イカれた金剛石はバニーガール先輩の夢を見ない。 作:リン オクムラ
朝、妹を起こしていつものように学校へ向かう。なんだかんだ二度目の高校生活であるが一度目よりも平和に過ごせてはいた。そして、いつものように途中であった国見祐真とダベりながら学校へ向かっていくのだ。
「国見よォ、桜島先輩って」
「残念だったな咲太」
「べつに先輩に告白したってわけじゃあねえよ。ただあそこにいる先輩、『見えてる』か」
「そりゃあな。急にどうした?」
「いや、見えてるってんなら別に問題はねえ」
そうやってダベりながら、登校しいつもの如く授業をテキトーに聞き流し、国見やもう一人の友人である双葉理央と共に喋りながら帰る。
そして、帰りの駅で桜島麻衣を見かける。しかし、その時彼女は周りの野次馬に盗撮されていた。
「ねえ、あれ」
「やっぱりそうだよなぁ?」
別に、麻衣を助けようとかそんな気はなかった。単純にそういう行為がムカついただけ。いつもならテキトーに流して終わり。しかしながら、顔見知りがそういう目に遭っているのを放っておくっていうのもなんとなく仗助の中に後味の良くないものを感じる。ただそれだけ。
「芸能人ってのも大変だよなァ。別に仕事してるわけじゃあない時にもこうやって撮られるんだからよ」
そう言いながら盗撮してる男に割り込む。
「なんだよお前」
「あ?おれは別にここに立っているだけだぜぇ〜?盗撮してるあんたと違ってよォ」
「なっ、ち、ちがっ」
「ガキじゃあねえんだからそういうコトはやらねえ方がいいんじゃあねえか。今の時代はよォ〜そういう行動はいつ火種になってもおかしくねえぜ」
仗助がまだ一度目の高校生だった時はまだ、スマホみたいなものはなかったが、今の時代はそういう行為で炎上するSNSがよくある。仗助自身はスマホは持っていないからイマイチピンとこないが、話自体はよく聞く。
そして、図星を突かれたからか、逆上した男はある禁句を仗助に向かって言った。
「う、うるせえ!お前みたいな頭にハンバーグ乗っけてるみたいなヤツに言われたくねえんだよ!」
「おい、あんた。今おれの頭のことなんつった?」
そしてプッツンとキレた仗助の出来上がりである。
「おれの頭がサザエさんみてえだとォ?」
「な、そこまで言ってな
「確かに聞いたぞコラーーーッ!!!」
そして、無意識にスタンドの腕で男を殴り飛ばした。
「ギャァァァ!!」
「おれの頭にケチつけてバカにしてムカつかせたヤツあ何モンであろうと許さねえ!」
「ひいいいいっ」
「待ちやがれテメェッ!!!!」
「ご、ごめんなさい、ごめんなさいいいいいいい!?」
「ドラララララララッドラァッ」
「アダパアッッッッ!?!?」
そして、逃げようとする男に向かってさらに追撃を喰らわせる仗助。歳を食ってそれなりに精神的に大人になったかと思いきや、地雷を踏まれたときにプッツンするのはいつになっても変わらないらしい。『まだ怒りたりねえぞコラァーーーッ』と更なる追撃を食らわされる。
(なんなのアレ…人が勝手に吹き飛んだ…?)
しかし、スタンド使いではない麻衣からすると仗助がキレたあといきなり人がブッ飛んだようにしか見えなかった。
(しかも何でかしら?傷が治っていってる…?いえ、きっと目の錯覚ね…。自分が『異常』な状態だからってそうそうこんな非現実的なことが起こるわけがないわ)
そして、仗助の『治す』能力で即座に顔面の傷は『治され』る。ただし、仗助がプッツンしてるせいか、その顔は男の元々の顔の造形とは違ったものになってしまった。しかしながらこの『治す』能力のおかげか仗助が停学以上の罰則を食らうことは無かった。ようは傷が残ってないから問題として大きく取り上げられないのだ。仗助自身はそこまで考えてなく、ただ単にブチギレている中で無意識に能力を使っているだけである。
因みにその後、男はキレ続ける仗助からなんとか逃げたあと、変わり果てた顔が原因で破局したらしい。
「ありがとう。…ちょっとやりすぎな気もするけど」
「お、おう?」
「何?『余計なことしないで』とでも言われるかと思った?」
「正直なぁ。先輩はそういうの素直に言うようなタイプじゃねぇってかよォ〜なんつーか露伴のヤロウほどとはいかねえけどちょっと『近い』気がするからなぁ」
いきなり認識されねーからってバニーガールガール姿で現れたりするブッ飛んだとことかも露伴にちょいと似てるよなぁ。とか思ってたりする。正直な話、仗助自身はこの先輩とうまくやっていくって言うことが想像できなかった。
「それにおれも頭にして途中から何も考えずにただあのヤロウを殴ることだけ考えてたからなぁ〜なんつーかシャクゼンとしねぇって言うかよ、そんな妙な感じがするんスよ」
「側から見てても凄まじいまでの怒りっぷりだったわね」
「…この髪型はよォー。昔、本当に昔におれを助けてくれた人がしてた髪型なんスよ。おれはあの人にあこがれて同じ髪型にしてんだ。だからこそ、それをけなすヤツは許せねえ。この髪型をけなすってことはあの人のコトもけなすっつーことだからな」
桜島麻衣は、少しだけ『梓川咲太』に対しての見方を変えた。不良っぽい見た目の割には正義感に厚く。そう、見た目と髪型をけなされたときにプッツンするところ以外には学校内で大した問題を起こさない、いやその二つ以外に問題がないごく普通の生徒だったから。80年代の不良のような見た目をしているがその実そこまで悪い人ではないのではと。見た目で勘違いさせてるのはわかってるはずだけど、そこを直さないあたり、その恩人に対してのリスペクトは側から見るよりよっぽど大きいんじゃないかと、麻衣は思った。
「で、先輩はこんな微妙な時間に何してたんスか?学校が終わってから結構時間経ってるっスよね」
「君にばったり合わないように時間潰してたの。無駄だったみたいだけど」
「べつに先輩に会おうとしておれはこんな時間まで待ってたわけじゃあないぜ。フツーに国見や双葉とダベってたらこんな時間になってたんだよなぁ」
億泰や康一とはまた違った性格をしてる二人だし、別に『スタンド』を使えるわけでも、一緒に闘いを乗り越えたわけでも、事件を解決したわけでもない。ただ単に気が合うダチってだけの二人だがこの世界に於いて数少ない『信頼』できる友人であった。いつか億泰や康一をあいつらと合わせてみたいとも仗助は思ってる。億泰は見た目は仗助と同じで厳ついし、康一は平凡な感じであるが二人とも頼りになるいいヤツなのだ。
「友達いたんだ」
「そりゃいるに決まってんだろ!おれのことなんだと思ってんスか!?」
「不良よ」
ぐうの音も出ない正論である。
「確かにこの見た目だしよォ〜避けられるっつーのはよくあるっスけどそれでもツルんでくれるダチっつーのは割といるもんっスよ」
「そう…」
その時、麻依の携帯から着信音が鳴る。仗助自身はよく知らないがどこからのアイドルグループが歌ってる歌っぽいというのはなんとなくわかった。複数人の女性の声が歌からは聞こえるからである。スマホの着信画面の『マネージャー』の文字を見た瞬間麻衣は『拒否』というボタンを押した。
「出なくていいんスか?」
「もう電車来たし…あの人の用件はわかってる」
そして、二人は電車の中に入っていった。