽しく過ごした。
日常(?)回と言ってたのはこのためです。ほら、一応恋愛小説の体で描いてるわけだし、恋愛要素入れないとなと、いうわけでして。
次回最終回です。果たして優斗は精霊王になってしまうのでしょうか?それとも——
次回をお楽しみに!では!