コードギアスLOST COLORS 小話集   作:如月(ロスカラ)

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ライ×千葉


逢瀬

「……」

もしかしたら、会えるかもしれない。生きているかもしれない、とそんな淡い期待を持ってやってきてみたが、当然のことながらそこに彼の姿はない。

有り得ないことだとわかっていても、僅かな可能性を切り捨てることはできなくて、目の前に彼がいる光景を願っていた。けれど、そんな願いが叶うことはなくて、実際に眼前にあるのは、夕日が海原に照り映える様子。

沈む直前の強く美しい輝きに目を向ける。辺り一面を紅く彩るそれは、幻想的とも言えるような目を惹かれる情景。

「ライ……」

彼のようだ。大きく輝いて、パッと沈んでしまうその存在が彼のようだ。

夕日を見つめながら意図せずに漏らしていたつぶやきにはっとなる。

なにげなく彼のことを考えていて、その想いを形にするように彼の名前を自分でも気づかぬ間に口にしていた。

別に他人に聞かれたわけではないが、それでも少し気恥ずかしく感じる。

自分はこんな女だっただろうか。誰かのことで頭がいっぱいになってしまうなんて、今までにあっただろうか。

いや、あるはずがない。彼がいとしくて、こんなにも想っている。この気持ちはきっとこれからも変わらない。

「お前は、私のことをどう思っていたのだろう……」

どんな風に私を見ていたのだろうか。もし同じ気持ちであったなら、これほどうれしいことはないのに。

ふと、波打ち際に目線をうつす。先ほどよりも激しく揺れる波が言葉をかき消すように寄せては返していく。

あきらめろ、とまるでそう言われているようで癪に障る。もはや、お互いの気持ちを確かめ合うことなんて出来ない。それは事実だ。しかし、

「皆がすぐに忘れても……私は、絶対に忘れないから……」

彼が生きた証を私の記憶に刻んで、ずっと、想い続けるから。

そんな決意を胸に秘め、夕日に向かい直して、深々と一礼する。

「少しだけ、お別れだ」

自分は軍人だから、いつまでもこうしているわけにはいかない。すぐにまた次の戦いが待っている。頭を切り替えて、任務を果たさなければならない。

「おまえの分も、私が戦い抜こう。約束する……!」

踵を返して歩き去ろうとする。けれど、途中で足を地面に留めて、そのまま立ち止まってしまう。

振り返った目の前に一人の男が立っている。印象的な銀髪をなびかせて、こちらをうかがっている。

「ライ……?」

白昼夢でも見ているのだろうか。目の前にいる人の存在がとても信じられなくて、自然と疑うように彼の名前を呼んだ。

ライは、ばつが悪そうに敬礼した。

「……死に損ないました。中尉殿」

「この……馬鹿者……!」

その軽口に私の中の疑いは全てなくなり、気が付けば彼の胸に飛び込んでいた。

私らしくない、はしたない行為だったかもしれない。それでも、ライは受け止めてくれたので気にはならなかった。

背中に彼の腕が回され、抱き寄せられる。温もりを感じる。生きているんだ。幻なんかではなくて、ライが生きているんだ。

「……よかったです、中尉。また、貴女に会えて」

「ああ」

「本当に、死んでしまうような思いで、もう二度と会えないんじゃないかって思ったんですけど」

彼の腕に力がこめられて、強く、けれども痛くはないほどに抱きしめられる。

「こうして、貴女に触れることができる。生きているんだって実感できる」

「……私も同じだよ。こうしていると、とても安心する」

ライの胸に身を委ねるようにしていると、彼の鼓動が聴こえる。いつまでもずっと、こうしていたいくらいだ。

そんな私の気持ちとは裏腹に、ライは身体をほどいて、そっと互いを引き離してしまった。

名残惜しそうに顔を上げると、真剣な彼の眼差しと目が合ってドキッとする。

「中尉」

両肩に手を置かれて、彼の顔が近づいてくる。口づけをされる、と頭の片隅で意識していたが、ほんの少しだけあった照れもかまわずに、自然と受け入れていた。

「んっ……」

彼らしい、優しい触れるだけの口づけ。

わずか数瞬だけの行為が終わると再び向かい合って、お互いに不恰好に笑った。

「そ、そろそろ、戻ろうか」

「はい」

居心地が悪いわけではないけれど、やはり、照れくさいところがあり、なんだか居づらくて、私に同意したライとともに立ち去ろうとする。

「あっ……ちょっと待ってください」

彼はすぐに足を止めて私に呼びかけた。私は彼より先に行こうとしていたので、振り返る。

「どうした?」

「一つ、大事なことを言い忘れていました」

「何をだ?」

ライの思惑が読み取れなくて、続きを促す。すると、彼の告げた言葉は私の想像を遥かに上回るものだった。

「千葉凪沙さん、貴女が好きです」

突然の告白に心音が高まる。心の準備ができていなかったので、完全に不意打ちをくらった。驚きを隠せずにライを見ると、彼はにっこりと微笑む。

その笑顔を見ていると、次第に驚きは薄れて、それ以外の感情が生まれる。

ずっと、その言葉が聞きたかった。

彼の気持ちが知りたくて、でも、確かめる勇気がなくて。私は、自分の想いを募らせるだけだった。

けど、彼は好きだと言ってくれた。私に好意を抱いていることを伝えてくれた。

だから、私も彼の言葉に応えなければ。彼にも、私の気持ちを知ってもらわなければならない。ずっと、伝えたかった言葉があるんだ。

「私も、お前が大好きだよ。ライ」

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