雨は嫌いです。   作:大豆(筋肉)

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お ま た せ
クリスマスプレゼントだよ!

半年ぶりくらいの更新になります。以前の宣言から大幅に遅れました。申し訳ありません。何でもするので許してください。


今回はいつも通りの文量なうえに説明しかないです。
誤字脱字もあるかと思いますので、批評、感想バンバンお願いします。


外待雨

「”深海棲艦”は減るどころかいまだに増え続け、最近では従来相手にしていたものよりも強力な、新種のものまで出現していると聞きます。今後はより一層に”鎮守府”からの求人も増えるでしょう。諸君らは努力を疎かにすることなく……」

 

 そのあとはお決まりの常套句だった。それこそ耳にタコができるほどに聞いた、”勉強をがんばりましょう”という定型文だ。今回の講和で伝えられた学生への重要な情報は、新たな深海棲艦の存在が明かされたことと近隣の鎮守府から人員の募集が増えているという二点に尽きる。いまだ自分たち学生へと講和を続ける校長もなかなかに大変な立場らしく、ただ情報を伝えるだけでなくその情報を学生たちのより一層の努力へとつなげられるように講和の内容を考えなければならないらしい。そのためか、誰かが居眠りしていたとしても重要事項を伝え終わった現在は教師も誰一人としてその学生を起こそうとはしない。むしろ、教師たちも日頃の疲れがたまっているのか一部はうつらうつらとしているようだ。

 疲れを悟らせるような空気を誰もが全身から溢れさせるまま、集会の時間は流れていった。

 

 

 

 

 カッ、カッとチョークが黒板にあたる音の聞こえる教室。その中には時折、生徒たちの小声の会話が混じるものの、基本的には静かな授業時間だ。時間割が変更されて一、二限が珍しいことに全校生徒を集めての集会だったため、今日の授業はこの三限目の総合学習からだ。

 黒板に授業の主題を書いている教師はこの学校の教師の中では最も若い、短髪で細身の青年と言っていいような見た目の男性。自分たちのクラスの担任でもあり、九州の方言をよく使うことや本人の温厚な性格も相まって親しみやすい人物だ。

 担任は主題を描き終えたのか、こちらを振り向くと男性にしては若干高めのよく通る声で話し始めた。

 

「さて、今日の総合の内容は、さっきの集会でもあったように”深海棲艦”についてやね。こいつらに関しては起源が不明なせいでいろいろ言われてるみたいやけど、今回はそこは置いといて新しく見つかったタイプについて話そうか。

 それじゃあまずはおさらいとして、今までに確認されている艦種を一通り挙げてもらおうかな……じゃあ、中川(なかがわ)どうぞ」

 

「うぇ、俺っすか……」

 

 担任に指名されたのは中川 篤人(あつひと)。彼は小学校に在籍していたころからサッカー部に所属していて、運動を幼いころからしているためか体格はかなりがっしりしている。正直なところ、つい最近までラグビー部に入ってるものだと思っていた。

 確認されている艦種を思い出そうとしているのか、中川は斜め上の方を見上げながらゆっくりと担任からの質問に答えていく。

 

「ええっと、戦艦、潜水艦、駆逐艦、正規空母、軽空母、軽巡洋艦……あとなんだっけ、重巡洋艦とらい、重雷……なんとか」

 

「惜しい。他には重雷装巡洋艦、輸送艦があるね」

 

 あー、と言いながら頷く中川。どうやらそれだけは覚えていなかったらしい。担任は、まあ、それだけ覚えておけば十分でしょう。なんて言いながら話を続けだす。

 

「さて、今挙げられたのとは別に新しい艦種が確認されたって話に戻るんやけども…………どんな奴やと思う?」

 

 その言葉を皮切りにして、教室のいたるところからあーうーとうめくような、または悩んでいるような声が上がる。単純な戦闘能力の高さ(殴り合いの強さ)で言えば、最強に位置するのは戦艦、最弱は輸送艦だろう。戦艦は、過去の大戦中においても基本的には艦隊の中核を担う存在であり、言うなれば――呼称としては間違っているようにも思えるが――絶対的な信頼のおけるエースといっていいのではないかと思う。逆に輸送艦は名前の通りに資材や食料の輸送を目的とした――なお、他の艦船への物資の供給を主目的としている補給艦もこの輸送艦というカテゴリーに含まれているらしい――艦種だ。持ちうる戦闘力など、それこそ最低限の自衛できる程度のものしかない。

 駆逐艦・軽巡洋艦・重巡洋艦が用いられる目的といえば、別の艦船――たとえば先に挙げた輸送艦――の護衛などが主なものになるのではないだろうか。重巡洋艦は十分に戦闘能力を持っているといえるが、水上戦闘力という一点に関していえばやはり戦艦に分がある。重雷装巡洋艦に関しては、ひたすらに雷撃に特化することで瞬間的な火力を底上げしている艦種といえるのではないだろうか。砲撃や対空攻撃と引き換えにただ魚雷を撃つことに特化した、一種のロマンともいえる。個人としては非常に好みではあるが、やはり砲撃戦における火力不足を鑑みると総合的な戦闘力では戦艦に劣る。

 次に潜水艦。こちらは主力艦隊として用いられることこそあまりないものの、水中における隠密行動により偵察や機雷の設置、通商破壊といった行動に用いられた。究極のステルス兵器の名は伊達ではなかったことは歴史が証明している。しかしそういった隠密行動に特化しているため、水上からの機雷投射などを直接受けてしまえばひとたまりもない。しかし少なくとも敵艦を落とせる以上は輸送艦以上に戦闘能力はある。よって最弱とは言えない。

 そして最後に、特殊な部類に位置するのが空母だ。空母はそもそも、航空母艦の名が示す通りに航空機の発着艦だ。過去には砲撃を行えるようにされた空母も存在するとは聞くが、基本的な仕事は戦闘機や爆撃機、偵察機といった様々な航空機を繰り出すことだろう。艦自体に大きな戦闘力はないが、それから繰り出される無数の航空機には多大な戦闘力がある。そう考えると、やはり特殊な位置づけではあるものの戦闘用に造られたという点を考慮して最弱ではない。

 

 こうして考えてみると世間一般で知られているような艦種は粗方確認されているように思える。実際のところこれ以上は自分も知らないし、クラスメイトもそうなのかあまりピンとくるような回答は思いついていないようだ。

 そんな中、一人の生徒が戦艦以上の戦闘力を持っていたりするんじゃないか、と発言した。ほとんど冗談のつもりだったのだろう。彼はよくふざけているときに見せるような表情で笑っている。周りもそれはないだろー、という反応を示していた。しかし、そうではなかった人物が一人いる。担任だ。担任はすっと目を細めて真剣な表情になると一言。正解だ、とだけ言った。瞬間、空気が凍る。ワイワイと騒いでいた生徒たち全員が担任の方を向き、しんと静まり返っている。異様な空気が漂う中、彼は再び口を開いた。

 

「今回確認されたのは、戦艦を一撃で大破させることのできる火力がありながら、巡洋艦や空母はおろか、雷巡の魚雷一斉掃射すら耐えきるような耐久力を持った化け物。そんなやつらが日本各地の海域に出現した。すでに各地の鎮守府で大きな被害が発生しているらしく、壊滅にまで追い込まれた艦隊も少なくない。艦娘たちの精神的動揺も大きく、装甲の薄い小型艦の子たちに至っては出会えば轟沈は免れないとまで言われている。それが今回新たに確認された鬼種と命名された存在だ」

 

 鬼。今までの命名ルールに一切基づかない名称だ。今までは少なくとも深海棲艦のその形状や装備、攻撃方法といった部分を見て該当するカテゴリーに分類されてきたのだ。しかしそのルールに則らない命名の仕方。それはつまり、既存の艦種に当てはまらない特殊な存在であると同時に、完全に未知の存在であるということに他ならない。

 

 誰かが息をのむ音が、いやに大きく響いた。




なお自壊更新は再び未定。ほんとにすみません。


追記
次回更新でした。指摘されるまで気付かなかった。すみません
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