…いやですね…散々三対三無くなるとか書いといてあれ毎年やってるらしいんですよ…穴があったら入りたい…
「んじゃ、一年対抗の三対三。始めるぞー」
スコアボードの横に立つ菅原が、これから試合を始める選手へ呼びかけた。
ストレッチをしていた6人は、コートの中へ歩いて行く。
日山は自身のチームメイトの月島と山口をチラリと見る。
山口は手を握り息巻いているが、月島は面倒くさそうに肩を伸ばしている。
(忘れてたわぁ〜)
脳内では脳天気呟きながら、日山は足を回していた。
数日前の部活を思い浮かべてながら、日山は息を吐いた。
________________________________________________________________
球が弾む音と、床とシューズが擦れる音を響かせながら、日山は前へ飛び込んだ。
落ちるギリギリだったボールは、日山の手によって上げられる。
「ナイス当夜!」
「オーライ!」
「レフトォォォオ!!」
「田中!」
日向が声を上げ、菅原がボールの下へ潜り込む。
降りてきたボールを、レフトの田中へ上げる。
フワリと舞うボールを、凶悪な笑顔を浮かべた田中が撃ち抜いた。
縁下がレシーブへ回るが、弾かれて赤チームの得点となった。
「シャァァアオラァァァア!!」
「ナイスキー」
「うるせぇぞ田中!」
「脱ぐなハゲー」
「誰だ今言った奴!」
ジャージを脱いだ田中は、叫びながらブンブンと振り回した。
大して動揺していない日山は淡々と声を掛けるが、澤村は声を荒げて注意し、縁下は先程の仕返しとして罵った。
一通り騒いでから、澤村が手を叩き注目を集める。
「それじゃ十分休憩!次は入れ替えて試合するぞ」
『アス!』
返事を返した日山は、壁際に置いている荷物の場所へ向かい、水筒を手に持った。
キュポンと蓋を外した所で、日向と影山が近づいて来た。
「日山、トスの練習したいから跳んでくれねぇか」
「おう」
影山の言葉に二つ返事で頷いた日山は、豪快に飲み込んだ。
口元を拭い、自身のバックへ投げ捨て、コートに駆けようとした瞬間、澤村の声が響いた。
「全員集合ー!」
そこに視線を向ければ、このバレー部の顧問___武田と
その姿を見た日山は思わず笑みを浮かべたが、端から見たら気持ち悪いことを自覚しているため、頬を叩いて引き締め直した。
『おなしゃーーーす!!』
「はい、えーっと...一年生はまだ僕のこと知らないよね。バレー部顧問の武田です。そしてこの二人は入部希望の...っとちょうどいいから日向君たちも改めて自己紹介しようか」
「「「うす!」」」
声をかけられたバレーバカ三人は前へ出る。
日山から順に名前を告げ、遂に二人の番となった。
「あ、雨丸中出身!山口忠です!MBやってました!よろしくお願いします!」
「同じく雨丸中の月島蛍でーす。MB。よろしくお願いいたしまーす」
山口はあたふたと頭を下げ、月島は薄い笑みを浮かべている。
自己紹介が終わり、澤村が声を上げた。
「よし。山口、月島明日からよろしくな。あとこれは毎年やってるんだが、今週の土曜日に一年対抗でミニゲームをやってるんだ」
「「ミニゲーム...?」」
澤村の言葉に、影山と日向がそろって首を傾けた。
「ああ、一年の実力を見るためにな。チームはこっちで決める。あとはなにかありますか武田先生?」
「ん、大丈夫だよ」
「うす。あざっしたー!」
『あざっしたー!!』
挨拶を終え、各々戻るところで、日向が山口へ駆け寄った。
「これからよろしくな!山口、月島!」
「う、うん。よろしく日向」
「よろしくー...にしてもホントちっちゃいねー君」
「んだと!?」
「ちょ、ツッキー...」
日向の満面の笑みに、山口はたじたじになりながらも返事をした。
対して月島は笑みを浮かべて居るが、その笑みはどこか加虐的だ。
そして、日向の頭をポンポンと叩くと、日向が牙を剥き、山口が窘める。
しかし、月島はさらに笑みを深くする。
「ごめんごめん。それでバレーしてることにおどろいちゃってさ。あ、リベロの人?」
「俺はスパイカーだ!」
「ほんとに?その身長で?」
「こんのぉ〜っ」
日向は歯を剥き噛み付くが、それが楽しいのか月島の口撃は止まらない。
山口が止めようとおろおろする中、日山が割り込んだ。
「喧嘩すんなよお前ら。同じ部活の仲間なんだから仲良くやろうぜ?」
「日山だっけ。そうだね、言いすぎたよ日向。ごめんごめん」
「む〜っ…俺!お前嫌いだ!」
「はっは嫌われちゃったなぁー」
月島が謝りながら手を差し出すが、日向はフン!とそっぽを向き、コートへ歩いて行った。
それに大した動揺も示さない月島は、ただ薄っぺらく笑っていた。
「挑発が過ぎるぞ月島。そんなんじゃ
「…は?」
日山が楽しそうに笑いながら、まるで日向に負けることが確定しているかの様に言う。
それに顔を顰めた月島が、日山を睨んだ。
「僕があのちびっ子に負けるって?」
「デカいだけで勝てると思ってるうちは負けるだろうなぁ。ま、頑張れや。土曜よろしく」
ヒラヒラと手を振りながら日山もコートへ戻って行った。
(やっべ三対三って毎年やってんだった…っ)
心の中は荒れ狂っていたが。
________________________________________________________________
「チーム別けは月島、山口、日山と影山、日向、そして足りない分は田中が入る。1セットの25点マッチだ。それじゃ準備!」
『アス!』
澤村の号令に返事をし、縁下筆頭にスコアボードやコートの準備に入る。
その中で日山は月島と山口に近づいた。
「よろしくな二人とも。ポジションは適当でいいだろ?」
「う、うん。よろしく」
「適当で良いデショ。やれる人がやる感じで」
打ち合わせとも言えない会話だが、3人は話を纏めた。
月島は以前の言葉を根に持っているのか、日山の扱いが雑である。
しかし、それを気にした様子もなく、日山は口を開く。
「翔陽と影山には特に注意しろよ。あいつらは
「バケモンって、人外か何かデスカ?」
日山の言葉を信じていない月島はケラケラと笑っている。
と、言うのも二人は月島や山口が練習に参加したその日からマイナステンポの速攻を見せていないのだ。
そのため月島の中ではトスが一流の影山>二年で力強そうな田中>跳躍力はある日向の順で警戒している。
「そうだな…翔陽を一回でもドシャット出来たなら、肉まん奢るわ」
「…舐めすぎ。何回でも叩き落としますケド?」
二人の視線の間にバチリと火花が散った。
山口は二人の姿に顔を青くし、プルプルと震えている。
「んじゃ、一年対抗の三対三始めるぞー」
菅原の号令に、6人がコートへ向かう。
そして日山と影山がジャンケンをし、サーブは日山チームとなった。
ボールを受け取った日山は、バウンドさせながら歩いていく。
「「っ!!」」
____日向と影山が息を呑んだ。
向けられる視線の中にある
それを思い切り叩きつけられ、背中に汗が浮かぶ。
____しかし、それで折れる二人ではない。
睨みを向ける。
逆に殺気を叩き返した。
それに笑みを浮かべた日山は、ゆっくりとボールを放った。
____肌が粟立つ。
____時が遅くなったように、日山の行動が鮮明に見える。
飛び上がり、大きく弓形の姿勢から放たれるのは____大砲と見紛う様な豪速球。
唸りを上げ向かう先は____日向。
「なめんなっ!」
____
インパクトの瞬間、腰と膝を抜き、力を完全に吸収する。
そのまま腰を下ろし、後ろへ転がることで衝撃を逃す。
顔を上げると、影山へ向かう柔らかいボールがあった。
「っしゃあ!」
「ナイスレシーブ!」
「オーライ!日向!」
「オウ!」
トスの先は日向へ向かう。
山成のボールを見据え、走り出す日向の前にはすでに月島が居る。
月島がチラリと後ろを見ると、クロス側には日山が陣取って居た。
(ストレート締めれば良いデショ)
特に警戒も無い月島は、日向を見つめながら腰を落とす。
そして
(あーあ)
それを見た日山は確信した。
(____サーブ切られたな)
月島が頂点に着き、
しかし、日向は未だに上へ向かっている。
____床へ叩きつけられる。
(っ!?)
驚愕の表示を浮かべた月島が振り返った。
転がるボールは、
「っしゃあー!」
「ナイスキー日向!」
「ナイスキー」
日向が飛び上がりながら叫び、そこへ田中が駆け寄り頭をワシワシと撫でる。
そして影山が静かに賛辞を送る。
「チッ…」
「俺は言った筈だぜ?あいつは____」
顔を顰め、舌打ちを隠さない月島に、日山がカラカラと笑いながら近づく。
そして、嬉しそうに笑う日向を見て____
「____
嬉しそうに呟いた。