一年戦争の兵器たち   作:タチアナ・グリセルダ

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一年戦争の兵器たち
DFA-03 コロニー生まれの流れ星


 宇宙世紀0079年。

 地球から最も離れたスペースコロニー「サイド3」はジオン公国を名乗り、地球連邦政府に独立戦争を挑みました。一年戦争の始まりです。

 圧倒的なまでに国力の差があるジオン公国は短期間の内に地球連邦に大打撃を加え、早期講和に持ち込むべく悪魔のごとき作戦を立案しました。

 「コロニー落とし」、ブリティッシュ作戦です。

 連邦軍の中枢、南米ジャブローに対しコロニーを質量兵器として落下させる作戦です。

 しかし、この作戦は失敗に終わります。

 その後、連邦宇宙軍をルウム戦役で壊滅させると、連邦政府を和平交渉の席に着かせることに成功します。

 しかし、ジオンの捕虜となっていたヨハン・イブラヒム・レビル宇宙軍中将の脱走と「ジオンに兵なし」演説により、連邦政府は徹底抗戦を決意。

 ジオンは早期講和にも失敗してしまいました。

 ジオン軍上層部は戦争に勝利する為に、戦場の舞台を地球に移すことにします。

 地球に降下し重力戦線を形成するにあたりジオン軍にはいくつもの課題がありました。

 その一つが航空戦力の充実化です。

 ジオン軍は地球で対決することとなる連邦地上軍、特に連邦空軍の存在は大きな障害になると捉えていました。

 当時の連邦空軍は陸軍や海軍に比べてコロニー落としの被害が少なかったこともあり、かなりの戦力を有していました。

 それに対しジオン軍には大気圏内で活動可能な航空戦力は皆無でした。

 それもその筈です。ジオンはコロニー国家であり、コロニー内には“大気圏”が存在しないからです。

 地球侵攻を控えたジオン軍には航空機、特に戦闘機の開発は急務でした。

 

 ジオン技術本部はマルティン・シュローダー技術大尉に大気圏内戦闘機の開発を命じます。彼は大気圏内航空機の研究をしていた数少ない人物の一人でした。

 シュローダーは直ちに開発チームを招集します。

 開発チームの1人ヘルムート・ユルゲン元技術少尉はこう語ります。

「もう、めちゃくちゃでした。数日の内に具体案を出して使える物を用意しろと言われました。なので、私達は過去の研究データの中から使えそうな物をピックアップしたんです」

 ピックアップされた候補は地球環境を再現したシミュレーターによるトライアルを受けることになります。

 戦闘機としてこの航空トライアルで選出されたのが「ドップ」でした。

 この機体は非常に高い旋回性能と速度から高い格闘戦能力がありました。ミサイルの使えないミノフスキー粒子下における有視界戦闘にはうってつけの機体だったと言えます。

「ドップは航空機としてはかなり独創的な形と言えます」

 そう語るのは軍事評論家のカロル・アダムス氏です。

「通常航空機は航空力学を始めとする航空工学に基づいて設計されますが、これには殆どそれがありません。大気圏という概念がないコロニーならではの問題だったと言えるでしょう」

 この航空トライアルでは「ガウ」や「ルッグン」などのジオン航空部隊の中核をなしていく機体が数多く選出されました。VTOL機やローター機が多く採用される中、「ドップ」はある意味冒険に出た機体と言えます。

「ドップ」は地球侵攻作戦に間に合わせる為、ジオン技術本部にて急ピッチで量産がなされました。

 

 宇宙世紀0079年3月1日。ジオン地球方面軍は第一次降下作戦を開始します。

 欧州に降り立ったジオン軍は瞬く間に空挺堡を確保。電撃的な侵攻を成功させました。

 ジオン軍はカザフスタンの連邦宇宙軍バイコヌール宇宙基地を占領。

 ジオン第1地上機動師団が続々と地球に降り立つなか、創隊されたばかりのジオン航空総隊もバイコヌール宇宙基地へと降り立ちます。シュローダー達、開発チームも最終調整の為に地球へと降りました。

 こうしてバイコヌール宇宙基地に併設された飛行場に「ドップ」を始めとしたジオン製航空機が運び込まれ、遂に地球の空を飛ぶときが来たのです。

 当時の状況をヘルムート・ユルゲン元技術少尉はこう語ります。

「それまでシミュレーターでしか飛ばした事のない機体を本物の大気の中で飛ばすのです。非常に緊張したのを憶えています」

「ガウ」や「ルッグン」が順調に初フライトを成功させる中、「ドップ」の番がやって来ました。

 この初フライトで「ドップ」は飛ぶことができず、滑走路から少し浮いただけで直ぐに墜落してしまいました。原因は揚力の不足でした。

 既に地球侵攻を開始したジオン軍には戦闘機が必要不可欠です。かといって今更、新規で設計する時間もありませんでした。

 シュローダー達、開発チームは強引な手段で「ドップ」を飛ばします。

「ドップ」のエンジンは宇宙戦闘機用の高出力エンジンにリミッターを設定した物が積まれていました。このリミッターの設定値を空中分解ギリギリの所まで引き下げたのです。

 更には離陸用にバーニアを取りつけ離陸に必要な推力を得ます。

 こうして2日後に「ドップ」は飛行を成功させますが、この機体は想定より大きな空気抵抗を受けたことにより空中分解を起こします。

 リミッターの再設定をおこない、試作5号機にてようやく安定した飛行性能を手にいれました。

 飛行するようになった「ドップ」でしたが、新たな問題が浮上しました。

 リミッターを下げたことによるエンジン出力の上昇と、想定よりも大きな空気抵抗を受けたことにより「ドップ」の燃料効率は非常に悪く、航続距離が短かったのです。

 この航続距離の短さは「ドップ」をガウ級攻撃空母に艦載することもあってか、さほど問題とはされず、一年戦争終結まで航続距離が伸びることはありませんでした。

 しかし、現場の将兵からは航続距離の短さは評判が悪く、一部の機体では現地改修により増槽を付け足して運用された記録が残されています。

 戦線に投入されたコロニー生まれの戦闘機、「ドップ」はその格闘戦能力を存分に発揮し、連邦空軍が運用する地球生まれの戦闘機と互角に渡り合いました。連邦空軍では戦場で本機と交戦する場合、格闘戦は避けるよう厳命されたほどです。

「ドップ」は連邦軍将兵から、その航続距離の短さを皮肉って「流れ星(シューティングスター)」や「彗星(コメット)」の渾名がつけられました。この「流れ星(シューティングスター)」の渾名は後にジオン側にも逆輸入され親しまれることとなります。

「ドップ」が戦線に投入されると開発チームは解散しました。

 開発主任だったシュローダー技術大尉はその後オデッサに移りました。そして鹵獲した連邦軍航空機の技術調査をおこない、ジオン製航空機にその技術をフィードバックしていきます。

「ドップ」も宇宙世紀0079年5月に改修を受け、離陸用バーニアを除去。離着陸用のフラップが装備されます。

 

 軍事評論家のカロル・アダムス氏は「ドップ」をこう語ります。

「ドップが飛行機なのかは我々軍事評論家の中でも議論が尽きません。ドップは純粋な飛行機というよりはロケットやミサイルに近い物だからです。しかし、このドップがジオン地球方面軍の空を終戦まで守ったのは事実です」

 

 

 




第1話がドップなのは「ドップって兵器てして色々欠陥あるのにどうして採用したんだろ?」っていう妄想からはじまったからですw
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