「決めた■■!この快進撃は止まらないー!」
「凄いですねー。今のところアタックが100%で決まっています。さすが〝彗星〟■■」
とある体育館で、バレーの世界大会が行われて居た。
その中で五番の数字を背負った■■が居た。
「ナイスキー■■!」
「ウッス!」
二番のセッター■■とハイタッチを交わし、彼はポジションへ戻って行った。
「おし!この流れ続けんぞ!」
「おう!」
日向と日山がハイタッチを交わし、仲間に声をかける。
初撃が決まり、最初の殴り合いは雪ヶ丘が制した。
たったたった一度のプレーで場を支配した日向に、会場の視線が集まる。
「スゲー飛んだな…」
「んだあのバネ」
「上からってどうなってんだよ…」
それに日山は嬉しそうに笑う。
日向は興奮したようにニヤニヤしていた。
それを咎める様に、日山の声がかかる。
「翔陽、嬉しいのは分かるがけど、サーブだ。冷静にドカンとかませよ」
「おう!」
日山から投げられたボールをキャッチし、エンドラインへと向かう日向。
ローテが一つ回り、後衛だった日山が前衛へ回る。
そして影山に圧を掛けるように、じっと見つめた。
それに影山は顔をしかめる。
(チッ!んだこの…貫禄?ってのか?一番だけじゃねぇ、二番も相当厄介だ)
背後から感じる威圧感に気圧される影山。
しかし、彼の闘争心に火が付き、逆に圧を返すように睨む。
それに楽しそうに笑う日山。
そしてピー!と笛が鳴る。
(狙いは…あの間)
相手のコートを見て、お互いに見合いをしてしまうような位置を定め、そこに狙いを決める。
掌の上でボールを回転させ、ピタッと止める。
フー…と息を吐き、ボールを上へ投げた。
(な!?あれは___)
「なに!?」
影山が目を見開き、北川第一の監督が腰を上げる。
そして日向はアタックと同じように脚を沈めて…
___ドンッ!
翔ぶ。
緩やかな回転で、落ちて来たボールを叩く。
乾いた音が響いて、床に落ちた。
バッ!と旗が上がる。
「んにぃ!?ゴメーン!」
「ドンマイ翔陽」
「いやー入ったと思ったぜ」
日向が顔をしかめながら、頭を押さえる。
それに笑いながら日山が慰める。
関向が顔をひきつらせながら呟いた。
その声には尊敬や畏怖が感じられる。
「良かった…」
「なんだよあいつ。ジャンサーすんの?」
「おい!油断してんじゃねぇよ!気ぃ引き締めろ!」
北川第一のチームはホッとしていた。
威力もさることながら、コースが嫌らしかった。
通過した二人は苦い顔をする。
それに影山がイラつき、声を荒げた。
「おいおい、スゲーなあの一番」
「あのタッパであんなプレーすんのかよ」
観客席から見ていた、黒いジャージを羽織った四人がそう呟いた。
澤村が呆然としながら呟き、田中が驚いたように声を上げる。
「ジャンサーの威力スゲー。あんなチッサイのに」
「あれでブロックの上からって…」
菅原が感心したように言い、清水が珍しく驚愕の表情を浮かべた。
「さて相手のサーブだ。上げろ。繋げろ。それだけを考えろ」
日山の言葉に全員が頷いた。
ピー!と笛が鳴る。
オーバーハンドサーブは、日向のジャンサーよりは威力は無いが、初心者にとってはキツイ一撃だ。
泉が半分体当たりの様にぶつかり、何とか落とさなかったものの、繋げる事が出来ず、北川の点になってしまった。
「ごめん!」
「ドンマイドンマイ。避けるよりも断然良い。その調子で頼むぜ」
「イズミン!次一本だよ!」
そう励まし、腰を落として、日山と日向がサーバーを見つめる。
その圧にングッと気圧される。
笛がなり、先程と同じようにサーブする。
今度は一年の森に向かい、弾かれてボールがライト側へ乱れた。
「よし!」
「ナイッサー!」
「バカ野郎!まだだ!」
「は?あれから出来るわけ___」
「当夜ー!」
そう叫び、ボールに追い付いた日向が、バックトスでセットアップする。
キレイな弧を描くボールば、日山のレフト側へ向かった。
影山は
「とめるぞ!」
影山の気迫が籠った叫びに、二人の前衛はビクッ!となる。
そして、日山が助走に入った。
影山の背に、ゾクリと寒気が走る。
日山が飛ぶ。
大きく、弓なりに体を引き絞り、一気に解放する。
___轟音が響いた。
弾かれたボールは、二階の観客席まで吹っ飛ぶ。
吹っ飛ばされた影山は、座り込みながら、日山を見上げる。
静謐な瞳が影山を写し、ニヤリと笑う。
そして振り向き、右手を握りながら掲げた。
再び会場が沸く。
「スッゲースパイク!」
「吹っ飛んだぞ!?」
「なんだあのパワー!?」
「スッゲ!?あんなのが今まで無名だったの!?」
「雪ヶ丘って聞いたこと無かったしな。あんな奴らが居るのにか?」
「一番と二番三年ってパンフに乗ってるな」
田中が興奮を押さえずに叫び、澤村が顎に手を置きながら呟く。
清水から貰ったパンフを広げた菅原は、日向と日山を見つけて、不思議そうに呟いた。
「…他の四人が初心者みたいだから、今年になって人数が揃ったんじゃないの?」
「あり得るな」
清水の言葉に、澤村が同意する。
そんな事を話していても、コートから目が離れて居なかった。
「ナイスキー当夜!」
「翔陽も、ナイストス」
「スゲーな当夜!」
「当夜!流石だよ」
集まりながらハイタッチを交わす雪ヶ岡チーム。
日山は言葉を交わしながらも、次の事を考え続けて居た。
「大丈夫か影山」
「…あぁ、問題ない」
唇を噛み締めて居た影山は、吐き捨てるように言った。
(なんだ。なんなんだお前らは…どうして…そんなに…っ!)
日山を睨み付けていた影山は、答えのない問いを考え続ける。
すると日山と目が合った。
楽しそうに笑う日山に無性に怒りが沸いてきた影山は、手を握り絞めながら、ポジションへ戻った。
「うし、この調子で行くぞ」
「俺等に任せろー!」
日山が冷静にチームを宥め、日向が両手を掲げながら叫んだ。
サーブ権が雪ヶ岡になり、一年の鈴木がサーブする。
しかし、それはネットにかかり、点を取られてしまう。
「す、すみません!」
「ドンマイドンマイ。次つぎ!」
「大丈夫だよー!」
日山と日向が励まし、相手のサーブを待つ。
強烈なサーブが、日向へ向かった。
日向の左側に飛んできたボールの芯を捉え、腕で威力を殺し、フワリと上げる。
「泉!上げてくれ!」
「う、うん!」
泉がボールの下に向かい、慣れないオーバーハンドでトスを上げる。
ボコッと変な音が鳴るが、ドリブルは取られず、日山に向かって上がる。
「クロス締めろ」
「ああ」
影山がそう指示し、ストレート側を開けるようにブロックを展開する。
飛んだ日山が強烈なスパイクを放つが、流石は優勝候補筆頭。
多少乱れたが、上げた。
(おっも!?)
「金田一!」
国見が腕の痛みに顔をしかめるが、気合いで堪える。
そして素早くボールの下に着いた影山がそう叫んだ。
フワリと美しい弧を描いたボールは、金田一へ向かう。
跳んだ金田一は、日向の居ないクロスへ狙いを定める。
(っ!?)
(こっちには打たせねぇよ)
クロス側を締めた日山の圧に、打てば捕まると感じた金田一は、ストレートへ全力のスパイクを放つ。
日向はそれを上げるが、横へ乱れ、一年の二人が見合いをして落ちてしまった。
「ドンマイドンマイ。声がけしっかりな」
「乱れたゴメーン!」
必死に謝る一年を窘め、日山と日向が調子を整える。
それを澤村は恐ろしそうに見ていた。
(あのプレースキルに、チームを纏めるリーダーの資質。なんだあいつら。バケモノかよ)
それは北川第一の監督も同じだった。
(初心者だろうチームを要所で纏めて、それでいて最大限自由にやらせてる。なんだあの二人は。あれが今まで埋もれて居たのか?)
二人は、最大のインパクトを与え、表舞台へ立ち上がった。
「当夜ー。何時までバレーすんだよ」
「ん?倒れるまで」
「真顔でそんな事言わんで?」
小学校の体育館、あと少しで校門が閉まる時間になっても、ギリギリまで日山はバレーをしていた。
隣に居る日向は、未知を見る目をしていた。
「スゲーよな当夜は。俺そんなに、何かに打ち込めねぇと思うもん」
「んなわけあるかよ」
日向の言葉を、日山は即行で否定した。
驚いて日山を見た日向は、その顔を見て首を捻る。
なにか、父親の様な、兄の様な、優しい笑みを浮かべた日山が、そこに居た。
「お前は打ち込んだら、止まらねぇよ。お前は、進み続ける。俺は知ってる」
その言葉の意味が、日向は理解出来なかった。
ヒロイン誰にする?
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オリヒロ
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清水清子
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田中冴子