fate/銀時も行くオーダー   作:ひとりのリク

1 / 45
特異点F
主人公の記憶は都合良く弄られる


 

 

十六年生きている。

沢山の出来事があって、人生を振り返って印象に残ることは多々あるけれど、夢のなかについてはよく覚えていない。

眠って、目が覚めて、暗い安寧に委ねる時間を思い返す。だけど、一つ一つの挙動を思い返せるほど鮮明な映像はやはり思い描けなかった。

 

十六年生きている。

家族と過ごす時間、友達と遊ぶ時間、勉強に悪戦苦闘する時間。その全てをぶっちぎっている睡眠という時間が楽しみで仕方がない。夢を見るたびに心がワクワクして、目が覚めたら子供心すら薄れてしまう魅惑の悪魔。

 

十六生きて、これほど楽しみに、そして忘れてしまうなどと不思議な体験を勿体なく思う。同時に、夢という世界に魅力と人生を押されたときから将来の行く先は決めていた。

 

「──────」

 

夢のなかに居たい。

夢に触れたい。

いつか、夢のなかで冒険したい。

 

自分の可能性を内包した世界でも人生を謳歌したい。

 

「せん──、──て」

 

だから、この日。

夢のなかで浮遊し、空を見上げて、世界のどこでもない場所で彷徨う体験を忘れることは出来ない。

生涯で初めて、自分の全身を動かして有り余る感動が夢のなかで轟いた瞬間。人生を生きる意味という青くさい感情さえ握りしめていたのだ。

 

 

 

 

外野の音を拾い、次に肌寒さを感知して意識が雑に殴られる。寝起きにしては初めての消失感が胸を焦がす。体感にしておよそ十分。人ならざる領域で、妖精のような浮遊感を味わい過ごした。

夢のようで少し違う時間が終わる。

目を開けて、声のかかる位置に視界を並行移動させる。すると、細くて綺麗な両足を瞳を見つけた。それだけでも思わず唾を飲み込むほどになぜか緊張して、状況が飲み込めずに回答を求めて視界を上に向ける。

 

「先輩、起きてください」

「───あ、えっと…?」

 

瞳から脳、そして全身に熱が走るまでに三秒。それまで、失礼という感情も忘れてまじまじと映り込んだ女性の表情に見惚れていた。

 

「あの、無言で見つめられると困ります」

「ご、ごめん…!いきなりのことで、つい」

 

キョトンと不思議なものを観察するさまがあまりにも初心で、呼吸よりも彼女を見ることを優先したくなる。

だが、それはいけない。

初対面でこのザマなんて一生の恥になる。

 

「えっと、落ち着け俺…。

……よし。さっきは起こしてくれてありがとう。

俺は藤丸 立香。さっきまでの記憶が曖昧な高校生…だと思う」

「自己紹介ありがとうございます。リツカ、とても良い響きですね。

…………あ、そうでした。私も名乗り返さなければ、いけませんでしたね。すみません、こういうことに慣れていなくて。

改めて、私はマシュ。マシュ・キリエライト。少し前からここ、カルデアの職員として働いています」

 

不格好ながら取り繕って気を取り直そうとした直後。返ってきた名前の響きを復唱する間もなく、カルデアという聴き慣れない単語に再び思考が固まっていく。

 

「先輩がここにいるということは、今回の一般候補生に選ばれたからですね。ですが、どうして記憶が曖昧なのでしょう」

 

次いで出てきた一般候補生という言葉。恐らくは自分のことを指すのだろうが心当たりがない。

恐ろしく綺麗な見知らぬ廊下、窓の外には凄まじい勢いで吹雪く天候。まだ夢のなかと言われても信じてしまいそうな状況下。

 

「カル、デア…?」

 

辛うじて漏れた言葉には情けなさが滲み出ている。

 

「ごめん、思い出せない。こんな山のなかに来た覚えがなくって。直近で思い出せるのは、故郷で友達と鬼ごっこをしていたことくらいかな」

「どうしましょう…。私も一人一人の詳細なデータは確認していなくて。あ、もしかすると。あそこで防寒対策をしっかりとして寝込んでいる人なら分かるかもしれません」

 

華奢なマシュの指が示す先、そこには。

 

「ぐがが……」

「フォウ」

 

一見して巨大毛虫の男が床で寝ているではないか。彼の腹あたりには子犬のような白い生物が跳ねている。

いや、巨大毛虫に見間違えたのは蔑んだからとかではない。あまりにも場違いな様相で驚いてしまったせいだ。ついでに言うなら、よくもまあ存在感しかない寝袋男をイビキごと感知していなかった自分に腰を抜かしそうだ。

 

「いや、おかしくね。寝袋とか普通は廊下で使わないよ」

「そうなのですか?てっきり先輩のように、睡魔に耐えきれず即席ベッドで寝てしまわれたのかと」

「待ってほしいマシュ。あの人と同じに見られるのは納得がいかないぞ」

 

マシュの発言に抗議の念を挟んだところで寝袋男がもぞりと蠢き始める。寝袋から腕を出すと、なおも飛び跳ねている謎の動物を下ろそうとしていた。

 

「だ、あだ。あぁもうやめろ定春。メシか、散歩か……?銀さん眠いから。いまはどこも自粛中だから今日は寝てなさ……」

「フォウ、フォウ!」

 

だが、捕まえることはできず。

諦めて上半身を起こして、気怠げなまぶたがようやく全開となった。その反応はさきほど、自分がしていた動作と似通っていて親近感を覚える。

 

「あれ。定春お前、また縮んだ?やけに毛並みも良いじゃねーか。それにちょいちょい色も着いてるし。なに、ちょっとグレてきてる?」

「グルル」

「あの、その子は定春ではなく、フォウさんです」

 

マシュは寝袋男の珍妙な物言いに怖気ることなく、謎の動物の名前を訂正した。彼女の声に寝袋男……は、あんまりな言い方なので、特徴的な銀髪色の癖っ毛から、銀髪天パとでも呼ぼう。銀髪天パはマシュを見て、次にこっちを見て、最後に手元のフォウを見て呟いた。

 

「………あれ、よく見りゃお宅たち誰。もしかしてまだ夢だったか…」

「夢ではありませんよ。ここはカルデア、人理をより強く、より長く継続させるための機関。人理継続保証機関カルデアです」

 

マシュの言葉を聞きゆっくりと寝袋から出て窓に近づく。何度か瞬きをして現状を飲み込んで、頷いた瞬間。

 

「いや、まじでどこォォォォ!?」

 

男の気持ち良い絶叫が響き渡る。

 

あんな絶叫を生で見ることは早々ない。

とんでもないところに無意識のうちに来てしまった。

 

藤丸はこれから先の不安に苦笑いで応じた。

 

 







はじめまして、ひとりのリクです。
fateと銀魂のクロスに興味があったので書いてみました。
ほかのハーメルン作家さんで、fgoと銀魂クロス書いてる人の影響もあったり。面白いから皆んな読んでね。

ついでにfateと銀魂クロスもっと書く人増えて(願望)

設定は練ってたけど書かずじまいのものを自粛中に肉付けしたものです。
これに関しては供養しとこうかなって感じなので、悪しからず。
特異点冬木まで書いて、あとは気分が乗ったとき次第。

あらすじ欄は序章完結したら省略部分を足します。
暇つぶしにキーワードで特異点を想像するくらいはできると思います。

イベントは読みたいですか?

  • 読みたい!
  • 特異点が先だ!
  • (両方)かまわん、やれ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。