早速どうぞ!
今日も図書室を閉める時間になりました。私と谷村くんは閉館の準備をして、お互いの荷物を片付けて廊下に出ました。いつもならそこで解散しているのですが、
「さっきの話なんだけど」
と当番中の話を切り出されました。
「はい」
「流石に学校で話して誰かに聞かれたら困るだろうし、時間が大丈夫ならどこかに寄っていかない?」
「はい。お気遣いありがとうございます」
「それじゃ、行こうか」
そう言って歩いていく彼の後をついて行きました。
学校を出て数分、ある喫茶店に入りました。
「いらっしゃ——おや、葵くんじゃないか。今日はシフトじゃないはずだけど」
「こんにちは。今日はお客としてきたんだ。奥のテーブル使ってもいい?」
「うん、いいよ。注文が決まったら呼びなさい」
「ありがとうございます。さ、桜さんこっち」
「は、はい」
どうやら、谷村くんが働いている喫茶店みたいです。同じテーブルに向かい合って座ると、
「とりあえず、何か頼もうか。これ、メニュー」
「ありがとうございます……では、レモンティーにします」
「わかった。伝えてくるからゆっくりしてて」
そう言って彼は席を立つと、カウンターの方に向かい何かを話し始めました。その様子を見て、一息つくと、
(まさか、こんな身近に「桜花」のことを知ってくれている人がいるとは思いませんでした。まさか、声でバレてしまうとは……。ちゃんとボイスチェンジャーを使うべきだったでしょうか……)
私が「桜花」として活動を始めたのは、ほんの1週間前のことです。私が所属している事務所から、
『顔出しできないのに声が綺麗なんだし勿体無いわね。いい機会だし、ネットアイドルとしてデビューしてみない?』
と言われたのがきっかけでした。面白そうだと思い二つ返事で受けた所、すぐにレコーディングが行われ、できたものがその日のうちに動画投稿サイトにアップされました。その日、ネットアイドル「桜花」が誕生したのです。
『歌声が綺麗』
『ボイチェン使ってないんだって』
『素顔一切公開してないらしい謎のアイドル』
と言ったコメントが反響を呼びたった1週間で人気がとても上がったみたいです。
「お待たせ。はい、レモンティー」
と「桜花」になった日を思い返している間に、彼が戻ってきて私の前にレモンティーを自分の前にコーヒー、そして私たちの間にクッキーが置かれました。
「あの、このクッキーは頼んでないのですが……」
「ちょっとお腹すいちゃって…。桜さんも食べてね」
「はぁ。ありがとうございます」
谷村くんが椅子に座ると、
「それじゃ、本題に入るよ」
「それじゃ、本題に入るよ」
と言うと、桜さんは体をビクッとさせました。
「桜さんって、ネットアイドルの『桜花』なんだよね?」
「……どうしてそう思ったのですか?」
「どうしてって、声が一緒だったから」
「それだけですか?」
「うん。(本当は別の理由もあるんだけど……まぁ、とりあえずいいかな)」
「……」
「……」
「……えっと、それだけですか?」
とビックリした顔でじっと見てくる。
「え?あー、うん。確認したかっただけ。誰にも言わないし、そこは安心して」
「は、はぁ……」
「もしかして、秘密にしてる代わりに何か要求してくると思ってた?」
「はい。お約束なのかなと。それで、何もないんですか?」
「んー……、うん。それじゃ、来週の金曜、図書委員当番が終わってからちょっと付き合ってもらおうかな」
スマホの予定欄を見て”顔合わせ“と書かれている日を見て、そう言った。
「来週の金曜ですか……。すみませんその日は用事が——」
「その辺はなんとかなると思う。というか、多分同じだろうから」
「え?それってどういう——」
「いいから。それじゃ、来週の金曜図書委員当番の後ね。ちょっとこの後用事あるから、先に帰るね。ゆっくりしていいから」
「あ、お会計は」
「急に言ったんだし、払っとくよ。それじゃぁ」
そう言って伝票を持って立つと、そのまま会計をして店を出る。そして歩きながらスマホを出して、ある番号にかける。
Prrrr……
「どうも、ご無沙汰してます、葵です」
『こんな時間に電話って珍しいわね。どうしたの?』
「来週の金曜なんですけど、彼女と一緒に行きますから」
『あら、気づいたの。わかったわ。要件はそれだけ?』
「あ、最後に。新しいのその時に持って行きます」
『わかったわ。それじゃ』
「えぇ、では」
そうして電話を切ると、
「さて、頑張らないと」
そう呟いて家へと帰った。
さて、最後葵くんが電話していたのは誰なのでしょう……。なんか聞いた頃のある口調だったような……。
次回判明します!
では、また!