「■■!」
高校からの付き合いである■■が、■■へトスを上げる。
高校ではライバル同士であったが、お互いがお互いを認めていた。
そんな彼と同じチームになり、今は世界と戦っている。
「ブロック三枚!」
「ぶち抜け!」
■■が、叫ぶ。
その声には、大きな信頼が乗っていた。
そして、■■は信頼に答え、三枚のブロックを吹き飛ばした。
「ナイスキー■■!」
「お前も、ナイストス!」
ハイタッチを交わし、彼等は相手を見据えた。
しかし、どれだけ日向と日山が強かろうとも、バレーは六人でやる競技。
地力の差があるチームでは、点の差も開いていく。
24対19の北川第一のセットポイント。
むしろここまでの試合が、即席のチームで出来たことが可笑しいのだが、会場の空気は雪ヶ丘の応援へ向いていた。
「イケー一番!」
「二番決めろー!」
「ふー…」
「今まで通りだ。上げろ。繋げろ。それだけでいい」
日向が息を吐き、姿勢を低く構える。
その瞳には炎が宿っていた。
日山は努めて冷静に、そう伝える。
冷酷ささえ感じさせるが、それでもビリビリと圧が発されている。
「影山、サーブ」
「ああ」
ボールを受け取った影山は、ドリブルさせながら、前を見据える。
こちらを見据える日向と、背を向けながらも、横目でこちらを見つめる日山を視界に入れる。
獣の様な雰囲気の日向と、得体の知れない日山の圧は、ネットを挟んでも、直に伝わってくる。
(あぁ…なんだろうな。この不快感)
影山はこの試合で、ずっと居心地の悪さを感じていた。
まるで、自分を否定されてるような、拒絶されてるような感覚。
それも相まって、影山のイラつきは徐々に募っていた。
(ぶっ潰す)
相手コートを睨み付けた影山は、ボールを上へ投げる。
今日初めてのサーブに、日山以外の全員が動揺を顕にする。
しかし、日向は即座に頭を切り替え、影山のインパクトの瞬間、少しだけジャンプする。
力強いサーブが、放たれる。
サービスエースの手応えを感じた影山だが、一切の油断なく即座にポジションへ向かう。
ボールは泉の元へ向かった。
恐怖の表情を浮かべた泉の前へ、日向が割り込んだ。
腕で受け止め、体で衝撃を殺し、フワリと完璧なAパスを上げる。
そして既に、ボールの落下点には日山が居た。
緩やかな回転で向かってくるボールに笑みを浮かべながら、トスの構えをとる。
___日向が突っ込む。
(!?)
(クイック!?)
気迫を感じた前衛は、日向を止めるために、立ちはだかる。
そして日山がボールを触り…
床に落ちた。
「は!?」
「トスフェイント!?」
「ちっ!」
手首をクンッと曲げて、がら空きだった真ん中にボールを落とす。
予想していなかった事に、一瞬だけ全員の思考が止まる。
「ナイス当夜!」
「お前のお陰だよ。その調子で頼むぞ」
20点台に乗った雪ヶ丘は、歓声を上げながら、中心の二人に集まってくる。
そんな様子を、影山は不機嫌そうに睨んで居た。
「おい、次。きっかり取るぞ」
「ああ」
関向のサーブとなり、相手コートへ向かったボールは、北川第一のクイックによって返された。
日向が食いつこうとダイブするも、コートに突き刺さった。
「ゴメーン!」
「ドンマイドンマイ。俺もブロック出来んかったしな。しゃーない」
「1セット目落としちゃったな…」
「こっから取り戻すんだよ。下向くな」
チームを励ましながら、背中を押し、ベンチへ戻っていく。
「雪ヶ丘取られちゃったなぁ~」
「流石に二人だけじゃ厳しいか…」
どれだけ突き抜けた二人が居ようとも、チームの地力が違いすぎる。
バレーで、六人で強い方が強いのは、当然の摂理である。
「フゥ…切り替えろよ」
「分かってる。俺も当夜も、
日向の眼光が、日山を貫く。
それに気圧される事なく、日山は楽しそうに笑った。
そして、顔の汗を拭い、暫く目を詰むって、息を吐き、振り向く。
___ゾワリ
言いようのない感覚が、日向の体に走った。
日山は薄く笑い、コートを見据えるその瞳は、酷く
それに影山は恐怖を覚える。
(っ!?経験豊富って言葉で片付けられる精神力じゃねぇぞ…)
実際は物凄く経験豊富なのだが、中学三年の日山がこれほどまでに冷静なのは、誰から見ても異様に見えた。
全く動揺を感じさせないその姿に、影山は顔をしかめる。
それを感じていたのは、影山だけでは無かった。
「なんだよあの二番。すげぇ冷静」
「どこで培って来たのかしら…」
菅原が呆然と呟き、清水が言う。
この試合中の間、熱く、されど冷静に。
その、言うは易しの言葉を常に体現し、強敵相手&崖っぷちの状況で、水面の様に静かだった。
「スポ小とかか?」
「それでああなるなら、今頃おっかねぇ奴もっといるべ」
「あれがコートに六人居る…おっかねぇ…」
ブルリと体を震わせた田中が、顔を青くして言った。
(んー?誰か失礼なこと言ってるな?)
「当夜、どうした?」
「んにゃ。なんでもねぇ」
直感で感じ取った当夜は、何かを探すように辺りを見渡す。
それを見た日向は、なにかあったのかと問いかける。
何もないと言った当夜は、コートの中へ向かう。
「うし、今まで通り。俺等に任せろ」
「「おう!」」「「「はい!」」」
日山がそう宣言し、他の5人が返事を返す。
笛が鳴り、日向のサーブとなる。
短く息を吐き、ボールを回しながら、先を見据える。
北川のチームが全員身構える。
ボールを投げ、走り出す。
___ドンッ!
回転…良い。
ジャンプ…最高。
イメージ…完璧!
「フッ!」
鋭いサーブが、進む。
「国見!」
「ぐっ…短い」
「カバー!」
アタックライン上に、短く上がったボールの下へ、影山が滑り込む。
日向は崩したと確信した。
___ボールが、日向の横を抜ける。
「んぇ!?」
「油断すんなよー翔陽。あれは___」
ただ単純に、Aクイックを使っただけだ。
あの位置から、鋭いセットアップをした影山に、日向は注目する。
日山はニヤリとしながら、とても楽しそうに___
「___王様だぜ?」
日向は、入り口で見た赤いマントと、王冠を、影山に視た。
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7-3の北川第一優位。
サーブ権は日山に回ってきた。
ローテが回り、ボールを掴んだ日山は、後方へ向かっていく。
___影山に、悪寒が走る。
思わず振り返り、日山を注視する。
彼からは、覇気の様なモノが立ちのぼっていた。
その
もちろん、雪ヶ丘と北川の反対側は盛り上がっているが、どこか遠い場所の様に思える。
(なんだ?この迫力…)
「一本切るぞ」
「あ、ああ」
「…凄いな、当夜」
「スゲェんだよ当夜は」
日向は、振り向くこともなく、言い切った。
その言葉に、泉が振り向く。
そこには、前を見据えたまま、どこか誇らしげにしている日向が居た。
「当夜は、スゲェんだ」
(さて…やろうか)
ボールをドリブルさせる日山。
1セット目から、日向と同じようにジャンプサーブを放っていた。
そう、
威力が、日向と同じくらいだったのだ。
あの威力のスパイクを放てるのに、小柄な日向と同じ程の威力でサーブを放っていた。
しかし、誰も不思議に思わない。
先程までのサーブも、強いのだから。
(体が暖まってきた。あんまり良いアップとは言えなかったからなぁ…しゃーないけど)
笛が鳴る。
フー…と息を吐いて、ボールを放る。
高さ…OK。
回転…OK。
ジャンプ…OK。
___轟音。
「…は?」
呆然と、影山が呟いた。
振り向けば、壁から跳ね返ってきたボールが、バウンドしている。
別に、ボールが瞬間移動したのではない。
ただ早く、隣を通っただけだ。
「…全く…反応出来なかったっ!」
ギリィッと歯を噛み締める影山。
全国に行ったことのある影山でも、あれほどのサーブを見たのは多くない。
油断なんてしていなかった。
___それでも、反応出来なかった。
北川第一の監督が慌てて立ち上がり、タイムを取る。
そして選手が戻ってくる間、日山を睨み付けていた。
しかめながら、吐き捨てるように呟いた。
___バケモノめ、と。
日山の家で、日向がテレビに食いついて居た。
彼の瞳には、ボールが行き交い、選手が入り乱れる光景が写っていた。
「おお!拾ったぁ!そこから繋げた!?撃ち抜いたぁ!」
スッゲー!と歓声を上げる日向を、日山は面白そうに眺めていた。
画面に夢中になっていた日向は突然日山に振り返るる。
結構な勢いで振り向かれた日山はビクッと肩を跳ね上げた。
「俺もバレーしたい!」
その言葉に日山は驚く。
しかし、すぐにニヤリと笑う。
(俺が居る時点で、原作なんかじゃ無い。六年で興味を持ってから鍛えようと思ったけど、今からやるか!)
そう考えた日山は、ボールを持ち、日向と共に外へ向かった。
ヒロイン誰にする?
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オリヒロ
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清水清子
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田中冴子