これからをどうしていくか悩んでいたらこんなに遅れてしまって…すみません。
あとヒロインは清子さんになりましたが、恋愛に持っていけるか分かりませんので、あまり期待しないでください。
お気に入り2000越え…!?
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ガンッ!と音が木霊するロッカールーム。
それの原因は、■■がロッカーを殴った事によるものだ。
今日の試合の結果は敗北。
強国■■■との対戦は、接戦の末惜敗。
その事に、■■は悔しげに顔を歪める。
「悪い■■。俺のセットが___」
「謝るな」
■■が、謝罪をしようとする前に、■■が止める。
その声には力が籠っていた。
「お前も、俺も、全力だった。お前のトスはいつも通り最高だったし、俺のスパイクも良く決まってた」
殴り付けた姿勢のまま、■■は紡ぐ。
それに大きな悔しさを乗せながら。
「■■のサーブも、■■のレシーブも、■■のブロック も最高だった。でも負けた」
上を見上げる■■の瞳は、静かだった。
___一滴の涙を流す。
■■の涙に、■■が驚愕する。
長い付き合いでも、そんな姿を見たことが無かったから。
「俺らは強かった。でも、あっちの方が
純然たる事実。
強い方が勝つのでは無い、
「だから、もっと強くなろう」
■■のその言葉には、隠しきれない程の熱が乗っていた。
終わってみれば、呆気ないな。
日向はそう考えていた。
あれほど熱を込めた試合の終わりに感じるのは、巨大な喪失感。
ポッカリと穴が空いたような感覚。
それに体を支配されていた。
「翔陽、ほれ」
日山は軽い調子で、日向へ飲み物を渡す。
慌ててキャッチした日向の隣に、腰をおろした。
蓋を開け、豪快に飲み干す日山。
日向は不思議そうに日山を眺めていた。
「当夜は悔しく無いのか?」
「悔しいに決まってんだろ」
間を開けること無く返されたその言葉に、ハッと日向は顔を上げた。
日山の顔は、悔しさに歪んでいた。
滅多に見せないその顔に、日向は驚く。
「試合で負けるのは始めてじゃねぇーのに、今までで最高に悔しい。お前は違うか?」
「俺は…」
日山の両親が所属するチームで、年齢制限無しの大会に何回か出たことがある。
それで負けた時の比じゃない悔しさを、日山は感じていた。
そして日向の心にも、ふつふつと熱いモノが込み上げて来た。
その熱に比例する様に、涙も上がってくる。
「負けたらもう…コートに立てない…」
「ああ、結果は勝つか負けるかのどっちか」
「例え強い奴が敵になっても…!そいつを倒して、俺が一番長くコートに立ってやる…!」
「…コートに残るのは、勝った方だ。勝ち残りたかったら…強くなろう」
日向は涙を流しながら宣言し、日山は静かに決意を固める。
そして鼻水を垂らし始めた日向にティッシュを差し出しながら、励ます様に背中を叩く。
しばらくたって落ち着いた日向は、試合を見てくると言って、二階へ上がって行った。
日山は、もう少し休むと告げ、一階のソファーに座っていた。
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「雪ヶ丘の試合凄かったなー!見てるこっちが手に汗握っちゃったよ」
「確かに熱い。ちょっと飲み物買ってくる」
菅原が、興奮の余韻を感じながら言う。
先程の試合を見ていた人達によって、熱気が広がっている。
それにあてられた清水は、飲み物を買おうとして、一階に続く階段へ向かった。
一階の自販機コーナーへ向かおうとした清水は、階段を降りている最中に、ガンッ!と何かを殴り付けた音に肩を跳ね上げた。
ソーッと下を覗き込めば、雪ヶ丘の二番(日山)が、階段横の壁を殴り付けている光景があった。
日山の瞳からは、静かに涙が伝っている。
清水は、試合中であれほどまでに落ち着いていた日山からは想像出来ない姿に、驚きの表情を浮かべる。
日山はその視線に気付いたのか、顔を上に上げた。
「あ…」
「…どうも、もしかしてビックリしました?」
「あ、その…殴るのは良くないと思う」
「…すいませんした」
恥ずかしそうに顔をしかめた日山は、頭を下げると、足早に去って行った。
清水は、あ…と声を漏らすと、その背中を見送った。
あんな凄い人でも、悔しがるんだと考えながら、再び自販機コーナーへと足を進めた。
「やっちまった…」
日山は羞恥に襲われて、頭を抱えていた。
よりによって
トイレに駆け込み、バシャバシャと顔を洗い、拭った日山は、忘れる様に顔を振る。
切り替えた日山は、貴重品以外を入れていたバッグを取りに戻り、二階へ上がって行った。
「お前ら、まだ帰って無かったのか?」
「ああ、今日一日は暇だからな。最後まで見ていこうと思って」
階段を上り、空いている席を探していると、雪ヶ丘チームが全員残っていた。
それに疑問を浮かべ、問いかけると、関向がそう答える。
日山はそれを、
「そうか、んじゃあちょっと俺の荷物見ててくんね?」
「あ?まぁ良いけどよ。どっか行くのか?」
「ちょっとな、
「は?」
突然荷物を預けた日山に、関向が眉をひそめるが、日山は軽く流す。
それに納得出来ていない関向だったが、日山がさっさとどこかへ行ってしまった為、渋々と荷物を横に置いた。
荷物を預けた日山は、足取りを確かに歩いていく。
向かったのは
青と白のジャージを来ている選手が思い思いに座って居る。
「何しに来たんだよ」
そう声を掛けてきたのは、先程までコートを挟んで対峙していた選手、金田一だった。
ここまで言えば分かるだろうが、北川第一が陣取っている客席に、日山は向かっていたのだ。
「いんや?ちょっとばかし借りたい奴が居てな」
「はぁ?誰だよ」
「それは…お、居た居た」
周りの視線を気にも止めず、日山は目的の人物へ向かって行く。
向かう先には、タオルを頭から被り、顔を隠して、全身に暗いオーラを漂わせた影山が居た。
「…何の用だよ」
「よぉ、影山。ちょっと遊びに行こうぜ」
「はぁ?」
ボールを掲げながら、日山はそう告げた。
影山はバカにする様な顔を隠す事も無く、日山に向けた。
「もしかして第二試合がすぐ始まるか?」
「…第二試合まではまだ三時間ある」
「なら良かった。遊びに行こうぜ」
日山は全く引かず、影山を続けて誘う。
それにますます眉をひそめる影山だったが、少し息を吐くと、ゆっくりと立ち上がった。
「分かったよ…そういや、名前は?」
「サンキュー。俺は日山当夜だ…ってことで監督さん?影山借りて行きます」
「…ああ、試合迄には戻って来いよ」
「それまでには返します」
日山は軽く、そう告げた。
監督は特に止める事もなく、二人の背を見送る。
願わくば、影山に変化が訪れる事を願いながら。
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体育館の外、芝生が生える広場に二人は向かっていた。
そこへ着いた日山は振り返り、影山へボールを放る。
そのボールを少し眺めた影山は、オーバーハンドで返球する。
柔らかく、優しいボールに、日山は笑みを浮かべる。
そして日山も、影山と同じく、オーバーで返す。
しばらくラリーを続けていると、日山が軽くスパイクを放つ。
影山は驚く事もなく、冷静にアンダーで高く上げる。
そして日山がスパイクを放つ。
しっかりとレシーブされたボールを、今度は日山が高く上げる。
影山に向かってくるボールは、一歩も動かずにスパイクを放てる位置へ返される。
その事に影山は、羨望と嫉妬で顔を歪める。
そして放たれたボールを、日山は完璧にレシーブし、影山へ返球する。
今度は影山が高く上げた。
当て付けの様に、先程の日山と同じく、一歩も位置を変える必要のない場所へボールを返す。
それに日山は楽しそうに笑い、スパイクを放つ。
またしばらくラリーを続けていると、唐突に日山が口を開いた。
「お前はスパイカーに向いてるな」
その言葉に、影山は
即座に反応した日山は、ボールの正面へ移動し、レシーブする。
しかしそれは、影山の後方へ飛んだ。
その事に日山は、
「つえぇスパイクだ。やっぱスパイカーやった方が___」
「ふざけんな!」
日山の言葉を遮り、影山は胸ぐらを掴みながら叫ぶ。
「俺はセッターだ!チームの司令塔で!スパイカーの道を切り開くセッターなんだよ!」
「そんなに下手くそなのに?」
日山は冷静に、そう告げた。
その言葉に、影山は目を見開く。
長いバレー人生の中で、下手くそだと言われたのは初めてだった。
「いや?トスはバレー選手の中でも最高峰だと思うし、スパイク・ブロック・レシーブ、どれも上手い。けど、どうしようも無く、
「は?」
言葉の意味が分からず、影山は呆けた表情を浮かべる。
それを見た日山は、小さな笑みを浮かべてさらに言葉を重ねる。
「まず、お前はバレーの事分かってない」
「…」
「バレーは
「
「それで?お前は俺らと戦ってる時になんて考えた?」
「それは…」
「
「っ!」
影山の顔が歪む。
完全に図星だった。
サーブミスの時、レシーブミスの時、ブロックに止められた時、ツーで翻弄された時、いつも
原作知識で知っているだけなのだが、それを知らない影山は、この男が自分のプレーで感じ取ったのかと、内心戦慄していた。
「はぁ…ほんとに可哀想だよ。チームも監督も…
「は?」
その言葉に、再び影山の顔がポカンとなる。
「まず、チームはお前に振り回されて可哀想」
「ヴッ!」
「監督はお前を更正させようとしたのに、全く聞き入れられなくて可哀想」
「ぐぅっ!」
日山の無慈悲な言葉が、影山の体に突き刺さる。
物凄い顔と声を上げる影山を見て、日山は我が儘な子供を見るような、仕方がないと言いたげな顔をする。
「お前が可哀想なのは、
「チームを…?」
「だってそうだろ。チームを
「…」
「でも、今日で分かったハズだ。お前のチームは、十分
「信じる…」
日山の言葉に、顔を伏せる影山。
頭に浮かぶのは、自分が抜けた後のチーム。
金田一は高い身長を生かした、叩き落とすクイックをしていた。
それに、日山や日向の高いブロックではなく、他のメンバーの低いブロックを狙い、得点を稼いでいた。
国見は、大事な場面では本気で取り組み、チームのフォローを。
終盤では残した体力を用いて
他のメンバーも、自分が見ていた
「確かに早さは
「…」
「高さも
「
小さく呟き、しばらく下を向いていた影山が、ゆっくりと顔を上げた。
その顔には、もう迷いはなく、確かな光を宿していた。
それを見た日山は嬉しそうに笑い、ボールを拾って、影山の背中を叩く。
「んじゃまずは、チームにしっかりと謝れよ。しこりを残したままじゃ、さっきの二の舞になるからな」
「ああ…ありがとうな」
「良いって事よ」
影山の肩を叩きながら、日山は体育館に戻る。
それに続くように、影山も歩き出す。
(てこ入れは出来たな。今の翔陽は
原作では、日向が影山に突っ掛かり、その結果三対三の試合をする。
そこで影山は変人速攻を編み出し、
しかし、日山が入った事で、日向は既にトップクラスのバレーボーラーに成っている。
故に、日山はどうにかしててこ入れをしようとずっと考えていたのだ。
(まぁ、これで影山が
吹っ切れた影山が、キチンと実力を発揮すれば、白鳥沢は愚か、それより上の強豪校からのスカウトがあるかもしれない。
出来れば日向と同じ学校に入り、間近で変人速攻を見たいが、高望みし過ぎだろう。
(出来れば、影山と一緒にバレーしてぇなぁ)
苦笑いと共に、日山はそう考えた。
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「すまなかった!」
北川第一が陣取る観覧席へ戻った日山と影山。
視線が二人に向かうと、影山が唐突に頭を下げ、そう叫んだ。
頭を下げる王様を見たことが無い北川第一のチームが、目を見開く。
その光景に日山は面白そうに笑い、監督が肩の荷が降りた様に、小さく笑みを浮かべた。
しばらく影山が頭を下げていると、金田一が眉間にシワを寄せながら近づいて来た。
「なんだよ?今さら謝罪か?それも結局試合に出たいから渋々下げてんだろ?」
「…」
「その男に何言われたか知らねぇけど、もうお前と試合すんのはうんざりなん___「あのさぁ」___…んだよ」
「確かに、ムチャブリトスでチームを掻き回したこいつも悪い。けど、その一端はお前らにも有るんだよ」
「…」
日山の言葉に影山が頭を上げ、目を見開きながら日山を見る。
金田一は眉を潜め、北川第一のチームは訳が分からないと言いたげな表情を浮かべる。
「俺の勘違いじゃなけりゃ、面と向かって文句言ったの今日が初めてだろ」
「…ああ」
「あのなぁ、もっと早くからぶつかり合ってたら、こんな事にはならなかったんだぜ?」
「…」
「普段の練習でも、他校との練習試合でも、なんかの大会でも、今日みてぇなトスはあっただろ。なのになんで我慢してたんだ?」
「それは…」
「影山がチームの中で上手いからか?」
「っ!」
「はぁ…ほんとに、バカだなぁお前ら。あのな、意見が合わなくて喧嘩すんのは
「…」
「影山は俺に言われてだが、確かに反省した。お前らも自分達の行動を省みて反省しろ。自分達はそれほど悪く無いって開き直るのは、都合が良すぎるなぁ?」
「…」
日山の言葉に、北川第一のチームは悔しそうに顔を伏せる。
確かに、今まで従って居たのに、文句を言っていきなり拒絶するのは都合が良すぎる。
北川第一に足りなかったのはコミュニケーションだ。
ぶつかりあって高みに行くのではなく、互いに足を引っ張りあっていた。
そのことを、今日知り合ったばかりの部外者に指摘されたことに、どうしようもなく怒りが沸く。
腑甲斐無い、
「俺は、お前らを信じて無かった」
静かになった空間に、影山の声が響く。
視線を向ければ、今までの険しい顔は無く、吹っ切れた様な、道を見つけた様な、晴れやかな顔をしていた。
「俺なら出来るって、いつもそう考えてた。俺一人で、レシーブも、トスも、スパイクも出来れば良いって思ってた…でも、バレーは六人でするモンだ。俺だけじゃ、勝てないんだ」
再び、影山は頭を下げる。
そして、力強く宣言する。
「今日、ベンチでお前らを見て、自分の
そう叫んだ。
その言葉に、北川第一のチームが固まる。
最初に動いたのは金田一だった。
頭を下げている影山の前に立つと、小さく呟く。
「俺は…いつものよりも緩いボールの方が得意だ」
「!!」
「お前の一直線のトスは打ちにくいんだよ。もっと余裕をくれよ」
「…ああ」
「またあのムチャブリしやがったら、もう飛ばねぇからな」
「…あぁ」
「んじゃ良い。覚えとけよ」
「…ありがとな」
「…ふん」
そう告げて、金田一は自分の席へ戻って行った。
すると他のメンバー全員が影山の前に立ち、自分は何が得意だ苦手だと言っていく。
いきなりの事に影山はタジタジになるが、聞き逃すまいと真剣に耳を傾ける。
その光景に日山は嬉しそうに笑った。
「んじゃ、次の試合頑張れよ」
「!ああ…
「はは、楽しみにしてるぜ?影山」
影山の言葉に、一層嬉しげな表情を浮かべた日山は、手をヒラヒラさせながら、自分のチームの元へ戻って行った。
「んじゃ、スパイク練習はこれくらいにして、レシーブの練習すんぞ」
「んぇー…スパイク打ちたい~レシーブなんてしなくていい~」
トスを上げていた日山がボールを集めながらそう告げた。
その言葉に、同じくボールを集めていた日向が嫌そうに顔を歪めて、微妙にイラッとくる口調でそう言った。
それに日山は呆れた顔をして、言い聞かせる様に言う。
「あのなぁ、スパイクはトスが無いと打てないし、トスはレシーブされないと出来ない。今練習しなかったら、試合に出たときスパイクは愚かボールに触れないまま終わっちまうぞ?」
「それは嫌だ!」
「ならレシーブの練習をしろ」
「あい…」
それでもなお嫌そうにしている日向に、日山は思わず笑う。
そして日向をじっと見つめた。
視線を向けられた日向は何?と首を傾げるが、すぐに目を見開く。
向けられている視線の先には、日向は写っておらず、別の
「強いってのは自由だ」
「んぇ?」
「強ければ強いほど、自由に、楽しく、遊ぶ事が出来るんだよ」
「…」
「だから強くなろう。
チリッと日向の頬に熱が走る。
日山は笑みを浮かべているが、そこには殺気の様なモノが込められていた。
人に向けられる事の無い獲物を見る様なその視線に、日向は思わず後ずさる。
___負けてたまるか。
日向の脳裏に、その言葉が浮かぶ。
昔から知っていた事だ。
壁打ちをしている時、サーブ練習をしている時、スパイク練習をしている時、
(当夜はスゲー奴だ、昔からずっとバレーをしてた。背も高いし力も強い。サーブも上手いしトスもレシーブもブロックも上手い)
___だからこそ負けたくない。
(当夜は俺の憧れだ。理想だ。目標だ。それに自分で負けたと思ったら、もう二度と
バチン!と日向が両頬を叩く。
赤い紅葉をこさえながら、日向は今も凄みを向けてくる日山に、睨み付ける様に目を合わせて、叫ぶ。
「やってやる!
宣戦布告を受けた日山は、珍しく、不敵な笑みを浮かべた。