「なんでバレーの道へ?」
「えっと…バレーの漫画が大好きで、それに触発されて…」
全日本のメンバーの一人が、インタビューを受けていた。
恥ずかしそうにしながら、彼はそう言う。
「漫画ですか?その漫画は一体?」
「それは___」
「デケー…エアーサロンパスの匂い…!」
「翔ちゃん緊張しすぎじゃない?」
「お上りさんかよ…」
「しゃーないだろ。これが初めて何だから」
黄緑のユニホームを着た四人が、体育館の入り口で喋っていた。
小柄なオレンジ髪の少年は日向翔陽。
雪ヶ丘中学のバレー部キャプテンだ。
また一年生が入部するまでバレー同好会を
最後に発言したのは日山当夜。
部員の一人で、日向と同じ同好会を支えた一人だ。
「三年目にしてやっと…!」
「よく出場にこぎつけたよな…」
体育館には熱気が広がり、他のチームがアップを取っていた。
それに触発されてか、日向の気持ちも高揚していた。
当夜も感慨深そうに周りを見ている。
「イズミンもコージも助っ人に来てくれてありがと!」
「や、やめろよ」
「俺達は一足先に大会がおわったからね…」
「一年達も入ってくれてありがとう!三人も入ってくれたなんて奇跡だよぉ~」
「ま、まだ素人同然ですけど…」
「泣くなよショーヨー」
「泣いてない!」
「超涙目だぞ」
そんな話をしていると、面白そうに見ていた日山が、パンパンと手を叩く。
その音に騒いでいた雪ヶ丘チームは、日山に注目する。
「そろそろアップすんぞ。ほら翔陽、指示しろ」
「そうだね。ほらキャプテン」
「そうだぞショーヨー。俺達引っ張られて来てロクにルールも分かってねぇんだから」
「分かってるよ!やっと出られた試合なんだ!勝ちにいくぞ!」
その言葉に、日山は嬉しそうに笑った。
泉と関向は驚き顔を浮かべる。
それもそのはずで、この二人は他の部活からの助っ人であり、一年も素人に毛が生えた程度の即席チームなのだ。
「この即席チームで勝つつもり?」
「あたりまえだろ!」
「相手の北川第一ってどうなの?」
「んー分かんない」
「お前…少しは調べてこいよ。北川第一は___」
「うわっ!?す、スミマセン!」
日山が日向に呆れながら、北川第一の事を説明しようとしたところで、入り口に立っていた為か、日向が誰かにぶつかった。
背の高い男に日向がビビると、日山が回収する。
その横を通り抜ける一人の選手に、日向は赤いマントを幻視した。
「噂をすればなんとやら。あれが北川第一だ」
日山がそう言えば、頭上から声援が響く。
何だ!?と日向達が上を見ると、そこには北川第一の垂れ幕が下がり、数十人が声を張り上げていた。
「北川第一だ」
「スッゲー」
「威圧感ハンパネー」
「優勝候補だろ?」
「王様が居んだろ?」
「何それ?」
「知らねーの?影山飛雄。コート上の王様って言われてるスゲーセッターが居るんだって」
周りからはそんな話が聞こえる。
それに泉と関向の顔はみるみる青くなる。
「あいつらが相手!?王様ってなんだよ!?」
「大丈夫だって!相手がどんなノッポだって撃ち抜いてみせる!」
「確かに翔ちゃんのジャンプスゴいし、当夜も上手いもんな!」
「おう!」
そう宣言しながらも、日向の顔には小さな不安が浮かんでいた。
それを察した日山は、日向に声をかける。
「翔陽、試合前にトイレ行こーぜ」
「ん?大丈___」
「お前ら、アップの準備しといてくれよ」
そう早口で言った日山は、日向を引き摺りながらトイレへ向かう。
日向はタジタジになりながら、日山へ声をかける。
「どうしたんだよ当夜」
「いんや?お前が不安がってるから渇を入れようと思って」
「ヴッ!」
物凄い顔と声を上げた日向。
幼稚園からの付き合いである日山は、それを機敏に感じ取った。
「相手は優勝候補。不安になるのも当たり前だ。けどそれで太刀打ち出来る訳がねぇ。少し肩の力を抜いて、不安を他の奴等に感じさせるなよ?キャプテン」
「…おう!」
日向が吹っ切れたのを感じ取った日山は、もう大丈夫だと安心した。
「なぁ雪ヶ丘中って聞いたことねぇんだけど」
「てか人数少なく無かった?リベロも居ねぇの」
「ほぼ小学生じゃん。試合になんねぇっしょ」
「おいお前ら」
雪ヶ丘をディスっていた三人は、後ろからの声に肩を跳ね上げる。
振り向けば、日向と日山が立っていた。
「ずいぶん言ってくれるじゃねーの」
「絶対痛い目みしてやる」
日山の睨みと、日向の威圧感に気圧される三人組。
そこへ、鋭い声が響いた。
「おい、ウォームアップ始まるぞ。早くしろ」
影山飛雄がそこに居た。
「影山…飛雄」
日向が仇を見るような目で見据える。
それを意にも掛けない様に、影山は振り返り、コートへ歩き出した。
「コート上の王様か…」
「絶対に勝つ!」
日山がそう呟き、日向が叫ぶ。
「翔ちゃん、当夜。ウォームアップ始まるよ」
泉の言葉に、二人は歩き出した。
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ボールが飛び交う。
日向は影山に注目していた。
キレイな弧を描いてスパイカーへ届くトスを、眩しそうに眺めていた。
「あいつセッターだったんだ…」
「コート上の王様って言われてた影山飛雄ってあいつだよな?」
アップは進み、北川はクイックの練習に入った。
すると、鋭いトスにより、スパイカーが撃ち抜けない状況に成っていた。
日向は不思議そうに首を傾げ、日山は可哀想なモノを見る目をしていた。
「タイミングおせーよ!クイックはもっと早くだっつってんだろ!」
そう影山が叫んだ。
「うわ、感じ悪っ!暴君って感じ?」
「だから王様って言われてんじゃね?」
日向が嫌そうに呟き、関向がそう言う。
まさに〝王様〟を体現していた。
「暴君の最後は腹心によって暗殺される…か」
「どうした当夜」
「なんでもねぇよ。ほら挨拶だ。ならべならべ」
そう背中を押され、エンドラインへと整列する。
運動部特有の挨拶が響き、試合が始まった。
「よーしお前ら。作戦は覚えてるよな?」
「ああ、
「おう、作戦だ。上げろ。上げりゃあ
日山がそう言う。
その言葉に、日向は頷き、集中力を高める。
そして日山も、ポジションに着くために背を向ける。
その二人以外は、気圧された様に、面を喰らっていた。
「コエー…」
「はは、頼もしいなぁ…やっぱうちの部活に欲しかったわ」
「俺も」
そう軽口を叩きながら、他のメンバーもポジションへ着いた。
そして、北川第一のサーブを待つ。
「フゥ…」
日山は自分でテンションを下げていく。
冷静に、落ち着いて、前を見据える。
《以前》からの試合に向き合う日山の姿勢。
それに呼応されたように、日向の意識も深くなる。
それに影山が警戒心を持った。
「サーブ、一番と二番以外狙え」
「あ?お、おお」
影山からの指示は珍しくは無いが、開幕からこの手の指示は珍しく、金田一は面喰らった。
全員がポジションに着き、サーブ開始の笛が響く。
「コージー!」
「コージ!」
(俺かよ!?)
強烈なサーブが、関向へ向かう。
それに顔をしかめながらも、何とか上へ上げた。
それに即座に反応した日山が、ボールの下へ向かう。
それを見た日向は、助走距離を稼ぐ。
「ナイスコージー!」
「ナイスレシーブ!」
そう叫んで、日山はトスを上げた。
それと同時に、日向が助走に入る。
「翔陽!」
「おう!」
「クロス締めろ」
「ああ」
北川第一の前衛が、日向の前に立ちふさがる。
背の低い日向のスパイクは、止められると、普通はそう思うだろう。
実際、チームと影山を除く、観戦している全員がそう思った。
(そりゃあ普通は止められるわな)
日山はブロックフォローに回りながら、そう思った。
しかし、ニヤリと面白そうに笑うと、日向へ声をかける。
「
キュキュ!と脚を沈めた日向は、相手を見据えながら、脚を伸ばす。
___ドンッ!
そう聞こえた気がした。
力強いジャンプ、影山は地面が
___そしてボールが地面へ叩き付けられる。
一瞬の静寂。
___そして会場が沸く。
「なんだいまの!?」
「跳んだぁ!?」
「スゲェ!」
日向は翔んだのだ。
その高いジャンプ力によって、
「シャー!」
「ナイス翔陽」
「さすが翔ちゃん!」
「スゲェな日向!」
チームメイトが集まってくる。
「なんだ今の…」
「上からやられたぞ…」
金田一と国見が呆然としながら呟いた。
「…くそっ」
影山はただ悔しげに顔をしかめた。
(クク、今の翔陽は
そう考えながら、日山は楽しそうに笑い、試合に集中し直した。
「なんで当夜はバレーすんの?」
日向はそう問いかけた。
日山は垂れていた汗を拭い、ボールを拾いながら、問いに答えた。
「バレーが好きだからな」
「好き?なんで?」
「親がやってんのを見てたってのもあるけどやっぱり___」
顔を見た日向は、ゾクリと寒気を感じた。
その顔は、酷く
「楽しいからだよ」
そう笑った。
ヒロイン誰にする?
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オリヒロ
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清水清子
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田中冴子