排球   作:虚体無名

4 / 9

「■■は、ここぞ!って時は■■に上げるよなー」

ルームの中で、今日の試合を終えた選手達が、ユニフォームを脱いでいた。
その中でリベロの役割を関していた■■が、そう言った。

「そうすか?」
「そうですか?」

当事者の二人は、心当たりが無いのか、首を捻る。
それを見たチームはため息を吐いた。

「無自覚だったのかよ…」
「端から見たら一目瞭然だぞ」

呆れた様に言うチーム達。
それに顔を見合わせた二人はキョトンとしている。

「まぁでも、なんで上げるかと言われれば___」

■■は、小さく笑みを浮かべて、当然の様に言う。

「■■は、決めますから」



四話

あの後7点稼いだ日山だったが、食らい付いた北川にやられ、サーブ権が止まってしまった。

それにホッとした雰囲気が流れる北川。

それに良い顔をしないのは影山だ。

 

「おい、気ぃ抜いてんじゃねぇ。引き締めろ」

 

イライラは、彼の横柄な言葉に繋がる。

せっかくの良い雰囲気が、影山によって変わる。

それに監督が苦い顔をしながら、変わる切っ掛けを探し続ける。

 

「切られちまったが、やることは変わんねぇ。集中しろよー」

 

軽く言う日山だが、この声には力が籠っていた。

背中を叩かれた様な感覚に、チームの意識は深まっていく。

 

「凄いな…全員が深く集中してる。一番のインパクトは凄かったが、実際には二番の方がヤバい」

 

澤村はそう言った。

鼓舞。

たった二文字のこの言葉。

声掛けや、応援によってされるのは当たり前なのだ。

しかし、()()()()()()()味方を鼓舞するなど、並大抵の者が出来るモノでは無い。

それを当たり前の様に、呼吸の様にしてしまう日山に、戦慄していた。

 

「二番のサーブは切れた。こっからは調子に乗らせるな」

「おう」

「ああ」

 

影山が苛つきを隠さず、そう告げた。

それに金田一は顔をしかめ、国見は嫌そうに返事をする。

それすらも影山には苛立ちになってしまうのだ。

 

それに日山は可哀想と感情を乗せ、視線を送る。

それに気付かない影山は、食い縛りながら、()()を睨み付けていた。

 

(はぁ…実際に目にすると、こうも()()()なんだなぁ…)

 

日山は何よりも、チームのこと、その内の信頼、それを大事にする。

バレーは()()モノ。

誰かが拾い、誰かが上げ、誰かが返す。

これだけのこと、しかし一番重要な事。

その競技で、()()()という考えは禁忌。

そう考えて日山はやって来たし、実際に強く、そして勝ち上がってきた。

その心は、ハイキューで習ったもの。

 

(勿論、この後日向と出会って、相棒を得て、仲間と成って、()()を知る。けど、そう思ってしまう)

 

実際には、日向と出会わない可能性は、ある。

しかし、影山はこれからバレーでの()()を知っていくのだ。

それの手助けを出来たら…と、日山は思う。

 

(けどま、今は試合に集中しようか)

 

そう考え、深く息を吐き、前を見据える。

深く構えた日山の圧に呼応するように、雪ヶ丘チームの全員が、集中していった。

 

「ここで一気に畳みかけるぞ」

「分かってる」

 

雪ヶ丘チームを睨み付ける北川第一。

その声には、焦りが乗っていた。

 

 

 

 

_____________________________________________________________

 

 

 

 

 

日向がトスを上げ、日山が決める。

ボールとブロックを吹き飛ばし、ガッツポーズを掲げる姿は、まさしくエースだ。

吹き飛ばされるボールを国見が追うが、こりゃ無理だと早々に諦め、コートへ帰ってくる。

それに影山が声を荒げる。

 

「最後まで追えよ!」

「いや…今のは無理だ」

「最後まで追わねぇとわかんねぇだろ!」

 

イライラする。

どうしようもなく、()()()()にイライラする。

なんで追わない。

なんで諦める。

その一点が、命運を分けるかも知れねぇんだぞ。

なんで…なんで…っ!

 

「はぁ…()()()に」

「当夜?」

「いや、なんでもねぇ。ボールくれ。俺のサーブだ」

 

ボールを受け取った日山は、背を向けて歩き出す。

19-13、北川が大きくリードしている状況。

しかし、ここで日山のサーブが回ってきた。

影山は深く息を吐き、低く構える。

 

(一本で切らねぇと…)

「切るぞ!」

 

命令の様に、そう叫ぶ。

それに誰も返事を()()()()()

しかし、それに気付いているのか、気に止めて居ないのか、前を睨み付けていた。

 

「いけー!殺人サーブ!」

「やったれ当夜!」

「頼むぞー!」

「任せろ」

 

小さく返事をした日山の声には、絶対的な自信が乗っていた。

その声に、泉と関向の思考が合致する。

 

___日山(アイツ)なら、やってくれる。

 

一本目のサーブが、コートへ突き刺さった。

後衛の間を通り抜けたサーブは、誰にも止められる事なく、後ろへ進む。

最高の、ノータッチエース。

 

「っし!」

「ナイッサー!」

「スゲェ…」

 

日向が飛びあがり、関向が畏怖を込めて呟いた。

帰ってきたボールを掴み、先程と同じ位置に戻る日山。

ドリブルさせながら、息を吐き、前を見据える。

二本目のサーブが、放たれる。

 

「おらぁ!」

「ナイスレシーブ!」

 

根性で食い付いた北川の選手が上げる。

金田一がクイックに入る為に助走に入る。

ボールの下に入った影山が、鋭いセットアップを送る。

 

「くっ!?」

「ちっ!」

 

しかしそれは、タイミングが合わなかったのか、金田一の横へ抜けて行った。

それに影山が、大きく舌打ちした。

 

「もっと早く入って来いって言ってるだろ!」

 

その言葉に限界を迎えたのか、金田一が声を上げる。

 

「んなムチャブリトス打てるわけねぇだろ!」

 

それに影山は歯を食い縛り、手を握り込み、叫ぶ。

 

「もっと早く動け!もっと高く飛べ!俺のトスに合わせろ!勝ちたいなら!」

 

その言葉が、響いた。

金田一は返事を返さず、ポジションへ戻った。

影山も、顔を伏せながら、戻る。

 

「あーらら…今かよ」

「今?」

「試合が終わってからでも良かったんじゃねぇかねぇ~。喧嘩は」

 

本当は違う意味で言ったのでは無いが、原作知識など言えるわけ無いので、適当にでっち上げる。

特に疑わなかった日向が、納得したように向き直る。

日山は可哀想だと思うが、試合に手を抜くつもりは無く、強烈なサーブを放つ。

そして、また上がった。

下に入った影山が、先程と同じ様に鋭いセットアップをする。

 

___そして、床に落ちる。

 

トン、トンとバウンドするボール。

タイミングが合わなかった訳では無い。

 

___誰も、飛んで居ないのだ。

 

なんで…飛んでな___

 

「うんざりなんだよ。自己チューの王様が」

 

金田一が、そう言う。

 

「影山…もう下がれ」

 

監督が、ため息を着きながら、そう言った。

 

「誰も飛んでなかったな」

「無理だろ。誰も合わせらんねぇって」

「あんな事言われたらなぁ…」

 

先程の叫びが、影山にトドメを刺した。

チームを振り向けば、影山に目を合わせる事も、顔を向ける事もせず、ただ疲れたように立っていた。

 

___影山には、深い谷が、チームとの間に在るように視えた。

 

(いや…作ったのは…俺か)

 

呆然とした顔で、影山はそう思った。

 





日山と日向は、近くの公園に来ていた。
日向がバレーをしたいと言い出して数週間、走り込みを中心にトレーニングしていた。

日山は、日向の身体能力に舌を巻く。
小さい頃から近くに居たが、日向は何かトレーニングをしていた訳ではない。
それでも、毎日走り込んでいた日山についてくるし、ジャンプも高い。

「翔陽、バレーは高さが重要だ」
「高さ?」
「ああ」

そう言った日山は、砂場へ向かう。
そこへ着くと、日山は靴を脱いで、砂場へ入った。

「ここでジャンプの練習すんぞ」
「うえ!?ここで!?」

日向は困惑したように声を上げる。
下を見れば、日山の足は、完全に埋もれて居た。
こんな場所で練習なんて出来るのかと。

「ああ、ここでするのは良い練習になる」
「でも…」
「信じろ」

半信半疑の日向へ、絶対的な自信を乗せて、日山が言う。
それにハッと顔を上げれば、真剣な目が、日向を貫いた。

「な?」
「…ああ!」

ヒロイン誰にする?

  • オリヒロ
  • 清水清子
  • 田中冴子
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。