「■■は、ここぞ!って時は■■に上げるよなー」
ルームの中で、今日の試合を終えた選手達が、ユニフォームを脱いでいた。
その中でリベロの役割を関していた■■が、そう言った。
「そうすか?」
「そうですか?」
当事者の二人は、心当たりが無いのか、首を捻る。
それを見たチームはため息を吐いた。
「無自覚だったのかよ…」
「端から見たら一目瞭然だぞ」
呆れた様に言うチーム達。
それに顔を見合わせた二人はキョトンとしている。
「まぁでも、なんで上げるかと言われれば___」
■■は、小さく笑みを浮かべて、当然の様に言う。
「■■は、決めますから」
あの後7点稼いだ日山だったが、食らい付いた北川にやられ、サーブ権が止まってしまった。
それにホッとした雰囲気が流れる北川。
それに良い顔をしないのは影山だ。
「おい、気ぃ抜いてんじゃねぇ。引き締めろ」
イライラは、彼の横柄な言葉に繋がる。
せっかくの良い雰囲気が、影山によって変わる。
それに監督が苦い顔をしながら、変わる切っ掛けを探し続ける。
「切られちまったが、やることは変わんねぇ。集中しろよー」
軽く言う日山だが、この声には力が籠っていた。
背中を叩かれた様な感覚に、チームの意識は深まっていく。
「凄いな…全員が深く集中してる。一番のインパクトは凄かったが、実際には二番の方がヤバい」
澤村はそう言った。
鼓舞。
たった二文字のこの言葉。
声掛けや、応援によってされるのは当たり前なのだ。
しかし、
それを当たり前の様に、呼吸の様にしてしまう日山に、戦慄していた。
「二番のサーブは切れた。こっからは調子に乗らせるな」
「おう」
「ああ」
影山が苛つきを隠さず、そう告げた。
それに金田一は顔をしかめ、国見は嫌そうに返事をする。
それすらも影山には苛立ちになってしまうのだ。
それに日山は可哀想と感情を乗せ、視線を送る。
それに気付かない影山は、食い縛りながら、
(はぁ…実際に目にすると、こうも
日山は何よりも、チームのこと、その内の信頼、それを大事にする。
バレーは
誰かが拾い、誰かが上げ、誰かが返す。
これだけのこと、しかし一番重要な事。
その競技で、
そう考えて日山はやって来たし、実際に強く、そして勝ち上がってきた。
その心は、ハイキューで習ったもの。
(勿論、この後日向と出会って、相棒を得て、仲間と成って、
実際には、日向と出会わない可能性は、ある。
しかし、影山はこれからバレーでの
それの手助けを出来たら…と、日山は思う。
(けどま、今は試合に集中しようか)
そう考え、深く息を吐き、前を見据える。
深く構えた日山の圧に呼応するように、雪ヶ丘チームの全員が、集中していった。
「ここで一気に畳みかけるぞ」
「分かってる」
雪ヶ丘チームを睨み付ける北川第一。
その声には、焦りが乗っていた。
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日向がトスを上げ、日山が決める。
ボールとブロックを吹き飛ばし、ガッツポーズを掲げる姿は、まさしくエースだ。
吹き飛ばされるボールを国見が追うが、こりゃ無理だと早々に諦め、コートへ帰ってくる。
それに影山が声を荒げる。
「最後まで追えよ!」
「いや…今のは無理だ」
「最後まで追わねぇとわかんねぇだろ!」
イライラする。
どうしようもなく、
なんで追わない。
なんで諦める。
その一点が、命運を分けるかも知れねぇんだぞ。
なんで…なんで…っ!
「はぁ…
「当夜?」
「いや、なんでもねぇ。ボールくれ。俺のサーブだ」
ボールを受け取った日山は、背を向けて歩き出す。
19-13、北川が大きくリードしている状況。
しかし、ここで日山のサーブが回ってきた。
影山は深く息を吐き、低く構える。
(一本で切らねぇと…)
「切るぞ!」
命令の様に、そう叫ぶ。
それに誰も返事を
しかし、それに気付いているのか、気に止めて居ないのか、前を睨み付けていた。
「いけー!殺人サーブ!」
「やったれ当夜!」
「頼むぞー!」
「任せろ」
小さく返事をした日山の声には、絶対的な自信が乗っていた。
その声に、泉と関向の思考が合致する。
___
一本目のサーブが、コートへ突き刺さった。
後衛の間を通り抜けたサーブは、誰にも止められる事なく、後ろへ進む。
最高の、ノータッチエース。
「っし!」
「ナイッサー!」
「スゲェ…」
日向が飛びあがり、関向が畏怖を込めて呟いた。
帰ってきたボールを掴み、先程と同じ位置に戻る日山。
ドリブルさせながら、息を吐き、前を見据える。
二本目のサーブが、放たれる。
「おらぁ!」
「ナイスレシーブ!」
根性で食い付いた北川の選手が上げる。
金田一がクイックに入る為に助走に入る。
ボールの下に入った影山が、鋭いセットアップを送る。
「くっ!?」
「ちっ!」
しかしそれは、タイミングが合わなかったのか、金田一の横へ抜けて行った。
それに影山が、大きく舌打ちした。
「もっと早く入って来いって言ってるだろ!」
その言葉に限界を迎えたのか、金田一が声を上げる。
「んなムチャブリトス打てるわけねぇだろ!」
それに影山は歯を食い縛り、手を握り込み、叫ぶ。
「もっと早く動け!もっと高く飛べ!俺のトスに合わせろ!勝ちたいなら!」
その言葉が、響いた。
金田一は返事を返さず、ポジションへ戻った。
影山も、顔を伏せながら、戻る。
「あーらら…今かよ」
「今?」
「試合が終わってからでも良かったんじゃねぇかねぇ~。喧嘩は」
本当は違う意味で言ったのでは無いが、原作知識など言えるわけ無いので、適当にでっち上げる。
特に疑わなかった日向が、納得したように向き直る。
日山は可哀想だと思うが、試合に手を抜くつもりは無く、強烈なサーブを放つ。
そして、また上がった。
下に入った影山が、先程と同じ様に鋭いセットアップをする。
___そして、床に落ちる。
トン、トンとバウンドするボール。
タイミングが合わなかった訳では無い。
___誰も、飛んで居ないのだ。
なんで…飛んでな___
「うんざりなんだよ。自己チューの王様が」
金田一が、そう言う。
「影山…もう下がれ」
監督が、ため息を着きながら、そう言った。
「誰も飛んでなかったな」
「無理だろ。誰も合わせらんねぇって」
「あんな事言われたらなぁ…」
先程の叫びが、影山にトドメを刺した。
チームを振り向けば、影山に目を合わせる事も、顔を向ける事もせず、ただ疲れたように立っていた。
___影山には、深い谷が、チームとの間に在るように視えた。
(いや…作ったのは…俺か)
呆然とした顔で、影山はそう思った。
日山と日向は、近くの公園に来ていた。
日向がバレーをしたいと言い出して数週間、走り込みを中心にトレーニングしていた。
日山は、日向の身体能力に舌を巻く。
小さい頃から近くに居たが、日向は何かトレーニングをしていた訳ではない。
それでも、毎日走り込んでいた日山についてくるし、ジャンプも高い。
「翔陽、バレーは高さが重要だ」
「高さ?」
「ああ」
そう言った日山は、砂場へ向かう。
そこへ着くと、日山は靴を脱いで、砂場へ入った。
「ここでジャンプの練習すんぞ」
「うえ!?ここで!?」
日向は困惑したように声を上げる。
下を見れば、日山の足は、完全に埋もれて居た。
こんな場所で練習なんて出来るのかと。
「ああ、ここでするのは良い練習になる」
「でも…」
「信じろ」
半信半疑の日向へ、絶対的な自信を乗せて、日山が言う。
それにハッと顔を上げれば、真剣な目が、日向を貫いた。
「な?」
「…ああ!」
ヒロイン誰にする?
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オリヒロ
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清水清子
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田中冴子