こんなstay nightは嫌だ 作:はぬ
言峰綺礼は生まれて初めて自分の行いを後悔していた。
人の不幸は蜜の味とはいうが、自身の持つ感性、愉悦について思い悩んだこともあるが、今はそれを受け入れてそれなりに楽しく生きてきた。
しかし、自信が後継人を務める少女、遠坂凛については
誕生日には(趣味は合わないが)真面目に選んだ服を送り、遠坂の財産等も割と、まぁ、頑張った。
しかし、何が間違ったんだろうか?
「ねぇ、綺礼。話って何?」
教会の長椅子に座り、足を組む制服姿の少女、遠坂凛を見て綺礼は深いため息をついた。
凛は黒い髪を金色に染め、耳にはピアスをはめ、長いツケマツゲをつけ……。
まぁ、一言で表すならば
"遠坂凛はギャルになりました"
だろうか?
「聖杯戦争の期限は近い。いい加減、準備を始めなければ……「はいはい、わかってるわよ。いちいちうるさいわね。おっさん、」……っ!」
綺礼の言葉を遮るようにそういう凛は、物凄いスピードで携帯でメールを打っている。あの無駄に長く、さらにデコレーションされたつけ爪でどうやっているのだろうか?
というよりも、つい1年前までは固定電話の留守電すら使えなかったのにすごい変化である。
「ちゃんと聖杯戦争には参加するわよ。遠坂家当主としてそれくらいはやるわ。じゃ、この後、カエデとカラオケ行く約束してるから、そういうことで〜〜」
凛は手をヒラヒラと手を振りながら教会から出て行った。
彼女が魔術の研磨を怠るようになって久しい。最低限、腕が落ちない程度にはやっているようだが、それだけだ。
そのことを思い、綺礼は深いため息をついた。
愉悦は感じなかった。
◆
臓硯は義理の孫に恐怖を感じていた。
いや、これは恐怖ではない。どちらかといえば嫌悪感、生理的嫌悪に近い。理解できない存在への忌諱。
一般の人が毛虫や百足を嫌がるのと近い感情だ。
「足りない! 足りないわ、お爺様! こんなんじゃ満足できません。」
蟲蔵で少女、間桐桜はゆっくりと立ち上がりそう言った。
服は着ておらず、体の至る所に男性器のような形をした蟲がついており、今もなお彼女を犯し続けている。
「私は、こんなんじゃ、満足できなくなっちゃったんです。あなたの攻めはこんなものなんですか? お爺さま。もう、何も感じないです。確かに気もいいですよ? でも、飽きたんです。もっと、私に絶望感を味合わせてください。取り返しのつかない攻め手を! 精神がおかしくなるくらいの、無茶苦茶してください! そうでないと、つまらないわ!」
そう叫ぶ桜は頬を染め想像に興奮していた。
しかし、一方の臓硯はそんな桜に、後退りした。理解ができない。
今まで臓硯のしてきた仕打ちは、求められる行為ではない。泣き叫び、精神を病み、逃げ出そうとする。彼もその様子を見るのは愉しみ、娯楽としていた。
だが、今の状況はどうだ?
本来、悲鳴をあげてるべき存在は嬉々としてもっと激しくしてほしいと述べているのだ。
「……どういうことだ?」
「簡単ですよ。いつもいつもいつも、おんなじ攻めばかり。蟲にも飽きましたし。もっとないんですか? なんやかんやで身体は壊れないようにしていますし、つまらないです。」
当たり前だ。桜は大切な胎盤なのだから、臓硯も精神はともかく身体は壊さないようにしている。
臓硯は桜に、そのことは何度も説明しているし、良心(?)から新たなプレイで桜を苦しめている。犬のように散歩させたり、蟲を使って学校で犯したり、手足を外したりくっつけたり、臓硯も頑張った。
頑張ったんだ。
娯楽が娯楽で無くなり、もう、訳がわからなくなるくらい、桜のために桜を虐める方法を考えて実行してきた。
その期間はおよそ10年近くだ。
第四次聖杯戦争くらいからずっとどういうわけか、桜のために尽くしてきた。
しかし、桜は納得も満足もしてくれていないのだ。
毎日のように飽きた、つまらない、満足できない、騒ぐのだ。
そんな、
もう、恐怖が通り越えて、彼女に嫌悪感を感じていたら。
「もう良いです! お爺様が、こんな! 普通の発想しかできない一般人とは思いませんでした!」
そう言い残し蟲蔵から出て行く桜を見ながら
「姉にしとけば良かった。」
心からそう呟いた。
◆
I am the bone of my sword.
体は剣で出来ている。
comics is my body, and novel is my blood.
血潮は漫画で、心はラノベ。
I rubbed the blade a thousand times
幾たびの空想を越えて不敗。
Unaware of beginning.
たった一度の不満も無ければ
Nor known to Life.
ただの一度も理解されない。
Overcame the pain with the power of Moe
遺子はまた独り
Have sex in a dream world
夢想を相手に剣を握る
――――yet,
けれど、
My delusion never ends.
本物の鞘は未だ現れない
because I pray, UNLIMITED BLADE WORKS.
なぜなら、その体はアニメで出来ている。
「はぁはぁはぁはぁ……」
「……先輩、無茶苦茶にしてください。」
「ああ、良いんだな、桜」
「はい、先輩に無茶苦茶にして欲しいんです。」
「うぉおおおおおお!」
部屋には美少女アニメのフィギュアやポスターが飾られている。棚には沢山の"円盤"が仕舞われている。この様子から部屋の主人がオタクであることは誰でも分かるだろう。
しかし、それだけでは無い。部屋にはガチガチのティッシュが散乱していた。
そんな部屋で一人二役で剣を握り自家発電に勤しんでいる子の男の名前は衛宮士郎である。
かつて正義の味方を目指し、1人で頑張っていたが小学生の頃に起きたイジメにより硝子の心は砕けちった。その結果産まれたのがこの、ダメ男である。
「士郎、慎二君が来たからたわよ。」
部屋の外(2年前に離れの洋室に引っ越している)から姉代わりの藤村大河の声が聞こえた。その声は優しげで、それでいて悲しげだ。
しかし、その声に士郎は無視しつて剣を拭いたティッシュを丸で後ろに放り投げる立ち上がった。
「っち、慎二か、今日は学校じゃなかったのか?」
そう士郎が言うと外から慎二が言った。
慎二は中学のころ、祖父と父が義理の妹と交わっているところを目撃したショックから、根暗となり対人恐怖症とまではいかないまでも人間不信になってしまった慎二には話し相手は士郎しかいない。
そんな士郎は1週間前から引き篭もって出てきていない。
「いや、お前も学校だろ? いい加減、学校来いよ。そろそろ日数がヤバイぞ」
「あー、マジかー。じゃあ、チラッと行ってくるか……。」
引きこもりとは言っても完全に出ないわけではない。
さすがに高校は出ないとマズイという義務感からたまには顔を出す。そんな感じだ。
そして、こんなマスターたちの聖杯戦争が始まろうとしていた。